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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B26B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B26B
管理番号 1136120
審判番号 不服2003-19213  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-02 
確定日 2006-05-10 
事件の表示 特願2000- 75517「電気かみそり」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月17日出願公開、特開2000-288267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成8年7月3日に出願した特願平8-193898号の一部を平成12年3月17日に新たな特許出願としたものであって、平成15年5月13日付けで拒絶の理由が通知され、同15年7月22日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同15年8月22日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同15年10月2日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同15年10月31日に明細書を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

1-1 補正前の請求項1
「 【請求項1】 上部に主刃4を有する本体ケース1の上部側面に、上端に長毛カット刃41を備えた長毛カットユニット5を、長毛カット刃41が本体ケース1の主刃4よりも下方に位置する格納位置と、長毛カット刃41が主刃4の側部に接近する高さに突出するコンビネーション剃りの使用位置との間で上下方向に移動可能に装着してある電気かみそりにおいて、
長毛カットユニット5がコンビネーション剃りの使用位置において所定ストロークだけ上下にフローティングするように弾性支持されており、
長毛カット刃41を挟む形態を成す位置に、櫛状の髭梳し部T1と櫛状の第二の髭梳し部T2を設けたことを特徴とする電気かみそり。」

1-2 補正後の請求項1
「 【請求項1】 上部に主刃4を有する本体ケース1の上部側面に、上端に長毛カット刃41を備えた長毛カットユニット5を、長毛カット刃41が本体ケース1の主刃4よりも下方に位置する格納位置と、長毛カット刃41が主刃4の側部に接近する高さに突出するコンビネーション剃りの使用位置との間で上下方向に移動可能に装着してある電気かみそりにおいて、
長毛カットユニット5がコンビネーション剃りの使用位置において所定ストロークだけ上下にフローティングするように弾性支持されており、
長毛カット刃41を挟む形態を成す位置に、櫛状の髭梳し部T1と櫛状の第二の髭梳し部T2を設けるとともに長毛カットユニット5が凹凸係合による位置決めがなされていることを特徴とする電気かみそり。」

2.補正の適否
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「長毛カットユニット5が凹凸係合による位置決めがなされている」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1-2に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「電気かみそり」であると認める。

