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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1135451
審判番号 不服2004-3886  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2006-04-27 
事件の表示 平成11年特許願第365004号「露光方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-183844〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年12月22日の出願である特願平11-365004号であって、平成16年1月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月26日付けで審判請求がなされるとともに同年3月17日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月17日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月17日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
平成16年3月17日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された。
「第1方向に長辺を有するパターンが形成されたマスクを保持した第1方向に長辺を有するマスクステージと、矩形の基板を保持した第1方向に長辺を有する矩形の基板ホルダーとを第1方向に移動させて前記マスクのパターンを前記基板に露光する露光方法において、
前記基板ホルダーの短辺より長い長辺を有する基板を、該基板の長辺方向が前記基板ホルダーの短辺方向にほぼ一致するようにして前記基板ホルダー上に配設するステップと、
前記マスクステージと前記基板ホルダーとを前記第1方向に移動させて前記基板の第1領域に前記マスクのパターンを露光するステップと、
前記基板ホルダーを前記第1方向とほぼ直交する第2方向に移動させるステップと、
前記マスクステージと前記基板ホルダーとを前記第1方向に移動させて、前記第2方向に前記第1領域と隣接する前記基板の第2領域に前記マスクのパターンを露光するステップとを含むことを特徴とする露光方法。」
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「パターン」、「マスクステージ」、及び「矩形の基板ホルダー」について、それぞれ「第1方向に長辺を有する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-64782号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次のア)〜ケ)の記載がある。
ア)「【請求項1】マスクのパターンを所定の照明領域で照明する照明光学系と、前記マスクのパターンを透過した光束を実質的に等倍かつ正立実像結像で感光基板上に投影する投影光学系と、前記照明領域に対して第1の方向に前記マスクと前記感光基板とを同期させて走査する走査手段と、少なくとも前記感光基板を前記第1の方向とほぼ直交する第2の方向に、少なくとも前記照明領域の前記第2の方向の長さに相当する距離だけ移動させる移動手段とを備えることを特徴とする走査型露光装置。」
イ)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は走査型露光装置に関し、特に液晶ディスプレイパネル用のガラス基板等の大型感光基板へパターン露光するのに適した走査型露光装置に関するものである。」
ウ)「【0048】次に、図7、図8を用いて、本発明による走査型露光装置の他の例を説明する。図7は走査型露光装置の概略的な構成を示す図、図8は走査機構の一例を示す説明図である。図7において図1と同じ機能部分には図1と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。図7に示した走査型露光装置は、感光基板14側にのみY方向駆動装置16Yが設けられ、マスク側10にはY方向駆動装置18Yが設けられていない点で、図1に示した走査型露光装置と相違する。この走査型露光装置は、感光基板14の寸法に比べ小型で安価なマスク10を用いて、マスク10に描画されたパターンを感光基板14に複数回転写することができるようにしたものである。
【0049】図8は、コの字型の走査フレームによってマスク10と感光基板14を同期走査する走査型露光装置を示す。コの字型走査フレーム30はベース31上に載置され、X方向駆動装置32によってX方向に走査される。走査フレーム30の上部にはマスクステージ20が設けられ、マスクステージ20上にマスク10が保持されている。マスクステージ20は、駆動装置43,44,45を駆動することによってX方向、Y方向及び回転方向の位置を調整できるようになっている。
走査フレーム30の下部には基板ステージ15が設けられ、基板ステージ15上に基板14が保持されている。基板ステージ15は、Y方向駆動装置16Yによって走査フレーム30上をY方向に移動可能になっている。」
エ)「【0053】・・・次に、ステップ22に進み、図示しない基板ローダにより基板ステージ15に感光基板14をローディングし、アライメント系20a,20bによって基板マーク24を検出することによって、ロードした感光基板14を露光装置に対して位置決めする。」
オ)「【0056】その後、ステップ26に進み、マスク10及び感光基板14を+X方向に同期走査(復路走査)することにより、1回目の走査露光が行われる。この1回目の走査露光によって、感光基板14上の領域14aに対するパターン露光が行われる。
【0057】1回目の走査露光が終了すると、ステップ27に進み、Y方向駆動装置16Yを駆動することにより、感光基板14をY方向にステップ移動する。ステップ移動の距離はLyである。続いて、ステップ28において、X方向駆動装置32によって走査フレーム30を-X方向へ移動してマスク10及び感光基板14を投影光学系12に対して往路走査し、この往路走査中に走査露光することで感光基板14上の領域14bへのパターン露光を行う。この例の場合、感光基板14上の領域14aに露光されるパターンと領域14bに露光されるパターンは同じパターンである。」
カ)「【0061】その後、ステップ31に進み、マスク10及び感光基板14を+X方向に同期走査(復路走査)することにより、1回目の走査露光が行われる。この1回目の走査露光によって、感光基板14上の領域14aに対するパターン露光が行われる。
【0062】1回目の走査露光が終了すると、ステップ32に進み、Y方向駆動装置16Yを駆動することにより、感光基板14をY方向にステップ移動する。ステップ移動の距離はLyである。続いて、ステップ33,34においてステップ29,30と同様の操作を反復し、アライメントマークの検出と、その検出結果に基づくアライメント操作とを行った後、ステップ35において走査露光を行う。第2モードの場合には、往路走査時にアライメント検出を行うため、走査露光は常に復路走査時すなわち走査フレーム30を+X方向へ移動する際にのみ行われる。
【0063】これまで説明してきた走査型露光装置は、走査方向(X方向)と直交するY方向にのみマスク10,50や感光基板14をステップ移動する機構を設けたものであった。しかし、Y方向のみならずX方向にもステップ移動する機能を備えることによって、図9に示すように、感光基板14のY方向だけでなくX方向に対しても並んだ複数の領域14c〜14fにパターン露光を行うことができ、さらに大型の感光基板14にパターン転写することが可能となる。」
キ)図7及び図8には、マスクステージ20が、X方向に長辺を有する形状であることが記載されている。
ク)図7及び図8には、基板ステージ15はY方向に長辺を有する矩形であり、また感光基板14は基板ステージ15の短辺より長い長辺を有する矩形であって、該基板ステージ15上に感光基板14が、感光基板14の長辺方向がY方向(基板ステージ15の長辺方向)とほぼ一致するようにして、配設されることが記載されている。
ケ)図7及び図8には、感光基板14上で、領域14aと領域14bとが、Y方向に隣り合う位置関係であることが記載されている

