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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1136050
審判番号 不服2004-6511  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2006-05-08 
事件の表示 特願2003-156259「透過型スクリーン用レンチキュラーシート」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月29日出願公開、特開2004- 29777〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年10月25日に出願した特願平7-277484号(以下、「原々々出願」という。)の一部を、平成12年8月21日に新たな特許出願とした特願2000-249373号(以下、「原々出願」という。)の一部をさらに、平成13年12月17日に新たな特許出願とした特願2001-382767号(以下、「原出願」という。)の一部をさらに、平成15年6月2日に新たな特許出願としたものであって、平成16年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月1日付けで審判請求がなされ、平成17年12月15日付けで当審により拒絶の理由が通知され、平成18年2月20日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成18年2月20日付けの手続補正により、本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「液晶プロジェクションテレビに用いられる透過型スクリーンを構成するためのレンチキュラーシートであって、透明支持体の片面に、紫外線硬化性樹脂の硬化物により形成された凸シリンドリカルレンズが0.3mm以下のピッチで並設されてなるレンズ部が形成されており、該レンズ部の厚みが、透明支持体への紫外線硬化性樹脂の塗布厚で0.1mm〜0.2mmの範囲であって、かつ、前記支持体の他面である平坦な表面には、紫外線露光前に粘着性を有する紫外線感光性樹脂層を介して、前記紫外線感光性樹脂層の表面の、各シリンドリカルレンズの集光作用に基づき感光した非粘着部を省いた部分に、各シリンドリカルレンズのレンズ部の境界部に相当する粘着部のみの位置に転写紙から転写層を転移させることにより形成された、紫外線の露光量により線幅の調整されたストライプ状の遮光パターンと、前記遮光パターンを含む全面に光拡散層を設けた構成であることを特徴とする透過型スクリーン用レンチキュラーシート。」

2.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の原々々出願の出願日前である平成3年5月30日に頒布された特開平3-127041号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
[記載事項1]
「プロジェクションTV等に用いられる透過形スクリーンは、レンチキュラーレンズシートと他のレンズシートとを組み合わせたものが多い。レンチキュラーレンズシートは、プラスチック製のシートやフィルムの片面または両面に、半円筒形状のレンチキュラーレンズ部を複数本平行に形成してあり、観察側の非集光面には、帯状の遮光層が形成されている。」(第2頁左下欄第3〜10行)
[記載事項2]
「第1図は、本発明による透過形スクリーンの第1の実施例の一部を抜き出して示した断面図である。この例の透過形スクリーン1は、ベースフィルム11の光源側に第1のレンチキュラーレンズ部12を複数平行に形成してあり、観察側の非集光面11bに帯状の遮光層13を形成してある。」(第4頁右上欄第1〜7行)
[記載事項3]
「第1のレンチキュラーレンズ部12は、光源光を集光および拡散させるものであり、電離放射線硬化形樹脂により成形してある。電離放射線硬化形樹脂としては、例えば、エポキシ、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ウレタンアクリレート等を用いることができ、透明性があることが望ましい。遮光層13は、コントラストを向上させるために設けられており、第1のレンチキュラーレンズ部12の非集光面11bに帯状に形成してある。遮光層13は、黒色の顔料等を分散したインキ等を用いて、ベースフィルム11上に印刷することにより形成される。」(第4頁左下欄第3〜15行)
[記載事項4]
「最後に、製造例をあげて、製造工程に従い、さらに具体的に説明する。ベースフィルム11として、厚さ100μmのPETフィルムを用いており、その表面にアクリルウレタン系のプライマーを塗布した。金型ロール3は、直径500mm、幅500mmの大きさのものを用いており、その表面には、長径0.16mm、短径0.11mm、ピッチ0.21mmの楕円形状のレンチキュラーレンズ型が形成してある。」(第6頁左下欄第13行〜同頁右下欄第2行)
以上の記載および第1図を参照すると、刊行物1には、
「液晶プロジェクションテレビに用いられる透過型スクリーンを構成するためのレンチキュラーシートであって、ベースフィルム11の光源側に、電離放射線硬化形樹脂により形成された楕円形状のレンチキュラーレンズ部12がピッチ0.21mmで複数平行に形成されており、ベースフィルム11の観察面である平坦な表面には、黒色の顔料を分散したインキでベースフィルム11上に印刷した帯状の遮光層13を設けた構成であることを特徴とする透過型スクリーン用レンチキュラーシート。」
なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
同じく、昭和59年7月12日に頒布された特開昭59-121033号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
[記載事項5]
「本発明はレンチキュラーレンズ又はモザイク状レンズ等より成る透過形投射スクリーンの観察面側にポジ形感光性粘着剤、即ち感光することで粘着性が消失する粘着剤を配設し、この接着剤面と反対面より投射光源又はこれと同等の開口を有する光源から投射した光線で該粘着剤を露光し、上記レンズ系の各単位レンズの集光部の粘着性を失わせた後、観察面上から遮光性トナー散布し、粘着性の残っている未露光部分に粘着させ、露光により粘着性のなくなった部分に付着しただけのトナー及び余剰のトナーを除去することにより、ウェットプロセスを必要とせず容易かつ安価に遮光性の優れたパターンを形成した透過形投射スクリーンを得るものである。」(第2頁左下欄第13行〜同頁右下欄第6行)
また、同じく平成4年5月28日に頒布された特開平4-156441号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
[記載事項6]
「画像光入射側にレンチキュラーレンズを備え観察側の非集光部側に遮光部を備えた樹脂製の透過型プロジェクションスクリーンの遮光部形成方法において、前記遮光部にUV硬化型若しくはEB硬化型若しくは熱硬化型の接着剤若しくは粘着剤による固着剤層を施した後、光吸収性の着色剤層を備えた転写シートを前記固着剤層に重ね合わせ、無加圧又は加圧しながらUV光若しくはEB線、若しくは熱線を前記レンズ側から照射して前記固着剤層を硬化させた後、転写シートを剥離して着色剤層を固着剤層に転写することを特徴とするプロジェクションスクリーン遮光部形成方法。」(特許請求の範囲)
また、同じく昭和59年2月16日に頒布された特開昭59-29234号公報(以下、「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。
[記載事項7]
「蒲鉾状部分と反対側の面における光の集光面以外の部分に蒲鉾形状と平行にブラックストライプ層を形成したレンチキュラーレンズを複数横方向に並べて、光拡散剤を配合したシートに貼り合せ、上記レンチキュラーレンズ同士の合せ目に対向して上記シートにブラックストライプ層を設けたスクリーン。」(特許請求の範囲)
[記載事項8]
「本発明は投写型テレビジョン受像機に用いることができるスクリーンに関するものである。」(第1頁左欄第14〜15行)
更には、図面から、ブラックストライプ層2a、2b、7を含む全面に光拡散層3が設けられていることを読み取ることができる。

