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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1135691 |
審判番号 | 不服2002-12804 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-12-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-11 |
確定日 | 2006-05-22 |
事件の表示 | 平成11年特許願第166108号「出版システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月19日出願公開、特開2000-353197、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年6月11日の出願であって、平成14年5月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月9日付で手続補正がなされ、その後、当審において平成18年4月4日付で拒絶の理由を通知し、これに対し、同年4月14日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 平成18年4月14日付の手続補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 販売対象の書籍のデータ集である出版コンテンツを収録した出版データベースと、 印刷物の1冊中に入れる書籍の順番、各ページのレイアウト、表紙の柄等のユーザ編集で使用する編集部品を収録した編集部品ライブラリと、 ユーザへ割り振る識別データのデータベース及びユーザによる編集過程の経歴であるメタ情報のデータベースを有し、ユーザの操作する端末が接続され、前記出版データベース及び編集部品ライブラリとユーザとのアクセスを管理する管理サーバと、 該管理サーバの指示に従い前記出版データベース及び編集部品ライブラリによるデータを基に印刷物を印刷する出版センターと、 からなる出版システムであって、 前記管理サーバは、前記端末から発信されたユーザの出版依頼を受理すると、当該端末へ前記識別データのデータベースにある識別データを送付し、前記ユーザに前記端末による前記出版データベース及び編集部品ライブラリへの前記識別データを提示してのアクセスをさせ、前記出版データベース中の出版コンテンツ及び前記編集部品ライブラリ中の編集部品を組み合わせての編集をさせて編集後データの作成を行わせ、 前記管理サーバは、前記編集時に実行された全プロセスをユーザごとのメタ情報ファイルとして前記メタ情報のデータベースに記録すると共に、前記編集後データを記憶手段に記憶して、該記憶された編集後データを前記出版センターへ送信し、 前記出版センターは、受信した前記編集後データを基に前記印刷物を印刷して、該印刷物をユーザに提供し、 前記管理サーバは、前記編集後データの前記出版センターへの送信が終わると、前記編集後データを前記記憶手段から削除すると共に、前記メタ情報ファイルを前記メタ情報のデータベースにそのまま残すようになっている出版システム。 【請求項2】 出版センターが印刷した印刷物に、非コピー品であることを証明する証明書を添付してユーザへ提供する請求項1に記載の出版システム。 【請求項3】 出版センターが印刷した印刷物に、識別データのすかしを入れる請求項1又は請求項2に記載の出版システム。」 と補正された。 上記の【請求項1】の「販売対象の書籍のデータ集である出版コンテンツを収録した出版データベースと、印刷物の1冊中に入れる書籍の順番、各ページのレイアウト、表紙の柄等のユーザ編集で使用する編集部品を収録した編集部品ライブラリと、ユーザへ割り振る識別データのデータベース及びユーザによる編集過程の経歴であるメタ情報のデータベースを有し、ユーザの操作する端末が接続され、前記出版データベース及び編集部品ライブラリとユーザとのアクセスを管理する管理サーバと、該管理サーバの指示に従い前記出版データベース及び編集部品ライブラリによるデータを基に印刷物を印刷する出版センターと、からなる出版システムであって、」は、当初明細書に【発明の実施の形態】として記載された「【0011】ユーザは、たとえば自分の所有する端末を使用してインターネットを通じ、出版社の出版データベース、編集部品ライブラリ、管理サーバと通信可能である。出版データベースは、多数の出版社ごとに備えるもの、あるいは、多数の出版社のデータをまとめて1つにしたものとすることができる。この出版データベースには、出版社の販売する書籍のデータを集めた出版コンテンツを収録してある。編集部品ライブラリは、ユーザが自分なりの独自編集を行うときのパーツ、たとえば表紙につかう絵柄、ページの振り方、挿し絵をどのように入れるかなどのページレイアウト、余白のサイズなどのサンプルを収録している。【0012】管理サーバは、識別データ(Standard Individual Publishing Number:SIPN)のデータベースと、メタ情報のデータベースと、をもつ。SIPNデータベースは、通し番号を収録したもので、出版依頼を受理したユーザへ順に割り振られていく。メタ情報データベースは、ユーザから出版依頼があると対応してつくられるメタ情報のファイルを収録する。各メタ情報ファイルは、出版依頼から印刷へ至るまでに実行された全プロセスをユーザごとに記録したもので、これをたどることにより、ユーザがどのような独自編集を行ったかがわかる。