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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1135471
審判番号 不服2005-12336  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-30 
確定日 2006-04-27 
事件の表示 平成 9年特許願第148223号「触媒コンバータ用メタル担体およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-337481〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年6月5日の出願であって、その請求項に係る発明は、拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成16年9月3日付け手続補正書により補正され、拒絶査定がなされ、その後、拒絶査定不服審判が請求し、その審判の請求の日から法定期間内の平成17年8月1日付け手続補正書により補正されたものである。

2.平成17年8月1日付けの手続補正についての補正却下の決定

[結論]
平成17年8月1日付けの手続補正による補正を却下する。

[理由]
2-1.平成17年8月1日付けの手続補正の内容
平成17年8月1日付けの手続補正(以下、「審判請求時補正」という。)は、明細書の特許請求の範囲並びに発明の詳細な説明【0011】及び【0015】の記載について下記のとおりに補正するものである。

審判請求時補正前の明細書(平成16年9月3日付け手続補正書により補正された明細書)の特許請求の範囲の記載について、
「【請求項1】 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔または波箔を2周以上巻き付けてなるシェルが形成され、該シェルを形成する平箔同士または波箔同士が拡散接合で一体に接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項2】 前記メタルハニカム体の平箔と波箔の接触部には、該メタルハニカム体のガス入側端部から離れた位置を起点とする長さ範囲で、全周にわたって少なくとも1周分、少なくとも1箇所にハニカム非接合部が形成され、前記接触部のその他の部位は拡散接合により接合されていることを特徴とする請求項1記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項3】 前記シェルが、前記ハニカム非接合部のガス入側端部よりもガス出側を起点として形成されていることを特徴とする請求項2記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項4】 前記シェルと前記外筒の境界には、該境界のガス入側端部を起点とする長さ範囲の境界非接合部、および該ガス入側端部よりもガス出側を起点とする長さ範囲の境界接合部が形成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項5】 前記シェルの厚さが100μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項6】 前記拡散接合が、1100℃以上1250℃以下の温度範囲で真空熱処理によりなされ、前記メタルハニカム体の耐熱性および耐酸化性が向上していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項7】 前記拡散接合が、前記メタルハニカム体の箔厚(tμm)に応じて(1)式の範囲の温度(T℃)で真空熱処理によりなされ、前記メタルハニカム体の耐熱性および耐酸化性が向上していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体。
1100≦T≦1.7×t+1165 (1)
【請求項8】 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔または波箔を追加で巻き付けることにより、該平箔または該波箔を2周以上巻き付けてなるシェルを形成し、前記外筒に組み込んだ後、接合処理を行うことにより、前記メタルハニカム体の前記平箔と前記波箔の接触部を接合するとともに、前記シェルを形成する平箔同士または波箔同士を拡散接合で一体に接合することを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項9】 前記帯状の平箔と前記帯状の波箔を重ねて巻回しメタルハニカム体とする際、該平箔と該波箔の間に、少なくとも1箇所、少なくとも1周分の長さにわたり、帯状材のガス入側となる幅端部から離れた位置を起点とする幅範囲に、拡散防止剤を介在させて巻回することで、接合処理後にハニカム非接合部を形成することを特徴とする請求項8記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項10】 前記追加で巻き付ける平箔または波箔の、ガス入側となる幅端部を、前記拡散防止剤を介在させた部位のガス入側となる幅端部よりもガス出側とすることを特徴とする請求項9記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項11】 前記シェルが形成されたメタルハニカム体を前記外筒に組み込む前に、請求項4記載のメタル担体における境界非接合部となる前記シェルの外周面の部位と、該境界非接合部となる前記外筒の内周面の部位の、一方または双方に拡散防止剤を付着させ、かつ請求項4記載のメタル担体における境界接合部となる前記シェルの外周面の部位と、該境界接合部となる前記外筒の内周面の部位の、一方または双方にロウ材を付着させることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項12】 前記シェルの厚さを100μm以上500μm以下とすることを特徴とする請求項8〜11の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項13】 前記拡散接合を、1100℃以上1250℃以下の温度範囲で真空熱処理により行うことで、前記メタルハニカム体の耐熱性および耐酸化性を向上させることを特徴とする請求項8〜12の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項14】 前記拡散接合を、前記メタルハニカム体の箔厚(tμm)に応じて(1)式の範囲の温度(T℃)で真空熱処理により行うことで、前記メタルハニカム体の耐熱性および耐酸化性を向上させることを特徴とする請求項8〜13の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
