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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1135898
審判番号 不服2004-6474  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2006-05-11 
事件の表示 特願2000-100779「ワイヤ供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月16日出願公開、特開2001-287033〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、平成12年4月3日に特許出願したものであって、平成14年9月13日付けで拒絶の理由が通知され、平成14年12月4日に意見書が提出され、平成14年12月27日付けで拒絶の理由が通知され、平成15年3月27日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成16年2月9日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成16年4月1日に本件審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本件出願の請求項1〜3に係る発明は、平成15年3月27日付け手続補正書により補正された明細書に記載された特許請求範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものと認められる。(以下、「本願発明」という。)
「溶接ロボットシステムにおいて、ロボットの手首フランジに取り付けられ、モータの駆動によりワイヤを送給するワイヤ送給装置であって、
該ワイヤ送給装置は、該ワイヤ送給装置を前記手首フランジに取付けるための取付手段と、該取付手段に接続されたワイヤ送給部と、ワイヤ送給の駆動用モータとを備え、
前記ワイヤ送給部は、前記モータに連動する減速手段と、該減速手段に接続されたワイヤ送給用ローラとを備え、
前記モータは、前記手首フランジ前方の位置に、前記モータのシャフト方向が前記手首フランジ面と概ね平行となる姿勢で、且つ前記手首フランジ回転軸線方向で該手首フランジと重なるように配置されていることを特徴とするワイヤ送給装置。」

なお、請求項1には、「ワイヤ供給装置。」と記載されているが、その上段に「・・・ワイヤを送給するワイヤ送給装置であって、」と記載されており、請求項2に「請求項1記載のワイヤ送給装置。」との記載があることから、「送給装置」の誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。

3.刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-33478号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下のとおり記載されている。

ア.段落【0005】
「本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、トーチをワイヤ供給装置から離れた広い範囲に亘って移動可能にできかつ溶接品質を向上させることが可能な溶接用サブコントローラ、溶接機及び溶接システムの提供を目的とする。」
イ.段落【0021】
「ワイヤ送給ケーブル22は、前記パワーケーブル17に対応させてやはり一般のものよりも長くなっている(例えば、全長10mとなっている)。このことによるワイヤWの供給抵抗の増加を考慮して、トーチ13には、ワイヤWをトーチ13に引き込むための小型DCモータ33(以下、これを「サブモータ33」という)が内蔵されている。より詳細には、図2に示すように、サブモータ33の本体部33Aがハンドル部15内に収容されかつ駆動軸33Bが前記基部14のうちワイヤ供給路の脇に突出されており、この駆動軸33Bに嵌着した駆動プーリ34と、基部14に回転可能に設けた連動プーリ35との間にワイヤWが挟まれている。そして、サブモータ33が駆動すると、駆動プーリ34の接線速度と同じ速度でワイヤWが軸方向に送られる。また、サブモータ33の動力線37は、図1に示すように、サブコントローラ11内に設けたサブモータ駆動回路38に接続されている。」
ウ.段落【0032】〜【0033】
「<第2実施形態>本実施形態は、図7に示されており、本発明を適用した溶接ロボットのシステムを例示している。以下、第1実施形態と同様の構成に関しては、同一符号を付して、異なる点のみを説明する。
ロボット50のアーム先端には、トーチ13が保持され(このトーチ13には前記第1実施形態のスイッチ36は設けられていない)、ロボット50と離れた場所には、ワイヤ供給装置18が備えられ、前記トーチ13とワイヤ供給装置18との間にはケーブル類が延びている。また、溶接電源12には、サブコントローラ11が接続され、かつ、インターフェース盤51を介してロボットコントローラ52が連なっている。そして、第1実施形態では、トーチ13先端に設けたスイッチ36のオン操作によって、溶接電源12及びサブコントローラ11の各回路が駆動する構成であったが、本実施形態では、ロボット50に入力されたプログラムに基づいて、ロボットコントローラ52から溶接電源12に起動信号が入力されて各回路が駆動するようになっている。」

そして、トーチ13は、ワイヤ送給部を有していることは明らかである。
また、図2、及び図7より、ロボット手首にワイヤ送給部が取り付けられている点、及び、ワイヤ送給部をロボット手首に接続する連結手段が設けられる点が看取できる。
上記記載より、トーチ13は、連結手段、ワイヤ送給部、及びサブモータ33とから構成されるワイヤ送給装置を有していることも明らかである。

