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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない F01M
審判 訂正 5項独立特許用件 訂正しない F01M
管理番号 1135588
審判番号 訂正2005-39172  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-23 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-09-28 
確定日 2006-04-26 
事件の表示 特許第3560073号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
特許第3560073号(請求項の数1)に係る発明についての出願は、平成6年6月30日に特許出願され、平成16年6月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、平成17年9月28日に本件審判請求がなされ、当審において、平成17年11月30日付けで、期間を指定して訂正拒絶の理由を通知したところ、これに対し、平成17年12月26日に請求人から意見書が提出されたものである。

第2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3560073号(平成6年6月30日特許出願、平成16年6月4日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。その訂正の内容は、以下の1.ないし4.のとおりである。

1.訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】 給油手段により潤滑油をエンジン内に補給するようにしたエンジンの潤滑油供給装置において、補給時には補給用オイル弁を開き、オイルレベルが上限になると補給用オイル弁を閉じ、オイルレベルが上限になるまでに規定以上の時間が経過した場合には点検整備が必要なことを予告表示するとともにオイル弁を閉じるようにしたことを特徴とするエンジンの潤滑油供給装置。」を、
「【請求項1】 給油手段により潤滑油をエンジン内に補給するようにした空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置において、エンジン停止中の補給時には補給用オイル弁を開き、オイルレベルが上限になると補給用オイル弁を閉じ、オイルレベルが上限になるまでに規定以上の時間が経過した場合には点検整備が必要なことを予告表示するとともにオイル弁を閉じるようにしたことを特徴とする空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置。」と訂正する。

2.訂正事項2
発明の名称の「エンジンの潤滑油供給装置」を、「空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置」と訂正する。

3.訂正事項3
特許明細書の【発明が解決しようとする課題】の段落【0004】、【0005】の
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
エンジン負荷が一定でかつエンジン回転数が一定であれば、潤滑油消費量はエンジン運転時間に比例すると考えられるので、上記従来のエンジン運転時間に応じて潤滑油を補給するようにしたもので支障はない。しかしエンジン負荷,エンジン回転数が一定でないエンジンの場合には、上記従来のエンジン運転時間に基づく方法では潤滑油消費量に精度良く対応することは困難である。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、エンジン負荷,回転数が変化するエンジンの場合にも潤滑油消費量に精度良く対応できるエンジンの潤滑油供給装置を提供することを目的としている。」を、
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで単にエンジン運転時間に応じて潤滑油を補給するようにした上記従来装置の場合、仮にオイルレベルセンサ等に異常があった場合には潤滑油消費量に見合った量の潤滑油を補給することはできない。【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、オイルレベルセンサ等の異常を検出可能な空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置を提供することを目的としている。」と訂正する。

4.訂正事項4
特許明細書の段落【0006】の記載の
「【課題を解決するための手段】
本発明は、給油手段により潤滑油をエンジン内に補給するようにしたエンジンの潤滑油供給装置において、補給時には補給用オイル弁を開き、オイルレベルが上限になると補給用オイル弁を閉じ、オイルレベルが上限になるまでに規定以上の時間が経過した場合には点検整備が必要なことを予告表示するとともにオイル弁を閉じるようにしたことを特徴としている。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明は、給油手段により潤滑油をエンジン内に補給するようにした空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置において、エンジン停止中の補給時には補給用オイル弁を開き、オイルレベルが上限になると補給用オイル弁を閉じ、オイルレベルが上限になるまでに規定以上の時間が経過した場合には点検整備が必要なことを予告表示するとともにオイル弁を閉じるようにしたことを特徴としている。」と訂正する。

第3.訂正拒絶理由の概要
平成17年11月30日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、本件訂正に含まれる訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するが、訂正明細書の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に刊行された刊行物である特開平5-240018号公報および特開平4-370308号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであって、訂正事項1は特許法第126条第5項の規定に適合しないので、訂正事項1を含む本件訂正は認められない、というものである。

第4.訂正の適否についての判断
1.上記訂正事項について、訂正の目的の適否について検討する。
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、「エンジンの潤滑油供給装置」を「空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置」に限定し、「補給時」を「エンジン停止中の補給時」に限定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件
次に、訂正明細書の請求項1に係る発明について独立特許要件の検討を行う。