上記記載事項によると、刊行物1には、
「パターンが形成されたマスク10を保持した第1の方向(X方向)に長辺を有するマスクステージ20と、矩形の感光基板14を保持した第2の方向(Y方向)に長辺を有する矩形の基板ステージ15とを第1の方向(X方向)に移動させて前記マスク10のパターンを前記感光基板14に露光する露光方法において、
前記基板ステージ15の短辺より長い長辺を有する感光基板14を、該感光基板14の長辺方向が基板ステージ15の長辺方向すなわち第2の方向(Y方向)とほぼ一致するようにして前記基板ステージ15上に配設するステップと、
前記マスクステージ20と前記基板ステージ15とを前記第1の方向(X方向)に移動させて前記感光基板14の領域14aに前記マスク10のパターンを露光するステップと、
前記基板ステージ15を前記第1の方向(X方向)とほぼ直交する第2の方向(Y方向)に移動させるステップと、
前記マスクステージ20と前記基板ステージ15とを前記第1の方向(X方向)に移動させて、前記第2の方向(Y方向)に前記領域14aと隣り合う前記感光基板14の領域14bに前記マスク10のパターンを露光するステップとを含む露光方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

さらに刊行物1には、次のコ)の記載がある。
コ)図7には、パターン領域10aが、X方向に長辺を有する形状であることが記載されている。

(3)対比
本願補正発明と上記引用発明とを比較する。
引用発明の「第1の方向(X方向)」、「感光基板14」、「領域14a」、「第2の方向(Y方向)」、及び「領域14b」は、本願補正発明の「第1方向」、「基板」、「第1領域」、「第2方向」、及び「第2領域」に相当する。
また、引用発明の「隣り合う」と、本願補正発明の「隣接する」とは、「隣り合う」という上位概念で一致する。
さらに、引用発明の「基板ステージ15」と、本願補正発明の「基板ホルダー」とは、「基板が配設される部材」という上位概念で一致する。
したがって、両者は、
「パターンが形成されたマスクを保持した第1方向に長辺を有するマスクステージと、矩形の基板を保持した、長辺を有する矩形の『基板が配設される部材』とを、第1方向に移動させて前記マスクのパターンを前記基板に露光する露光方法において、
前記『基板が配設される部材』の短辺より長い長辺を有する基板を、前記『基板が配設される部材』上に配設するステップと、
前記マスクステージと前記『基板が配設される部材』とを前記第1方向に移動させて前記基板の第1領域に前記マスクのパターンを露光するステップと、
前記『基板が配設される部材』を前記第1方向とほぼ直交する第2方向に移動させるステップと、
前記マスクステージと前記『基板が配設される部材』とを前記第1方向に移動させて、前記第2方向に前記第1領域と隣り合う前記基板の第2領域に前記マスクのパターンを露光するステップとを含むことを特徴とする露光方法。」(「基板が配設される部材」については、「基板」それ自体との記述上の区別をわかりやすくするため、当審で『』を附した。)
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明においては、パターンが「第1方向に長辺を有する」のに対し、引用発明では、このような限定がなされていない点。

