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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B09B
管理番号 1136796
審判番号 不服2004-21501  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-02-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-15 
確定日 2006-05-17 
事件の表示 平成11年特許願第224889号「有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月20日出願公開、特開2001- 46997〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年8月9日の出願であって、平成16年9月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、補正期間内の同年11月15日付で手続補正がなされ、その後当審において、上記平成16年11月15日付け手続補正が却下され、平成17年12月6日付けで拒絶理由通知がなされ、平成18年2月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願発明は、平成18年2月6日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明6」という。)。
【請求項1】有機性廃棄物を投入する加圧室と、該加圧室に200〜250kg/cm2の分別圧力を加えて廃棄物を粉砕する加圧手段と、該加圧室にペースト化用微小間隙を介して連なり廃棄物中の液状化可能成分を固形物粒径数100ミクロン程度の粉砕ペーストとして排出する流出口と、該加圧室に残る水分70%以下の未粉砕残滓を取り出す払出口とを有する高圧分別機;前記流出口に連通し且つ高温メタン生成菌を主体とした嫌気性微生物が付着した炭素繊維製担体を充填した発酵処理槽;前記払出口に連通した炭化装置;並びに前記処理槽と前記炭化装置とに連通し且つ前記処理槽で発酵処理時に生じるバイオガスに貯えるガスホルダーを備え、前記処理槽において粉砕ペーストから未粉砕残滓の炭化に必要な熱量より大きな発生熱量のバイオガスを回収し、前記ガスホルダーの一部を前記炭化装置へ導き燃焼させることにより前記残滓を加熱炭化してなる有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置。
【請求項2】請求項1の処理装置において、前記処理槽に前記ガスホルダーに連通した加熱器を設け、前記バイオガスを前記加熱器へ導き燃焼させることにより前記処理槽を50〜60℃に加熱してなる有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置。
【請求項3】請求項1又は2の処理装置において、前記高圧分別機に、一対のピストンを内部に有し両ピストンの所定加圧位置の間に前記加圧室を画成するシリンダー、前記シリンダー内周面との間に前記廃棄物のペースト化用微小間隙を形成する前記ピストン周縁の凹部に対向する前記シリンダー上の部位に開口する前記粉砕ペーストの流出口、及び前記シリンダー上における両ピストンの所定払出し位置から前記未粉砕残滓を取り出す払出口を設けてなる有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置。
【請求項4】請求項1から3の何れかの処理装置において、前記高圧分別機の流出口と前置処理槽との間に、前記粉砕ペーストを微粉砕する微粉砕機、及び前記微粉砕後のペーストを蓄えるスラリー調整槽を設けてなる有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置。
【請求項5】請求項4の処理装置において、前記処理槽の消化液の吐出口に連通させて曝気槽を設け、前記曝気槽において前記消化液を曝気処理した処理水の一部を前記粉砕ペーストのスラリー用希釈水として前記調整槽へ戻してなる有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置。
【請求項6】請求項1から5の何れかの処理装置において、前記処理槽に中空筒状の炭素繊維製周壁を枠体で補強した担体の複数個をその中空部が鉛直となる如く積み重ねて設け、高温メタン生成菌を前記担体を担持させてなる有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置。

3.刊行物
