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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16C
管理番号 1135651
審判番号 不服2004-26043  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-22 
確定日 2006-04-24 
事件の表示 平成10年特許願第370549号「潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年7月11日出願公開、特開2000-192970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成10年12月25日の出願であって、その請求項1〜7に係る発明は、平成18年2月6日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
(なお、平成17年1月21日付け手続補正は、当審において、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により決定をもって却下された。)
「【請求項1】
内輪及び外輪と、当該内輪と外輪との間に介装される複数の円すいころと、当該円すいころを保持すると共に、前記内輪及び外輪のいずれか一方の端面より外方に突出している保持器と、前記内輪、外輪、円すいころ及び保持器により形成される空間内に充填される潤滑剤含有ポリマと、を備えた潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受であって、
前記保持器は、前記潤滑剤含有ポリマによってまんべんなく被われており、
前記内輪の外周面、前記外輪の内周面、前記円すいころの表面及び前記保持器の表面には、グリースが10〜1000μmの厚さで塗布されており、
前記潤滑剤含有ポリマを形成する樹脂及び潤滑剤と、前記グリースとは相溶性が低い組合わせである、潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用刊行物
これに対し、当審において、平成17年12月8日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平4-75590号(実開平6-40459号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)、特開平10-169659号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開平7-139551号公報(以下、「刊行物3」という。)及び特開昭58-180598号公報(以下、「刊行物4」という。)には、概略以下の発明が記載されている。

(2-1)刊行物1
「複列転がり軸受」に関し、図面とともに次の記載がある。
[1-イ] 「【従来の技術】
円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受等の転がり軸受の転動体を複列に配列した複列転がり軸受における潤滑には、グリースが一般に用いられている。
しかし、グリースは補給のためのメンテナンスが必要であり、またその漏出が生じると軸受周辺を汚損する問題がある。
このような問題点を解消するために、グリースに代えて固形潤滑組成物を用いることが有効であると一応考えることができる。固形潤滑組成物を充填した複列転がり軸受は、図5に示すように、内輪1、1と外輪2の間の間隙に上記の組成物3が充填される。各列の転動体4、4の周辺の組成物3は連続して一体の固形物となる。」(段落【0002】〜【0004】)
[1-ロ] 「固形潤滑組成物は、「プラスチックグリース」、「ポリループ」等の商品名で知られているものであり、平均分子量約1×106 〜5×106 の超高分子量ポリエチレン95〜1wt%と、その超高分子量ポリエチレンのゲル化温度より高い滴点を有する潤滑グリース5〜99wt%とからなる混合物を転動体4のまわりの空所に充填したのち、上記超高分子量ポリエチレンのゲル化温度以上に加熱焼成し、その後冷却固化せしめたものである(特公昭63-23239号公報参照)。」(段落【0011】)
[1-ハ] 「図3に示した第2実施例は、複列円すいころ軸受の場合であり、この場合も、各列の固形潤滑組成物3、3は、間隙8をおいて対向しており、相互に独立している。この場合は、内輪1、1相互間に間座17を介在した点、及び円すいころ4’が保持器18により保持されている点を除き、他は前述の第1実施例と同様である。」(段落【0019】)
[1-ニ] 図3から、円すいころ4’を保持する保持器18は、内輪1の端面より外方に突出していること、潤滑剤含有ポリマが内輪1、外輪2、円すいころ4’及び保持器18により形成される空間内に充填されていること、及び保持器18はその大部分が固形潤滑組成物によって被われていることが、また図4からは、
転がり軸受を組み立てた後、内輪の幅が広い方の端面が接触し、かつダミー外輪の幅が狭い方の端面及び保持器が接触しない構造を備えた外側治具と、ダミー外輪の幅が広い方の端面が接触しかつ内輪の幅が狭い方の端面及び保持器が接触しない構造を備えた内側治具と、の間に転がり軸受を位置させてなる装置が、それぞれ看取できる。

上記摘記事項及び図面(特に図3)の記載からみて、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

[引用発明]
内輪1及び外輪2と、当該内輪1と外輪2との間に介装される複数の円すいころ4’と、当該円すいころ4’を保持すると共に、前記内輪1の端面より外方に突出している保持器18と、内輪1、外輪2、円すいころ4’及び保持器18により形成される空間内に充填される固形潤滑組成物3とを備えた固形潤滑組成物充填転がり軸受であって、保持器18は、その大部分が固形潤滑組成物3によって被われている固形潤滑組成物充填転がり軸受