2-1.訂正発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載される次のとおりのものである。

「給油手段により潤滑油をエンジン内に補給するようにした空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置において、エンジン停止中の補給時には補給用オイル弁を開き、オイルレベルが上限になると補給用オイル弁を閉じ、オイルレベルが上限になるまでに規定以上の時間が経過した場合には点検整備が必要なことを予告表示するとともにオイル弁を閉じるようにしたことを特徴とする空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置。」

2-2.刊行物1記載の発明
(1)特開平5-240018号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【産業上の利用分野】本発明は、定置用エンジンのオイル供給装置に関するもので、例えばエンジン駆動式空気調和装置のエンジンに使用することができる。」(第2頁第1欄第48〜50行。)

イ.「【実施例】以下、本発明の技術的手段を具体化した実施例について添付図面に基づいて説明する。
【0012】図1において、本発明第1実施例の定置用エンジンのオイル供給装置10の定置用エンジン(以下、エンジン)11は、その下部にオイルパン12を有し、その最低オイルレベル上には液面センサ(オイルレベル検出手段)13が配設されている。また、エンジン11と併設された補助オイルタンク14とオイルパン12とはオイル供給管15を介して接続されている。このオイル供給管15上には第1制御弁(例えば電磁弁等)16が配設されている。ここで、補助オイルタンク14はオイルパン12よりも高い位置に存在することが望ましい。・・・補助オイルタンク14の内部空間(上部空間)18はエンジン11の内部空間(例えばカム室内空間等)19と連通管20を介して連通している。この連通管20上には第2制御弁(例えば電磁弁等)21が配設されている。・・・エンジン11が停止状態にあると制御装置24が判断すると、液面センサ13の出力信号によりオイルパン12内のオイル保有量を検知する。このとき、オイルパン12内のオイル保有量が最低レベル以下にあると、制御装置24は各制御弁16,21を開いて補助オイルタンク14内のオイルをオイル供給管15を介してオイルパン12内に注入する。このとき、エンジン11の内部空間19より新気が連通管20を介して補助オイルタンク14の内部空間18へと流入する。・・・【0018】さて、図2において本発明第2実施例の定置用エンジンのオイル供給装置30を説明するが、第1実施例と同一の構成部分については同一の番号符号を付すことにより説明を省略する。・・・オイルパン12の最低および最高オイルレベル上には液面センサ32,33がそれぞれ配設されている。・・・制御装置24は・・・エンジン11が停止状態にあると判断すると、液面センサ32,33の出力信号によりオイルパン12内のオイル保有量を検知する。このとき、オイルパン12内のオイル保有量が液面センサ32の検知する最低レベル以下にあると、制御装置24は各制御弁16,21を開いて補助オイルタンク14内のオイルをオイル供給管15を介してオイルパン12内に注入する。尚、オイルの注入によりオイルパン12内のオイルが液面センサ33の検知する最高レベルを超すと、制御装置24は各制御弁16,21を閉じて、補助オイルタンク14からオイルパン12へのオイル注入を停止する。」(第3頁第3欄第20行から第4欄第38行。)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしイ.及び図1,2から、次のことがわかる。

ア.上記記載事項(1)ア.「【産業上の利用分野】本発明は、定置用エンジンのオイル供給装置に関するもので、例えばエンジン駆動式空気調和装置のエンジンに使用することができる。」から、刊行物1記載の本発明は、空気調和装置用エンジンのオイル供給装置であることがわかる。

イ.上記記載事項(1)イ.における「定置用エンジンのオイル供給装置10の定置用エンジン(以下、エンジン)11は、その下部にオイルパン12を有し、・・・エンジン11と併設された補助オイルタンク14とオイルパン12とはオイル供給管15を介して接続されている。このオイル供給管15上には第1制御弁(例えば電磁弁等)16が配設されている。・・・補助オイルタンク14の内部空間(上部空間)18はエンジン11の内部空間(例えばカム室内空間等)19と連通管20を介して連通している。この連通管20上には第2制御弁(例えば電磁弁等)21が配設されている。・・・制御装置24は各制御弁16,21を開いて補助オイルタンク14内のオイルをオイル供給管15を介してオイルパン12内に注入する。このとき、エンジン11の内部空間19より新気が連通管20を介して補助オイルタンク14の内部空間18へと流入する。」から、補助オイルタンク14、オイル供給管15、第1制御弁16は、オイルをエンジン内に補給する給油手段として機能していることがわかる。