1100≦T≦1.7×t+1165 (1)」とあるのを、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔を2周以上巻き付けてなるシェルが形成され、該シェルを形成する平箔同士が拡散接合で一体に接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項2】 前記メタルハニカム体の平箔と波箔の接触部には、該メタルハニカム体のガス入側端部から離れた位置を起点とする長さ範囲で、全周にわたって少なくとも1周分、少なくとも1箇所にハニカム非接合部が形成され、前記接触部のその他の部位は拡散接合により接合されていることを特徴とする請求項1記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項3】 前記シェルが、前記ハニカム非接合部のガス入側端部よりもガス出側を起点として形成されていることを特徴とする請求項2記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項4】 前記シェルと前記外筒の境界には、該境界のガス入側端部を起点とする長さ範囲の境界非接合部、および該ガス入側端部よりもガス出側を起点とする長さ範囲の境界接合部が形成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項5】 前記シェルの厚さが100μm以上500μm以下であることを特徴
とする請求項1、2、3または4記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項6】 前記拡散接合が、1100℃以上1250℃以下の温度範囲で真空熱処理によりなされ、前記メタルハニカム体の耐熱性および耐酸化性が向上していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体。
【請求項7】 前記拡散接合が、前記メタルハニカム体の箔厚(tμm)に応じて(1)式の範囲の温度(T℃)で真空熱処理によりなされ、前記メタルハニカム体の耐熱性
および耐酸化性が向上していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の触媒コ
ンバータ用メタル担体。
1100≦T≦1.7×t+1165 (1)
【請求項8】 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔を追加で巻き付けることにより、該平箔を2周以上巻き付けてなるシェルを形成し、前記外筒に組み込んだ後、接合処理を行うことにより、前記メタルハニカム体の前記平箔と前記波箔の接触部を接合するとともに、前記シェルを形成する平箔同士を拡散接合で一体に接合することを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項9】 前記帯状の平箔と前記帯状の波箔を重ねて巻回しメタルハニカム体とする際、該平箔と該波箔の間に、少なくとも1箇所、少なくとも1周分の長さにわたり、帯状材のガス入側となる幅端部から離れた位置を起点とする幅範囲に、拡散防止剤を介在させて巻回することで、接合処理後にハニカム非接合部を形成することを特徴とする請求項8記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項10】 前記追加で巻き付ける平箔の、ガス入側となる幅端部を、前記拡散防止剤を介在させた部位のガス入側となる幅端部よりもガス出側とすることを特徴とする請求項9記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項11】 前記シェルが形成されたメタルハニカム体を前記外筒に組み込む前に、請求項4記載のメタル担体における境界非接合部となる前記シェルの外周面の部位と、該境界非接合部となる前記外筒の内周面の部位の、一方または双方に拡散防止剤を付着させ、かつ請求項4記載のメタル担体における境界接合部となる前記シェルの外周面の部位と、該境界接合部となる前記外筒の内周面の部位の、一方または双方にロウ材を付着させることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項12】 前記シェルの厚さを100μm以上500μm以下とすることを特徴とする請求項8〜11の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項13】 前記拡散接合を、1100℃以上1250℃以下の温度範囲で真空熱処理により行うことで、前記メタルハニカム体の耐熱性および耐酸化性を向上させることを特徴とする請求項8〜12の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
【請求項14】 前記拡散接合を、前記メタルハニカム体の箔厚(tμm)に応じて(1)式の範囲の温度(T℃)で真空熱処理により行うことで、前記メタルハニカム体の耐熱性および耐酸化性を向上させることを特徴とする請求項8〜13の何れか1項記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
1100≦T≦1.7×t+1165 (1)」と補正する。

審判請求時補正前の明細書(平成16年9月3日付け手続補正書により補正された明細書)の発明の詳細な説明【0011】の記載について、
「【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明メタル担体は、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔または波箔を2周以上巻き付けてなるシェルが形成され、該シェルを形成する平箔同士または波箔同士が拡散接合で一体に接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体である。」とあるのを、
「【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明メタル担体は、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔を2周以上巻き付けてなるシェルが形成され、該シェルを形成する平箔同士が拡散接合で一体に接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体である。」と補正する。

