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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1135446
審判番号 不服2003-19858  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-09 
確定日 2006-04-26 
事件の表示 平成 9年特許願第195332号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月12日出願公開、特開平11- 41385〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成9年7月22日の出願であって、平成15年8月27日に拒絶査定がされ、これに対して平成15年10月9日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年10月4日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「原稿の画像データを入力する入力手段と、前記入力手段から入力された画像データを記憶する記憶手段と、装置の異常状態を検出する異常状態検出手段と、外部装置との間で画像データの送受信を行う通信手段と、前記異常状態検出手段が異常状態を検出した場合は画像データの送信可能な外部装置の有無の確認を行い、送信可能な外部装置が有る場合前記通信手段を介して画像データを外部装置に送信するとともに、前記異常状態検出手段が前記異常状態の解除を検出した場合に送信した画像データを受信する制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-167826号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に、次のアないしエが記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ装置の保守作業を行う際に、ファクシミリ装置のメモリに格納された情報を保存するための情報退避システムに関するものである。
【0002】
ファクシミリ装置に障害が発生したときあるいはファクシミリ装置の制御用プログラムをバージョンアップするときなどには、保守作業者が、ファクシミリ装置の電源を切断して、障害で破壊された部品や回路基板あるいはプログラムを格納しているプログラムROMを新しいものに交換する保守作業を行っている。
【0003】
近年、ファクシミリ装置の高機能化が進んでおり、このため、ファクシミリ装置の構成およびプログラムが複雑になり、上述したような保守作業を行う頻度が高くなっている。
【0004】
一方、ファクシミリ装置に備えられたメモリには、受信したイメージデータや予約送信しようとするイメージデータの他に、ファクシミリ装置の様々な機能の選択手順などをプログラムとして登録したオペレーションプログラムや通信ごとの相手先や通信結果などを管理するための通信管理情報などの制御情報が保持されている。このような制御情報は、揮発性のRAMなどに格納されているため、ファクシミリ装置の電源の切断によって、あるいは、プログラムROMの交換に伴うメモリの初期化処理によって、消去されてしまう場合が多かった。
【0005】
このため、保守作業のたびに、ファクシミリ装置のメモリの内容が消去されてしまい、利用者の便利が著しく損なわれているので、利用者の便利を考慮したサービス性の高い保守作業システムが必要とされている。」

イ.「【0012】
【作用】本発明は、情報退避指示に応じて、親展送信手段123により、制御情報とイメージデータとの両方を退避用ファクシミリ装置110に送信して、この退避用ファクシミリ装置110の親展受信手段111を介して、保持手段112に保持することができる。また、情報復旧指示に応じて、ポーリング受信手段124と退避用ファクシミリ装置110のポーリング送信手段113とが動作することにより、保持手段112に保持された情報をファクシミリ装置120に送り返すことができる。このようにして送り返された情報を分離手段125が分離して、それぞれ制御情報格納手段121とイメージデータ格納手段122とに送出することにより、ファクシミリ装置120が保守作業前に持っていた情報を全て復旧することが可能である。」

ウ.「【0018】
また、図2において、保守作業の対象となるファクシミリ装置120は、主制御部211とメモリ220と読取部213と圧縮/伸長部214と回線制御部215と記録部216とモデム217と網制御部(NCU)218と操作パネル219とからなる従来のファクシミリ装置に、データ転送部230と、分離手段125に相当するデータ解析部240とを付加した構成となっている。上述した主制御部211とメモリ220と読取部213と圧縮/伸長部214と回線制御部215と記録部216とデータ転送部230とデータ解析部240とは、バスを介して相互に接続されており、主制御部211が、これらの各部を制御するとともに回線制御部215を介してモデム216および網制御部218を制御する構成となっている。」

エ.「【0025】
図3に、ファクシミリ装置の各部相互間のデータの流れの説明図を示す。上述した情報退避指示は、例えば、保守作業者が、ファクシミリ装置の電源を切断する前に、操作パネル219に特定の操作を行うことによって入力すればよい。これに応じて、主制御部211は、まず、圧縮/伸長部214の圧縮部にバッファ領域223の先頭アドレスと制御情報格納領域221の容量を示すバイト数(nバイト)を指定して圧縮動作の開始を起動し、次に、イメージ格納領域222の先頭アドレスを指定して圧縮動作を起動すればよい。
【0026】
このように、制御情報格納領域221の内容とイメージ格納領域222の内容とが連続して圧縮部に入力されるので、圧縮部が圧縮する前の情報は、図4に示すように、制御情報格納領域221の内容とイメージ格納領域222の内容とが連結されたフォーマットとなっている。図4において、発信元印字情報,通信管理情報,ソフトスイッチなどの設定情報は、制御情報格納領域221の内容の一例である。また、イメージ格納領域222の内容の例としては、予約送信のための宛先や時刻などを指定した予約情報およびイメージデータや受信データを示した。
【0027】
この場合は、図4に示したような一連の情報が、圧縮/伸長部214の圧縮部によって通常のイメージデータと同様に圧縮され、回線制御部215に送出される。
【0028】
次に、主制御部211は、回線制御部215に宛先として退避用ファクシミリ装置110を指定するとともに、親展機能に必要なパスワードを指定して送信動作を起動する。これに応じて、上述した圧縮部で得られた圧縮データが、回線制御部215,モデム217,網制御部218を介して退避用ファクシミリ装置110に送信され、図2に示した退避用ファクシミリ装置110のメモリ202に通常の圧縮データとして蓄積され、上述したパスワードが設定される。
【0029】
このようにして、ファクシミリ装置120のメモリ220内の情報の全てを退避用ファクシミリ装置110に退避してから、保守作業者はファクシミリ装置120の電源を切断し、回路基板やプログラムROMや機械部品の交換などの保守作業を行えばよい。
【0030】
保守作業の終了後に、保守作業者は、ファクシミリ装置120に電源を投入し、必要な初期化処理を行った後で、操作パネル219を介して情報復旧指示を入力する。この情報復旧指示は、上述した情報退避指示と同様に、操作パネル219のキーを特定の手順で操作することによって入力すればよい。
【0031】
この情報復旧指示に応じて、主制御部211は、退避用ファクシミリ装置110を相手先として指定するとともに、上述した情報退避処理で用いたパスワードを指定して、親展ポーリング受信動作の開始を回線制御部215に指示する。これに応じて、回線制御部215により、上述したパスワードを用いた親展ポーリング受信要求が、モデム217および網制御部218を介して回線に送出され、上述した退避用ファクシミリ装置110との間で通常のポーリング通信が開始される。
【0032】
この場合は、上述した主制御部211と圧縮/伸長部214と回線制御部215とモデム217と網制御部218とによって、ポーリング受信手段124の機能が果たされる。これにより、退避用ファクシミリ装置110のメモリ202に蓄積された圧縮データをポーリング受信し、圧縮/伸長部214の伸長部により、保守作業の前にファクシミリ装置120のメモリ220に格納されていた全ての情報をイメージデータとして伸長することができる。」

