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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1135550
審判番号 不服2003-21558  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-06 
確定日 2006-04-27 
事件の表示 平成9年特許願第18958号「使い捨て体液吸収性着用物品の表面シートおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年8月11日出願公開、特開平10-211232〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年1月31日の出願であって、平成15年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年11月6日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされ、平成15年11月25日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成15年11月25日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年11月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正は、平成15年7月10日付けで補正された明細書をさらに補正するものであり、【特許請求の範囲】の【請求項1】に記載の
「透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在する使い捨て体液吸収性着用物品の前記表面シートであって、
前記表面シートが、着用者の肌に当接する上面とその裏側の下面とを有し、前記上面が、おおむね水平方向へ広がる滑らかな面部と、前記面部において前記下面から前記上面に向かう方向へ逆V字状を呈して立上がっていて一方向へ互いに平行して延びる複数条の隆起部と、前記面部に上端部が開口していて前記上面から前記下面に向かう方向へ延び、かつ、管径が前記上面から前記下面に向かって次第に小さくなるとともに径方向の断面形状が多角形を呈する導液管とを有し、前記導液管が、前記隆起部の延びる方向へ間欠的に配列され、前記隆起部の壁と該隆起部につながる前記導液管の管壁とが、同じ角度で傾斜して一連の平滑面を形成していることを特徴とする前記表面シート。」を、
「透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在する使い捨て体液吸収性着用物品の前記表面シートにおいて、
前記表面シートが、繊維不織布、熱可塑性合成樹脂フィルム、前記繊維不織布と前記合成樹脂フィルムとの積層体のうちのいずれかであって、着用者の肌に当接する上面とその裏側の下面とを有し、前記上面が、おおむね水平方向へ広がる滑らかな面部と、前記面部において前記下面から前記上面に向かう方向へ逆V字状を呈して立ち上がっていて一方向へ互いに平行して延びる複数条の隆起部と、前記上面から前記下面に向かう方向へ延びていて前記隆起部の延びる方向へ間欠的に配列され、かつ、管径が前記上面から前記下面に向かって次第に小さくなるとともに径方向の断面形状が正六角形を呈する多数の導液管とを有し、前記導液管が、前記上面に上端部開口と、前記上面から前記下面へ向かう方向への延出端に下端部開口とを有し、前記隆起部の壁と該隆起部につながる前記導液管の管壁とが、同じ角度で傾斜して一連の平滑面を形成し、親水化処理剤が、前記導液管の下端部開口近傍に塗布されていることを特徴とする前記表面シート。」
と補正することを含むものである。
上記部分の補正は、具体的には、特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表面シート」について、同事項と関連する技術的事項として明細書に記載された「繊維不織布、熱可塑性合成樹脂フィルム、前記繊維不織布と前記合成樹脂フィルムとの積層体のうちのいずれか」という技術的事項により限定的に特定し、同じく発明を特定するために必要な事項である「導液管」の断面形状である「多角形」を同じく技術的事項として記載される「正六角形」という技術的事項により限定的に特定するとともに、「導液管」を導液管に係る技術的事項として記載される、下端部開口近傍に親水化処理剤が塗布すという技術的事項により限定的に特定する補正であり、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更がないものであるので、この部分の補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とした補正に該当し、新規事項を追加するものではない。
そこで、補正後の請求項1にかかる発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、以下に検討する。

(1)補正後の本願発明
補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである(以下、これを「補正発明」という。)