ウ.上記記載事項(1)イ.における「制御装置24は・・・エンジン11が停止状態にあると判断すると、液面センサ32,33の出力信号によりオイルパン12内のオイル保有量を検知する。このとき、オイルパン12内のオイル保有量が液面センサ32の検知する最低レベル以下にあると、制御装置24は各制御弁16,21を開いて補助オイルタンク14内のオイルをオイル供給管15を介してオイルパン12内に注入する。尚、オイルの注入によりオイルパン12内のオイルが液面センサ33の検知する最高レベルを超すと、制御装置24は各制御弁16,21を閉じて、補助オイルタンク14からオイルパン12へのオイル注入を停止する。」から、エンジン11が停止中のオイルの補給時には、制御弁16を開き、オイルパン12内のオイルが液面センサ33の検知する最高レベルを超すと、制御弁16を閉じることがわかる。

(3)刊行物1記載の発明
上記記載事項(2)より、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「給油手段によりオイルを定置用エンジン11内に補給するようにした空気調和装置用エンジンのオイル供給装置において、エンジン停止中の補給時には第1制御弁16を開き、オイルが最高レベルを超すと第1制御弁16を閉じるようにした空気調和装置用エンジンのオイル供給装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2-3.刊行物2記載の発明
(1)特開平4-370308号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はエンジン潤滑油管理システムに関し、さらに詳しくは潤滑油メンテナンスの効率化と交換インターバルの長期化を可能にしたエンジン潤滑油管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】エンジン駆動式の冷暖房用熱ポンプ装置は、電気モータ駆動式のものに比べて運転コストが低く、省エネルギ効果に優れている点で注目されている。
しかし、他方でエンジンの場合は、円滑な運転が行えるようにするため、良好な潤滑性能を有する潤滑油を常にオイルパンに保持させてやる必要がある。すなわち、エンジンは運転時間と共に、潤滑油がブローバイガスの凝縮水の混入によって次第に劣化し、その潤滑機能を低下させていくため、定期的に潤滑油を交換することによって円滑なエンジン運転を保障するようにしなければならないのである。
【0003】従来、このような潤滑油の管理は、一定期間を設定するか、或いは潤滑油が劣化する時期を見計らって適当に行うというのが一般的である。しかし、潤滑油の寿命はエンジンの使用頻度や負荷の大きさ等によって左右されるため、ユーザーによってはまだ潤滑油が劣化していない時期に交換したり、逆に過度に劣化してしまったものを継続使用しているようなことがあり、必ずしも効率的な潤滑油管理が行えているとはいえなかった。
【0004】また、このような潤滑油の管理は、交換インターバルが長期であるほど管理作業を容易にする。このため、従来の交換インターバルの長期化の対策としては、主としてオイルパンの容量を増大させることで行われているが、オイルパン容量の増大には限度があるため、さらに交換インターバルを長期化しようとする場合には、十分な対策といえなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述のような従来の問題を解消し、潤滑油管理の効率化と交換インターバルの一層の長期化を可能にしたエンジン潤滑油管理システムを提供することにある。」(第2頁第1欄第18行から第2欄第5行。)

イ.「【0017】図5は、本発明のさらに他の実施例を示すエンジン潤滑装置の概略を示し、図6〜図8はこの装置によって行う潤滑油管理システムのフローチャートを示す。このエンジン潤滑装置は、図3の装置と同様にオイルタンク7を付設する点では同じであるが、エンジン運転中にオイルパン2との間で潤滑油を常時循環させるようことはせず、更油を行う時だけ排油と給油との交換を行うようになっている。このような管理を行うため、両タンク間を連結している排油用の油管10には電磁弁16が設けられ、また給油用の油管11には油ポンプ15が設けられている。また、オイルパン2には、上記油劣化検知センサ3のほかに、上限油レベルセンサ13aと下限油レベルセンサ13b、及び油温センサ17がそれぞれ設けられている。
【0018】このようなエンジン潤滑装置は、図6〜図8のようなフローチャートによって潤滑油制御を行うようにする。まず、ステップA1 によって、油劣化検知センサ3からの検知信号により潤滑油が正常か否かを判断する。潤滑油の劣化度が、予め設定した所定の油劣化管理値内であれば、次のステップDによって下限油レベルセンサ13bの信号により油量が下限量を維持しているかを判断する。
【0019】潤滑油が下限量に満たない状態のときは油ポンプ15が作動し、オイルタンク7から新潤滑油をオイルパン2に供給する。次いでステップEにより、上限油レベルセンサ13aからの信号により、上限量を越えていることを判断すると、油ポンプ15は停止する。しかし、油ポンプ15の作動から一定の設定時間を経過しても、潤滑油量が上限を越えないときは、エンジン1を停止させ、それを表示部6に表示する。」(第3頁第3欄第48行から第4欄第27行。)