以上より、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「読取部と、イメージデータが保存されたイメージデータ格納手段と、外部との間でイメージデータの通信を行うモデムとを有したファクシミリ装置において、
ファクシミリ装置に障害が発生したとき、保守作業者が入力する、情報退避指示に応じて、ファクシミリ装置のイメージデータ格納手段内の情報を退避用ファクシミリ装置に退避し、保守作業者が入力する、情報復旧指示に応じて、退避用ファクシミリ装置に保持された情報をファクシミリ装置に送り返す主制御部を有するファクシミリ装置。」

4.当審の判断
(1)一致点、相違点
引用発明の「イメージデータ」は、本願発明の「画像データ」に相当し、引用発明は、イメージデータの送受信を行うことができるファクシミリ装置であるから、本願発明の「画像形成装置」に相当する。
また、引用発明の「読取部」、「イメージデータ格納手段」、「モデム」は、それぞれ、本願発明の「入力手段」、「記憶手段」、「通信手段」に相当する。
以上より、本願発明と引用発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「原稿の画像データを入力する入力手段と、前記入力手段から入力された画像データを記憶する記憶手段と、外部装置との間で画像データの送受信を行う通信手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」

【相違点1】
本願発明は、「装置の異常状態を検出する異常状態検出手段」を有しているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。

【相違点2】
本願発明は、「異常状態検出手段が異常状態を検出した場合、画像データの送信可能な外部装置の有無の確認を行い、送信可能な外部装置が有る場合前記通信手段を介して画像データを外部装置に送信するとともに、前記異常状態検出手段が前記異常状態の解除を検出した場合に送信した画像データを受信する制御手段と」を有しているのに対して、引用発明は、「ファクシミリ装置に障害が発生したとき、保守作業者が入力する、情報退避指示に応じて、ファクシミリ装置のイメージデータ格納手段内の情報を退避用ファクシミリ装置に退避し、保守作業者が入力する、情報復旧指示に応じて、退避用ファクシミリ装置に保持された情報をファクシミリ装置に送り返す主制御部」を有している点。

(2)相違点の判断
【相違点1】について
一般に、機器の異常状態の検出手段を設けることはファクシミリ装置に限らず普通に行われていることであり、引用発明は、ファクシミリ装置に障害が発生したとき、保守作業を行うものであるから、障害の発生を知る手段を備えていると解することが自然であり、引用発明に装置の異常状態を検出する異常状態検出手段を設けることは当業者が容易に想到し得ることである。
【相違点2】について
引用発明の「退避用ファクシミリ装置」は、ファクシミリ装置のイメージデータを退避するためのものであるから、本願発明の「外部装置」に相当する。
引用発明の「ファクシミリ装置に障害が発生したとき」は、障害が発生し、それに対応するための障害を認識することまでを含むものであると解することが自然であるから、本願発明の「異常状態検出手段が異常状態を検出した場合」と同様の場合を示しており、さらに、引用発明は、ファクシミリ装置に退避用ファクシミリ装置が接続されている場合を前提としており、一般に機器の接続を確認することは普通に行われることであるから、情報退避指示を行う前に接続の確認をすることは、引用発明においても行われているものと判断できる。
また、引用発明において、保守作業者が情報待避指示を入力しており、すなわち、保守作業者が異常状態を確認したときに情報待避指示を入力している。ここで、人が行うことを単に自動化することには格別の創意工夫があるとはいえず、情報を得て、それに対する指示を人が入力して行うことに替えて、情報を得た場合にそれに対する指示を行う制御手段を設けることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明は、保守作業者が入力する情報復旧指示に応じて、送信した画像データを受信しており、すなわち、保守作業者が保守作業が完了したら、情報復旧指示を入力しており、保守作業が完了すれば、その後、異常状態が解除されると考えるのは自然であり、障害が発生したときと同様に情報復旧指示の入力を自動化し、このような制御手段を設けることも当業者が容易に想到し得ることである。

なお、審判請求の理由には、「本審判請求理由補充書と同時に提出しております手続き補正書に示されるように」と記載されているが、審判請求理由補充書と同時に手続き補正書は提出されていない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-15 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-06 
出願番号 特願平9-195332
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 手島 聖治  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 佐藤 敬介
岡本 俊威
発明の名称 画像形成装置  

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