• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1135576
審判番号 不服2003-14523  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-06-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-29 
確定日 2006-04-28 
事件の表示 特願2000-355682「餡用ご汁等スラリーの水切装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 4日出願公開、特開2002-159807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成12年11月22日の出願であって、平成15年3月5日付拒絶理由通知に対して、平成15年5月6日付で手続補正がなされ、その後、平成15年6月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年7月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年8月28日付で手続補正がなされたものである。

第2.平成15年8月28日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成15年8月28日付の手続補正を却下する。

[理由]

1.補正後の本願発明

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「スクリーンとして、縦方向の三角断面のウエッジワイヤーを三角形の頂点が外側に位置し、隣接する頂点同士の間に三角形の空間が出来るように、また、内側では三角形の底辺が横一列に並ぶように、極少の目幅を存して並べて、内側凹面の縦方向の円弧板に形成し、このスクリーンは、下辺を除いて上辺および左右辺に枠を形成し、凹面側上部にスラリー突出管の突出口を取り付け、基台上に立ち上げた枠体内に屏風状にこのスクリーンを取り付け、基台内で前記スクリーンの凹面側下部に水切り後のスラリー収容槽を、凸面側に水槽を設けたことを特徴とする餡用ご汁等スラリーの水切装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「スクリーンとして、三角断面のウエッジワイヤーを極少の目幅を存して三角形の頂点が外側に位置するように並べて内側凹面の縦方向の円弧板に形成し、」について「スクリーンとして、縦方向の三角断面のウエッジワイヤーを三角形の頂点が外側に位置し、隣接する頂点同士の間に三角形の空間が出来るように、また、内側では三角形の底辺が横一列に並ぶように、極少の目幅を存して並べて、内側凹面の縦方向の円弧板に形成し、」と詳細に限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。

2.引用刊行物

(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭50-133564号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「繊維パルプ中の液体分を通過させるが該パルプの繊維分を事実上通過させないスクリーン表面に上記パルプを流過せしめる段階、上記スクリーンを通過した上記パルプの液体分を除去する段階、ならびに上記スクリーン表面に残留した繊維分を捕集除去する段階によって構成され、上記パルプは放物線形のスクリーン表面に沿って流過せしめる毎くなしたことを特徴とする繊維パルプから液体分を分離する方法。」(特許請求の範囲第1項)
(b)「このスクリーンバーは横断面がほぼ矩形または三角形であって、これらのバーは裏当てバーに固定されてあらゆる方向にスクリーン面を全面にわたってほぼ連続的にスロット幅の調節が可能にしてある。スクリーンバーは導入されるスラリの流れの方向に平行か90°までの傾角をなして配置されている。」(第2頁左上欄第9〜15行)
(c)「実施例によれば、本発明のスクリーンは横方向に延在され垂直方向に保間した棒状支持体に支持固定されたほぼ放物線状に彎曲し垂直方向に伸長し横(水平)方向に平行して保間した楔状棒部材によって構成される。このスクリーン棒部材はスクリーン表面を一体化することによって形成している。」(第3頁左上欄第1〜7行)
(d)「上述のスクリーンは側壁をスクリーン表面のスラリの保留に役立たしめるために上下方向の周側部に取付けることができる。」(第3頁左上欄第12〜14行)
(e)「第1図は、スラリ供給源(図示していない)からスラリをスクリーン11に送給するノズル16と連結した複数のホース15に配液する導入管もしくは多岐管14を有するスラリ導入部10の一実施例を示している。・・・ノズル16はハウジング20に取り付けた棚17の毎き棚などに装着するのが好都合である。装着した後、ノズルはスラリをスクリーン表面11に一様に分布させスクリーン表面に対して一定角度に配液し続ける。」(第4頁右上欄第1〜12行)
(f-1)「第1図および第8図に示すように、スクリーン表面またはスクリーン11は排出部12,13とハウジング20の頂部22との間の表面21上に支持することによりハウジング20に取付けられている。」(第5頁左上欄第3〜7行)
(f-2)「側壁23はスクリーン11の側部週端縁にあってスラリの流れをスクリーン表面に沿わせるために設けられている。」(第5頁左上欄第9〜12行)
(g)「第2図に示すように、棒状体40は放物線形状をなし横に延びているが、垂直方向に保間した支持部材42に対し溶接等により支持されて接合されている。棒状体40の間隔は特に限定されないが、ろ過すべき物質、分級の際はその種別などの諸因子によって決める。こうしてこの間隔の可変範囲は千分の一センチメートルから設定できる。側壁23はスクリーン表面ののいずれか一方の側に支持体42端部で接合されスラリをスクリーン表面に沿って流れるように限界づける。」(第5頁左下欄第14行〜同頁右下欄第8行)
(h)「棒状体40および44は第4,5,6,7図に示す毎く、ほぼ楔形状すなわち頂点部において支持体42,45に接合される棒部材の先端もしくは狭い端部が三角形または台形状の棒部材からなつている。」(第5頁右下欄第15行〜第6頁左上欄第4行)