審判請求時補正前の明細書(平成16年9月3日付け手続補正書により補正された明細書)の発明の詳細な説明【0015】の記載について、
「【0015】
上記目的を達成するための本発明法は、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔または波箔を追加で巻き付けることにより、該平箔または該波箔を2周以上巻き付けてなるシェルを形成し、前記外筒に組み込んだ後、接合処理を行うことにより、前記メタルハニカム体の前記平箔と前記波箔の接触部を接合するとともに、前記シェルを形成する平箔同士または波箔同士を拡散接合で一体に接合することを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法である。」とあるのを、
「【0015】
上記目的を達成するための本発明法は、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔を追加で巻き付けることにより、該平箔を2周以上巻き付けてなるシェルを形成し、前記外筒に組み込んだ後、接合処理を行うことにより、前記メタルハニカム体の前記平箔と前記波箔の接触部を接合するとともに、前記シェルを形成する平箔同士を拡散接合で一体に接合することを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法である。」と補正する。

2-2.新規事項の有無・目的の適否
審判請求時補正は、上記の補正前の記載からみて、明らかに新規事項を追加するものではない。
加えて、審判請求時補正の特許請求の範囲についてする補正は、請求項1の補正前の「平箔または波箔を」及び「平箔同士または波箔同士が」との記載を、補正後には「平箔を」及び「平箔同士が」と改め、請求項8の補正前の「平箔または波箔を」及び「平箔同士または波箔同士を」との記載を、補正後には「平箔を」及び「平箔同士を」と改め、請求項10の補正前の「平箔または波箔の」との記載を、補正後には「平箔の」と改める補正といえるので、審判請求時補正の特許請求の範囲についてする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした補正とである。
したがって、審判請求時補正の特許請求の範囲についてする補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とした補正である。

2-3.独立特許要件について
上記のとおり、審判請求時補正の特許請求の範囲についてする補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とした補正であるので、補正後の特許請求の範囲請求項1〜14に係る発明が、独立して特許を受けることができるものであるかを、以下、検討する。
なお、補正後の特許請求の範囲請求項1〜14に係る発明は、上記「2-1.平成17年8月1日付けの手続補正の内容」に記載したとおりのものであるが、以下に、補正後の請求項1に係る発明を再掲する。(以下、「補正後本願発明1」という。)
【請求項1】 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔を2周以上巻き付けてなるシェルが形成され、該シェルを形成する平箔同士が拡散接合で一体に接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体。

2-3-1.刊行物に記載された事項
本願出願前に明らかに頒布された刊行物である特開平4-156950号公報(原審の拒絶理由通知書における引用文献2、以下、「引用刊行物」という。)には、下記の事項が記載されている。

