• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1135937
審判番号 不服2002-19905  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-10 
確定日 2006-05-08 
事件の表示 平成 8年特許願第274725号「魚釣り用リールの構成部材」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月30日出願公開、特開平 9-168352〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年10月17日(優先権主張平成7年10月20日)の出願であって、平成14年9月6日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成14年10月10日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成14年11月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年11月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年11月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「側面にカバー及び外側版が取り付けられるリール本体又はフレームからなる魚釣り用リールの構成部材であって、Mg合金で構成された部材本体上に陽極酸化処理により防食層を形成し、該防食層上にエポキシ系塗料の電着塗装によって封孔層を形成し、更に該封孔層上に、装飾性を持たせるための塗装処理を施すとともに、Mg合金と接触する金属部材を、Mg合金との電極電位差が1V以下である材料としたことを特徴とする魚釣り用リールの構成部材。」
と補正された。

上記補正は、特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「魚釣り用リール」について、「側面にカバー及び外側版が取り付けられるリール本体又はフレームからなる魚釣り用リール」に限定し、さらに、「魚釣り用リールの構成部材」について、「封孔層上に、装飾性を持たせるための塗装処理を施す」との事項を付加し、かつ「Mg合金と接触する金属部材を、Mg合金との電極電位差が1V以下である材料」に限定するものであって、特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

なお、本件補正後の前記請求項1の「側面にカバー及び外側版が取り付けられるリール本体又はフレームからなる魚釣り用リール」は、本願明細書の「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、スピニングリールのリール本体、カバー、ロータ、ハンドルや、両軸受けリールのフレーム、外側板等の魚釣り用リールの構成部材に関する。」との記載を参酌すると、側面にカバーが取り付けられるリール本体からなるスピニングリール、または、側面に外側板が取り付けられるフレームからなる両軸受けリールの、両者を包含した魚釣り用リールを指しているものと認められる。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献に記載された事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、実願昭56-145292号(実開昭58-50678号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、「魚釣用電動リール」に関し、図面の第1図〜第2図とともに、次の事項が記載されている。

(イ)「以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明すると、(1)、(2)は側板、(3)はスプール、(4)はモーター、(5)は駆動機構で、スプール(3)は側板(1)、(2)の間に回転可能に軸承されている。」(明細書第3ページ第2〜5行参照)

(ロ)「側板(2)は軽量で適切な機械的強度を有し、耐蝕性に優れ、廉価、生産性のよい材料が望まれ、アルミニウム、又はマグネシウム合金、合成樹脂等が用いられる。」(同第3ページ第19行〜第4ページ第2行参照)

(ハ)第2図には、側板(1)(2)が、スプール(3)の左右の両側面に設けられた態様が記載されている。

そして、上記明細書に記載された事項(イ)〜(ロ)並びに図面に記載された事項を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「スプール(3)が側面の側板(1)、(2)の間に回転可能に軸承され、側板(2)に、軽量で適切な機械的強度を有し、耐蝕性に優れ、廉価、生産性のよい材料として、マグネシウム合金が用いられた魚釣用電動リール。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の、「側板(1)(2)」、「マグネシウム合金」、「魚釣用電動リール」は、本願補正発明の「外側版」、「Mg合金」、「魚釣り用リール」にそれぞれ相当する。さらに、「側板(2)」は、「魚釣用電動リール」を構成する部材のひとつであることから、本願補正発明の「魚釣り用リールの構成部材」にも相当する。
してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「側面に外側版が取り付けられる魚釣り用リールの構成部材であって、Mg合金で構成された構成部材。」

(相違点1)
本願補正発明では、Mg合金で構成された部材本体上に陽極酸化処理により防食層を形成し、該防食層上にエポキシ系塗料の電着塗装によって封孔層を形成し、更に該封孔層上に、装飾性を持たせるための塗装処理を施しているのに対し、引用発明では、マグネシウム合金である側板(2)の表面に如何なる処理を施しているのか明らかではない点。

(相違点2)
本願補正発明では、Mg合金と接触する金属部材を、Mg合金との電極電位差が1V以下である材料としているのに対し、引用発明では、マグネシウム合金と接触する金属部材の材料が明らかではない点。