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭57-184328号明細書マイクロフィルム(実開昭59-90388号公報参照、以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「生餡は一般的には、風選、篩別、水洗、清水浸漬、加熱煮沸、渋切り、本煮、破砕、清水と共に篩別。種皮除去、静置・餡粒子沈降、攪拌・静置・沈降の反復(水晒し工程・2〜3回)、最終脱水、の工程を経て製造される。」(第2頁第4〜8行)

3.対比・判断

上記引用刊行物1には、記載(a)に「放物線形のスクリーンを用いる、繊維パルプから液体分を分離する方法」が記載され、この方法の記載は装置として記載すると「放物線形のスクリーンを用いる、繊維パルプから液体分を分離する装置」となるので該装置が記載されているといえ、記載(b)に「横断面が三角形のスクリーンバー」が記載され、記載(b)に「スクリーンバーは導入されるスラリの流れの方向に平行に配置されている」ことが記載され、記載(c)に「スクリーンが垂直方向に伸長し横(水平)方向に平行して保間した楔状棒部材によって構成される」ことが記載され、記載(h)に「頂点部において支持体に接合される棒部材の先端もしくは狭い端部が三角形または台形状の棒部材」が記載されていることからして「棒部材の先端もしくは狭い端部が三角形の棒部材頂点部において支持体に接合されるようにする」ことが記載されているといえ、記載(b)に「これらのバーは裏当てバーに固定されてあらゆる方向にスクリーン面を全体にわたってほぼ連続的にスロット幅の調節を可能にしてある」ことが記載され、記載(g)にも同様のことが記載され、記載(e)に「第1図は、・・・スラリをスクリーン11に送給するノズル16・・・はハウジング20に取付けた棚17の毎き棚などに装着する」と記載されていることからして「スラリをスクリーンに送給するノズル」が記載されており、このノズルは記載(a)に「パルプは放物線形のスクリーン表面に沿って流過せしめる」と記載されていることからしてスクリーンの上部に取り付けられているものであり、記載(f-1)に「スクリーンはハウジングの頂部とスクリーンで水切りされたスラリと分離された水を別々に排出するそれぞれの排出部との間に取り付けられている」ことが記載され、記載(d)、(f-2)に「スクリーンは側部周端部縁に側壁を設ける」ことが記載されているので、上記引用刊行物1の記載を本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、
「スクリーンとして、導入されるスラリの流れの方向に平行の方向に配置される横断面が三角形のスクリーンバーを、棒部材の先端もしくは狭い端部が三角形の棒部材頂点部において支持体に接合されるようにし、これらのバーは裏当てバーに固定されてあらゆる方向にスクリーン面を全体にわたってほぼ連続的にスロット幅の調節を可能にし、放物線形に形成し、かつ、スラリをスクリーンに送給するノズルパルプをスクリーン上部に取り付け、スクリーンは側部周端部縁に側壁を設け、ハウジングの頂部とスクリーンで水切りされたスラリと分離された水を別々に排出するそれぞれの排出部との間に取り付けられていることを特徴とする繊維パルプから液体分を分離する装置」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、
刊行物1発明の「導入されるスラリの流れの方向に平行の方向に配置される」は補正後の本願発明の「縦方向の」に相当し、以下同様に、「横断面が三角形のスクリーンバー」は「三角断面のウエッジワイヤー」に相当し、「棒部材の先端もしくは狭い端部が三角形の棒部材頂点部において支持体に接合されるようにし」は「三角形の頂点が外側に位置し」に相当し、「これらのバーは裏当てバーに固定されてあらゆる方向にスクリーン面を全体にわたってほぼ連続的にスロット幅の調節を可能にし」は「上記ウエッジワイヤーの三角形の底辺を横一列に並ぶように、極少の目幅を存して並べ」に相当し、その結果「隣接する頂点同士の間に三角形の空間」が形成されることは明らかであり、また、「放物線形に形成し」は刊行物1の第1図(FIG1)と第8図(FIG8)を参酌すれば明らかに「内側凹面の縦方向の円弧板を形成し」に相当し、また、「スラリをスクリーンに送給するノズルパルプをスクリーン上部に取り付け」は「凹面側上部にスラリー突出管の突出口を取り付け」に相当し、また、「繊維パルプから液体分を分離する装置」は「スラリーの水切装置」に相当するところから、両者は、
「スクリーンとして、縦方向の三角断面のウエッジワイヤーを三角形の頂点が外側に位置し、隣接する頂点同士の間に三角形の空間が出来るように、また、内側では三角形の底辺が横一列に並ぶように、極少の目幅を存して並べて、内側凹面の縦方向の円弧板に形成し、凹面側上部にスラリー突出管の突出口を取り付けたスラリーの水切装置。」である点で一致し、