【0013】これら管理サーバ、出版データベース、編集部品ライブラリはインターネットを介して、本例では専用の出版センターにつながっている。該出版センターには複数のプリンタが備えられており、管理サーバからの指示に従って編集後のデータを受け取り、印刷・製本が行われる。」及び「【0015】…ユーザは、編集部品ライブラリに入っている編集パーツを利用して、…1冊中に入れる書籍の順番…等々、自分独自の加工を施した本を作成することができる。」から自明のことであり、【請求項1】の「前記管理サーバは、前記端末から発信されたユーザの出版依頼を受理すると、当該端末へ前記識別データのデータベースにある識別データを送付し、前記ユーザに前記端末による前記出版データベース及び編集部品ライブラリへの前記識別データを提示してのアクセスをさせ、前記出版データベース中の出版コンテンツ及び前記編集部品ライブラリ中の編集部品を組み合わせての編集をさせて編集後データの作成を行わせ、」は、同じく記載された「【0014】以上の出版システムを利用するユーザは、まず、インターネットで出版データベースに接続し、品揃えされている書籍の目次を閲覧することができる。そして、購入したいものが見つかれば、出版依頼を発信する。この出版依頼は管理サーバに受理され、即座にSIPNが当該ユーザ端末に付与される。SIPNが付与されると、出版データベースへのアクセス権が与えられたことになり、ここに入っている書籍の全容をユーザの使用している端末で見ることが可能となる。また同時に、SIPNの付与により編集部品ライブラリへのアクセスも可能になり、その編集パーツを自由に使用することができるようになる。すなわちSIPNの付与が、不正コピーをしない旨の誓約の意味をもつものとしてある。【0015】出版データベース及び編集部品ライブラリへのアクセス権を与えられたユーザは、編集部品ライブラリに入っている編集パーツを利用して、出版データベースから抽出した書籍データを編集し、1冊中に入れる書籍の順番、各ページのレイアウト(余白や絵の挿入位置、段落設定、フォントなど)、表紙の柄等々、自分独自の加工を施した本を作成することができる。このように編集部品ライブラリから編集パーツを選んで編集を行うようにすることで、字体や文字飾りなどの選択パーツを標準化しておくことができ、出版センターで印刷するときに指定フォントがないなどの不具合を防ぐことができる。」から自明のことであり、【請求項1】の「前記管理サーバは、前記編集時に実行された全プロセスをユーザごとのメタ情報ファイルとして前記メタ情報のデータベースに記録すると共に、前記編集後データを記憶手段に記憶して、該記憶された編集後データを前記出版センターへ送信し、前記管理サーバは、前記編集後データの前記出版センターへの送信が終わると、前記編集後データを前記記憶手段から削除すると共に、前記メタ情報ファイルを前記メタ情報のデータベースにそのまま残すようになっている出版システム。」は、同じく記載された「【0016】編集が終わってユーザ端末から終了通知がくると、これを受けた管理サーバから出版センターへ編集後のデータが送られる。このときに、編集後データのファイルは削除され、その編集過程のメタ情報ファイルがメタ情報データベースに残される。」及び「【0012】管理サーバは、…メタ情報のファイルを収録する。各メタ情報のファイルは、出版依頼から印刷に至るまでに実行された全プロセスをユーザごとに記録したもので、これをたどることによりユーザがどのような独自編集を行ったかがわかる。」から自明のことであり、【請求項2】及び【請求項3】の記載は、当初明細書の特許請求の範囲に【請求項4】及び【請求項5】として記載されている。 したがって、平成18年4月14日付の手続補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされていると認められ、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成18年4月14日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された上記のとおりのものと認められる。 3.原査定の拒絶の理由 これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、 「この出願の請求項1-5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.富士ゼロックスのオンデマンド出版サービス「BookPark」事業は出版・印刷・流通プロセスの変革をめざす, 印刷情報, 第58巻, 第10号, 平成10年10月, pp.70-71 2.特開平6-143867号公報 3.特開平10-302008号公報 4.特開平11-39395号公報 5.特開平6-305200号公報 6.特開平10-329464号公報」 というものであり、特開平9-305598号公報、国際公開第99/17934号パンフレットをさらに周知例として引用している。 4.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された「富士ゼロックスのオンデマンド出版サービス「BookPark」事業は出版・印刷・流通プロセスの変革をめざす, 印刷情報, 第58巻, 第10号, 平成10年10月, pp.70-71」(以下「引用例1」という。)