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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1135589
審判番号 無効2005-80129  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-14 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-22 
確定日 2006-04-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第3630706号発明「内容物保存性に優れたプラスチック多層容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第3630706号の請求項1に係る発明(平成5年9月1日出願、平成16年12月24日設定登録。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】耐湿性熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置するガスバリヤー性樹脂から成る第一の中間層と、内層側に位置する、脱酸素剤を配合した樹脂組成物から成る第二の中間層とを備えたプラスチック多層容器であって、前記第二の中間層よりも内側の少なくとも一層が、樹脂100重量部当たり、1乃至100重量部の、比表面積が1.0m2/g以上の吸着性消臭剤を含有する樹脂組成物の層であり、且つ外層の厚みが内層の厚みよりも厚いことを特徴とする内容物保存性に優れた多層プラスチック容器。」(以下、「本件特許発明」という。)

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張し、証拠方法として、甲第1号証(特公昭62-1824号公報)及び甲第2号証(「化学便覧 応用化学編 第5版」平成7年3月15日丸善株式会社発行)第396〜398頁)を提出している。

3.甲第1号証及び甲第2号証
甲第1号証には、下記の(a)ないし(h)の事項が記載されている。
(a)「酸素ガス透過性を有する樹脂Pに還元性物質を主剤とする脱酸素剤dを配合して成形してなる層(P+d)と、酸素ガス遮断性を有する層Vとを積層した構成を有する包装用多層構造物。」(特許請求の範囲第1項)
(b)「本発明の包装用多層構造物を用いて袋、容器等を構成すれば、袋、容器等の内部は高度の無酸素状態が保たれ、内容物の酸化防止、防カビ、防虫、変色防止、防錆、風味保存等の効果が充分に奏される。」(1頁2欄21行〜25行)
(c)「本発明における還元性物質を主剤とする脱酸素剤dとしては、還元鉄、還元性亜鉛等の金属粉、FeO、FeTiO3、Fe3O4など鉄の還元性の低位酸化物、亜ニチオン酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、シユウ酸塩、ピロガロール、ロンガリット、グルコース、銅アミン錯体、ビタミンCなど、或いはこれらに適宜水酸化カルシウム、活性炭、塩化ナトリウム、種々のフイラーなどを混合したもの等還元性物質を主剤とするものが用いられる。」(2頁3欄1行〜10行)
(d) 「上記酸素ガス透過性を有する樹脂Pに対する脱酸素剤dの配合量は、脱酸素剤dが両者の合計量(P+d)の1〜99重量%、なかんずく10〜90重量%を占めるように選ぶべきである。・・・脱酸素剤の割合が上記範囲より少ないときは包装容器中の酸素を充分に吸収することができず、一方その割合が上記範囲を越えるときは層の強靱性が極端に低下して、所期の目的を達しえなくなる。」(2頁4欄33行〜3頁5欄1行)
(e)「酸素ガス透過性を有する樹脂Pに還元性物質を主剤とする脱酸素剤dを配合して成形してなる層(P+d)と、酸素ガス遮断性を有する層Vとを積層することにより、本発明の包装用多層構造物が構成される。まずV/(P+d)の層構成を有する2層構造物は、V層が外側、(P+d)層が内側になるように袋、箱、ボトル、チューブ等の包装容器を形成すれば、包装容器内部の空気中の酸素は(P+d)層中のdに吸収されてすみやかに減少し、ついには0.1%以下にまでなる。一方外部の空気中の酸素はV層にはばまれて内部に浸透することができず、仮に微量浸透しても(P+d)層の所でdにキャッチされてしまう。これにより包装容器内部は長期間無酸素条件下に保たれるので、食品、医薬品の保存、金属部品の防錆等に卓効を奏するようになる。」(3頁5欄2行〜18行)