(イ)「1.重ね合せ状態で相互に溶接接合された平板状の第1フォイルと波板状の第2フォイルとを順次渦巻き状に多段積層するとともに該第1フォイルと第2フォイルの表面にそれぞれ触媒コート層が形成された触媒担体を外筒部材内に嵌挿固定してなる排気ガス浄化用触媒であって、上記触媒担体の外周部においては上記第1フォイルのみが複数回積層されて重合部を形成しているとともに、該重合部が上記外筒部材に対して溶接接合されていることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。」(第1頁特許請求の範囲第1項)
(ロ)「この触媒担体2は、基本的には形状の異なる2枚のフォイル、即ち、平板状の第1フォイル21と波板状の第2フォイル22(ともに約50μ程度の厚さをもつ)で構成されている。そして、その製造に際しては、先ず、第2図に示すように、触媒成分のコーティング処理がされていない無処理状態の第1フォイル21と第2フォイル22を2枚重ねとし、且つ該第2フォイル22を内側とした状態でこれらを一体的に渦巻き状に順次積層してハニカム構造をもつ所定径の積層体10を得る。
この場合、この積層体10の成形性維持の観点から、その積層作業時に第1フォイル21と第2フォイル22の接触部(即ち、第1フォイル21と第2フォイル22の山部及び谷部との接触点)をスポット溶接によって順次溶接接合する(第2図及び第3図において点aて示している)。
また、この第1フォイル21と第2フォイル22の積層終端部(即ち、積層体10の外周部)においては、本願発明を適用して第2図及び第5図に拡大図示するように、第2フォイル22の積層を止めて、第1フォイル21のみを複数回(この実施例においては5回)積層し、この第1フォイル21のみの積層部分を重合部2aとしている。なお、この重合部2a部分においてもその成形性維持の観点から相互に重合する第1フォイル21相互間をスポット溶接にて接合している(第3図参照)。このように重合部2aを設けることによって、積層体10(延いては、後述の触媒担体2)の剛性がその外周部において高められることから、例えば従来構造のもののように触媒担体の外周部まで第1フォイル21と第2フォイル22が積層されてハニカム構造を構成している場合に比して、その強度性能の向上が図れるものである。」(第4頁左上欄15行〜左下欄8行)
(ハ)「(発明の効果)
従って、本願各発明においてはそれぞれ次のような効果が得られる。
1(原文は、○の中に1) 請求項1記載の発明にかかる排気ガス浄化用触媒によれば、重合部を設けることによって、触媒担体と外筒部材とを溶接接合する場合における溶接熱による触媒コート層の熱劣化及び熱衝撃の負荷が可及的に抑制されることから、より高い排気浄化性能及び強度上の信頼性を確保することができる。
また、重合部を形成したことによって触媒担体の強度性能が高められることからも、装置の信頼性の向上が図られることになる。」(第3頁左下欄4〜16行)
(ニ)第1図には、「本願発明の実施例にかかる排気ガス浄化用触媒を備えた自動車用エンジンの触媒コンバータの要部断面図」が図示され、第2図〜第4図には、「第1図に示した触媒の製造工程説明図」が図示される。

2-3-2.対比・判断
補正後本願発明1について検討する。
上記摘示箇所(イ)、(ロ)及び(ニ)を整理すると、引用刊行物には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されるといえる。
「平板状の第1フォイルと波板状の第2フォイルを2枚重ねし、これらを一体的に渦巻き状に順次積層し、第1フォイルと第2フォイルとの接触部をスポット溶接により順次溶接接合したハニカム構造を持つ積層体に触媒コート層が形成された触媒担体を外筒部材内に嵌挿固定してなる排気ガス浄化用触媒において、前記積層体の外周部においては、前記第1フォイルのみを複数回積層して重合部とし、この重合部の重合する前記第1フォイル相互間をスポット溶接にて接合し、前記重合部と前記外筒部材を溶接接合した触媒コンバータに用いる排気ガス浄化用触媒」

ここで、補正後本願発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「フォイル」とは「金属を薄く延ばしたもの。箔。」との意味であるから、引用発明の「平板状の第1フォイル」及び「波板状の第2フォイル」は、補正後本願発明1の「帯状の平箔」及び「帯状の波箔」に相当する。また、引用発明の「ハニカム構造を持つ積層体」は、前記したように金属である箔を渦巻き状に順次積層したものであるから、補正後本願発明1の「メタルハニカム体」に相当する。また、引用発明の「外筒部材」は、前記したように金属である箔に溶接接合していることからいって、その材質は、当然、金属であるので、本願発明の「金属製外筒」に相当する。また、引用発明では、積層体のみを触媒担体と称しているが、この積層体を金属製の外筒部材内に嵌挿固定してなる物が、触媒を担持しているとも言えるので、斯かる物は、本願発明の「メタル担体」に相当する。また、引用発明の「重合部」は、補正後本願発明1の「シェル」に相当する。してみれば、両者は、
「金属からなる帯状の平箔と、金属からなる帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔を2周以上巻き付けてなるシェルが形成され、該シェルを形成する平箔同士が接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体。」である点で一致し、以下の点で一見相違する。
相違点1:補正後本願発明1では、帯状の平箔が「耐熱性ステンレス鋼」からなるのに対し、引用発明では、金属であり、その種類が限定されていない点
相違点2:補正後本願発明1では、帯状の波箔が「該平箔を波付け加工したもの」であるの対し、引用発明では、金属ではあるが、波箔に加工する前の箔が平箔と同一と限定されていない点
相違点3:補正後本願発明1では、シェルを形成する平箔同士が「拡散接合」で一体に接合されているの対し、引用発明では、「スポット溶接」にて接合されている点