(2)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-302555号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「吸収性物品の表面シート」に関して以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートに関するものであり、より詳しくは、フィット性、風合い、ドライ感及びソフト感等の吸収性物品の表面シートに要求される諸物性が向上した吸収性物品の表面シートに関するものである。」(段落番号【0001】【発明の属する技術分野】)
(b)「……本発明の表面シートでは、アーチ形状をなす上記畝部と、繊維密度が大きく構造的に強固な上記開孔の下端周縁部との作用によって、表面の柔らかさと圧縮に対する形態維持性がバランスし、その結果、ソフト感やクッション性及び表現される風合いが向上する。」(段落番号【0010】【作用】)
(c)「図1及び図2に示す如く、本発明の吸収性物品の表面シート1は、平面部を有しないように多数の畝部2と溝部4とが交互に配列されており、上記畝部2は凸状に湾曲し且つ上記溝部4は凹状に湾曲しており、上記溝部4は間隔をおいて配置された多数の開孔6を有している不織布から成る。」(段落番号【0013】)
(d)「本発明において「不織布」とは、単体の不織布のみならず、不織布同士、不織布及びフィルム、不織布及び紙又は不織布及び他の材料を複合化した種々の未開孔のシートを包含する。」(段落番号【0015】)
(e)「図2及び図3から明らかな通り、本発明の上記畝部2は凸状に湾曲し、上記溝部4は凹状に湾曲している。そして、上記畝部2及び上記溝部4は平面部を有しないように配列されているので、本発明の表面シートを具備する吸収性物品は、表面シートが肌に接する面積が小さくなり、肌へのベタツキが少なく、ドライ感(サラット感)の向上したものとなる。」(段落番号【0020】)
(f)「図1及び図2に示す如く、上記溝部4は、間隔をおいて配置された多数の開孔6を有している。上記開孔6は、好ましくは、図3に示す如く、本発明の表面シート1の表面8Aから裏面8Bに向かって延出する不織布によって取り囲まれて形成されている。そして、上記開孔6の内壁10は、上記表面8Aからの連続面で形成されている。即ち、上記開孔6は、立体的な開孔であることが好ましい。立体的な開孔の態様としては、例えば、上記開孔を取り囲む不織布が円筒状になっている開孔や、上記開孔6の径が上記表面8Aから上記裏面8Bに向かって漸次増加していく円錐状の開孔等が挙げられるが、好ましくは、図3に示す如く、上記開孔6の径が上記表面8Aから上記裏面8Bに向かって漸次減少していく逆円錐状の開孔が好ましい。」(段落番号【0022】)
(g)「上記開孔6の形状に特に制限はなく、例えば楕円形、三角形又は四角形の開孔でもよいが、異方性のない円形の開孔とすることが、表面シートのソフト感を向上させる点から好ましい。」(段落番号【0024】)
(h)「図6に示す生理用ナプキン14は、本発明の表面シート1、液不透過性のバックシート(図示せず)及び吸収体(図示せず)を具備する。該吸収体は、上記生理用ナプキン14の面のうち、肌に接する面を除いて上記バックシートに覆われている。更に、上記吸収体は、上記生理用ナプキン14の面のうち、肌に接する面側が、上記表面シート1で覆われている。また、上記表面シート1は、上記吸収体全体を包持している。(段落番号【0053】)
(i)「即ち、本発明の表面シート1を具備する生理用ナプキン14は、第一に、表面シート1の肌に接する部分が少なく且つ肌に接する部分は不織布本来のソフトな風合いを残しているため、快適な装着感が得られ、しかも、体液吸収後の湿潤感を減じることができる。」(段落番号【0056】)
(j)図3及び図4には、図1のA-A’線に沿った断面図が記載され、溝部4に、溝部及び畝部の延びる方向に間隔をおいて、すなわち間欠的に配列された多数の開孔6が、溝部4の底部から下方に向かって管状に延び、その管径が、下方に向かって次第に小さくなり、内壁10は、該断面において畝部2の頂部に向かう壁面と連続するように延びている態様が示されている。