以上の記載より、刊行物には、次の発明が記載されているものと認める。(以下、「刊行物記載の発明」という。)
「溶接システムにおいて、ロボットの手首に取り付けられ、サブモータ33の駆動によりワイヤWを送給するワイヤ送給装置であって、
該ワイヤ送給装置は、該ワイヤ送給装置を前記手首に取付けるための連結手段と、該連結手段に接続されたワイヤ送給部と、サブモータ33とを備え、
前記ワイヤ送給部は、前記モータに接続された駆動プーリ34と連動プーリ35とを備えたワイヤ送給装置。」

4.対比
本願発明と刊行物記載の発明とを対比するに、後者の「溶接システム」は前者の「溶接ロボットシステム」に相当し、後者の「サブモータ33」は前者の「モータ」、「ワイヤ送給の駆動用モータ」に相当し、後者の「駆動プーリ34と連動プーリ35」は前者の「ワイヤ送給用ローラ」に相当する。
また、後者の「連結手段」は、ロボット手首とワイヤ送給装置とを連結している連結手段の限りで、前者の「手首フランジに取付けるための取付手段」と共通する。

したがって、本願発明と刊行物記載の発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「溶接ロボットシステムにおいて、ロボットの手首に取り付けられ、モータの駆動によりワイヤを送給するワイヤ送給装置であって、
該ワイヤ送給装置は、該ワイヤ送給装置を前記手首に取付けるための連結手段と、該連結手段に接続されたワイヤ送給部と、ワイヤ送給の駆動用モータとを備え、
前記ワイヤ送給部は、前記モータに接続されたワイヤ送給用ローラを備えたワイヤ送給装置。」である点。
<相違点1>
前者では、ロボットに手首フランジを設け、ワイヤ送給装置を前記手首フランジに取付けるための取付手段により連結するのに対して、後者では、そのように特定されていない点。
<相違点2>
前者では、モータに連動する減速手段と、該減速手段に接続されたワイヤ送給用ローラにより構成されているのに対して、後者では、減速手段を有しておらず、モータにワイヤ送給用ローラを直接接続している点。
<相違点3>
前者では、モータは、手首フランジ前方の位置に、モータのシャフト方向が手首フランジ面と概ね平行となる姿勢で、且つ手首フランジ回転軸線方向で該手首フランジと重なるように配置されているのに対して、後者では、そのように特定されていない点。

5.判断
上記相違点について検討するに、
<相違点1について>
ロボットの手首とワイヤ送給装置等のエンドエフェクタとの連結手段として、手首に手首フランジを設け、エンドエフェクタに取付手段を設けることは慣用手段である。
そして、刊行物記載の発明に前記慣用手段を適用し、上記相違点1に係る特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点2について>
所定の速度や駆動力を得るために、駆動用モータより減速手段を介して駆動力を伝達することは慣用手段である。
そして、刊行物記載の発明に前記慣用手段を適用し、上記相違点2に係る特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点3について>
本願発明の「モータのシャフト方向が手首フランジ面と概ね平行となる姿勢」とは、手首フランジ面とワイヤ送り方向がほぼ直角であることから、モータのシャフト方向がワイヤ送り方向と概ね直角となる姿勢ということができる。
そして、刊行物1の第1実施例である図2において、サブモータ33がワイヤWの送り方向に対してサブモータ33のシャフトが直角方向とする点が看取できる。
そうすると、刊行物の図7からは、サブモータ33がどのように取り付けられているのか必ずしも明確ではないが、刊行物の段落【0033】には、「ロボットアーム50の先端には、トーチ13が保持され(このトーチ13には前記第1実施形態のスイッチ36は設けられていない。)」と記載されていることから、第2実施例である図7のワイヤ送り方向に第1実施例のワイヤ送り方向を合わせて適用すると、本願発明と同じ姿勢で配することが示唆されているということができる。
また、本願のワイヤ送給装置のように旋回する部分にモータ等の重量物を配する際、旋回モーメント等を考慮してできるだけ旋回軸に近い位置に配すること、及び、他のものとの干渉が生じないように、旋回する部分の占有する空間領域を極力小さくすることは、設計上、当然に考慮する設計的事項である。
したがって、刊行物記載の発明において、占有空間等を考慮してモータの位置を上記相違点3に係る特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明、及び前記慣用手段から、当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものでない。

したがって、本願発明は、刊行物記載の発明、及び前記慣用手段から、当業者が容易になし得たものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-08 
結審通知日 2006-03-14 
審決日 2006-03-27 
出願番号 特願2000-100779(P2000-100779)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神崎 孝之千葉 成就  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 豊原 邦雄
佐々木 正章
発明の名称 ワイヤ供給装置  
代理人 竹本 松司  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 湯田 浩一  
代理人 魚住 高博  

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