3.対比
引用発明における「ベースフィルム11」は、本願発明の「透明支持体」に、以下、同様に「光源側」は「片面」に、「電離放射線硬化形樹脂により形成」は「紫外線硬化性樹脂の硬化物により形成」に、「楕円形状のレンチキュラーレンズ部12」は「凸シリンドリカルレンズ」に、「複数平行に形成」は「並設」に、「観察側」は「他面」に、「帯状の遮光層13」は「ストライプ状の遮光パターン」にそれぞれ相当するから、両者は、
「液晶プロジェクションテレビに用いられる透過型スクリーンを構成するためのレンチキュラーシートであって、透明支持体の片面に、紫外線硬化性樹脂の硬化物により形成された凸シリンドリカルレンズが並設されており、透明支持体の他面である平坦な表面には、ストライプ状の遮光パターンを設けた構成であることを特徴とする透過型スクリーン用レンチキュラーシート。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明の凸シリンドリカルレンズは、「0.3mm以下のピッチ」で並設されているのに対し、引用発明では楕円形状のレンチキュラーレンズ部が「ピッチ0.21mm」で複数平行に形成されている点。
[相違点2]
本願発明のレンズ部の厚みは「透明支持体への紫外線硬化性樹脂の塗布厚で0.1mm〜0.2mmの範囲」と規定されているのに対し、引用発明ではレンズ部の厚みが規定されていない点。
[相違点3]
本願発明のストライプ状の遮光パターンは「紫外線露光前に粘着性を有する紫外線感光性樹脂層を介して、前記紫外線感光性樹脂層の表面の、各シリンドリカルレンズの集光作用に基づき感光した非粘着部を省いた部分に、各シリンドリカルレンズのレンズ部の境界部に相当する粘着部のみの位置に転写紙から転写層を転移させることにより形成された」ものであるのに対し、引用発明の帯状の遮光層13は「黒色の顔料を分散したインキでベースフィルム11上に印刷した」ものである点。
[相違点4]
本願発明の遮光パターンは「紫外線の露光量により線幅の調整された」ものであるのに対し、引用発明の遮光層は「黒色の顔料を分散したインキでベースフィルム11上に印刷した」ものであって、線幅の調整についての構成を有しない点。
[相違点5]
本願発明の透過型スクリーン用レンチキュラーシートは「遮光パターンを含む全面に光拡散層」が設けられているのに対し、引用発明では光拡散層が設けられていない点。

