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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1136041
審判番号 不服2004-1297  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-16 
確定日 2006-05-08 
事件の表示 特願2000-307777「留守番電話機能付き携帯電話システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-118661〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年10月6日の出願であって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年11月27日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「データ通信の行える携帯電話もしくはPHS等に関して、システムの網側、および、携帯電話端末側のそれぞれに留守番電話機能を有する携帯電話システムにおいて、
網側の留守番電話機能で録音が行われた内容を留守番電話機能を有する端末に転送するとともに、網側で録音された内容を前記端末へ転送する時にデータ通信機能を用い、エラー訂正によってデータの信頼性を高めるための手段を有する留守番電話機能付き携帯電話システム。」

2. 引用発明
原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願の日前である平成12年1月14日に頒布された特開2000-13861号公報(以下、「刊行物」という。)には、「携帯電話システム」の発明に関し、図面とともに以下の記載がある。
a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は携帯電話システムに関し、特に音声蓄積した伝言メッセージを移動端末に転送し電波回線状況によらず任意に伝言メッセージを確認できる携帯電話システムに関する。」(第2頁第2欄)、
b)「【0036】図3によると、電話の発信、受信を行なう移動端末1と、この移動端末1に含まれメッセージを蓄積するメッセージ蓄積機構2と、このメッセージ蓄積機構2と接続するパケット用端末装置23と、移動端末1と無線接続する無線基地局3と、この無線基地局3に接続する蓄積用メッセージパケット転送用基地局設備25と、無線基地局3と伝送路12を介して接続し移動端末1との電話回線の交換接続を行なうセンター局設備33とから構成されている。
【0037】なお、センター局設備33は伝送路12を介して無線基地局3と接続する基地局制御装置26と、この基地局制御装置26に接続する蓄積用メッセージパケット転送処理機構27と、この基地局制御装置26と接続し回線交換を行なう交換機28と、この交換機28に含まれ蓄積したメッセージの転送処理を行なう蓄積用メッセージパケット転送処理機構29と、音声メッセージを蓄積する音声蓄積装置30と、この音声蓄積装置30に含まれ蓄積した留守番メッセージパケットデータ14を蓄積用メッセージパケット転送処理機構29に送出する蓄積用メッセージパケット転送機構31と、これらの間でパケット交換を行なう留守番メッセージデータパケット交換用ノード32とを有している。」(第5頁第7欄)、
c)「【0039】図3を参照すると、サービス利用者が移動端末1にてパケット転送により留守番メッセージパケットデータ14の蓄積要求をセンター局設備33に対して要求した後、音声蓄積装置30に留守番メッセージが蓄積された時点で順次移動端末1に留守番メッセージをパケット転送する。音声蓄積装置30は、通常の留守番メッセージを記憶しておく機能の他に、加入者である移動端末1からのパケット転送による留守番メッセージ蓄積サービスの要求に応じて、留守番メッセージパケットデータ14を交換機28へ出力することを可能とする蓄積用メッセージパケット転送機構31を有している。交換機28は加入者である移動端末1からパケット転送による留守番メッセージ蓄積サービスの要求があった際に、サービスを実現する上で必要となる蓄積用メッセージパケット転送処理機構29を有しており、この処理機構は本サービス機能の処理をする際の中心的な役割を果たす。
【0040】留守番メッセージデータパケット交換用ノード32は、通常携帯電話システムに使用されている回線交換機である交換機28と相互にやりとりを行うことにより携帯電話システムにおいてパケット交換を可能とすると同時に、音声蓄積装置30に記憶されている留守番メッセージからパケットを生成し、移動端末1へパケット転送することを可能とする。
【0041】基地局制御装置26は交換機28における留守番メッセージデータパケット転送サービス実行上の各種処理を行う上で、補助的な役割を果たす蓄積用メッセージパケット転送処理機構27を有している。無線基地局3は加入者の所有する移動端末1からの電波を受信して、移動端末1との留守番メッセージのパケットデータ転送としての無線インターフェイスをつなげる役割を果たす蓄積用メッセージパケット転送用基地局設備25を有している。移動端末1はサービス利用者の所有する携帯電話端末にメッセージ蓄積機構2およびパケットデータ転送によるやりとりを可能とするパケット用端末装置23を有する。」(第5頁第7〜8欄)、
d)「【0054】なお、留守番メッセージを移動端末1へ転送する際に、メッセージ単位で電波状態を確認し、電波状態が悪化した場合には転送を一時中断し、電波状態が回復した際に再度前記メッセージ単位で再送している。
【0055】また、移動端末1へ留守番メッセージをパケット転送により転送させた場合には、移動端末1への留守番メッセージ蓄積サービスを開始しておきさえすれば、自動的に移動端末1へメッセージが蓄積されていくことになり、移動端末1のメッセージ蓄積用メモリーの容量が一杯になるまでサービス利用者は、蓄積されているメッセージについてメッセージを聞き取る際の場所を気にせず留守番メッセージの確認を正確に行うことが可能となる。」(第6頁第9〜10欄)、
e)「【0057】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の携帯電話システムは、移動端末側に留守番メッセージを蓄積できるので、電波の届かない場所や電波状態の悪いときでも気にすることなく確実に留守番メッセージを確認できるという効果を有している。」(第6頁第10欄)。

