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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01D
管理番号 1135499
審判番号 不服2002-16238  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-26 
確定日 2006-04-27 
事件の表示 平成 5年特許願第193174号「エアフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 1月27日出願公開、特開平 7- 24235〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件発明
本願は、平成5年7月7日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年1月12日付け手続き補正書により補正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、以下のものと認める(以下「本件発明」という。)。
「【請求項1】断面角型の樋状の薄鋼板を打抜き成形した帯状体の折り曲げ部となる位置に、それぞれV字状の切り欠き部を、その頂点を正面部と背面部の裏側に位置する各折り曲げ線よりも1〜1.5mm程度正面部側と背面部側となるように切り欠いて設け、これら切り欠き部を介して前記帯状体を枠状に折り曲げるようにすると共に前記帯状体の端部を接合して形成したフィルタ支持枠にろ材を収容したことを特徴とするエアフィルタ。」

2.引用文献及び引用文献の記載
当審における拒絶の理由で引用した実願平1-112153号(実開平3-54722号)のマイクロフィルム(平成3年5月27日公開、以下「引用文献1」という。)、実願昭55-039661号(実開昭56-141486号)のマイクロフィルム(昭和56年10月26日公開、以下「引用文献2」という。)、及び、野沢健助著 板金工作法 日刊工業新聞社発行 昭和49年4月30日 第14版 第51-52頁(以下「引用文献3」という。)には以下の事項が記載されている。

引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-ア)「換気扇の室内側の開口面に着脱自在に装着される飾枠の周辺部に固着されるフィルタ支持枠と、フィルタ支持枠に保持される網の目状の開口部を有し、フィルタとして作用するラスメタル板とからなり、上記フィルタ支持枠を飾枠の上辺を除く3辺に固着した、断面コ字状をした樋状部材によって構成し、このフィルタ支持枠内に複数枚のラスメタル板を積層状態でスライド式に収納するようにしたことを特徴とする換気扇用フィルタ」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
(1-イ)「上記フィルタ支持枠(21)に収納されるラスメタル板(10)の周縁部には、第4図に示す如く、帯状板(13)を被嵌させてあり、ラスメタル板(10)のフィルタ支持枠(21)内への挿入が容易に行えるようにしてある。」(第10頁第10行-第14行)
(1-ウ)「フィルタ支持枠(21´)によって支持されるラスメタル板(10)は、第1の実施例と同様、周縁部に帯状板(13)を被嵌させてあると共に、第8図に示す如く、上辺中央部に、上記ボルト(44)が貫通する貫通孔(14)が設けてある。」(第13頁第19行-第14頁第4行)
(1-エ)第4図として上記摘示事項(1-イ)の帯状板が被嵌させてあるラスメタル板が示されている。
(1-オ)第7図として上記摘示事項(1-ウ)の帯状板が被嵌させてあるラスメタル板が示されている。

引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-ア)「電子処理装置や電気通信機用筐体の前面、後面に使用される通信機用カバーにおいて、帯電防止対策を施されたプラスチック材による矩形カバー本体とその外縁に取付られ断面がコの字形の一本金属素材を前記カバー本体の隅の位置で対向する肉の部分を切欠き曲げて形成される金属補強枠とより成ることを特徴とする通信機用カバー。」(実用新案登録請求の範囲)
(2-イ)「第4図は本考案におけるカバー本体を補強するための断面コの字形のアルミサッシ等から成る一本の金属素材で、90度に折曲げるためカバー本体の隅の部位相当位置で対向する肉の部分7を切欠いている。・・・(略)・・・なおカバーとカバー間の塞き板が必要でない場合は四辺を一本の金属素材で切欠き、曲げた補強枠を形成するか、又は二辺を一本の金属素材で切欠き、曲げた補強枠を対として構成することも可能である。本考案による通信機用カバーは、以上説明したようにカバー本体の隅の部位で切欠き曲げられた補強枠を形成することにより、補強枠の均質性のほか組み立て工数の低減および部品管理工数の低減に寄与することができる」(第3頁第15行-第4頁第14行)
(2-ウ)図4,5,6には、一本の断面コの字形の金属素材を切欠き、曲げて補強枠を形成することが示されている。