2-2 引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開平7-100271号公報(以下、「刊行物1」という。)、また、原査定時に周知例として示された、特開平8- 89671号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開平8- 66567号公報(以下、「刊行物3」という。)及び特開平7-144074号公報(以下、「刊行物4」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)刊行物1
(1-イ)段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、フロート式の仕上げ剃り用刃ヘッドと粗削り用刃ヘッドとで同時剃りを行なう電気かみそりに関し、詳しくは両刃ヘッド間に上下方向の段差が設定された構造に関する。」
(1-ロ)段落【0008】,【0009】
「【実施例】・・・往復式電気かみそり1は、図5に示すように、かみそり本体2の上面に一対の仕上げ剃り用刃ヘッド3(外刃ヘッド)が略同じ高さで並設され、一方の仕上げ剃り用刃ヘッド3の前方に粗削り用刃ヘッド4(トリマー)が並設されている。一対の仕上げ剃り用刃ヘッド3は、かみそり本体2の上面に着脱自在に装着される外刃フレーム5に取付けられるものであって、・・・なお、図3中、24は外刃フレーム5における粗削り用刃ヘッド取付部、26はかみそり本体2上面に設けられた着脱釦で、外刃フレーム5をかみそり本体2に着脱自在とするものである。」
(1-ハ)段落【0013】
「かみそり本体2の一側面には、図1に示すように、粗削り用刃ヘッド4(トリマー)が外刃フレーム5に取付けられている。この粗削り用刃ヘッド4は、仕上げ剃り用刃ヘッド3,3で仕上げ剃りする前に、長い毛を粗削りするものであって、櫛刃状の固定刃36と、櫛刃状の可動刃37と、可動刃37を固定刃36に押し付ける押付バネ(図示せず)と、押付バネを固定するバネ押さえ板38と、可動刃37に櫛刃駆動杆39の駆動力を伝達する櫛刃駆動子40(図3)とを備える。上記櫛刃駆動杆39は、かみそり本体2の一方の駆動子17に固定されており、さらに粗削り用刃ヘッド4は、かみそり本体2に対して上下にスライド自在の状態でトリマー支持ボタン41から成る部品にて保持されている。このトリマー支持ボタン41には、トリマーハンドル42が設けられ、このトリマーハンドル42は外刃フレーム5に設けられた窓部から外部に面して配置され、外部からトリマーハンドル42を上下に移動させることによって、粗削り用刃ヘッド4を上下に移動できるようになっている。なお、粗削り用刃ヘッド4を上方位置へ移動させた時には、粗削り用刃ヘッド4を単独で使用できる。」
(1-ニ)段落【0024】〜【0026】
「・・・段差変更手段30を粗削り用刃ヘッド4を上下方向に数段階に高さ設定変更可能とする手段で構成したものであって、この手段は図10に示すように、トリマー基台100の両端部から夫々垂設された左右一対の段差設定用弾性フック30bと、外刃フレーム5の両側内側面に夫々形成された左右複数のストッパ30c,30dとで構成されている。各ストッパ30c,30dは、上下2段に形成され、段差設定用弾性フック30bが上段ストッパ30cよりも上位(粗削り用ポジションD)に位置していると、図13に示すように、粗削り用刃ヘッド4を仕上げ剃り用刃ヘッド3よりも上位に突出させることができ、粗削り用刃ヘッド4を単独で使用できる。
この状態から、粗削り用刃ヘッド4を押し下げて段差設定用弾性フック30bを上段ストッパ30cと下段ストッパ30dとの中間(腋部剃り用ポジションE)に位置させることにより、図12に示すように、粗削り用刃ヘッド4と仕上げ剃り用刃ヘッド3との上下の段差35を小さく設定することができ、肌を仕上げ剃り用刃ヘッド3に刺激なく押し当てることができ、腋部のように比較的柔らかい肌を粗削り用刃ヘッド4と仕上げ剃り用刃ヘッド3とによる同時剃りシステムカットを快適に行なうことができる。
この状態からさらに粗削り用刃ヘッド4を押し下げて段差設定用弾性フック30bを下段ストッパ30dよりも下位(足部剃り用ポジションF)に位置させることにより、図11に示すように、粗削り用刃ヘッド4と仕上げ剃り用刃ヘッド3との上下の段差35を大きく設定することができる。この場合、肌の押し付け力により仕上げ剃り用刃ヘッド3がフロート(沈み込み)して、仕上げ剃り用刃ヘッド3を肌に強く押し当てることができ、肌を外刃6に密着させることができ、従って、足部のように比較的肌の硬い部位の毛であってもより短く剃ることができる。なお、粗削り用刃ヘッド4を引っ張り出すことにより、足部剃り用ポジションFから腋部剃り用ポジションE、粗削り用ポジションDに夫々段階的に移行させることができる。このように粗削り用刃ヘッド4は仕上げ剃り用刃ヘッド3との間の上下の段差35を対象となる部位に合わせた高さ位置に変更できる構造を有しているため、・・・肌のどの部位においても夫々最適な剃り味を得ることができるという利点がある。・・・」

上記記載事項及び図10〜13の記載からみて、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「仕上げ剃り用刃ヘッド3をかみそり本体2の上部に有し、かみそり本体2の上面に装着される外刃フレーム5の内部側面に、上端に粗削り用刃(トリマー)を備えた粗削り用刃ヘッド4を、粗削り用刃(トリマー)がかみそり本体2の仕上げ剃り用刃ヘッド3よりも下方に位置する足部剃り用ポジションFと、粗削り用刃(トリマー)が仕上げ剃り用刃ヘッド3の側部に接近する高さに突出し、仕上げ剃り用刃ヘッドと粗削り用刃ヘッドとによる同時剃りの使用位置である腋部剃り用ポジションEとの間で上下方向に移動可能に装着してある電気かみそりにおいて、
仕上げ剃り用刃ヘッド3が仕上げ剃り用刃ヘッド3と粗削り用刃ヘッド4とによる同時剃りの使用位置において所定ストロークだけ上下にフローティングするように弾性支持されている電気かみそり。」