(3)対比
補正発明と上記引用文献1に記載された吸収性物品の表面シートとを対比する。
引用文献1に記載された「生理用ナプキン」、「表面シート1」、「液不透過性のバックシート」、及び「吸収体」は、それぞれ、補正発明の「使い捨て体液吸収性着用物品」、「透液性表面シート」、「不透液性裏面シート」、及び「吸収性コア」に相当し、引用文献1に記載された表面シート1を構成する「不織布」(上記摘示記載(c)参照)は、補正発明でいう「繊維不織布、熱可塑性合成樹脂フィルム、前記繊維不織布と前記合成樹脂フィルムとの積層体」含むものである(上記摘示記載(d)参照)。
また、引用文献1に記載された表面シート1は、当然、着用者の肌に接する面及びその裏側の面、すなわち補正発明でいう上面及び下面を有しており(上記摘示記載(f)参照)、その上面方向に立ち上がっていて一方向へ互いに平行して延びる「畝部2」、及び、溝部4に間隔を置いて配置され、その底部から下方に延びる多数の「開孔6」は、それぞれ、補正発明の「隆起部」及び「導液管」に相当し、引用文献1に記載された開孔6も下方に下端部開口を有し、開孔6の上記溝部底部における部分が補正発明の「上端部開口」に相当し、該開孔6の間の上面部分は、上記上面方向へ立ち上がる畝部及び下方に延びる開孔6の基面となる点で、願補正発明1の「おおむね水平方向へ広がる滑らかな面部」に対応する。
してみれば、両者は、
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在する使い捨て体液吸収性着用物品の前記表面シートであって、繊維不織布、熱可塑性合成樹脂フィルム、前記繊維不織布と前記合成樹脂フィルムとの積層体のうちのいずれかからなり、着用者の肌に当接する上面とその裏側の下面とを有し、前記下面から前記上面に向かう方向へ立ち上がっていて一方向へ互いに平行して延びる複数条の隆起部と、前記上面から前記下面に向かう方向へ延びていて前記隆起部の延びる方向へ間欠的に配列され、かつ、管径が前記上面から前記下面に向かって次第に小さくなる多数の導液管を有する表面シート
である点で一致しており、以下の点で相違している。
[相違点1]補正発明において、隆起部が立ち上がり、導液管の上端部開孔が位置する「上面」が、「おおむね水平方向へ広がる滑らかな面部」であるのに対し、引用文献1に記載された溝部4は「凹状に湾曲」とされている点
[相違点2]補正発明の隆起部は.「逆V字状」を呈するのに対し、引用文献1に記載された畝部は、「アーチ形状」とされている点
[相違点3]補正発明の導液管の断面形状は「正六角形」を呈するのに対し、引用文献1には、開孔の形状に制限はないとされるものの「正六角形」は例示されていない点
[相違点4]補正発明において、隆起部の壁と該隆起部につながる導液管の管壁とが、同じ角度で傾斜して一連の平滑面を形成するとされるのに対し、引用文献1には畝部の壁と開孔の内壁とが平滑に連なる部分を有するものの「同じ角度で傾斜して一連の平滑面」を形成することは示されていない点
[相違点5]補正発明において、親水化処理剤が導液管の下端部開口近傍に塗布されているのに対し、引用文献1には、開孔6の下端部開口近傍に親水化処理剤を塗布することは記載されていない点

(4)判断
以下、上記の相違点について検討する。
[相違点1]について
使い捨て吸収性物品のシート面を引用文献1に示されるように曲面を用いる設計をなすこととともに、平面を持って設計することも周知の技術であり(参考例 原査定の拒絶の理由において周知文献として引用された、特開平4-113834号公報)、使い捨て吸収性物品の表面シートの平坦な面すなわち補正発明でいう、開口が形成される面を「おおむね水平方向へ広がる滑らかな面部」とすることは、従来普通に行われている事項(参考例 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-246321号公報の第1図、同じく引用された特開平5-317358号公報の底部4)と認められるので、引用文献1に記載された開孔6を配列する溝部4の凹状に湾曲した底面を水平面とすることは、当業者がその設計にあたり適宜選択し得た設計上の事項に属するものと認める。
(なお、補正発明でいう「水平方向」は、表面シートの肌に接する面のなす全ての方向を意味するものと解されるが、引用文献1に記載された溝部4の底部も、明細書及び図面の記載からみて、少なくとも、その溝部及び畝部の延びる方向においては水平方向に延びているということができる。)