引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-ア)「3.8 1本アングルよりの枠組み
この方法は,アングルに捩れを生じたとき,または,その修正に手間を要する。特に長尺の場合に,はなはだしいからむしろ2本,または4本としたほうがよい。接合個所が一個所なので接合方法として,溶接を採用した場合にひずみの発生が比較的すくなくてすむ。」(第51頁、「3.8」の欄)
(3-イ)第3・4図、第3・5図、第3・6図には、枠組を1本のアングルにV字状の切り欠きを設けて形成すること、V字状の切り欠きの頂点がアングルの角の部分に達していないことが示されている。

3.対比・判断
上記摘示事項(1-ア)には「フィルタとして作用するラスメタル板」を有し、「フィルタ支持枠内に複数枚のラスメタル板を積層状態でスライド式に収納するようにしたことを特徴とする換気扇用フィルタ。」が記載されており、摘示事項(1-イ)(1-ウ)には、「上記フィルタ支持枠(21)に収納されるラスメタル板(10)の周縁部には、第4図に示す如く、帯状板(13)を被嵌させてあり、ラスメタル板(10)のフィルタ支持枠(21)内への挿入が容易に行えるようにしてある。」、「フィルタ支持枠(21´)によって支持されるラスメタル板(10)は、第1の実施例と同様、周縁部に帯状板(13)を被嵌させてあると共に、第8図に示す如く、上辺中央部に、上記ボルト(44)が貫通する貫通孔(14)が設けてある。」と記載されている。
ここで、これらの記載を本件発明の記載ぶりに則して整理すると、引用文献1には「帯状板が周縁部に被嵌させてあるラスメタル板であって、換気扇用フィルタのフィルタとして作用するラスメタル板」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件発明と引用発明1とを対比する。
後者の「換気扇用フィルタのフィルタ」は、前者の「エアフィルタ」に相当し、後者の「ラスメタル板」はフィルタとして作用することから、前者の「ろ材」に相当し、後者の「帯状板」はラスメタル板の周縁部を被嵌して支持枠への挿入を容易にするものであるから、前者の「フィルタ支持枠」に相当し、該「帯状板」が「周縁部に被嵌されてある」ことは「フィルタ支持枠にろ材を収容した」ことに相当する。
さらに、後者の帯状板の断面形状について検討すると、厨房に用いられるフィルタにおいて、フィルタの周縁部を囲む枠がコ字状断面、即ち断面角型の樋状の金属製のものであることは、例えば、実願昭53-135291号(実開昭55-53522号)のマイクロフィルム、特開平2-160014号公報に開示されているように一般的であるから、後者の「帯状板」は前者の「断面角型の樋状」の「帯状体」に相当するといえる。
そうすると、両者は「断面角型の樋状の帯状体で形成したフィルタ支持枠にろ材を収容したことを特徴とするエアフィルタ」である点で一致するが、以下の点で相違する。

相違点1:本件発明は、断面角型の樋状の帯状体を、薄鋼板を打抜き成形して形成するのに対し、引用発明1は、帯状板の成形方法が不明である点

相違点2:本件発明は、断面角型の樋状の帯状体の折り曲げ部となる位置に、それぞれV字状の切り欠き部を、その頂点を正面部と背面部の裏側に位置する各折り曲げ線よりも1〜1.5mm程度正面部側と背面部側となるように切り欠いて設け、これら切り欠き部を介して前記帯状体を枠状に折り曲げるようにすると共に前記帯状体の端部を接合してフィルタ支持枠を形成するのに対し、引用発明1は、帯状板をどのように被嵌させるか不明である点