(f)「代表的な構成を例示すれば、V/(P+d)/Xの構成において、X層として酸素透過性が大きく、透湿防止性を有し、かつヒートシール性を有する樹脂層を設け、これを内側にすれば製袋に際しヒートシールが円滑にできること、内容物(食品等)と脱酸素剤とが接触しないことなど実用上極めて大きな効果が奏される。かかるX層を構成する好ましい樹脂としては低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、・・・・・があげられる。Y/V/(P+d)の構成も有用である。このY層としては腰の強い基材フイルムを使用することが好ましい。・・・・・このようなY層としては、二軸延伸ポリプロピレンフイルム、二軸延伸ナイロンフイルム、・・・・・なども用いられる。・・・・・以上の態様のほかX/V/(P+d) V/(P+d)/Y Y/V/(P+d)/XなどV層と(P+d)層とを少なくとも1層づつ含む多種の構成がとられる。V層と(P+d)層との間に他の層が介在していても何ら差支えない。」(3頁6欄3行〜42行)
(g)「一方例1〜4においては非常に良好な結果が得られる。例2や4が例1よりさらに良いのは、最外層の二軸延伸ポリプロピレンフイルムにより湿気がV層に達しないので、V層の酸素遮断性が低下しないためと思われる。」(5頁9欄25行〜29行)
(h)実施例として、「例1」には、V層と(P+d)層(Pとdの重量比1:1)とからなる2層フイルムが記載され、「例4」には例1で得られた2層フイルムのV層の外側にウレタン系接着剤を用いて二軸延伸ポリプロピレンフイルムをラミネートし、(P+d)層側にヒートシール層を形成させてなる4層フイルムのヒートシール層を内側にしてヒートシール法により袋を作成したことが記載されている。
また、甲第2号証には、「11.4.5 フイルム成形」の項に、「(i)押出し機 ・・・厚み精度が厳しく要求される場合には、押出し機とダイの間にギヤーポンプが設置される。・・・」(396頁右欄)、「(ii)ダイ ・・・自動厚み制御装置は、引取り機に設置したβ線厚み測定装置などによりフィルム幅方向の厚み分布を測定し、その結果に基づいてダイリップ間隙を自動的に調整する。」(397頁左欄)、及び「(ii)・・・・各層樹脂をダイ内につくった複数のマニホールドに流入させ広幅化し、スリットを通して合流積層多層フィルム成形する方法である。この方法は、各層の厚み精度が優れているという特徴をもっている。」(398頁左欄)と記載されている。

4.対比・判断
本件特許発明と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証には、外側から順に、二軸延伸ポリプロピレンフイルム等の腰の強い基材フイルムからなるY層、酸素ガス遮断性を有するV層、酸素ガス透過性を有する樹脂Pに還元性物質を主剤とする脱酸素剤dを配合して成形してなる(P+d)層、透湿防止性を有するX層からなる多層プラスチック容器が記載されており、上記「二軸延伸ポリプロピレンフイルム」は、耐湿性を有する熱可塑性フイルムであることからみて、両者は、耐湿性熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置するガスバリヤー性樹脂から成る第一の中間層と、内層側に位置する、脱酸素剤を配合した樹脂組成物から成る第二の中間層とを備えたプラスチック多層容器である点で一致する。
しかし、甲第1号証には、本件特許発明を特定するための事項である「前記第二の中間層よりも内側の少なくとも一層が、樹脂100重量部当たり、1乃至100重量部の、比表面積が1.0m2/g以上の吸着性消臭剤を含有する樹脂組成物の層である」(以下、「要件A」という。)こと、及び「外層の厚みが内層の厚みよりも厚い」(以下、「要件B」という。)ことについては何も記載されていない。
上記要件Aについて更に検討すると、従来より、容器内の残存酸素を吸収し、容器内を高度の無酸素状態に保持して内容物の保存性を高めるべく、容器壁中に脱酸素剤を配合してなる容器が提案されていたが、容器内を高度の無酸素状態に維持した場合にも、容器内容物の香味保持性が低下する傾向が認められ、特にこの容器が、内容物が充填された状態で電子レンジ等で加熱された場合に、異味、異臭が発生するという欠点があったところ、本件特許発明は、脱酸素剤を含有する第二の中間層よりも内側に「樹脂100重量部当たり、1乃至100重量部の、比表面積が1.0m2/g以上の吸着性消臭剤を含有する樹脂組成物の層」を設け、脱酸素剤自体或いは脱酸素剤と樹脂との反応、更には脱酸素剤による酸素吸収反応により生じる香味低下の原因物質を吸着性消臭剤に吸着させることにより、異味異臭成分が内容物に移行するのを防止するようにしたものである。
