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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1136071
審判番号 不服2005-11052  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-14 
確定日 2006-05-08 
事件の表示 平成 7年特許願第 44924号「カラ-フィルタ-、それを使用したカラ-液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月30日出願公開、特開平 8-220339〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年2月9日の出願であって、平成17年5月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年6月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年7月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年7月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年7月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「透明な基板上に金属薄膜によるブラックマトリクスを設け、更にその上に少なくとも二色以上の着色層からなる着色パタ-ンを設けてなるカラ-フィルタ-において、上記の着色パターンが着色樹脂膜からなり、上記のブラックマトリクスおよび着色パタ-ンを含む全面に膜厚が1400Åから3000Åである透明電極を直接設け、前記ブラックマトリクス表面の反射率を低下させると同時に一定の着色を生ぜしめたことを特徴とするカラ-フィルタ-。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「透明電極」について「前記ブラックマトリクス表面の反射率を低下させると同時に一定の着色を生ぜしめた」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-118221号公報(以下、「引用例1」という。)には、
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶ディスプレイ等のフラットディスプレイに使用されるカラーフィルタの形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶ディスプレイはフラットディスプレイの主力として開発が盛んであり、その液晶ディスプレイに使用するカラーフィルタの開発も盛んである。従来、液晶ディスプレイ等のフラットディスプレイ用カラーフィルタとしては特開昭62-1362号等がある。一例としてカラーフィルタの製造工程を図6に示す。以下図面を参照しながら、上記従来のカラーフィルタの製造方法について説明する。
(1)図6(a) に示すようにガラス基板1上にスパッタリング法を用いてクロム膜を製膜し、フォトリングラフィ法等によりパターニングし、遮光部2を形成する。
(2)図6(b) に示すように着色レジストからなる赤、緑、青の画素3を塗布、フォトリングラフィ法、現像、ベーク工程を用いて順次形成する。
(3)図6(c) に示すように遮光部2および画素3上にスパッタリング法を用いてITO(Indium Tin Oxide)を製膜し、透明導電膜4を形成する。」(段落【0001】、【0002】)
との記載が認められ、これらの記載及び図6によれば、引用例1には、
「ガラス基板上に遮光部を形成し、その上に赤、緑、青の画素を設けたカラーフィルタにおいて、前記画素が着色レジストからなり、前記遮光部および画素上に透明導電膜を直接形成したことを特徴とするカラーフィルタ。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭56-30117号公報(以下、「引用例2」という。)には、
「液晶表示装置は、一般に透明導電膜を電極として用い、それをパターン化して表示に用いられている。ところが、透明導電膜は、一般にガラスならびに液晶と比較して屈折率が大きいため、ガラスと透明導電膜、あるいは透明導電膜と液晶との界面における反射が大きくなり、電極部分がギラついたり、電極の部分の透光度が悪いために暗つぽくなつたりの問題をかかえていた。
・・・
本発明の目的は、上記透明導電膜での反射を大幅に低下させ、液晶表示装置の外観を向上させることにある。」(1頁右欄1行〜18行)、
「1層の場合の概念図を第2図に示す。物質をm0、m1、m2とし、その屈折率をn0,n1,n2とし、m1の厚みをdとする。m0とm1との界面での反射をR1、m1とm2との界面での反射をR2とした場合、R1とR2との位相が逆で振幅が等しければ、R1とR2は打消し合い、反射は0となる。」(2頁左上欄7行〜13行)、
「実施例 2.
透明導電膜にスパッタリングで形成したITO膜(SnをドープしたIn2O3)を用い、実施例1と同様にウォッチ用の液晶表示装置を作成した。ITO膜の屈折率は約1.9であるために、厚みは1450Åとした。光学的厚みは2750Åである。この場合の干渉色も、実施例1と同様に紫色となり、透明導電膜中での光の散乱もほとんどない。完成した時点では、実施例1と同様に、まつたくと言つて良いほど電極の部分は見えなかつた。
以上のように、本発明により、液晶表示装置の透明電極部分がまつたくと言つて良いほどに見えなくなり、液晶表示装置の外観が著しく向上する。
さらに、本発明による方法では、透明電極を見えなくするために新たに加わる工程がまつたくなく、単に、現在約400〜600Å形成している透明電極を、光学的厚みで2500〜3000Å、厚みでは1000〜1600Å形成すれば良いだけであるので、コスト面でも大きなメリットがある。」(3頁右下欄3行〜4頁左上欄2行)
と記載されていることが認められる。