(2)刊行物2
(2-イ)段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、刃を摺接させて往復駆動することにより肌に追従して無駄毛を切断する往復式電気かみそりに関するものである。」
(2-ロ)段落【0016】
「次に図8乃至図13に示す第2の実施例について述べる。本実施例の場合切刃ブロック3がトリマー用の切刃ブロック3bとなっている。この切刃ブロック3bはカバー21、板バネ22、可動刃23、固定刃24、支持基台25、トリマー駆動子26等で構成されている。支持基台25の前側(毛剃りを行うとき切刃ブロック3bを進行させる側)は肌当て部材となっており、整毛したり毛起こししたりする櫛状部25aを長手方向に有している。・・・」
(2-ハ)段落【0026】,【0027】
「次に図20乃至図24に示す第4の実施例を説明する。本実施例は第1の実施例の切刃ブロック3aと第2の実施例の切刃ブロック3bとを2個並設したものである。・・・切刃ブロック3bは櫛状部25aに対応する位置に設けたスイング軸15を中心にスイング自在になっている。・・・各切刃ブロック3a,3bは夫々独立してスイングすると共に上下にフロート自在になっている。・・・
上記のように構成せる往復式電気かみそりは2個の切刃ブロック3a,3bが内刃6の摺動方向と直交する方向にバネ38に抗してスイング軸15を中心に夫々独立してスイングすると共に切刃ブロック3a,3bが独立して上下に自在にフロートする。図24は肌20の無駄毛を切断している状態であり、肌20が凹凸を有する曲面であっても各切刃ブロック3a,3bの頂上部16近傍が肌20に確実に接触するようにスイングやフロートし、肌当たりよく、効率的に短く無駄毛が切断できる。またこの実施例の場合、トリマー用の切刃ブロック3bを毛ぞりの進行方向の前方に配設したので、切刃ブロック3bにて長毛を効率よく切断し、短毛カット用の切刃ブロック3aにて効率よく(速く)且つ短く切断できる。・・・」

(3)刊行物3
(3-イ)段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、刃を摺接させて往復駆動することにより肌に追従して無駄毛を切断する往復式電気かみそりに関し、・・・」
(3-ロ)段落【0012】
「次に図8乃至図12に示す第2の実施例について述べる。本実施例の場合切刃ブロック3がトリマー用の切刃ブロック3bとなっている。この切刃ブロック3bはカバー21、板バネ22、可動刃23、固定刃24、支持基台25、トリマー駆動子26等で構成されている。支持基台25には整毛したり毛起こししたりする櫛状部25aを長手方向に有し、・・・」
(3-ハ)段落【0023】,【0024】
「次に図25乃至図29に示す第5の実施例を説明する。本実施例は第1の実施例の切刃ブロック3aと第2の実施例の切刃ブロック3bとを2個並設したものである。・・・切刃ブロック3bは頂上部16の櫛歯23a,24aに対応する位置に設けたスイング軸15を中心にスイング自在になっている。切刃ブロック3a,3bのスイング軸15は夫々別々のスイング基台17にスイング自在に取り付けられ、各切刃ブロック3a,3bは夫々独立してスイングすると共に上下にフロート自在になっている。・・・
上記のように構成せる往復式電気かみそりは2個の切刃ブロック3a,3bが内刃6の摺動方向と直交する方向にスイング軸15を中心に夫々独立してスイングすると共に切刃ブロック3a,3bが独立して上下に自在にフロートする。図29は肌20の無駄毛を切断している状態であり、肌20が凹凸を有する曲面であっても各切刃ブロック3a,3bの頂上部16が肌20に確実に接触するようにスイングやフロートし、肌当たりよく、効率的に短く無駄毛が切断できる。またこの実施例の場合、トリマー用の切刃ブロック3bを毛ぞりの進行方向の前方に配設したので、切刃ブロック3bにて長毛を効率よく切断し、短毛カット用の切刃ブロック3aにて効率よく(速く)且つ短く切断できる。・・・」