(2-2)刊行物2
「円筒ころ軸受」に関し、図面とともに次の記載がある。
[2-イ] 「円筒ころと、該円筒ころが内嵌される孔状のポケットを有して当該円筒ころを保持する保持器と、該保持器の外周側または内周側にあって前記円筒ころの転がり面を形成する外輪及び内輪と、該外輪または内輪のうちの何れか一方に、円筒ころの両端面を案内するために保持器に向けて隙間が小さくなるように延設される一対の円環形状の案内つばと、前記外輪と内輪のあいだに充填され、前記保持器と一体化するように固形化された含油ポリマー部材とからなり、前記保持器のポケットとポケットのあいだの柱部に径方向に貫通する連通部を設けてなることを特徴とする円筒ころ軸受。 」(特許請求の範囲【請求項1】)
[2-ロ] 「含油ポリマー部材9は、外輪4と内輪5のあいだの空間S1およびS2に充填され、保持器3と一体化する。含油ポリマー部材9としては、潤滑油を含むポリマー部材、たとえば、超高分子量ポリエチレンと鉱物油などの潤滑油を混合したもの(特公昭63-23239号公報参照)、ナフテン系潤滑油を含浸させた超高分子量ポリエチレン(特公平3-67559号公報参照)、油とポリメチルペンテンからなる組成物(特公昭54-22415号公報参照)など、従来公知のものが適用される。」(3頁3欄44行〜4欄3行、段落【0014】)
[2-ハ] 「含油ポリマー部材9の形成には、図3に示されるような、型15(2点鎖線参照)を用いて、まず、型15で軸受の側面の一方を塞ぎ、流動性の原料を内輪5と保持器3のあいだの広い方の隙間S5側から注入する。原料は、連絡部10を通って、空間S2からS1側に流入し、案内つば6の内周面6bと保持器3の外周面とのあいだの狭い隙間S4にも完全に充填される。その後、もう1つの型で軸受のもう一方の側面も完全に塞ぎ、軸受ごと内部の原料を、原料樹脂の融点以上に加熱し、ついで冷却する。このようにして得られた含油ポリマー部材9は固体であり、保持器3と一体化しており、ともに、外輪4および内輪5に対して相対的に回転をする。含油ポリマー部材9は回転をしながら、遠心力や熱によって潤滑成分を徐々に滲み出させる。」(3頁4欄4〜17行、段落【0015】)

(2-3)刊行物3
「潤滑剤含有ポリマ部材充填転がり軸受及びその製造方法」に関し、図面とともに次の記載がある。
[3-イ] 「外輪、内輪及び転動体により形成される空間内に潤滑剤含有ポリマ部材を充填してなる転がり軸受において、転がり軸受の外輪の内周面、内輪の外周面及び転動体の表面に離型剤の塗膜が形成されていることを特徴とする潤滑剤含有ポリマ部材充填転がり軸受。」(特許請求の範囲【請求項1】)
[3-ロ] 「そこで、本発明は上記の問題点を解決することを目的とし、即ち軸受の各部材間の摩擦抵抗を低減し、更にポリマの種類に関係なく円滑な回転を維持できる潤滑剤含有ポリマ部材充填転がり軸受を提供すること、並びにその製造方法を提供することにある。」(2頁2欄6〜10行、段落【0006】)
[3-ハ] 「潤滑剤含有ポリマ部材としては、前記グリースをポリエチレンに保持させた潤滑組成物(特公昭63-23239号)の他に、潤滑油やグリースを熱硬化性樹脂や高吸油性高分子に含有、保持させた潤滑組成物等を使用することができる。」(3頁3欄15〜19行、段落【0012】)
[3-ニ] 「【実施例】以下、実施例により本発明をより明確にする。但し、本発明は本実施例に限定されるものではない。玉軸受6305を脱脂洗浄後、フッ素系離型剤〔ダイキン工業(株):ダイフリーGA-6010(エアスプレー)〕をスプレー塗布して該離型剤からなる塗膜を成膜した。次いで、潤滑剤含有ポリマ部材としてポリノルボルネン〔日本ゼオン(株):ノーソレックス〕2.5gとジアルキルジフェニルエーテル型潤滑油〔(株)松村石油化学研究所:モレスコハイル-ブL-150〕7.5g、さらにこの混合物に架橋剤としてt-ブチルパーオキシベンゾエート0.1gを加えて混練して均一に混合したものを用い、軸受の外輪と内輪とに挟まれ、しかも転動体と保持器以外の空間に充填した。その後、この軸受を150℃に加熱されたプレス機に移し、2kg/cm2 の圧力下で30分間保持した。これにより、潤滑剤含有ポリマ部材は、前記空間内で架橋し一体化した。」(3頁3欄42行〜4欄12行、段落【0016】)
[3-ホ] 「以上の操作によって得られた潤滑剤含有ポリマ部材を充填した玉軸受6305は、低トルクでスムーズに回転し、150℃で3000rpm、200時間経過後も良好な潤滑性を示した。また、同様の操作により潤滑剤含有ポリマ部材を充填した円筒及び円錐ころ軸受を作成したところ、良好な結果が得られた。」(3頁4欄13〜18行、段落【0017】)

