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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16H
管理番号 1135580
審判番号 不服2003-17735  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-11 
確定日 2006-04-28 
事件の表示 平成11年特許願第333328号「テンショナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 8日出願公開、特開2001-153192〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月24日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成15年7月17日付け、平成15年10月10日付け、及び、平成18年2月13日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 エンジン本体に設けられた支持部材と、基端部が前記エンジン本体に保持され、先端部が前記支持部材に摺動自在に支持された、伝動用無端可撓部材に摺接するテンショナシューと、前記テンショナシューを弾性力により前記無端可撓部材に押圧するスプリングとを備えたテンショナ装置において、
前記支持部材は前記エンジン本体に一体成形され、前記先端部は前記支持部材に形成された案内面に当接して摺動自在に支持され、前記先端部に対して前記テンショナシューの幅方向での両側方のうちの一側方に位置すると共に前記支持部材および前記先端部を前記一側方から覆う部材であって前記支持部材が一体成形された前記エンジン本体とは別個の部材に、前記先端部との当接により前記幅方向への前記テンショナシューの片寄りを規制する凸部が、前記先端部との間に微小な間隙を形成して設けられていることを特徴とするテンショナ装置。」

2.刊行物
これに対して、当審において平成17年12月13日付けで、本願出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開平3-24345号公報(以下「刊行物1」という。)、特開平8-233041号公報(以下、「刊行物2」という。)、実願昭59-22343号(実開昭60-133260号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)、実願昭58-99277号(実開昭60-7447号)のマイクロフィルム、特開平7-71543号公報(以下、「刊行物4」という。)を引用して拒絶の理由を通知した。
(1)刊行物1記載の発明
上記刊行物1には「チエーンテンショナ」に関して次の事項が記載されている。
記載事項(1-1);
「本発明は、特に自動車の調時チエーンのテンショナとして使用可能であるがそれのみに限られない、チエーン駆動用のチエーンテンショナに関する。」(第3頁右下欄第3〜5行)
記載事項(1-2);
「チエーンテンショナは硬い合成樹脂すなわちプラスチック材料でつくられたチエーンに接触するシュー12に取り付けられているがそれに接合されていない板ばね10を備えている。硬い合成樹脂材料は負荷及び高い温度の下で「クリープ(creep)」するもので、負荷は板ばね10によって与えられる。」(第4頁右下欄第12〜18行)
記載事項(1-3);
「シュー12の第1の端部14はチエーンテンショナが使用されるとき比較的滑らかな支持体に接しかつそれに関して滑るようになっている。」(第5頁左上欄第6〜9行)
記載事項(1-4);
「第11図は自動車の調時チエーンに張力を与えるように使用されているチエーンテンショナを示している。シュー12はチエーンに所望の張力を与えるように板ばね10によってチエーン50に対して適所に保持されている。板ばね10によりシュー12に加えられた負荷によりシューはチエーンに適度の張力を与えるように『クリープ(creep)』を起こす。チエーンテンショナは基部18においてエンジンに回動可能に取り付けられ、シュー12の第1の端部は支持面52と接触している。」(第6頁右上欄第14行〜同頁左下欄第4行)

上記記載事項(1-3)及び(1-4)の内容からみて、支持体は、チエーン50及びシュー12と同室内にあってシュー12の第1の端部14を支持するものであるので、エンジンに設けられていると認められる。そうしてみると、以上の記載事項(1-1)ないし(1-4)及び第11図の記載からみて、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
[刊行物1記載の発明]
「エンジンに設けられた支持体と、基部18が前記エンジンに取り付けられ、第1の端部14が前記支持体に摺動自在に支持された、チエーンに摺接するシュー12と、前記シュー12を弾性力により前記チエーンに押圧する板ばね10とを備えたチエーンテンショナにおいて、
前記第1の端部14は前記支持体に形成された支持面に当接して摺動自在に支持されたチエーンテンショナ。」

(2)刊行物2記載の事項
上記刊行物2には、「オートテンショナ」に関して次の事項が記載されている。
記載事項(2-1);
「オートテンショナ20を図2に基づいて説明する。」(第2頁第2欄第28及び29行、段落【0014】参照)
記載事項(2-2);
「ピン22はチェーンガイド21の下端に位置しており、・・・(中略)・・・ロッド33は圧力室31内で出没自在であり、この出没によって圧力室31の容積が可変とされる。ロッド33の左端は球面状に形成され、チェーンケースなどの静止部材35に接触している。」(第2頁第2欄第39行〜第3頁第3欄第1行、段落【0016】参照)

(3)刊行物3記載の事項
上記刊行物3には、「チエン張り装置」に関して次の事項が記載されている。
記載事項(3-1);
「いずれのチエンタイトナ(22)もその上端がチエンケース(18)に回動自在に枢支され、その中央部の彎曲部(23)がチエン(21)に摺接し、下端はチエンケース(18)の内面に摺動自在に摺接している。」(明細書第5頁第9〜12行)