(4)刊行物4
(4-イ)段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は電気かみそり、殊にネット刃とトリマー刃とを備えるとともに、この両種の刃を同時に肌に当てることができるようになっている電気かみそりに関する。」
(4-ロ)段落【0005】
「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、ネット刃20とトリマー刃5とを上端に備えて両種の刃を同時に肌に接触させることができるようにされた電気かみそりにおいて、トリマー刃5の刃基台頂部50bの肌当て面50cに複数のスリット孔41を形成したことを特徴とする。」
(4-ハ)段落【0008】
「【作用】しかして本発明によれば、トリマー刃5の刃基台頂部50bの肌当て面50cに複数のスリット孔41を形成したことにより、トリマー刃5で切断された毛が肌当て面50cのスリット孔41内に入って起き上がり、次のネット刃20に導入され易くなる。従って、従来のように肌と刃基台頂部50bの肌当て面との間に毛が挟まれて寝てしまうのを防止できるので、ネット刃20での剃り残しを少なくすることができ、しかもスリット孔41により肌当て面50cと肌との接触面積が減少することにより、毛を剃る時の摩擦抵抗が小さくなる。」
(4-ニ)段落【0016】
「・・・電気かみそりによって実際に毛55を剃る場合の肌及び毛55の挙動を説明すると、図5に示すように、電気かみそりを矢印方向Aに動かした場合、長い毛55はトリマー刃5にて切断される。そして、比較的短い毛やトリマー刃5によって短く切断された毛はトリマー刃5の刃基台頂部50bに設けてある複数のスリット孔41に導入され、整毛されながらネット刃20へと送られる。このとき、スリット孔41内では、トリマー刃5で切断された毛55が起き上がり、ネット刃20に導入され易くなる。しかも、スリット孔41の深さLがトリマー刃5の刃先側で浅く、且つネット刃20に向かうにつれて徐々に深くなるように勾配が設けられているから、スリット孔41に導入されるまで倒れていた毛55がスリット孔41の深さLに合わせて徐々に起きてきてネット刃20の側面20aの刃孔43に入って切断される。しかも、スリット孔41の幅Dはトリマー刃5の刃先側で広く、且つネット刃20に向かうにつれて徐々に狭くなるように形成されているから、スリット孔41に導入されるまで多方向に向いていた毛55をスリット孔41により整毛でき、ネット刃20への導入がよりスムーズとなる。従って、従来のように肌と刃基台頂部50bの肌当て面50cとの間に毛55が挟まれて寝てしまうのを防止できるので、ネット刃20での剃り残しを少なくすることができる。そのうえ、スリット孔41を刃基台頂部50bに設けたことにより、肌当て面50cと肌との接触面積を減少させることができ、毛55を剃る時の肌との摩擦抵抗を小さくすることができる。その結果、毛55の導入が良好で剃り残しが少なくなり、腋などの汗ばんだ部位であってもスムーズに且つ早く剃ることができるという利点がある。」

2-3 対比
本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「仕上げ剃り用刃ヘッド3」は前者の「主刃4」に相当し、同様にして、後者の「かみそり本体2」は前者の「本体ケース1」に、後者の「粗削り用刃(トリマー)」は前者の「長毛カット刃41」に、後者の「粗削り用刃ヘッド4」は前者の「長毛カットユニット5」に、後者の「足部剃り用ポジションF」は前者の「格納位置」に、後者の「仕上げ剃り用刃ヘッドと粗削り用刃ヘッドとによる同時剃りの使用位置である腋部剃り用ポジションE」は前者の「コンビネーション剃りの使用位置」に、技術的意義からみて、それぞれ相当することは明らかである。
また、後者の「かみそり本体2の上面に装着される外刃フレーム5の内部側面に、上端に粗削り用刃(トリマー)を備えた粗削り用刃ヘッド4を、上下方向に移動可能に装着してある」ことは、前者の「本体ケース1の上部側面に、上端に長毛カット刃41を備えた長毛カットユニット5を、上下方向に移動可能に装着してある」ことと、本体ケースの上方側部に、上端に長毛カット刃を備えた長毛カットユニットを、上下方向に移動可能に装着してあることである限りにおいて共通している。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「主刃を本体ケースの上部に有し、本体ケースの上方側部に上端に長毛カット刃を備えた長毛カットユニットを、長毛カット刃が本体ケースの主刃よりも下方に位置する格納位置と、長毛カット刃が主刃の側部に接近する高さに突出するコンビネーション剃りの使用位置との間で上下方向に移動可能に備えている電気かみそり。」である点。

[相違点1]
本件補正発明では、長毛カットユニットがコンビネーション剃りの使用位置において所定ストロークだけ上下にフローティングするように弾性支持されているのに対して、刊行物1記載の発明では、主刃がコンビネーション剃りの使用位置において所定ストロークだけ上下にフローティングするように弾性支持されている点。

[相違点2]
本件補正発明では、長毛カット刃を挟む形態を成す位置に、櫛状の髭梳し部T1と櫛状の第二の髭梳し部T2を設けているのに対して、刊行物1記載の発明では、櫛状の髭梳し部T1と櫛状の第二の髭梳し部T2を設けていない点。

[相違点3]
本件補正発明では、長毛カットユニットが本体ケースの上部側面に上下方向に移動可能に装着されており、また、長毛カットユニットが凹凸係合による位置決めがなされているのに対して、刊行物1記載の発明では、長毛カットユニットが本体ケースの上面に装着される外刃フレームの内部側面に上下方向に移動可能に装着されており、また、長毛カットユニットが位置決めされていることについて特定されていない点。