ウ.図6において、フローチャートの最も上部には「スタート」なるブロックが示されている。
この「スタート」なるブロックの下部から、下方に隣接する菱形のブロックの上側頂点に向けて矢印線が引かれている。この菱形のブロック内には「オイル正常?」と記載されている。この「オイル正常?」なるブロックの菱形の右上の辺から短く線が引かれ、「A1」と記されている。
この「A1」で示されている「オイル正常?」なるブロックの菱形の左側頂点付近に「Yes」と記されると共に、この左側頂点から、左方に隣接する菱形のブロックの右側頂点に向かって矢印線が引かれている。この菱形のブロック内には、「下限レベル以上?」と記載されている。この「下限レベル以上?」なるブロックの菱形の右上の辺から短く線が引かれ、「D」と記されている。
この「D」で示されている「下限レベル以上?」なるブロックの菱形の上側頂点付近に「Yes」と記されると共に、この上側頂点から上方に矢印線が引かれ、この矢印線は、前記「スタート」なるブロックに向かう矢印線に繋がっている。
この「D」で示されている「下限レベル以上?」なるブロックの菱形の下側頂点付近に「No」と記されると共に、この下側頂点から、下方に隣接する長方形のブロックに向かって矢印線が引かれている。この長方形のブロック内には、「ポンプ(15)ON」と記載されている。
この「ポンプ(15)ON」なるブロックの下部から、下方に隣接する菱形のブロックの上側頂点に向かって矢印線が引かれている。そして、この菱形のブロックの左下の辺から短く線が引かれ、「E」と記されている。この「E」で示されているブロック内には「上限レベル以上?」と記載されている。この「E」で示されているブロックの菱形の左側頂点付近に「Yes」と記されていると共に、この左側頂点から、左上方に位置する長方形のブロックに向けて矢印線が引かれている。この長方形のブロック内には「ポンプ(15)OFF」と記載されている。この「ポンプ(15)OFF」なるブロックの上部から「スタート」ブロックに矢印線が引かれている。
一方、「E」で示されているブロックの菱形の下側頂点付近に「No」と記されると共に、この下側頂点から、下方に隣接する菱形のブロックの上側頂点に向けて矢印線が引かれている。この菱形のブロックの左下の辺から短く線が引かれ、「F」と記されている。この「F」で示されている菱形のブロック内には「一定時間経過?」と記載されている。
この「F」で示されている菱形のブロックの下側頂点からは、下方に隣接する長方形のブロックに向けて矢印線が引かれている。この長方形のブロック内には「エンジン停止 停止表示」と記載されている。一方、「F」で示されている菱形のブロックの右側頂点からも矢印線が引かれているが、この矢印の先端は、前記「ポンプ(15)ON」なるブロックと前記「E」で示されるブロックを結ぶ矢印線の間に繋がるように位置している。

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしウ.及び図5,6から、次のことがわかる。

ア.上記記載事項(1)ア.における「【従来の技術】エンジン駆動式の冷暖房用熱ポンプ装置・・・。しかし、他方でエンジンの場合は、円滑な運転が行えるようにするため、良好な潤滑性能を有する潤滑油を常にオイルパンに保持させてやる必要がある。・・・【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、・・・潤滑油管理の効率化と交換インターバルの一層の長期化を可能にしたエンジン潤滑油管理システムを提供することにある。」から、刊行物2記載の本発明は、冷暖房用熱ポンプ装置用のエンジンの潤滑油管理システムであることがわかる。