[相違点2]
『基板が配設される部材』として、本願補正発明においては基板ホルダーを限定されているのに対し、引用発明では基板ホルダーに関する限定が無く基板ステージについて限定されており、
また、『基板が配設される部材』が長辺を有するのが、本願補正発明においては第1方向(X方向)であるのに対し、引用発明においては第2方向(Y方向)であり、
基板を『基板が配設される部材』上に配設する際の、基板の方向と『基板が配設される部材』の方向との関係が、本願補正発明においては基板ホルダーの「短辺方向」にほぼ一致するように配設されるのに対して、引用発明では、「長辺方向」にほぼ一致するようにして配設される点。

[相違点3]
本願補正発明においては、第1領域と第2領域とは第2方向に隣接しているのに対し、引用発明では、隣り合ってはいるが、「隣接」との限定はなされていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
上記「(2)コ)」に摘記したように、刊行物1には、パターン領域10aがX方向に長辺を有する形状であることが記載されているところ、パターン自体も「第1方向に長辺を有する」ことは、当業者にとり容易に推察できることである。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、刊行物1に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである

[相違点2について]
第一に、『基板が配設される部材』として、本願補正発明においては基板ホルダーを限定しているのに対し、引用発明では基板ホルダーに関する限定が無く基板ステージについて限定している点について検討すると、刊行物1に基板ホルダーについての記載がなくとも、刊行物の図7に示される矩形の基板ステージ15と矩形の基板14との間に、矩形の基板ホルダを介するようにすることは、周知技術(特開平9-22933号公報(図2)及び特開平11-233428号公報(図1)参照)より、当業者が容易に想到できることである。
第二に、また、『基板が配設される部材』が長辺を有するのが、本願補正発明においては第1方向(X方向)であるのに対し、引用発明においては第2方向(Y方向)であり、
基板を『基板が配設される部材』上に配設する際の、基板の方向と『基板が配設される部材』の方向との関係が、本願補正発明においては基板ホルダーの「短辺方向」にほぼ一致するように配設されるのに対して、引用発明では、「長辺方向」にほぼ一致するようにして配設される点については、まず、基板の配設方向を、第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)との関係でみれば、本願補正発明も引用発明もともに、基板の長辺方向が第2方向(Y方向)に配設され、この点格別相違がない。つまり、本願補正発明が引用発明と相違するのは、要するに、本願補正発明が、第1方向に長辺を有する基板ホルダーを使用しているのに(基板の長辺方向が一部基板ホルダーよりはみ出すことになろうとも)基板を上記方向で配設していることにある。
このことについて検討すると、まず、基板ホルダーについて、第1方向が長辺のものを使用することは、状況に応じて当業者が適宜成し得る設計事項に過ぎず(第1方向が長辺の基板ホルダー自体は、原査定の備考に引用された特開平11-212266号公報(図3)に記載されているように周知である。)、格別のことではない。
そして、基板ホルダー上に、基板の長短辺をどの方向に配設するかは、当業者が必要に応じて適宜選択できる設計事項に過ぎず、その効果も格別のものではない。また、本願補正発明で、基板ホルダーの短辺より基板の長辺が長く、基板の長辺方向が一部基板ホルダーよりはみ出す形で配設されることになる点も、要するに、単に寸法が足りず結果的にはみ出ることになるに過ぎず、本願明細書の発明の詳細な説明を参照しても、はみ出すことそれ自体を目的とするもの、言い換えればはみだすことそれ自体に何らかの効果を期待するというものではない。

