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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1135885
審判番号 不服2004-321  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2006-05-11 
事件の表示 特願2001-151012「金属管用継ぎ手及び金属部材用継ぎ手」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月 9日出願公開、特開2002-130227〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯の概要
本願は、平成13年5月21日の出願(優先権主張平成12年8月14日)であって、平成15年11月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年1月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年2月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
複数の鋼管を軸方向に連結するための継ぎ手であって、
両端部のそれぞれに前記鋼管が挿入可能な筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に外方に突出して形成され、前記本体部に挿入された前記鋼管の端面を支持可能な支持面を有する鍔部と、
を備えた鋼管用継ぎ手。」
と補正された。

上記補正は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術事項である、金属管用接ぎ手及びその連結する金属管について、「鋼管用接ぎ手」及び「鋼管」との限定を付加したものである。
そうすると、上記補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載事項
<刊行物>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実公昭39-3248号公報(以下、「刊行物」という。)には、「部材接合金具」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
(a)「本案は角型鈑1の両端部において上面には切口が下方に至るに伴つて拡開する如き一双の切溝2,2を長手方向に附して梯形断面形の遊離片aを形成し、両側面には長手方向に切溝3を附して前記遊離片aの両側に相隣る〔逆さL〕(実際の表記は、Lを180度回転させ上下逆さまにしたもの)型遊離片b,bを形成し、前記角型鈑1の中央には角型鈑4を捲装し両鈑1,4にわたつて螺杆5を回動自在に嵌装し、同螺杆5に両端上面に突子6を植立した水平押圧鈑7を螺装した部材接合金具に関するものである。」(第1頁左欄第13行〜同頁同欄第22行)
(b)「本案は前記したように構成されているので直線状に接合すべき一双の角型部材A,Bを本案接手金具の角型鈑1の両端より鈑4に衝接するまで嵌着する。この際鈑4は部材A,Bのストツパーの用を果すものである。しかる後螺杆5を螺回するとこれに螺装された水平押圧片7が上昇し、その両端上面に植立された突子6が遊離片aを押上げる。しかるに同遊離片aは下方に至るに伴つて拡開する一双の切溝2によつて鈑1の頂面に形成されており、梯形断面形をなしているのでその押上げられるのに伴い、両側傾斜片a1によつて遊離片bの隣接面b1を外側に向つて押圧変位せしめ従つて遊離片aおよびb,bは第3図の矢印に示すごとく、上方ならびに左右両側に弾性的に拡開変位して部材A,Bの内面を圧着し、これら部材A,Bを本案接手金具を介して緊密に連結するものである。」(第1頁左欄第29行〜同頁右欄第15行)

(3)対比・判断
刊行物に記載された上記記載事項(a)及び(b)からみて、刊行物に記載された発明の「部材接合金具」は、本願補正発明の「継ぎ手」に相当し、以下同様に、「角型鈑1」は「筒状の本体部」に、「角型鈑4」は「鍔部」に、それぞれ相当するものと認める。
そこで、本願補正発明の用語を使用して本願補正発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、両者は、
「複数の角型部材を軸方向に連結するための継ぎ手であって、
両端部のそれぞれに前記角型部材が挿入可能な筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に外方に突出して形成され、前記本体部に挿入された前記角型部材の端面を支持可能な支持面を有する鍔部と、
を備えた角型部材用継ぎ手。」
で一致しており、下記の点で相違している。
《相違点》
本願補正発明は、接ぎ手の連結する対象物が鋼管であるのに対し、刊行物に記載された発明は角型部材であり、管状ではあるもののその材質が明らかでない点。
そこで、上記相違点について検討する。
《相違点について》
複数の管を軸方向に連結するための継ぎ手であって、両端部のそれぞれに前記管が挿入可能な筒状の本体部と、前記本体部の外周面に外方に突出して形成され、前記本体部に挿入された前記管の端面を支持可能な支持面を有する鍔部と、を備えた管用継ぎ手において、その接ぎ手の連結する対象物を鋼管とすることは、従来周知の技術手段にすぎないものである。(特開平4-371626号公報、登録実用新案第3038008号公報、特開昭55-114715号公報等、参照。)そして、刊行物に記載された発明の接ぎ手も金属製であり、連結する対象物として金属製のものをも含みうるものであるから、上記従来周知の技術手段を付加することについて、特段の阻害要因を有しているとも認められない。
してみれば、刊行物に記載された発明の角型部材を、上記従来周知の技術手段を適用して鋼管とし、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく、当業者が容易に想到し得たものである。