イ.上記記載事項(1)イ.における「図5は、本発明のさらに他の実施例を示すエンジン潤滑装置の概略を示し、図6〜図8はこの装置によって行う潤滑油管理システムのフローチャートを示す。このエンジン潤滑装置は、・・・給油用の油管11には油ポンプ15が設けられている。また、オイルパン2には、上記油劣化検知センサ3のほかに、上限油レベルセンサ13aと下限油レベルセンサ13b・・・がそれぞれ設けられている。
【0018】このようなエンジン潤滑装置は、図6〜図8のようなフローチャートによって潤滑油制御を行うようにする。まず、ステップA1 によって、油劣化検知センサ3からの検知信号により潤滑油が正常か否かを判断する。潤滑油の劣化度が、予め設定した所定の油劣化管理値内であれば、次のステップDによって下限油レベルセンサ13bの信号により油量が下限量を維持しているかを判断する。
【0019】潤滑油が下限量に満たない状態のときは油ポンプ15が作動し、オイルタンク7から新潤滑油をオイルパン2に供給する。次いでステップEにより、上限油レベルセンサ13aからの信号により、上限量を越えていることを判断すると、油ポンプ15は停止する。しかし、油ポンプ15の作動から一定の設定時間を経過しても、潤滑油量が上限を越えないときは、エンジン1を停止させ、それを表示部6に表示する。」及び上記記載事項(1)ウ.から、次のことがわかる。
ステップD、「ポンプ(15)ON」、ステップE、ステップF、「ポンプ(15)OFF」からなる制御フローは、オイルパン2内の潤滑油が下限レベルであった場合に、オイルパン2内の潤滑油が上限レベルになるように、油ポンプ15を作動させることで、オイルタンク7から新潤滑油をオイルパン2に供給するためのものであること、したがって、潤滑油の補給時の制御であることがわかる。
そして、この制御において、ステップEから「ポンプ(15)OFF」を経由して「スタート」に戻る場合とは、新潤滑油の供給によってオイルパン2内の潤滑油のレベルが上限レベルとなって、新潤滑油のオイルパン2への供給を停止する場合であることがわかる。
一方、ステップFから「エンジン停止 停止表示」なるブロックに移行する場合とは、油ポンプ15を作動させてから上限油レベルセンサ13aから信号が発せられるまでに、一定時間以上が経過した場合であることがわかる。
したがって、潤滑油の補給時にはポンプ(15)を駆動し、オイルレベルが上限になるとポンプ(15)を停止し、オイルレベルが上限になるまでに一定の設定時間以上の時間が経過した場合にはエンジン(1)を停止し、エンジン停止した旨を表示するものであることがわかる。また、「エンジン停止 停止表示」なるブロックがあることから、この潤滑油の補給は、エンジン運転中に行われることがわかる。

(3)刊行物2記載の発明
上記記載事項(1)、(2)から、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。

「給油手段により潤滑油をエンジン(1)内に補給するようにした冷暖房用熱ポンプ装置用のエンジン(1)の潤滑油管理システムにおいて、エンジン運転中の補給時にポンプ(15)を駆動し、オイルレベルが上限になるとポンプ(15)を停止し、オイルレベルが上限になるまでに一定の設定時間以上の時間が経過した場合にはエンジン(1)を停止し、エンジン停止した旨を表示する冷暖房用熱ポンプ装置用のエンジン(1)の潤滑油管理システム。」

2-4.対比
訂正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における「オイル」「定置用エンジン11」、「オイル供給装置」、「第1制御弁16」、「オイルが最高レベルを超す」が、訂正発明における「潤滑油」、「エンジン」、「潤滑油供給装置」、「補給用オイル弁」、「オイルレベルが上限になる」に相当する。

したがって、両発明は、
「給油手段により潤滑油をエンジン内に補給するようにした空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置において、エンジン停止中の補給時には補給用オイル弁を開き、オイルレベルが上限になると補給用オイル弁を閉じるようにした空気調和装置用エンジンの潤滑油供給装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1>
訂正発明においては「オイルレベルが上限になるまでに規定以上の時間が経過した場合には点検整備が必要なことを予告表示するとともにオイル弁を閉じるようにした」構成を有しているのに対し、刊行物1記載の発明においてはこの構成を有していない点。