(i)本願補正発明では、スクリーンの取り付けに関し、基台上に立ち上げた左右辺の枠を上辺の枠で結合した枠体内に屏風状にスクリーンを取り付けたのに対し、刊行物1発明では、スクリーンは側部周端部縁に側壁を設け、ハウジングの頂部とスクリーンで水切りされたスラリと分離された水を別々に排出するそれぞれの排出部との間に取り付けられている点で相違し(相違点1)、
(ii)本願補正発明では、スクリーンで水切りされたスラリーと分離された水をそれぞれの槽に収容することが規定されているのに対し、刊行物1発明では、単にスクリーンで水切りされたスラリと分離された水を別々に排出するそれぞれの排出部を記載するに止まり、収容槽を記載していない点で相違し(相違点2)、また、
(iii)本願補正発明では、水切り装置の用途を「餡用ご汁等スラリーからの水切り」と限定しているのに対し、刊行物1発明では「繊維パルプからの液体分の分離」と記載されている点で相違する(相違点3)。

そこで、上記の相違点について検討する。

相違点1についてみるに、スクリーンの取り付け方法は一般的には設計上の事項であって、刊行物1発明の側壁とハウジングの頂部で保持する代わりに、本願補正発明のように、左右辺と上辺の枠体で保持することは、当業者ならば必要に応じて適宜になしうる設計事項である。
相違点2についてみるに、刊行物1発明においても、スクリーンで水切りされたスラリと分離された水を別々に排出することが記載されているところから、本願補正発明のように、それぞれに対応する槽を付設することは、当業者が必要に応じて適宜になしうる設計事項である。
相違点3についてみるに、本願補正発明では、水切り装置の用途を「餡用ご汁等スラリーからの水切り」と限定しているが、本願明細書の段落【0001】【発明が属する技術分野】の「本発明は、生餡の製造工程において使用される餡用ご汁を初めとして、デンプン、石灰等のいわゆるスラリーの水切装置に関するものである。」との記載から明らかなように、「スラリー」は「餡用ご汁」に限定されず、広い範囲のスラリーを包含し、「繊維パルプスラリー」をも排除していないのであるから、この点は実質的に相違するものとはいえない。
そして、また、餡用ご汁を水切りすることは、引用刊行物2の記載(a)に記載されているところであるから、刊行物1発明を「餡用ご汁スラリーからの水切り」に転用することは当業者が容易になしうる程度のことである。
したがって、本願補正発明は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本件審判請求についての当審の判断

1.本願発明

本願は、平成15年8月28日付の手続補正が却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「スクリーンとして、三角断面のウエッジワイヤーを極少の目幅を存して三角形の頂点が外側に位置するように並べて内側凹面の縦方向の円弧板に形成し、このスクリーンは、下辺を除いて上辺および左右辺に枠を形成し、凹面側上部にスラリー突出管の突出口を取り付け、基台上に立ち上げた枠体内に屏風状にこのスクリーンを取り付け、基台内で前記スクリーンの凹面側下部に水切り後のスラリー収容槽を、凸面側に水槽を設けたことを特徴とする餡用ご汁等スラリーの水切装置。」

2.引用刊行物

原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、及び、その記載事項は、前記「第2.の2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明から、三角断面のウエッジワイヤーを「縦方向」に配置することを省き、かつ、該ウエッジワイヤーの「隣接する頂点同士の間に三角形の空間が出来るように、また、内側では三角形の底辺が横一列に並ぶように」配置することを省いたものである。
そうすると、本願補正発明は、前記「第2.3.」に記載したとおり、刊行物1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の構成要件を全て含む本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ

以上のように、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-16 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-07 
出願番号 特願2000-355682(P2000-355682)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
P 1 8・ 575- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 貢  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 佐藤 修
鈴木 毅
発明の名称 餡用ご汁等スラリーの水切装置  
代理人 久保 司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