[相違点2]について
引用文献1における「アーチ形状」の畝部も、補正発明の「逆V字状」の隆起部と同様に、物品を着用したときの、着用者の肌との接触面積をできるだけ小さくすることによって、着用時の蒸れやかぶれを防止しようとするものである(上記摘示記載(e)等参照)。
そして、補正発明の「逆V字状」が、着用者の肌と当接する部分である頂部に鋭角部を有するのに対し、「アーチ形状」は、当該部分が鋭角部を弧状に面取りした形状を呈するものと認められるが、肌との当接部は、外力が加わらない状態では、いずれも線接触となるものと認められ、一方、実際には、表面シート自体が不織布或いはフィルム等の可撓性のある部材で構成されている以上、頂部の「逆V字状」あるいは「アーチ形状」が、必ずしも明確に区別しうる状態に維持されるものとは認めらず、さらに、上述の通り、曲面を持って設計することとともに、平面を持ってい設計することの両者が周知であることを考慮すれば、引用文献1に記載された「アーチ形状」の畝部の頂部形状を「逆V字状」とする点に格別の技術的困難性は認められない。
また、補正発明においては、リブ(隆起部)どうしの間に通気路(溝)が形成され、これが蒸れやかぶれの軽減するとされているが、引用文献1に記載された畝部どうしの間の溝部も当然通気路として作用することは明らかであり、その効果の程度は、隆起部の形状のみならず、その高さや幅、さらには表面シートの素材等にも左右されるものであり、通気路形成という観点からも「逆V字状」とする点に格別の技術的意義を認めることはできない。

[相違点3]及び[相違点4]について
使い捨て吸収性物品の表面シートにテーパ状の導液管を形成する開孔の断面形状として、各種のものが従来から知られており(原査定の拒絶の理由において周知文献引用された、特開平4-113834号公報には、円錐のテーパ孔(断面円形)にかえて多角錘形(断面多角形)のテーパ孔を形成する場合の断面の断面形状として六角形のものが例示されている)、引用文献1に「制限はない」と記載される開孔の形状として六角形を採用することは当業者がその設計にあたり適宜決定すべき事項であり、「正六角形」は、円形の代替形状として、設計の対象として当然に考慮すべき形状であって、その採用は、格別の困難性があるものとはいえない。
また、表面シート上に排出された体液を導液管を介して速やかに下方に移行させることは、設計者が設計にあたり期待する事項として、格別の事項とは認められず、その移行経路中に、移行を妨げる段部等が存在しないように設計に配慮することは、通常の設計の範疇と認められるから、正六角形状の採用に際して、正六角形の平行する2つの辺を畝の延びる方向に平行になるように配し、それぞれに連なる畝部の壁と、開孔の内壁とが面一になるように傾斜角度を同じくして、一連の平滑面を形成することも技術常識に照らして、当業者が容易になし得た事項と認める。

[相違点5]について
使い捨て吸収性物品の表面シートに、導液管としての立体的な開孔を形成したものにおいて、導液管の下端部近傍を親水化処理することにより液体の移行を促進することは、本願出願前周知の事項であり(例えば特開平4-89054号公報等参照)、親水化処理の手段として、親水化処理剤を当該部位に塗布することも常套手段であるので、引用文献1に記載された表面シートの開孔6の下端部開口近傍に親水化処理剤を塗布することは当業者が適宜なし得る設計的事項である。
なお、引用文献1には、表面シートに、繊維密度による毛管力の勾配を設けることで体液の下方への移行を促進することが開示されているが、該毛管力の勾配があったとしても、それが親水化処理を施すことを阻害する理由となるものではない。
以上のとおり、上記相違点として列挙した事項は、いずれも、当該分野における本願出願前周知の技術的事項に鑑みて格別な技術的意義があるものということはできず、当業者が適宜なし得る設計的事項に相当するものであるので、補正発明は上記引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定によりその出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年11月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、補正前の(平成15年7月10日付けで補正された)明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在する使い捨て体液吸収性着用物品の前記表面シートであって、
前記表面シートが、着用者の肌に当接する上面とその裏側の下面とを有し、前記上面が、おおむね水平方向へ広がる滑らかな面部と、前記面部において前記下面から前記上面に向かう方向へ逆V字状を呈して立上がっていて一方向へ互いに平行して延びる複数条の隆起部と、前記面部に上端部が開口していて前記上面から前記下面に向かう方向へ延び、かつ、管径が前記上面から前記下面に向かって次第に小さくなるとともに径方向の断面形状が多角形を呈する導液管とを有し、前記導液管が、前記隆起部の延びる方向へ間欠的に配列され、前記隆起部の壁と該隆起部につながる前記導液管の管壁とが、同じ角度で傾斜して一連の平滑面を形成していることを特徴とする前記表面シート(以下、これにより特定される発明を「本願発明1」という。)。