には、 「販売対象の書籍のデータ集である出版コンテンツを収録したコンテンツ・マネジメント・サーバと、ユーザへ割り振る識別データのデータベースを有し、発注者の操作する端末が接続されるオンデマンド・サーバと、該オンデマンド・サーバの指示に従い前記コンテンツ・マネジメント・サーバによるデータを基に印刷物を印刷するプリントセンタと、からなる出版システムであって、 前記オンデマンド・サーバは、前記端末から発信された発注者の出版依頼を受理すると、作業指示を前記プリントセンタへ送信し、前記プリント・センタは、該作業指示に従い前記コンテンツ・マネジメント・サーバによるデータを基に印刷物を印刷して、該印刷物を発注者に配送する出版システム。」 が記載されており、さらに、オンデマンド・サーバが印刷形式をカスタマイズする機能を有することも図から看取される。 同じく引用された特開平6-143867号公報(以下「引用例2」という。)には、 書籍作成システムにおいて、各顧客別に指定された装丁で書籍を印刷すること が記載されている。 同じく引用された特開平10-302008号公報(以下「引用例3」という。)には、 データコンテンツ流通システムにおいて、データコンテンツの加工を加工プログラムによって加工することで行い、二次著作権の対象となる加工データコンテンツを原データコンテンツと加工プログラムによる加工内容を記載した加工シナリオとによって表現し、暗号化された原データコンテンツと暗号化された加工シナリオのみを流通させて、一次著作権と二次著作権の著作権管理を行うこと が記載されている。 同じく引用された特開平11-39395号公報(以下「引用例4」という。)には、 ネットワーク上で公開される電子公開物の証明を行う証明システムにおいて、必要に応じて証明書を印刷して発行すること が記載されている。 同じく引用された特開平6-305200号公報(以下「引用例5」という。)には、 電子承認情報の印刷において、印刷物に追加して検印情報を印刷して、電子承認を行った検印者が判明でき、かつ印刷物の改ざんが検知できるようにすること が記載されている。 同じく引用された特開平10-329464号公報(以下「引用例6」という。)には、 印刷物において、導電性部位と非導電性部位を用紙上の印刷された文字や絵柄と関連して変動した位置に設け、印刷物の真偽判定を可能にすること が記載されている。 同じく引用された特開平9-305598号公報(以下「引用例7」という。)には、 電子出版において、書籍のレイアウト編集に文書テンプレートを利用すること が記載されている。 同じく引用された国際公開第99/17934号パンフレット(以下「引用例8」という。)には、 中央配給ユニットと通信チャネルを介して接続された電子書店書籍自動販売機において、販売する書籍の物理的寸法とテキストのフォントのサイズ及び種類を顧客が事前に選択可能にすること が記載されており、さらに、 中央配給ユニットと通信チャネルを介して接続された電子書店書籍自動販売機において、注文された書籍を注文された部数だけ印刷した後、書籍の内容に関するテキストデータを消去すること も記載されている。 5.対比、判断 本願の請求項1〜3に係る発明と引用例1〜8を対比すると、本願の請求項1〜3に係る発明の「前記編集後データの前記出版センターへの送信が終わると、前記編集後データを前記記憶手段から削除すると共に、前記メタ情報ファイルを前記メタ情報のデータベースにそのまま残すようになっている」点は、引用例1〜8のいずれにも記載されていない。 そして、引用例3に、「データコンテンツ流通システムにおいて、データコンテンツの加工を加工プログラムによって加工することで行い、二次著作権の対象となる加工データコンテンツを原データコンテンツと加工プログラムによる加工内容を記載した加工シナリオとによって表現し、暗号化された原データコンテンツと暗号化された加工シナリオのみを流通させて、一次著作権と二次著作権の著作権管理を行うこと」が記載されているが、引用例1に記載された出版システムのプリントセンタは、作業指示に従いコンテンツ・マネジメント・サーバによるデータを基に印刷物を印刷した後、プリントセンタ内で印刷に使用したデータは消去すると考えるのが自然であるから、引用例1に記載された出版システムに、引用例3に記載された一次著作権と二次著作権の著作権管理を行うデータ流通システムに関する上記の技術的事項を適用することは、当業者が容易に着想し得たと認めることはできない。 したがって、本願の請求項1〜3に係る発明は、引用例1〜8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。 当審において通知した拒絶の理由の概要は、「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 記 特許請求の範囲請求項1〜3の記載は、社会システムについての記載と解され、自然法則を利用した物としての構成が不明りょうである。」というものであり、該不備な点は、上記の平成18年4月14日付の手続補正により、解消されている。 6.まとめ 以上のとおりであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2006-04-28 |
出願番号 | 特願平11-166108 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小太刀 慶明、金子 幸一、▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判長 |
小林 信雄 |
特許庁審判官 |
阿波 進 山本 穂積 |
発明の名称 | 出版システム |
代理人 | 竹内 裕 |
代理人 | 西山 春之 |
代理人 | 笹島 富二雄 |