上記刊行物の記載、及び技術常識によれば、刊行物には、
「電話の発信、受信を行うとともに、パケット転送された留守番メッセージを受信し蓄積可能なメッセージ蓄積機構を含む移動端末と、
交換機、基地局制御装置、及び留守番メッセージを蓄積すると共に、その蓄積された留守番メッセージを移動端末にパケット転送可能な音声蓄積装置を含むセンター局設備と、
前記センター局設備に接続され、前記移動端末との間で留守番メッセージをパケット伝送するための無線インターフェイスの役割を果たす無線基地局とからなり、
前記センター局設備側の音声蓄積装置で蓄積された留守番メッセージを、メッセージ蓄積機構を含む移動端末にパケット転送するとともに、メッセージデータ転送不可能な電波状態である場合には、メッセージデータ転送可能な電波状態を確認後、留守番メッセージデータをパケット転送により移動端末へ再送してデータの信頼性を高めるための手段を有する留守番電話機能付き携帯電話システム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

3. 対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

a)本願発明の「網側」とは、本願発明の「発明の詳細な説明」の段落【0015】の「図1の携帯電話システムは、携帯電話用交換網1と・・・」の記載に照らせば、「携帯電話用交換網」を含む側を指すと解されるところ、引用発明の「センター局設備側」は、交換機等を含むものであるから、これが本願発明の「網側」に相当する。また、引用発明のセンター局設備側に設けられた音声蓄積装置は、「留守番メッセージを蓄積すると共に、その蓄積された留守番メッセージを順次移動端末にパケット転送可能」なのだから、これが本願発明の網側の「留守番電話機能」に相当することが明らかである。
b)引用発明の「移動端末」は、電話の発信、受信を行うものなのだから、これが本願発明の「携帯電話端末」に相当するほか、引用発明の移動端末側のメッセージ蓄積機構は「パケット転送された留守番メッセージを受信し蓄積可能」なのだから、これが本願発明の携帯電話端末側の「留守番電話機能」に相当することが明らかである。

したがって、本願発明と引用発明は、次の点で一致し、相違する。

(一致点)
携帯電話に関して、システムの網側、および、携帯電話端末側のそれぞれに留守番電話機能を有する携帯電話システムにおいて、
網側の留守番電話機能で録音が行われた内容を留守番電話機能を有する端末に転送するとともに、データの信頼性を高めるための手段を有する留守番電話機能付き携帯電話システム。

(相違点)
本願発明は、「データ通信の行える携帯電話もしくはPHS等に関し」、
「網側で録音された内容を端末へ転送する時にデータ通信機能を用い、エラー訂正によってデータの信頼性を高める」のに対して、引用発明は「パケット転送を行える携帯電話に関する」ものであって、「網側の留守番電話機能で録音が行われた内容を留守番電話機能を有する端末に転送するとともに、データの再送によりデータの信頼性を高める」ものの、「網側からデータ通信を行える端末へデータ転送する時にデータ通信機能を用い、エラー訂正する」ことを明示しない点。