(2)引用文献等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、前記「2.(2)引用文献等」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1と上記引用文献1に記載された「吸収性物品の表面シート」とを対比する。
上記「2.(3)対比」に記載した事項並びに引用文献1に開孔の形状として 三角形又は四角形が記載されている(前記摘示事項(g)参照)ことからみて両者は、「透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在する使い捨て体液吸収性着用物品の前記表面シートであって、着用者の肌に当接する上面とその裏側の下面とを有し、前記下面から前記上面に向かう方向へ立上がっていて一方向へ互いに平行して延びる複数条の隆起部と、前記面部に上端部が開口していて前記上面から前記下面に向かう方向へ延び、かつ、管径が前記上面から前記下面に向かって次第に小さくなるとともに径方向の断面形状が多角形を呈する導液管とを有し、前記導液管が、前記隆起部の延びる方向へ間欠的に配列されている表面シート」である点で一致しており、以下の点で一応の相違があるものと認められる。
[相違点A]本願発明において、隆起部が立ち上がり、導液管の上端部開孔が位置する「上面」が、「おおむね水平方向へ広がる滑らかな面部」であるのに対し、引用文献1に記載された溝部4は「凹状に湾曲」とされている点
[相違点B]本願発明の隆起部は.「逆V字状」を呈するのに対し、引用文献1に記載された畝部は、「アーチ形状」とされている点
[相違点C]本願発明において、隆起部の壁と該隆起部につながる導液管の管壁とが、同じ角度で傾斜して一連の平滑面を形成するとされるのに対し、引用文献1には畝部の壁と開孔の内壁とが平滑に連なる部分を有するものの「同じ角度で傾斜して一連の平滑面」を形成することは示されていない点
そこで上記の相違点について検討すると、[相違点A]及び[相違点B]については、「上記2.(4)判断」の「[相違点1]について」及び「[相違点2]について」で述べたとおりであり、[相違点C]についても、上記「上記2.(4)判断」の「[相違点3]及び[相違点4]について」で、開孔の形状を多角形である「正六角形」とした場合につて述べたと同様に、使い捨ておむつの表面シートのテーパ孔において、肌に当接する隆起部の壁と導液管の壁が面一に連なることが好ましいという本願出願前周知の技術的事項に鑑みて当業者が容易になし得る程度の事項である。
以上のとおり、上記相違点として列挙したいずれの事項にも格別の技術的意義は認められないので、本願発明1も、上記刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)むすび
したがって、残余の請求項に記載された発明について検討するまでもなく、本件出願は、原査定の拒絶の理由により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


なお、請求人は、当審の審尋に対する回答書の中で、前置報告書が、平成15年11月25日付けでなされた補正のうち「親水化処理剤が、前記導液管の下端部開口近傍に塗布されている」点は限定的減縮に該当しないとした点について、当該補正事項は、誤ってなしたものであるから、補正が不適法な目的の補正である場合に、再度の補正の機会を要望するとともに、同補正により補正された発明が独立して特許を受けられる旨述べている。
しかしながら、上記2.で述べたとおり当該補正は、補正前の特許請求の範囲請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「導液管」を限定的に特定するものであり、「限定的減縮に該当しない」ものとはいえず、更に、上述の通り補正後の発明は、その出願の際独立して特許を受けることができる発明とは認められないので、新たな補正の機会を敢えて設けない。
 
審理終結日 2006-02-21 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-16 
出願番号 特願平9-18958
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
P 1 8・ 575- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 裕美子  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 石田 宏之
溝渕 良一
発明の名称 使い捨て体液吸収性着用物品の表面シートおよびその製造方法  
代理人 白浜 吉治  
代理人 小林 義孝  

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