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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1135647
審判番号 不服2004-12841  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-23 
確定日 2006-04-24 
事件の表示 特願2003-426068「蓄電装置を備えた熱電併給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日出願公開、特開2004-153998〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年3月17日の出願(特願2000-121811号)(以下、「原々々出願」という。)をもとの出願として平成14年12月25日に新たに特許出願(特願2002-373447号)(以下、「原々出願」という。)し、続いて、原々出願をもとの出願として平成15年6月17日に新たに特許出願(特願2003-171507号)(以下、「原出願」という。)し、さらに、原出願をもとの出願として平成15年12月24日に新たに特許出願したものであり、平成16年5月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月23日に審判請求がなされたものであって、その請求項1ないし9に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「蓄電装置を備えた熱電併給システムにおいて、
電力負荷の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に、発電装置による電力及び商用電力及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給することを特徴とする熱電併給システム。」

第2.分割の適否
1.原出願の出願当初の明細書又は図面に記載された発明
原出願は、平成15年6月17日に出願され、続いて、原出願をもとに平成15年12月24日に本願があらたに出願された後、平成16年4月16日付けで手続補正がなされたものであるから、分割直前の原出願の明細書及び図面は出願当初のものである。
そして、原出願の出願当初の明細書及び図面の全体をみると、「電解水生成方法」に関する発明が記載されているが、本願発明の熱電併給システムに関する記載は一切見当たらない。
したがって、本願発明は、原出願の出願当初の明細書又は図面、すなわち、分割直前の原出願の明細書又は図面に記載された発明ではない。

なお、原出願の平成16年4月16日付け手続補正は、原々出願あるいは原々々出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであったとしても、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、適法な補正ではないというべきである。

2.分割の適否の判断及び本願の出願日の認定
分割出願が適法とされ、出願日が遡及するためには、いわゆる実体的要件として、少なくとも分割出願に係る発明が原出願の出願当初の明細書又は図面に記載されていなければならない。
そして、本願発明は、分割直前の原出願の明細書又は図面、すなわち、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載された発明ではないから、本願は適法な分割出願とは認められない。
上記した理由により、本願の出願日は遡及せず、現実の出願日である平成15年12月24日である。

第3.新規性の判断
1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した国際公開第WO01/69752号パンフレット(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
・「1.蓄電装置を備えた熱電併給システムにおいて、
電力負荷の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に、発電装置による電力及び商用電力及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給することを特徴とする熱電併給システム。」(特許請求の範囲)

この記載及び図面を参照すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「蓄電装置を備えた熱電併給システムにおいて、
電力負荷の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に、発電装置による電力及び商用電力及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給することを特徴とする熱電併給システム。」

2.対比・判断
本願発明と上記引用発明1とを対比すると、両者はすべての点で一致し、相違するところはない。

したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

第4.進歩性の判断
1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用し、原々々出願の出願前に公開された特開平11-155244号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
・「【請求項1】 電力負荷に電力を供給する発電機と、発電機を駆動する熱機関と、熱機関で発生する排熱を回収する排熱回収手段とを有する自己完結型熱電併給システムにおいて、
電力を蓄える蓄電池と、
電力負荷の消費電力が発電機の特定出力未満のとき、発電機からの余剰電力を蓄電池に蓄え、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する制御手段とを含むことを特徴とする自己完結型熱電併給システム。」

この記載及び図面を参照すると、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「蓄電池を備えた自己完結型熱電併給システムにおいて、
電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるとき、不足電力を蓄電池から供給する蓄電池を備えた自己完結型熱電併給システム。」

2.対比
本願発明と上記引用発明2とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「蓄電池」が前者の「蓄電装置」に相当し、同様に、「発電機」が「発電装置」に相当する。
また、本願発明の「熱電併給システム」と引用発明2の「自己完結型熱電併給システム」とは、いずれも熱電併給システムである点で共通し、本願発明の「電力負荷の消費電力が特定出力C1以上の時間帯に」と引用発明2の「電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるとき」とは、いずれも電力負荷の消費電力が特定出力を超えるときである点で共通するとともに、本願発明の「発電装置による電力及び商用電力及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給すること」と引用発明2の「不足電力を蓄電池から供給する蓄電池を備えた」こととは、いずれも発電装置による電力及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給することという概念で共通する。

したがって、両者は、
「蓄電装置を備えた熱電併給システムにおいて、
電力負荷の消費電力が特定出力を超えるとき、発電装置による電力及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給する熱電併給システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
電力負荷の消費電力が特定出力を超えるときに関して、本願発明は、電力負荷の消費電力が「特定出力C1以上の時間帯」であるのに対し、引用発明2は電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるときである点。
[相違点2]
熱電併給システムに関して、本願発明は、熱電併給システムであるのに対し、引用発明2は、「自己完結型」熱電併給システムであり、発電装置による電力及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給することに関して、本願発明は、発電装置による電力及び「商用電力」及び蓄電装置に貯えられた電力を併用して電力を供給することであるのに対し、引用発明2は商用電力を併用するものではない点。

3.判断
(1)[相違点1]について
一般的に、一日の時間帯のうち特に電力負荷の消費電力が大きくなるピーク時間帯が存在することは普通に知られているところであるから、引用発明において、電力負荷の消費電力が特定出力を超えるときとして、電力負荷の消費電力が発電機の特定出力を超えるときの代わりに、電力負荷の消費電力が特定出力C1以上の時間帯とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(2)[相違点2]について
電力供給システムにおいて、発電機からの電力と商用電力を併用することは、例えば、特開2000-69675号公報、特開平11-262184号公報、特開平8-47175号公報に記載されているように、原々々出願の出願時において周知技術である。
そして、引用発明2は、自己完結型熱電併給システムであるが、商用電力を排除する趣旨のものではないので、発電機と蓄電池による電力では負荷の需要電力に足りないときなどに、上記周知技術を参考にして、さらに商用電力を併用することは、当業者にとって格別困難なことではない。

(3)本願発明を全体として検討しても、引用例2に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するものとも認められない。

したがって、本願発明は、原々々出願の出願前に公開された引用例2に記載された発明及び原々々出願時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、仮に、本願の出願日が、原々々出願の出願日に遡及するものであったとしても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許
第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明は、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-27 
結審通知日 2006-02-28 
審決日 2006-03-13 
出願番号 特願2003-426068(P2003-426068)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉田 恵一  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 佐々木 芳枝
丸山 英行
発明の名称 蓄電装置を備えた熱電併給システム  
代理人 佐藤 富徳  

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