2-5.判断
(1)相違点1について。
刊行物2に記載の発明は「給油手段により潤滑油をエンジン(1)内に補給するようにした冷暖房用熱ポンプ装置用のエンジン(1)の潤滑油管理システムにおいて、エンジン運転中の補給時にポンプ(15)を駆動し、オイルレベルが上限になるとポンプ(15)を停止し、オイルレベルが上限になるまでに一定の設定時間以上の時間が経過した場合にはエンジン(1)を停止し、エンジン停止した旨を表示する冷暖房用熱ポンプ装置用のエンジン(1)の潤滑油管理システム。」である。
ここで、上記刊行物2記載の発明において、「オイルレベルが上限になるまでに一定の設定時間以上の時間が経過した場合にはエンジン(1)を停止し、エンジン停止した旨を表示する」構成の技術的意義を検討する。
刊行物2記載の潤滑油管理システムにおいて、「補給時にはポンプ(15)を駆動し、オイルレベルが上限になるとポンプ(15)を停止」する構成は、その制御フローチャートにおいて「スタート」に戻るように構成されているように、エンジンへの潤滑油の補給が成功した場合である。よって、「オイルレベルが上限になるまでに一定の設定時間以上の時間が経過した場合」とは、オイルレベルセンサ、または、ポンプ(15)を含む潤滑油供給系に不具合があったために、オイルパン内への潤滑油の供給が成功しなかった場合のためのものであると考えられる。そして、ここで「エンジン(1)を停止し、エンジン停止した旨を表示」しているのは、潤滑油の供給が成功しなかった場合の不具合に対する対処であると考えられ、特に、「エンジンを停止した旨を表示する」ことについては、通常の制御ルーチンにあれば停止しないはずのエンジンが停止したことを使用者に認識させようというものであるのだから、システムにおいて何らかの異常または不具合が生じたことを使用者に報知するという趣旨であるといえる。
また、一般に空気調和装置用のエンジンにおいて潤滑油の補給は、エンジン運転中、停止中の如何を問わず行われるものである(特開平5-272323号公報、特開昭59-32609号公報)。
そして、刊行物2記載の発明を訂正発明と対比すると、刊行物2記載の発明における「エンジン(1)」、「冷暖房用熱ポンプ装置」は、訂正発明の「エンジン」、「空気調和装置」に相当する。また、刊行物2記載の発明の「ポンプ(15)」と訂正発明の「補給用オイル弁」とは、潤滑油供給手段である点で共通するものである。
このようなことから、刊行物2には、「給油手段により潤滑油をエンジン内に補給するようにした空気調和装置用のエンジンの潤滑油管理システムにおいて、補給時に潤滑油供給手段を作動させ、オイルレベルが上限になると潤滑油供給手段を停止し、オイルレベルが上限になるまでに一定の設定時間以上の時間が経過した場合には、潤滑油の供給が成功しなかったという不具合に対する対策を行い、何らかの異常または不具合が生じたことを使用者に報知する」という技術思想が示されていると認められる。
そして、液体を所定液位となるまで自動供給する技術として、液体の供給開始から所定液位となるまで所定時間以上経過したときに液位検出器を含む液体供給手段の不具合であると判断し、液体供給を停止するということが本願出願前に周知の技術的事項である(特開平6-43005号公報(特に、「第1水位検出手段(S)」、「第2タイマ手段」を参照。)、特開平1-126942号公報(特に、「特許請求の範囲」、第2頁左下欄第5行から右下欄第6行を参照。)、特開平1-222158号公報(特に、第6頁右下欄第6〜16行、第4図を参照。))ことを考慮すると、刊行物1記載の発明に対して刊行物2記載の技術思想を適用して、エンジン停止中の補給時にオイルレベルが上限になるまでに一定の設定時間以上の時間が経過した場合には、不具合が生じたことを使用者に報知すると共に潤滑油の供給が成功しなかったという不具合に対する対策を講じるものとし、その際に、潤滑油の供給を停止させるべく、刊行物1記載の発明における電磁弁を閉じる構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、制御中に不具合が生じた場合に点検整備が必要なことを報知するという技術的事項は、本件特許出願前に周知の技術的事項(特開平3-189339号公報、特開平4-215999号公報、特開昭62-131841号公報)である。
したがって、刊行物1記載の発明に対して刊行物2記載の技術思想及び上記周知の技術的事項を適用し、上記相違点1に係る訂正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

また、訂正発明を全体として検討しても、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術思想及び上記周知の技術的事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

したがって、訂正発明は、刊行物1記載の発明、及び、刊行物2記載の技術思想、上記本件特許出願前に周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第5.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-24 
結審通知日 2006-02-28 
審決日 2006-03-14 
出願番号 特願平6-173328
審決分類 P 1 41・ 575- Z (F01M)
P 1 41・ 121- Z (F01M)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 関 義彦
清田 栄章
登録日 2004-06-04 
登録番号 特許第3560073号(P3560073)
発明の名称 エンジンの潤滑油供給装置  
代理人 玉城 信一  

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