(2-4)刊行物4
「離型剤」に関し、次の記載がある。
[4-イ] 「従来離型剤としては、シリコン化合物、シリコンオイル、シリコングリース、パラフインワツクス、各種脂肪酸誘導体、グリセリン、グリコール誘導体などが多く用いられており、これらの中ではシリコン系の離型剤がすぐれているとされていた。」(2頁上段左欄20行〜右欄5行)

3.対比
本願発明と上記引用発明とを対比すると、後者の「内輪1」は前者の「内輪」に相当し、以下同様に、「外輪2」は「外輪」に、「円すいころ4’」は「円すいころ」に、「保持器18」は「保持器」に、それぞれ相当する。また、後者の「固形潤滑組成物3」は、前者の「潤滑剤含有ポリマ」と同様のポリマをベースとしたものであって両者は実質的に一致する。
そうすると、両者は、本願発明の用語に倣うと、次の一致点、相違点を有することになる。

[一致点]
内輪及び外輪と、当該内輪と外輪との間に介装される複数の円すいころと、当該円すいころを保持すると共に、内輪の端面より外方に突出している保持器と、前記内輪、外輪、円すいころ及び保持器により形成される空間内に充填される潤滑剤含有ポリマと、を備えた潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受であって、
前記保持器は、前記潤滑剤含有ポリマによって被われている潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受。

[相違点1]
本願発明1の保持器が、「潤滑剤含有ポリマによってまんべんなく被われている」のに対し、引用発明の保持器には一部固形潤滑組成物が被われていない部分がある点
[相違点2]
本願発明が「前記内輪の外周面、前記外輪の内周面、前記円すいころの表面及び前記保持器の表面には、グリースが10〜1000μmの厚さで塗布されており、前記潤滑剤含有ポリマを形成する樹脂及び潤滑剤と、前記グリースとは相溶性が低い組合わせである」のに対し、引用発明では、そのような処理をしているかどうか不明である点

4.当審の判断
(4-1)まず、上記相違点1について検討する。
刊行物1には、従来例として、内輪と外輪の間の間隙に固形潤滑組成物が充填され、転動体周辺の組成物が連続して一体の固形物となったものが示されている(上記摘記事項[1-イ]及び図5)。この例は保持器がない場合についてのものであるが、従来例が固形潤滑組成物が充填されて連続して一体の固形物となっているのであるのであるから、「従来の保持器を有するもの」の場合には、その保持器は該組成物によって「まんべんなく」被われていたものと解される。
そして、刊行物1記載の技術は、複列の場合の組成物の割れ等を防止するために、固形潤滑組成物を連続させずに独立させたものであり、その結果、保持器に該組成物で被われていない部分が生じたものであって、この非被覆部分を形成する点に技術的意味があるものとは解されない。刊行物1記載の技術が、保持器が固形潤滑組成物でまんべんなく被われた構成とすることを阻害するものとはいえない。
また、上記刊行物2には、保持器が含油ポリマー部材によってまんべんなく被われているものが示されている(上記摘記事項[2-ハ]及び図面(特に図3))。この刊行物2記載の技術によれば、含油ポリマーを狭い隙間にも完全に充填させることによって、すなわち、保持器が含油ポリマー部材によってまんべんなく被われることによって、シール性、潤滑性が良好となるものである。
してみると、引用発明において、「固形潤滑組成物」を充填するに際し、保持器が該組成物でまんべんなく被われるようにすることが、当業者にとって格別の創意を要することとは認められない。当業者が必要に応じて適宜なし得ることとするのが相当である。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は当業者が容易に想到し得ることである。

(4-2)次に、相違点2について検討する。
本願明細書の段落【0057】には、「離型剤あるいはグリースを塗布し、離型剤の塗膜を形成する」と記載されており、「グリース」は離型剤と同等の作用、効果を期待して用いられるものと解されるところ、上記刊行物3には、潤滑剤含有ポリマを充填してなる転がり軸受において、外輪の円周面、内輪の外周面及び転動体の表面に離型剤の途膜を形成することによって、軸受の各部材間の摩擦抵抗を低減し円滑な回転を維持できるようにする技術が記載されている(刊行物3の上記各摘記事項参照)。
軸受においては、各部材間の摩擦抵抗の低減や円滑な回転の維持を図ることが特別な課題とはいえず、また、刊行物3記載の技術は、引用発明と同様、固形の潤滑剤含有ポリマーが充填ざれた転がり軸受に関するものであってみれば、該刊行物3記載の技術を引用発明に適用し、軸受の各部材間の摩擦抵抗を低減し円滑な回転を維持できるようにすることを目的として、各部材表面に潤滑剤含有ポリマの充填前に予め離型剤の塗膜を形成するようなことは当業者が必要に応じて容易になし得ることいえる。