4.当審の判断
そこで、相違点について検討する。

「データ通信の行える携帯電話もしくはPHS等に関する携帯電話システムにおいて、データの送受信にデータ通信機能を用い、エラー訂正することにより送受信データの信頼性を高める」点は、本願出願前に周知である。
例えば、特開平10-126388号公報(以下、「周知例1」という。)には、第3頁第4欄に、「【0017】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)図1は本発明の一実施の形態の無線通信網におけるエラー訂正方法のブロック図である。
【0018】図1において11はFEC演算部、・・・」と記載され、
同じく第4頁第5欄に、「【0024】FEC演算部11は入力された生成多項式を用いて送信データのFEC用付加ビットを演算する。ここでいう送信データとは、音声やビデオ等のデータにアドレス・フィールドや制御フィールドを付加したものである。・・・(中略)・・・
【0026】図2に示すように、ここでパケット開始検出フラグ31とパケット終了検出フラグ37が付加される。ベースバンド処理手段13は、送信符号をPHS等のTDMA/TDDのタイムスロットに適合するように分割、変換等の処理をおこない、受信パケットを受信符号に変換、結合等の処理をおこなう。
【0027】RFモジュール14は、送信パケットをエアー・インターフェースに適合するように変調し、受信パケットをエアー・インターフェイスから受信パケットに復調する。・・・(中略)・・・
【0030】FEC訂正部16は、入力された生成多項式を用いてFEC用付加ビット36からエラー訂正前の受信データのエラーを検出し、これを訂正し受信データとして出力する。」と記載され、
同じく第4頁第6欄に、「【0032】
【発明の効果】本発明によれば、電界強度を測定することでランダムエラー率を想定し、これに対応したエラー訂正能力のあるFEC用付加ビットを付加することで、より効率的なデータ通信をおこなうことができる。」と記載されている(下線加筆)。
当該記載には、「PHS等」、「データ通信を行う」、「送信データは音声等」、「エラー訂正手段を付加して、(より効率的な)データ通信を行う」点が明示されている。なお、エラー訂正によりデータの信頼性が高まることは自明である。

他の周知例として、特開平11-88462号(以下、周知例2という。)公報も提示する。その第2頁第1欄に、「【請求項2】 基地局と、前記基地局を介してネットワークに接続されたサーバーと通信を行う携帯無線端末からなる無線通信システムにおいて、
前記基地局と前記サーバー間の通信プロトコルが処理するヘッダーの情報に応じて、前記基地局と前記携帯無線端末間の無線データリンクプロトコルにおける再送制御情報と誤り訂正情報うち少なくとも一つを制御する制御手段を前記基地局及び又は前記携帯無線端末に具備したことを特徴とする無線通信システム。」と記載され、
同じく第3頁第3欄に、「【0012】サーバー1より送信されて来たパケットを有線送受信部で受信した、」と記載され、
同じく第4頁第5欄に、「【0017】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、送信するデータの内容に応じて再送制御と誤り訂正の制御を行うことにより、送信データの信頼性とリアルタイム性を保証することができる無線通信システムを提供することができる。」と記載されている(下線加筆)。
当該記載には、「携帯無線端末」、「基地局とサーバー間の通信プロトコル処理」、「基地局と携帯無線端末間の無線データリンクプロトコルにおける再送制御や誤り訂正制御」、及び当該制御による「送信データの信頼性保証」が明示されているから、これらが上記のとおり周知とした「データ通信の行える携帯電話もしくはPHS等」、及び「データの送受信にデータ通信機能を用い、エラー訂正することにより送受信データの信頼性を高める」に相当することが明らかである。

そして、(イ)引用発明と上記周知例1、2のものは「パケットデータ転送を行う移動体無線通信システム」として共通する点、(ロ)周知例1のものはPHSの送受信におけるデータ通信とエラー訂正を明示するものであるが、PHSの送受信が「網」を経由することは自明であるから、周知例1のものが「網側から端末側へのデータ送信」を含むことは当然のことである点、及び(ハ)周知例2のものは、網側から端末側にパケットデータ転送する際に通信プロトコル処理や無線データリンクプロトコルにおける再送制御等(本願発明の「データ通信機能」に相当)を行うことを明示する点の以上三点を踏まえれば、上記周知例1、2のものを引用発明に適用して本願発明のように構成することは特に創意工夫を要するものとは言えない。

更に、本願発明の作用効果も、引用発明、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5. むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-07 
結審通知日 2006-03-08 
審決日 2006-03-22 
出願番号 特願2000-307777(P2000-307777)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨田 高史  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 浜野 友茂
宮下 誠
発明の名称 留守番電話機能付き携帯電話システム  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 石橋 政幸  

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