また、本願補正発明の効果について検討しても、刊行物に記載された発明及び従来周知の技術手段から当業者であれば予測することができる程度のことであって、格別のものとは言えない。

したがって、本願補正発明は、刊行物に記載された発明及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成16年2月4日付けの手続補正により補正された審判請求書中において、「しかしながら、引例3の金具は、角型鈑1の周方向の一部に複数のスリットを有しており、これらスリットにより画定される遊離片a,bは、非連結物A,Bの内壁に対し一部の周方向領域にのみ当接するものです。
これに対し、本願発明の本体部は、筒状に形成されたものであって、軸方向に延びるスリットが設けられたものではありません。したがって、このような構成の継ぎ手によれば、鋼管と連結された状態において、挿入部には全周方向に力が作用し、応力が生じても周方向に均等に分散されることとなるため、疲労が生じにくく、破損のおそれも低くなっています。また、本願発明の継ぎ手は、スリットを有しない筒状構造であるために、本願第2図に示すようなボルト孔15aを作っても強度低下が少なく、このような孔15aにボルトを通して鋼管を固定すれば、単なる摩擦力よりも強固に鋼管を連結することができます。そして、このような作用効果は、鋼管のような比較的大きな部材を連結する場合に、特に有効です。
しかしながら、引例3の金具では、スリットが周方向の一部にのみ形成されたものであるために、連結状態では、荷重が周方向に均等に作用せず、応力に対して弱くなっています。かかる構造では、鋼管のような比較的大きな部材に連結できたとしても、大きな荷重を受けて破損しやすくなります。また、引例3の金具は、周方向の一部と被連結物との間の摩擦力により連結状態を保つ構成であるため、連結状態での力のかかり具合によっては、抜け落ちてしまうおそれがあり、仮に本願第1図及び第3図のような構造物を得ることができたとしても、倒壊するおそれがあり大変危険です。
このように、本願発明は、本体部が、引例3とは異なる、スリットを有しない筒状構造であり、構成が相違するとともに、かかる構成の相違により奏される作用効果も異なるものです。したがって、当業者が引例3に基づいて本願発明を容易に考え出すことは困難です。」(上記手続補正により補正された審判請求書の「4.特許されるべき理由」の「(b)引例3との対比」の項参照)旨主張している。
しかしながら、刊行物(上記の引例3にあたる。)に記載された発明においては、スリットを有するものの本体部は筒状であり、加えて、本願補正発明の筒状の本体部はスリットを有さないもののみを構成としてはいない。さらに、スリットを有さない筒状の本体部を有する継ぎ手は、上記従来周知の技術手段として広く知られているものでもある。
よって、請求人の上記審判請求書中での主張は採用することができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができないものと認められるのであるから、補正後の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明1
平成16年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜9に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の金属管を軸方向に連結するための継ぎ手であって、
両端部のそれぞれに前記金属管が挿入可能な筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に外方に突出して形成され、前記本体部に挿入された前記金属管の端面を支持可能な支持面を有する鍔部と、
を備えた金属管用継ぎ手。」

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実公昭39-3248号公報(以下、「刊行物」という。)の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、前記「2.」で検討した本願補正発明の技術事項である鋼管用継ぎ手及びその連結する鋼管について、「鋼管」との限定を省き「金属管用継ぎ手」及び「金属管」としたものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明1の構成を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物に記載された発明の角型部材を従来周知の技術手段である金属管とし、当業者が容易に発明することができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明(本願発明1)は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明及び従来周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本件出願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本件出願の請求項2〜9に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-14 
結審通知日 2006-03-14 
審決日 2006-03-27 
出願番号 特願2001-151012(P2001-151012)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16B)
P 1 8・ 575- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 熊倉 強  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 藤村 泰智
常盤 務
発明の名称 金属管用継ぎ手及び金属部材用継ぎ手  
代理人 小野 由己男  

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