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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M |
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管理番号 | 1135894 |
審判番号 | 不服2004-3615 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-25 |
確定日 | 2006-05-11 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第351006号「水素吸蔵合金電極の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 7月28日出願公開、特開平 7-192729〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本件出願は、平成5年12月27日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年12月19日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1の記載は次のとおりである(以下、「本願発明」という)。 「【請求項1】 結晶構造が、CaCu5型、C14型および C15型からなる群の少なくとも1つを主体とする水素吸蔵合金を機械的に粉砕し、その水素吸蔵合金に金属ニッケルまたは金属銅を被覆することなく、結着剤を加えてペースト状とした後、集電体に保持させ、乾燥させ、1.5ton/cm2 以上の圧力で、粒子の破砕が起こる加圧成形することを特徴とする水素吸蔵合金電極の製造方法。」 2.引用刊行物とその記載事項 当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭64-81169号公報、及び特開昭61-64069号公報には、それぞれ次の事項が記載されている。 (1)引用例1:特開昭64-81169号公報 (1a)「水素吸蔵合金に結着剤と水を加えペースト状とし、該ペーストを集電体に添着した後、乾燥し、加圧後の厚さが加圧前の厚さに対して10%以上薄くなるように加圧を行う・・・水素吸蔵合金電極の製造方法。」(特許請求の範囲第1項) (1b)「前記加圧を行った後において、1cm3当り4.5g以上の水素吸蔵合金を含有するように加圧を行う」(特許請求の範囲第2項) (1c)「(ヘ)実施例 ・・・LaNi5を機械的に粉砕して微粉化し」(第2頁右上欄第6〜8行)。 (1d)「加圧の程度(%)=加圧前の厚み-加圧後の厚み/加圧前の厚み×100」(第2頁左下欄第3、4行) (1e)「乾燥後の極板を加圧すると、もはや合金粉末の逃げは生じ得ず、多孔度のみが減少し充填密度を上げることが可能であり、これが電池のサイクル寿命に大きな影響を与えることを見い出し」(第2頁左下欄下から第9〜5行) (1f)「加圧前の水素吸蔵合金の充填密度は3.5g/cm3であったが、プレス圧を調節することにより、加圧後の充填密度が・・・4.5g/cm3、5g/cm3、5.5g/cm3である電極を作製した。・・・ここで電極の加圧の程度は、10%として行っている。」(第3頁左下欄第5〜末行) (1g)「本発明は・・・サイクル寿命に優れた水素吸蔵合金電極の製造方法を提供しようとするものである。」(第2頁左上欄第7〜9行) (2)引用例2:特開昭61-64069号公報 (2a)「・・・水素吸蔵合金を1〜10トン/cm2の荷重圧で導電性支持体に圧着する・・・水素吸蔵合金電極の製造方法。」(特許請求の範囲第2項) 3.引用発明 引用例1の(1a)には、「水素吸蔵合金に結着剤と水を加えペースト状とし、該ペーストを集電体に添着した後、乾燥し、加圧後の厚さが加圧前の厚さに対して10%以上薄くなるように加圧を行う・・・水素吸蔵合金電極の製造方法。」が記載されており、さらに、「加圧を行った後において、1cm3当り4.5g以上の水素吸蔵合金を含有するように加圧を行う」(1b)こと、及び、水素吸蔵合金は「LaNi5を機械的に粉砕し」(1c)たものであることも記載されている。 これらの事項を本願発明の記載ぶりに則して整理すると、引用例1には、「LaNi5の水素吸蔵合金を機械的に粉砕し、結着剤を加えてペースト状とした後、集電体に添着させ、乾燥させ、1cm3当り4.5g以上の水素吸蔵合金を含有するように加圧後の厚さが加圧前の厚さに対して10%以上薄くなる加圧を行う水素吸蔵合金電極の製造方法」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。 4.