2-4 相違点についての判断
[相違点1について]
長毛カットユニットがコンビネーション剃りの使用剃り位置において所定ストロークだけ上下にフローティングするように弾性支持されることは、刊行物2及び3に記載されている(前記刊行物2記載事項の(2-ハ)、及び前記刊行物3記載事項の(3-ハ)参照。)ように、従来周知な事項である。
そうすると、刊行物1記載の発明に前記周知技術を適用して、コンビネーション剃りの使用位置において所定ストロークだけ上下にフローティングするように弾性支持する刃を、主刃に代えて、もしくは主刃に加えて長毛カットユニットとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2について]
刊行物2及び3には、トリマー用の切刃の前側に櫛状部25aが設けられていることが記載されており(前記刊行物2記載事項の(2-ロ)、及び前記刊行物3記載事項の(3-ロ)参照。)、この櫛状部25aは整毛したり毛起こししたりするから櫛状の髭梳し部T1ということができ、同じく刊行物4には、ネット刃20とトリマー刃5とを上端に備えて両種の刃を同時に肌に接触させることができるようにされた電気かみそりにおいて、トリマー刃5の刃基台頂部50bの肌当て面50cに複数のスリット孔41を形成したことが記載されており(前記記載事項(4-ロ)参照。)、この複数のスリット孔が形成されたトリマー刃の刃基台頂部50bは、トリマー刃5で切断された毛が肌当て面50cのスリット孔41内に入って起き上がり、次のネット刃20に導入され易くなり、従って、従来のように肌と刃基台頂部50bの肌当て面との間に毛が挟まれて寝てしまうのを防止できるから、櫛状の第二の髭梳し部T2ということができる。
そうすると、刊行物1記載の発明に前記刊行物2ないし4に記載された前記各周知技術を適用して、相違点2に係る本件補正発明の特定事項のように成すことは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。

[相違点3について]
長毛カットユニットを上下方向に移動可能に装着される箇所を、本体ケースの上部側面にするか、本体ケースの上面に装着される外刃フレームの内部側面にするかで、技術的意義において格別の差異を見出せない以上、刊行物1記載の発明において、長毛カットユニットを本件補正発明のように本体ケースの上部側面とすることは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎないことである。
また、本件補正発明において、長毛カットユニットの凹凸係合による位置決めは、長毛カットユニットが上下方向に移動可能に装着されていることからすると、左右方向に位置決めされていると解するのが相当である。
ところで、刊行物1記載の発明においても、長毛カットユニットは、本件補正発明と同様に上下方向に移動可能に装着されていることから、何らかの手段により上下方向に案内されており、長毛カットユニットが左右方向に関して位置決めされていると解するのが相当である。
そして、位置決め手段として凹凸係合を採用することは、当業者が容易になし得た設計的事項にすぎないことである。

そして、本件補正発明の奏する効果も、刊行物1記載の発明及び前記刊行物2ないし4記載の技術から予測できる程度のものであって格別なものでもない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び前記刊行物2ないし4記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、請求人は、平成18年2月8日に提出した回答書において、本件補正発明は、図7に示される凸部60と図11に示される凹部59を設け、積極的に左右方向のブレをなくすことができる構成としたものであり、
(ア)髭梳し部T1と櫛状の第二の髭梳し部T2を有する構造、
(イ)長毛カットユニット5のフローティング構造(格納位置とコンビネーション位置に変更も可能)、
(ウ)長毛カットユニット5の凹凸係合による位置決め構造、
とが極めて有機的に結びついて成る本願発明は、引用文献1とは明確に構成が異なる旨主張をしている。
しかしながら、図7に示される凸部60と図11に示される凹部59を設け、積極的に左右方向のブレをなくすことができる構成とした点については、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、仮に、そのように解されるとしても、当業者であれば、容易になし得た設計的事項にすぎないことである。
また、本件補正発明の奏する作用効果についても、刊行物1記載の発明、及び前記各周知技術の各々が奏する作用効果を、単に組み合わせた作用効果にすぎないものと認められ、上記(ア),(イ)及び(ウ)が有機的に結びついて成ることによるものとすることはできない。
したがって、上記請求人の主張は採用することができない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年7月22日付けの手続補正書により補正がされた明細書の特許請求の範囲の請求項1記載された事項により特定される前記第2の1-1に示したとおりのものと認められる。

2.引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2-2に示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2の2.で検討したように、本件補正発明の特定事項から前記限定事項を省いたものである。
そうすると、前記第2の2-4に記載したとおり、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2-4に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び前記刊行物2ないし4記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び前記刊行物2ないし4記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-24 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-20 
出願番号 特願2000-75517(P2000-75517)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B26B)
P 1 8・ 575- Z (B26B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小椋 正幸  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 佐々木正章
鈴木 孝幸
発明の名称 電気かみそり  

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