甲第1号証には、本件特許発明が解決しようとする上記技術課題について記載も示唆もなく、当然のことながら、脱酸素剤を含有する第二の中間層よりも内側に「樹脂100重量部当たり、1乃至100重量部の、比表面積が1.0m2/g以上の吸着性消臭剤を含有する樹脂組成物の層」を設けることを示唆する記載は何もない。
この点について、請求人は、甲第1号証に「本発明における還元性物質を主剤とする脱酸素剤dとしては、還元鉄、還元性亜鉛等の金属粉、・・・・・ビタミンCなど、或いはこれらに適宜水酸化カルシウム、活性炭、塩化ナトリウム、種々のフイラーなどを混合したもの等還元性物質を主剤とするものが用いられる。」(摘示事項(c)参照)及び「 以上の態様のほかX/V/(P+d) V/(P+d)/Y Y/V/(P+d)/XなどV層と(P+d)層とを少なくとも1層づつ含む多種の構成がとられる。V層と(P+d)層との間に他の層が介在していても何ら差支えない。」(摘示事項(f)参照)と記載され、加えて本件特許発明を特定する事項である「吸着性消臭剤を含有する樹脂組成物の層」に還元性物質(脱酸素剤)をも含有するものを除外する旨の限定が一切ないことからすれば、脱酸素剤を含有する第二の中間層よりも内側に「吸着性消臭剤を含有する樹脂組成物の層」を設けることは甲第1号証に記載されているといえる旨主張している。
上記主張について検討すると、甲第1号証には、請求人が指摘するとおり、還元鉄等の還元性物質に活性炭等を混合することができると記載されているが、技術常識を参酌すれば、甲第1号証においては、活性炭等は還元鉄等の還元性物質の酸化反応の促進剤として、言い換えれば脱酸素剤を構成する1成分として加えられているものと解され(必要なら、例えば特開平5-168842号、特開平5-57185号、特開昭63-62547号公報参照)、脱酸素剤dに関する上記個所は、脱酸素とは別個の消臭という目的のために活性炭等を使用することを教えるものではない。
また、甲第1号証の「V層と(P+d)層とを少なくとも1層づつ含む多種の構成がとられる。」という記載の意味するところについても、(i)V層及び(P+d)層は、それぞれ酸素ガスを有効に遮断する性質及び酸素ガスを有効に吸収する性質を持っていることからすれば、V層或いは(P+d)層をわざわざ2層重ねて設ける必要はないこと、(ii)「以上の態様のほか」として列挙された3種の多層構造のいずれにもV層と(P+d)層が共通して含まれていること、及び(iii)上記個所に続いて「V層と(P+d)層との間に他の層が介在していても何ら差支えない。」と記載されていることを併せ考えると、上記「少なくとも」は、「ほかのことはさておいて。せめて。」(広辞苑第3版“少なくとも”の項参照。)の意味に解するのが自然であり、上記「V層と(P+d)層とを少なくとも1層づつ含む多種の構成がとられる。」は、「V層と(P+d)層とを設けさえすれば他の層の介在については種々の選択が可能である。」という意味に理解すべきである。
以上の事実を踏まえると、脱酸素剤を含有する第二の中間層よりも内側に「吸着性消臭剤を含有する樹脂組成物の層」を設けることが甲第1号証に記載されているということはできず、請求人の上記主張は採用できない。
また、甲第2号証には、積層フイルムの成形において、各層の厚みを高精度で制御することが記載されているのみである。
そして、本件特許発明は、脱酸素剤含有中間層とは別の内側の中間層に吸着性消臭剤を含有せしめることにより、この吸着性消臭剤は、脱酸素剤の層よりも内側に存在して、脱酸素剤の酸素吸収には何ら影響を与えることなしに、酸化-還元反応等により発生する、酸素よりも分子量の大きい異味異臭成分を吸着し、これらの異味異臭成分が内容物に移行するのを防止することができるという格別の効果を奏するものである。
したがって、上記要件Bについて判断するまでもなく、本件特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-22 
結審通知日 2006-02-27 
審決日 2006-03-15 
出願番号 特願平5-217492
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鵜飼 健
鈴木 恵理子
登録日 2004-12-24 
登録番号 特許第3630706号(P3630706)
発明の名称 内容物保存性に優れたプラスチック多層容器  
代理人 小野 尚純  
代理人 吉川 俊雄  
代理人 奥貫 佐知子  
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