4.当審の判断
[相違点1]について
本願発明における「0.3mm以下のピッチ」は引用発明の「ピッチ0.21mm」を含むものであるし、本願明細書中において「0.3mm」なる数値に格別の意味がある旨の記載はないので、「ピッチ0.21mm」は「0.3mm以下のピッチ」に相当し、相違点1は実質的な相違点ではない。
[相違点2」について
本願発明は、「レンズ部の厚み」として透明支持体への紫外線硬化性樹脂の塗布厚を規定するものであるが、本願明細書によれば、レンズ部は、紫外線硬化性樹脂は塗布装置(2)により塗布され、レンチキュラー成型用ロール対(3,3’)間を通し、紫外線照射装置(4)からの紫外線照射により樹脂を硬化させて作製されるものであり(【0022】段落および【0023】段落)、各工程において、塗布装置(2)により塗布された紫外線硬化樹脂の厚さがどのように変化するかは明細書中にも記載されていないし、明らかでもない。
したがって、本願発明においては、紫外線硬化性樹脂の塗布厚を規定したとしても、レンズ部の厚みを規定していることにはならないので、実質的に発明の構成要素と見ることはできず、本願発明と引用発明との間での一応の相違点であるとしても、実質的な相違点ではない。
なお、引用発明は楕円形状のレンチキュラーレンズ部12がピッチ0.21mmで形成され、具体的な楕円形状として刊行物1には、「長径0.16mm、短径0.11mm」(記載事項4)と記載されていることから、引用発明における楕円形状部分をレンズ部をするならば、本願発明の紫外線照射による硬化を経た後に形成されるレンズの厚さは不明ではあるが、その厚さが格別なものであるということはできない。
[相違点3]について
刊行物2には、レンチキュラーレンズよりなる透過形投射スクリーンにおいて、遮光性パターンを形成するにあたり、感光することで粘着性が消失する粘着剤(すなわち、感光前は粘着性を有する粘着剤)を配設し、接着剤面と反対面より光を投射し、レンチキュラーレンズの各単位レンズ(すなわち各シリンドリカルレンズ)の集光部の粘着性を失わせ(すなわち、非粘着部とし)、粘着性の残っている部分に遮光性トナーを粘着させることにより遮光性パターンを形成する発明が記載されている。
また、刊行物3には、光吸収性の着色剤層を備えた転写シートを使用して転写することでプロジェクションスクリーンの遮光部を形成することが開示されている。
これらの公知の発明に基づけば、引用発明において、黒色の顔料を分散したインキで印刷することにより遮光層を設けることに代え、感光することで粘着性が消失する粘着剤を使用して遮光層を形成すること、および、遮光性パターンを形成する材料として、黒色の顔料を分散したインキに代えて光吸収性の着色剤層を備えた転写シートとすることは当業者が容易に想到することができたものであるし、それによる作用効果も予想される以上のものではないので、相違点3に係る本願発明の構成は格別のものではない。
[相違点4]について
本願発明は「透過型スクリーン用レンチキュラーシート」の発明であり、「もの」の発明である。
遮光パターンが製造工程において「紫外線の露光量により線幅の調整された」としても、そのようにして製造された「ストライプ状の遮光パターン」と他のストライプ状の遮光パターンとの間に構成上の相違があるとは認められない。
したがって、相違点4に係る本願発明の構成は「もの」の構成要素ではな
く、実質的に発明の構成要素と見ることはできないので、本願発明と引用発明との間での一応の相違点であるとしても、実質的な相違点ではない。
[相違点5]について
刊行物4には、投写型テレビジョン受像機に用いる、レンチキュラーレン
ズとブラックストライプ層を有するスクリーンにおいて、ブラックストライプ層を含む全面に光拡散層が設けられている発明が記載されている。
とするならば、引用発明の透過型スクリーン用レンチキュラーシートにおいて、刊行物4記載の発明を適用して、遮光パターンを含む全面に光拡散層を設けるようにすることは当業者が容易に想到することができたものであり、相違点5に係る本願発明の構成は格別のものではない。

以上、[相違点1]〜[相違点5]は実質的な相違点ではないか、刊行物2ないし刊行物4の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それによる作用効果も格別のものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし刊行物4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-07 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-23 
出願番号 特願2003-156259(P2003-156259)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 末政 清滋
前川 慎喜
発明の名称 透過型スクリーン用レンチキュラーシート  

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