そこで、上記相違点1、2を検討するに、当該技術分野では、箔の材質が耐熱性ステンレス鋼であるとの事項は、単に通常のものを用いるとの事項にすぎず、また、波箔を、平箔を加工したものとすることは、通常に行われていることにすぎないので(必要なら、特開平5-220405号公報;原審の拒絶理由通知書における引用文献1などを参照)、これらの点は、実質的なものではない。
次いで、上記相違点3を検討するに、引用発明では、平箔と波箔の接触部及びシェルを形成する平箔同士を接合するに際して、スポット溶接で行っているが、当該技術分野においては、平箔と波箔の接触部を拡散接合で接合することも周知の技術(必要なら、特開平8-108077号公報、特開平8-38912号公報、特開平7-108334号公報、特開平8-257361号公報等を参照)である。してみれば、引用発明の平箔と波箔の接触部をスポット溶接にて接合することに代えて、上記周知の技術を採用して斯かる接触部を拡散接合で接合し、併せて、同時に平箔同士も一体に拡散接合することは、平箔と波箔の接触部は拡散接合し得るが平箔同士が接触するところでは拡散接合し得ないと云った技術的な阻害理由もない以上、当業者が容易に想到するものである。また補足するに、本願明細書発明の詳細な説明においても、同時に平箔同士も拡散接合するにあたり、特段の技術的な工夫を施したなどの技術的事項は何等記載されていない。
加えて、斯かる変更による効果も、そもそも引用発明における重合部の効果が、摘示箇所(ハ)に「重合部を形成したことによって触媒担体の強度性能が高められることからも、装置の信頼性の向上が図られることになる。」と記載されるものであることからいって、この効果と比べて格別顕著であるものとも認められない。
してみれば、補正後本願発明1は、引用刊行物に記載された発明及び周知の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、補正後本願発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

2-4.まとめ
以上のとおり、平成17年8月1日付けの手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、特許法第159条で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきである。

3.本願発明
上記のとおり、平成17年8月1日付けの手続補正は、上記の決定をもって却下されたので、斯かる補正前の本願の請求項に係る発明は、平成16年9月3日付け手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲請求項1〜14に記載されるとおりのものである。
なお、斯かる補正前の特許請求の範囲請求項1〜14に係る発明は、上記「2-1.平成17年8月1日付けの手続補正の内容」に記載の補正前の特許請求の範囲請求項1〜14のとおりのものであるが、以下に、請求項1に係る発明を再掲する。(以下、「本願発明1」という。)
【請求項1】 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、該平箔を波付け加工した帯状の波箔とを重ねて渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記メタルハニカム体の外周に、平箔または波箔を2周以上巻き付けてなるシェルが形成され、該シェルを形成する平箔同士または波箔同士が拡散接合で一体に接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体。

4.原審における拒絶理由通知書の概要
原審における拒絶理由通知書の概要は、本願は、以下の理由1又は理由2により、特許を受けることができないというものである。

理由1:本願の請求項1、5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本願の請求項1、2、5〜8、9、10,13〜16に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平5-220405号公報
引用文献2:特開平4-156950号公報
引用文献3:実願平1-121598号(実開平3-61113号)のマイクロフィルム
引用文献4:実願床63-103506号(実開平2-25028号)のマイクロフィルム

5.当審の判断
本願発明1について検討するに、本願発明1の「平箔または波箔を」及び「平箔同士または波箔同士が」との記載を、「平箔を」及び「平箔同士が」と改めたものが、上述の補正後本願発明1であって、この補正後本願発明1は、上記「2-3.独立特許要件について」で述べたように特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本願発明1は、上記「2-3.独立特許要件について」で述べた理由と同様の理由により特許を受けることができないものであることは明らかである。
そして、上記「2-3.独立特許要件について」における引用刊行物とは、上記の引用文献2である。
してみれば、本願発明1は、引用文献2に記載された発明及び周知の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものあるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.まとめ
したがって、本願発明1は、上記引用文献に記載された発明及び周知の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものあるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-15 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-15 
出願番号 特願平9-148223
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 繁田 えい子岡田 隆介安齋 美佐子  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 鈴木 毅
野田 直人
発明の名称 触媒コンバータ用メタル担体およびその製造方法  
代理人 津波古 繁夫  
代理人 矢葺 知之  

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