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「LaNi5の水素吸蔵合金」は、本願発明の「結晶構造が、CaCu5型を主体とする水素吸蔵合金」に、引用発明の「添着させ」は、本願発明の「保持させ」に、引用発明の「加圧を行う」は、本願発明の「加圧成型する」にそれぞれ相当し、また、引用発明は、「水素吸蔵合金に金属ニッケルまたは金属銅を被覆すること」のない点で、本願発明と共通する。 そうすると、両発明は、「結晶構造が、CaCu5型を主体とする水素吸蔵合金を機械的に粉砕し、その水素吸蔵合金に金属ニッケルまたは金属銅を被覆することなく、結着剤を加えてペースト状とした後、集電体に保持させ、乾燥させ、加圧成形する水素吸蔵合金電極の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点:本願発明は、「1.5ton/cm2以上の圧力で、粒子の破砕が起こる加圧成形する」のに対し、引用発明は、1cm3当り4.5g以上の水素吸蔵合金を含有するように加圧後の厚さが加圧前の厚さに対して10%以上薄くなる加圧成形をする点。 5.相違点についての判断 引用発明は、水素吸蔵合金の「充填密度を上げること」(1e)によって「サイクル寿命に優れた水素吸蔵合金電極の製造方法を提供」(1g)するという目的を達成するものであって、水素吸蔵合金の充填密度を上げるために、「1cm3当り4.5g以上の水素吸蔵合金を含有するように加圧後の厚さが加圧前の厚さに対して10%以上薄くなる加圧成形」をするものであるといえる。そして、引用例1の(1e)には、「加圧前の水素吸蔵合金の充填密度は3.5g/cm3であったが、プレス圧を調節することにより、加圧後の充填密度が・・・4.5g/cm3、5g/cm3、5.5g/cm3である電極を作製した。」と記載されているから、引用発明は、プレス圧を調節することにより、上記加圧成形を実施するといえるが、具体的にどの程度のプレス圧とするのかについては記載されていない。 しかしながら、水素吸蔵合金の充填密度を上げるためには、加圧成形のプレス圧を高くする必要があることは明らかであるし、引用例2に記載されるように、水素吸蔵合金電極の製造において、水素吸蔵合金の加圧成形に1〜10ton/cm2の荷重圧(プレス圧)が適用されることも知られているのであるから、引用発明の加圧成形のプレス圧を、1.5ton/cm2以上とすることは当業者が容易に想到することである。そして、このような加圧成形において、粒子の破砕が起こることを予測あるいは確認することも、当業者にとって格別な創意工夫を要することではないというべきである。 してみると、本願発明の上記相違点に係る構成は、引用例2の記載事項から当業者が適宜なし得たことである。 6.審判請求人の主張について 審判請求人は、平成17年12月19日付け意見書において、引用例1に記載される実施不可能な発明に、たとえ引用例2の発明を合わせたとしても、本願発明を想到することは不可能である旨主張している。 すなわち、引用例1の(1d)に定義される加圧の程度(%)は、加圧前の圧粉体の充填密度をρ1、加圧後の圧粉体の充填密度をρ2とすると、「(1-ρ1/ρ2)×100」で表されるから、「加圧前の水素吸蔵合金の充填密度は3.5g/cm3であったが、プレス圧を調節することにより、加圧後の充填密度が・・・4.5g/cm3、5g/cm3、5.5g/cm3である電極を作製した。・・・ここで電極の加圧の程度は、10%として行っている。」(1f)という引用例1の記載に基づいて、4.5g/cm3、5g/cm3、5.5g/cm3である電極の加圧の程度を計算すると、それぞれ、22%、30%、36%となり、これらの電極は、10%の一定値の加圧の程度では実現不可能であるというものである。 しかしながら、充填密度と加圧の程度(%)は相互に関連することは技術常識に照らして明らかであって、加圧前の充填密度が同じ圧粉体を加圧成形して、加圧後の充填密度が異なる圧粉体とする場合、加圧後の充填密度が高い圧粉体は、それよりも加圧後の充填密度が低い圧粉体よりも大きい加圧の程度が適用されることは、上記審判請求人の計算値を参照するまでもなく、自明の事項であるといえるし、引用例の(1a)には、「加圧後の厚さが加圧前の厚さに対して10%『以上』薄くなるように加圧を行う」ことが明確に記載されているのである。そうすると、引用例1の(1f)における上記「ここで電極の加圧の程度は、10%として行っている。」という記載は、「ここで電極の加圧の程度は、10%『以上』として行っている。」の明らかな誤記であるというべきである。 よって、上記審判請求人の主張は妥当なものではないから、採用できない。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-13 |
結審通知日 | 2006-03-15 |
審決日 | 2006-03-29 |
出願番号 | 特願平5-351006 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺本 光生 |
特許庁審判長 |
徳永 英男 |
特許庁審判官 |
吉水 純子 酒井 美知子 |
発明の名称 | 水素吸蔵合金電極の製造方法 |