ところで、本願明細書には、本願発明が、離型剤ではなく「グリース」を採用することの有利性等については何等記載されていない。段落【0042】に離型剤としては、フッ素系離型剤が好ましいことの記載、また、段落【0046】には、グリースの例として、「フッ素系離型剤」に用いられる油成分を基油とするもの、例えば、フッ素グリース、シリコングリースやフロロシリコングリースを使用することの記載はあるものの、「離型剤」と「グリース」とを対比させて説明する記載は見当たらない。
そうすると、本願発明でいう「グリース」とは、「離型剤の塗膜」を形成するために用いられる、グリース状で適用する「離型剤」をいうものであって、「グリース」である点に特別な意義はないものと解するのが相当である。
しかるに、刊行物4に「従来離型剤としては、シリコン化合物、シリコンオイル、シリコングリース、パラフインワツクス、各種脂肪酸誘導体、グリセリン、グリコール誘導体などが多く用いられており」(上記摘記事項[4-イ])と記載されているように、「グリース」の離型剤も従来より周知である。いわゆる離型剤と、該離型剤の油成分を基油とするグリースとは、離型剤として同列に扱われるものである。
軸受の潤滑において潤滑剤あるいはその油成分を基油とするグリースが汎用されているように、油成分を含む処理剤とその油成分を基油とするグリースは同等に扱われるのが普通であり、離型剤、特に、軸受に用いられる離型剤は潤滑性を阻害しないことも要求されるものであってみれば、該離型剤とその油成分を基油とするグリースとは、当業者であれば容易に置換し得るものである。
してみると、引用発明において、軸受の各部材間の摩擦抵抗を低減し円滑な回転を維持することを目的として、各部材表面に潤滑剤含有ポリマの充填前に予め適用する離型剤として、いわゆる「離型剤」に代えて「グリース」を離型剤として用いることにも、当業者であれば格別の創意は要しないものと言わざるを得ない。
さらに、塗膜の厚さは必要に応じて適宜選択されるものであって、「グリース」の塗膜が特別であるとはいえず、明細書の記載をみても、「10〜1000μmの厚さ」に臨界的意義があるものとも認められない。
そして、グリース状物の塗膜がいわゆる離型剤の塗膜よりも厚めであろうことは、当業者が当然予測し得ることであって、刊行物3に離型剤を「0.1〜1.0μ程度の膜厚」となるように塗布する旨の記載があったとしても、グリースで適用する場合に、10〜1000μm程度の厚さを想定することが当業者にとって格別困難なこととは認め難い。
また、離型剤が、接する部材の構成成分とは相溶性の低い組合せであることが好ましいことは、当業者であれば当然に承知していることであって、刊行物3に記載される離型剤が潤滑剤含有ポリマを形成する樹脂及び潤滑剤と相溶性が低いものであってみれば、離型剤の油成分を基油とするグリースを用いる場合にも当然に「相溶性の低い」組合せを選択することになるものである。

以上のとおりであるから、上記相違点2に係る本願発明の構成は、刊行物3及び4記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとするのが相当である。

審判請求人は、平成18年2月6日付け意見書において、「10〜1000μm」のエステルグリース被膜とフッ素系離型剤を「0.1〜1.0μm」塗布した場合とを比較した実験結果というグラフを示し、顕著な作用、効果がある旨主張する。
しかしながら、程度の差こそあれ、離型剤の場合と同種の作用、効果であり、膜厚が大きい方がより大きい効果が期待できるであろうことは、当業者が容易に予測し得ることにすぎない。
そして、審判請求人は「グリース」が「前記潤滑剤含有ポリマを形成する樹脂及び潤滑剤とは相溶性が低い」ものである点を主張するが、上記のように、離型剤が、対象とする部材の構成成分とは相溶性の低い組合せであることが好ましいことは、当業者であれば当然に承知していることにすぎない。いわゆる離型剤の油成分を基油とするグリースであれば、該条件を満足するものであって、本願発明における「グリース」が、刊行物3に記載されるような離型剤の油成分と同じ油成分を基油とするようなグリースを排除している訳でもない。
してみると、上記のように「離型剤」に代えて該離型剤の油成分を基油とするグリースを離型剤として用いることが容易であると認められる以上、「グリース」を採用することは、やはり、当業者が容易に想到し得ることとするのが相当である。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

(4-3)よって、本願発明は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項1に係る発明(本願発明)が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-28 
結審通知日 2006-02-28 
審決日 2006-03-13 
出願番号 特願平10-370549
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 藤村 泰智
常盤 務
発明の名称 潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受及びその製造方法  
代理人 大賀 眞司  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  
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