ここで、請求人は、平成16年3月17日付け補正書(審判請求理由)の「【本願発明が特許されるべき理由】」において、
「以上のような構成において本願発明の露光方法を適用すれば、図5に示すように、走査露光の回数を低減することができ、スループットが向上するという効果が得られます。ここで、走査露光の回数の低減によりスループットを向上するとは、具体例では、従来技術では図9に示すように4回の走査露光を必要としていたものが、本願発明の方法によれば図5に示すように3回の走査露光で済むこととなり、処理速度が向上されることとなります(第0035段落参照)。また、本願発明では、基板の長辺を基板ホルダーの短辺に平行にして配設するので、基板ホルダーを含む露光装置を大型化する必要もありません(第0037段落[発明の効果]参照)。・・・
・・・引用文献1〜3においては、走査露光の回数を低減してスループットを向上するという課題意識(第0007段落参照)が記載も示唆もされていません。一方、本願発明は、そのような課題意識の下、マスクステージ、マスク上のデバイスパターン、基板ホルダー及び基板それぞれの配設方向、並びに走査露光の方向を上記のように組み合わせることにより、走査露光の回数を低減してスループットを向上するという優れた効果を奏することができたものです。」
と主張している。しかし、上記主張の「図5に示すように、走査露光の回数を低減することができ、スループットが向上するという効果」は、本願明細書及び図面の記載をみても、パターン、基板、露光装置の一回の走査露光範囲等の各寸法が、図5にかかる実施例に示されるような、特定の数値関係であってこそ、「従来技術では図9に示すように4回の走査露光を必要としていたものが、本願発明の方法によれば図5に示すように3回の走査露光で済むこととなり、処理速度が向上されること」となったものであり、強いて言うならば、恣意的に設定した条件下で発生する問題点を解決する方法を提示するものでしかない。上記主張にある「マスクステージ、マスク上のデバイスパターン、基板ホルダー及び基板それぞれの配設方向、並びに走査露光の方向を上記のように組み合わせ」たことでは、各寸法が上記特定の数値関係で無い場合は、「走査露光の回数を低減してスループットを向上するという優れた効果」を奏しないのみならず、各寸法の数値関係によっては、逆に走査露光の回数を増やしスループットを悪化させるものであることは、当業者には明らかである。しかるに、本願補正発明は、上記のような各寸法の数値関係について限定しているものではない。
このように、本願補正発明は、上記主張のいう「走査露光の回数を低減することができ、スループットが向上するという効果」を奏するための発明特定事項を有しておらず、上記主張は採用できない。

したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、刊行物1に記載の発明及び周知技術より容易に想到でき、かつ格別の相違ではない。

[相違点3について]
「隣接」と限定するかどうかは、格別な相違ではない。この点、本願の【発明の実施の形態】を示す、図面を参照しても、その図1及び図2に図示されている、露光領域14a、14b、14c、14dのY方向(第2方向)の位置関係は、刊行物1の図7に記載された露光領域14a、14bのY方向の位置関係と格別相違するところがなく、また明細書でさらに具体的に「画素領域周辺の回路パターンも含めた寸法が279.7mm×347.2mmである17インチSXGAのパタ-ンを基板14に6面取りして露光する露光方法」(【0024】段落より)の例を参照しても、【0033】段落に「ステップ移動の距離は、17インチSXGAの液晶ディスプレイパネルの短辺の長さ(図示した例の場合、279.7mm)とほぼ同じ長さである(ステップ26)。」との記載、すなわち『ほぼ』同じ長さとの記載までしかなされておらず、すなわち、明細書及び図面を参照しても、「隣接」という限定に、例えば幾何学的厳密さで接するものというような、格別の意味付けがない。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、格別の相違ではない。

したがって、相違点1乃至3に係る本願補正発明の発明特定事項は、刊行物1に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものか、あるいは格別の相違ではない。また、それによる作用効果も、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年3月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「パターンが形成されたマスクを保持したマスクステージと矩形の基板を保持した矩形の基板ホルダーとを第1方向に移動させて前記マスクのパターンを前記基板に露光する露光方法において、
前記基板ホルダーの短辺より長い長辺を有する基板を、該基板の長辺方向が前記基板ホルダーの短辺方向にほぼ一致するようにして前記基板ホルダー上に配設するステップと、
前記マスクステージと前記基板ホルダーとを前記第1方向に移動させて前記基板の第1領域に前記マスクのパターンを露光するステップと、
前記基板ホルダーを前記第1方向とほぼ直交する第2方向に移動させるステップと、
前記マスクステージと前記基板ホルダーとを前記第1方向に移動させて、前記第2方向に前記第1領域と隣接する前記基板の第2領域に前記マスクのパターンを露光するステップとを含むことを特徴とする露光方法。」

(2)刊行物に記載された発明
原査定で引用された刊行物、及びその記載事項は上記「2.(2)」で述べたとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から、「パターン」、「マスクステージ」、及び「矩形の基板ホルダー」それぞれについての限定事項である、「第1方向に長辺を有する」との構成を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらにほかの構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-27 
結審通知日 2006-02-28 
審決日 2006-03-13 
出願番号 特願平11-365004
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 575- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多田 達也岩本 勉  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 前川 慎喜
井口 猶二
発明の名称 露光方法  
代理人 平木 祐輔  

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