(3)対比・判断
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「ガラス基板」は、本願補正発明の「透明な基板」に相当し、以下同様に、「遮光部」は「ブラックマトリクス」に、「赤、緑、青の画素」は「二色以上の着色層からなる着色パタ-ン」に、「着色レジスト」は「着色樹脂膜」に、「透明導電膜」は「透明電極」に、それぞれ相当するから、両者は、
「透明な基板上に金属薄膜によるブラックマトリクスを設け、更にその上に少なくとも二色以上の着色層からなる着色パタ-ンを設けてなるカラ-フィルタ-において、上記の着色パターンが着色樹脂膜からなり、上記のブラックマトリクスおよび着色パタ-ンを含む全面に透明電極を直接設けたことを特徴とするカラ-フィルタ-。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]ブラックマトリクスおよび着色パタ-ンを含む全面に直接設けられる透明電極の膜厚について、本願補正発明では「膜厚が1400Åから3000Åである透明電極を設け、前記ブラックマトリクス表面の反射率を低下させると同時に一定の着色を生ぜしめた」ものであるのに対して、引用例1発明ではそのような限定がない点で相違している。
次に相違点について検討する。

[相違点]について
引用例2には、液晶表示装置におけるものではあるが、ガラスと透明導電膜あるいは透明導電膜と液晶との界面における反射を光干渉により大幅に低下させるために、透明導電膜の厚さを1000〜1600Åとすること、及びその場合、干渉色を生じる旨の記載があり、透明導電膜に隣接する界面での反射を大幅に低下させる技術思想が示されている。そして、前記技術思想を透明導電膜とカラーフィルターのブラックマトリックスとの界面での反射に適用することに当業者が格別困難性を要するとは認められない。
また、本願補正発明において、「1400Åから3000Å」という数値限定がなされているが、上限、及び下限の数値にはいずれも臨界的意義を認めることができないから、結局、この相違点に係る本願補正発明の構成は、引用例1発明に前記引用例2に示される技術思想を適用することにより、当業者が容易に想到しえたものというべきである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1、引用例2から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、請求理由中で「これに対して、本願請求項1の発明は、前述のように、基板の電極表面に存在する突起の有無に対する検査が極めて重要とされている中で、透明基板上に形成されたブラックマトリックスに使用するクロム等の金属パタ-ンが高い反射率を有し、突起を検査する際に、この反射光により突起に当たった乱反射光が埋もれてしまい、突起検査の障害となっているという点を課題とするものであり、ブラックマトリックスの表面反射率を大幅に低下させて、突起等の存在を容易に検査することができるカラ-液晶表示装置用基板を提供することを目的とし、そのためにブラックマトリックス上に透明電極を直接設け、ブラックマトリクスの表面反射率を低下すると同時に一定の着色を生ぜしめるという効果を奏するものであります。
上記のように、本願請求項1の発明と引用文献3に記載の発明は、課題、目的、構成が異なるものであり、本願発明は引用文献3に記載された発明とは到底言い得ないものと思料いたします。また、本願発明は引用文献3に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではないものと思料いたします。」(6頁14行〜26行)
と主張する。
しかしながら、本願補正発明は、前記「突起等の存在を容易に検査する」という課題に特に適合したものとは認められないから、前記請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものとは認められず、採用することができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定で準用する同法第126条第5項に規定される独立特許要件を満たしていないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年7月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年8月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「透明な基板上に金属薄膜によるブラックマトリクスを設け、更にその上に少なくとも二色以上の着色層からなる着色パタ-ンを設けてなるカラ-フィルタ-において、上記の着色パターンが着色樹脂膜からなり、上記のブラックマトリクスおよび着色パタ-ンを含む全面に膜厚が1400Åから3000Åである透明電極を直接設けてなることを特徴とするカラ-フィルタ-。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「透明電極」の限定事項である「前記ブラックマトリクス表面の反射率を低下させると同時に一定の着色を生ぜしめた」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-02 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-23 
出願番号 特願平7-44924
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 峰 祐治吉野 公夫  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 井口 猶二
青木 和夫
発明の名称 カラ-フィルタ-、それを使用したカラ-液晶表示装置  
代理人 金山 聡  

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