上記相違点1について検討する。
金属製の断面角型の樋状の帯状体を、バネ鋼のような薄板を打抜き、折曲げて成形することは、例えば、特開昭60-173421号公報に開示されているように周知である。
してみれば、引用発明1におけるラスメタル板の周縁部に被嵌される断面角型の樋状の帯状板を、薄鋼板を打抜き成形して形成することは当業者が容易に想到しうることである。

次に上記相違点2について検討する。
引用文献2の摘示事項(2-ア)〜(2-ウ)からみて、部品数、組立工数を減らすために、一本の断面コの字形の金属素材に、90度に折曲げるためのV字の切欠きを形成し、折り曲げて補強枠の四辺を形成することは公知であり、その際、端部を接合していることは明らかである。
ここで、引用発明1におけるラスメタル板に被嵌する帯状板は、摘示事項(1-エ)(1-オ)からみて、ラスメタル板の四辺を同様に被嵌するものであり、このように帯状板を被嵌する際に、部品数、組立工数が少ない方が好ましいことは当業者に明らかであるから、引用発明1における帯状板を、断面角型の樋状の帯状体の折り曲げ部となる位置に、それぞれV字状の切り欠き部を設け、これら切り欠き部を介して前記帯状体を折り曲げるようにすると共に、帯状体の端部を接合して形成した枠にラスメタル板を収容することにより被嵌させることは当業者が容易に想到しうることである。
さらに、引用文献3には、上記摘示事項(3-ア)(3-イ)にあるように、アングルの角に達しないV字状の切り欠きを設けることが示されており、該切り欠きを設けた面を正面部又は背面部とすれば、V字の頂点は該正面部側又は背面部側に設けられることが開示されているといえ、その位置をどの程度正面部側又は背面部側とするかは、折り曲げ領域に形成するV字状の切除部が浅く切除されても、深く切除されても端縁の接合がうまくいかないことが当業界において周知であること(例えば、特開平2-41718号公報(第2頁左上欄第13行-右上欄第4行、第6図乃至第8図、第10図乃至第13図))、折り曲げる部材の素材、厚み、さらには折り曲げ方法によって影響を受けると解されることを考慮して、当業者が適宜決定しうる設計的事項である。
そしてその程度をどこを基準として表すかも当業者が適宜決定しうることであり、正面部又は背面部の裏側に位置する折り曲げ線を基準とし、そこから1〜1.5mm程度と限定する点に技術的な困難性は認められない。
この点について、出願人は平成18年1月12日付けの意見書において、引用文献3の摘示事項(3-イ)に示される点線は、板厚であり、且つ正面部と背面部の裏側に位置する折り曲げ線であるとして、V字状の切り欠きの頂点が折り曲げ線に達していると主張しているが、引用文献3のアングルを製造する際に「折り曲げ線」なるものを設けているのか、及び何処に設けているのかは不明であり、仮に出願人のいう正面部又は背面部の裏側に設けたとしても、それがアングルとなった状態で板厚と一致するとは必ずしもいえないから、このような主張は採用することはできない。

そして、上記相違点1,2に係る構成を採用することにより奏される効果は当業者が予測しうる範囲のものである。
特に、上記相違点2におけるV字状の切り欠き部の頂点を、正面部と背面部の裏側に位置する各折り曲げ線よりも1〜1.5mm程度正面部側と背面部側となるように設けることによる効果を検討すると、そもそも本願の発明の詳細な説明には、折り曲げ線に関する明確な定義がなく、また該線から「1〜1.5mm程度」なる曖昧な限定によって、格別顕著な効果が奏されるとは認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1乃至3に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-24 
結審通知日 2006-02-28 
審決日 2006-03-13 
出願番号 特願平5-193174
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰三  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 増田 亮子
野田 直人
発明の名称 エアフィルタ  
代理人 清水 善廣  
代理人 辻田 幸史  
代理人 阿部 伸一  

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