(相違点3)
本願補正発明では、魚釣り用リールは、側面にカバー及び外側版が取り付けられるフレームを有しているのに対し、引用発明では、フレームの存在が明らかではない点。

(4)当審の判断
上記の相違点について検討する。

(相違点1について)
Mg合金の防食を目的として、Mg合金で構成された部材本体上に陽極酸化処理により防食層を形成し、該防食層上にエポキシ系塗料の電着塗装によって封孔層を形成することが、特開昭63-250498号公報にもみられるように従来周知であることを考慮すれば、引用発明のマグネシウム合金の側板(2)に陽極酸化処理により防食層を形成し、該防食層上にエポキシ系塗料の電着塗装によって封孔層を形成することは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
さらに、部材に装飾性を持たせるために部材表面に塗装処理を施すことが、同特開昭63-250498号公報にもみられるように従来周知の手法であることを考慮すれば、該封孔層上に装飾性を持たせる塗装処理を施すことも、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(相違点2について)
魚釣り用リールにおいて、多くの金属部材が使われており、マグネシウム合金で形成された部材に他の金属部材が接する可能性があることは、当業者にとって自明のことである。
そして、マグネシウム合金と異種金属材料とが接したことによる、マグネシウム合金の腐食を防止するために、マグネシウム合金と異種金属材料の間の電位差を小さくしてマグネシウム合金の腐食を防ぐこと、及びマグネシウム合金との間の電位差を小さくする金属材料として例えばアルミニウム合金を選択することが、特開平5-125567号公報にみられるように従来周知であることを考慮すれば、引用発明のマグネシウム合金の側板(2)に接触する金属部材についても、より電極電位差が小さくなるようにアルミニウム合金を選択することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
ところで、本願明細書には、「【0031】・・・ リベット18,19やワッシャー20a,20bと構成部材(ここではハンドルアーム14)のMg合金部分とが直接接触することがある。・・・、リベット18,19やワッシャー20a,20bの材料としては、Mg合金との間の電極電位差が1V以下であるAl合金やZn合金が望ましい。」と記載されており、Mg合金との間の電極電位差が1V以下となる材料として、Al合金が示されている。してみれば、引用発明に上記周知の技術を適用し、マグネシウム合金の側板(2)に接触する金属部材をアルミニウム合金としたものが、両者間の電極電位差が1V以下となることも、当業者にとって自明のことである。

(相違点3について)
スプールが側面の側板間に回転可能に軸承された、魚釣り用両軸受けリールにおいて、外側版をフレームに対して取り付ける構造が特開平4-91736号公報にみられるように従来周知であることを考慮すれば、引用発明の、スプールが側面の側板間に回転可能に軸承された構造を有する魚釣り用リールにおいても、側板をフレームに対して取り付けることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
また、本願補正発明の「側面にカバー及び外側版が取り付けられるリール本体又はフレームからなる魚釣り用リール」が、「側面にカバーが取り付けられるリール本体からなるスピニングリール」を意味するものとしても、「側面にカバーが取り付けられるリール本体からなるスピニングリール」が、特開平5-146239号公報にもみられるように従来周知であることを考慮すれば、引用発明の魚釣り用リールとしてスピニングリールを採用することも、当業者が容易に想到しうることである。

そして、本願補正発明が奏する作用・効果を検討してみても、引用発明並びに周知技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものとみることはできない。

したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年11月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成14年5月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「Mg合金で構成された部材本体上に陽極酸化処理により防食層を形成し、該防食層上にエポキシ系塗料の電着塗装によって封孔層を形成した魚釣り用リールの構成部材。」

(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.にて検討した本願補正発明から、「魚釣り用リール」について、「側面にカバー及び外側版が取り付けられるリール本体又はフレームからなる魚釣り用リール」との限定を除外し、さらに、「魚釣り用リールの構成部材」について、「封孔層上に、装飾性を持たせるための塗装処理を施した」との事項を除外し、さらに「Mg合金と接触する金属部材を、Mg合金との電極電位差が1V以下である材料とした」との限定を除外したものである。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-17 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-23 
出願番号 特願平8-274725
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
P 1 8・ 575- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 恭  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 石井 哲
大元 修二
発明の名称 魚釣り用リールの構成部材  
代理人 河野 哲  
代理人 坪井 淳  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 中村 誠  
代理人 風間 鉄也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