(4)刊行物4
上記刊行物5には、「内燃機関におけるカムチェーンテンショナ装置」に関して次の事項が記載されている。
記載事項(4-1);
「テンショナ本体23の取付け基部24における緩衝材22の基部22aがカムチェーン収納室17の左右内壁面17aに挟持されて、テンショナ本体23の巾方向移動が弾性的に規制されるため、無端チェーン16の横振れが確実に抑制される。」(第3頁第4欄第2〜6行、段落【0018】参照)

3.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、後者の「エンジン」は前者の「エンジン本体」に相当し、以下同様に、「支持体」は「支持部材」に、「基部18」は「基端部」に、「第1の端部14」は「先端部」に、「チエーン」は「伝動用無端可撓部材」に、「シュー12」は「テンショナシュー」に、「板ばね10」は「スプリング」に、「チエーンテンショナ」は「テンショナ装置」に、「支持面」は「案内面」に、それぞれ相当する。また、後者の「基部18がエンジンに取り付けられ」ることは、その機能からみて、前者の「基端部がエンジン本体に保持され」ることに相当する。
そうしてみると両者は、
「エンジン本体に設けられた支持部材と、基端部が該エンジン本体に保持され、先端部が該支持部材に摺動自在に支持された、伝動用無端可撓部材に摺接するテンショナシューと、該テンショナシューを弾性力により該無端可撓部材に押圧するスプリングとを備えたテンショナ装置において、
前記先端部は、該支持部材に形成された案内面に当接して摺動自在に支持されたテンショナ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、「支持部材はエンジン本体に一体成形され」ているのに対して、刊行物1記載の発明の支持体は、エンジンに対してどのように設けられているのか明らかでない点。
[相違点2]
本願発明は、「先端部に対してテンショナシューの幅方向での両側方のうちの一側方に位置すると共に支持部材および先端部を前記一側方から覆う部材であって支持部材が一体成形されたエンジン本体とは別個の部材に、先端部との当接により幅方向へのテンショナシューの片寄りを規制する凸部が、先端部との間に微小な間隙を形成して設けられている」のに対して、刊行物1記載の発明は、そのようなテンショナシューの幅方向への片寄りの規制を意図した構成を有していない点。

4.当審の判断
上記各相違点について以下検討する。
(1)相違点1について
刊行物2及び3には、チエーンテンショナの先端部をエンジン本体に摺動自在とすること、すなわちチエーンテンショナの先端部の支持をエンジン本体で行う技術思想が開示または示唆されている(上記記載事項(2-1)、(2-2)及び(3-1)を参照)。
また、別部材を一体成形することにより組み立て工程の削減・省力化を図ることは、周知の技術思想でもある。
そうしてみると、刊行物1記載の発明における支持部をエンジン本体と一体形成し、チェーンテンショナシューの先端部をエンジン本体の一部であるその支持部で摺動自在に支持し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、上記刊行物2及び3記載の技術思想並びに周知の技術思想に基づいて、当業者が容易に想到しうると認められる。

(2)相違点2について
刊行物4には、テンショナ本体の巾方向移動を規制するために、テンショナ本体の基部を収納室の内壁面に挟持することが記載されており(上記記載事項(4-1)を参照)、同様に、チェーンテンショナの基端部をエンジン本体とチェーンテンショナ及びチェーンテンショナを覆う部材とで挟持することは本願出願前に周知の技術思想である(実願昭48-42500号(実開昭49-140587号)のマイクロフィルムの明細書第3頁第6行〜第4頁第3行の記載及び第2図を参照されたい)。
チェーンテンショナのいずれの部位に対して幅方向移動の規制を行うかは、当業者が適宜選択しうる設計的事項であり、チェーンテンショナの形状からみて先端部に幅方向の規制を行うことは容易に想到しうることと認められる。
また、上記刊行物4に記載のものや上記周知のものにおいて、チェーンテンショナがチェーンに適切な張力を付与するという本来の機能を果たすには、チェーンテンショナがエンジン本体内で自由に揺動できることが必要であり、チェーンテンショナが揺動しうる程度にチェーンテンショナと幅方向移動を規制する部材との間に隙間を形成することは、当業者であれば当然考慮しうる事項である。そしてその際に、幅方向移動を規制する部材に凹凸を形成し隙間寸法を調節することも、技術の具体的適用に伴い当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。
そうしてみると、刊行物1記載の発明に、上記刊行物4記載の事項及び周知の事項を適用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別困難であるとはいえない。

そして、本願発明の奏する作用効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2ないし4記載の技術思想並びに周知の技術思想の総和以上のものではなく、当業者が予測できる範囲のものに過ぎない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物1記載の発明及び刊行物2ないし4記載の技術思想並びに周知の技術思想に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-27 
結審通知日 2006-03-01 
審決日 2006-03-14 
出願番号 特願平11-333328
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小原 一郎礒部 賢鳥居 稔  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 平田 信勝
常盤 務
発明の名称 テンショナ装置  
代理人 江原 望  
代理人 小田 光春  
代理人 中村 訓  

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