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された引用例1(特開平10-137730号公報)、引用例2(特開昭56-51292号公報)、引用例3(特開平11-153313号公報)、引用例4(特開平11-128870号公報)、引用例5(特開昭51-101001号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)引用例1:特開平10-137730号公報
(ア)「【請求項1】長さ方向中間部位に液出口を穿ち該液出口の片側及び反対側に取入口及び払出口を穿った筒体、前記片側から筒体へ嵌入し前記取入口を開閉するように移動する封止リング付き第1ピストン、前記反対側から筒体内壁との間に所定微小間隙を保ちつつ筒体へ嵌入し前記払出口を開閉するように移動する封止リング付き第2ピストン、前記第1及び第2ピストンに対する加圧手段、並びに前記液出口に連通する嫌気処理槽を備え、前記取入口を跨いで離隔した前記両ピストンの間に前記取入口から厨芥を投入し、前記取入口と液出口との間の部位で前記両ピストンにより厨芥に高圧を印加して細胞性成分を粉砕ペーストとし且つ該粉砕ペーストを前記微小間隙及び液出口を介して前記処理槽へ送出し、前記粉砕ペースト送出後に前記第2ピストンを後退させて厨芥の残滓を前記払出口へ送出してなる高圧粉砕式厨芥処理システム。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(イ)「【請求項2】請求項1の処理システムにおいて、前記所定微小間隙及び/又は前記加圧手段による加圧強さの調節により前記粉砕ペースト中の固形物を前記嫌気処理に適する大きさに微細化してなる高圧粉砕式厨芥処理システム。
【請求項3】請求項1の処理システムにおいて、前記筒体の液出口と前記処理槽との間に、相対移動する一対の無気孔砥石の対向面間で前記粉砕ペーストを磨り潰す石臼式粉砕機を設けてなる高圧粉砕式厨芥処理システム。」(【特許請求の範囲】【請求項2】、【請求項3】)
(ウ)「【請求項4】請求項1から3の何れかの処理システムにおいて、前記嫌気処理槽に加熱器と該処理槽及び加熱器に連通するガスホルダーとを設け、前記処理槽内での嫌気性微生物による分解処理時に生ずる可燃性ガスを前記ガスホルダーを介して加熱器に導き燃焼させることにより前記処理槽を50〜60℃に加熱してなる高圧粉砕式厨芥処理システム。
【請求項5】請求項1から3の何れかの処理システムにおいて、前記嫌気処理槽の消化液の吐出口に連通させて曝気槽を設け、前記曝気槽において前記消化液を曝気処理した処理水の一部を前記粉砕ペーストのスラリー用希釈水として前記筒体の取入口へ戻し、前記処理槽及び/又は曝気槽の汚泥を前記筒体の取入口へ返送してなる高圧粉砕式厨芥処理システム。」(【特許請求の範囲】【請求項4】、【請求項5】)
(エ)「【請求項8】請求項1から7までの何れかの処理システムにおいて、前記筒体の液出口と前記嫌気処理槽の間にスラリー調整槽を設け、前記処理槽の分解処理時間中における前記粉砕ペーストを前記スラリー調整槽に貯め、前記スラリー調整槽のスラリーを前記処理槽でバッチ処理してなる高圧粉砕式厨芥処理システム。
【請求項10】請求項1から9の何れかの処理システムにおいて、前記嫌気処理槽に、中空筒状のガラス繊維布製周壁を枠体で補強したガラス繊維製担体の複数個をその中空部が鉛直となる如く積み重ねて設け、嫌気性微生物を前記複数個のガラス繊維製担体に担持させてなる高圧粉砕式厨芥処理システム。」(【特許請求の範囲】【請求項8】、【請求項10】)
(オ)「本発明者は最近の生ごみの高圧処理技術に注目した。厨芥を高圧で処理すれば、その中の細胞性廃棄物のみを液状に粉砕することができ、液状にならない非細胞性廃棄物との分別が可能である。他方、生ごみ高圧処理で生ずる液状廃棄物は固形物の粒径が大きく高濃度であるため、・・・メタン発酵法で生物学的に処理する具体的技術は開発されていなかた。」(段落【0006】)
(カ)「【発明の実施の形態】図1及び図2の高圧処理機40は、・・・厨芥1に高圧を印加し、その細胞性成分を粉砕ペーストとする。液状化した粉砕ペーストは、筒体41と第2シリンダー45との間の微小間隙46を介して、高圧である筒体41内部から大気圧の液出口47へ押し出され、処理槽4へ搬送される。微小間隙46の通過時の圧力差により粉砕ペースト中の細胞の膜組織が破壊されるので、液出口47からの送出時には細胞性有機固形物からなるペーストとなる。」(段落【0010】)
(キ)「本発明者は、高圧処理機40の微小間隙46の調節と加圧手段44a、45aによるピストン44、45の圧力調節とにより、微小間隙46における平均差圧が調整可能であり、液出口47におけるペースト中の固形物の粒径が調整可能であることを実験的に確認した。表1は、加圧手段44a、45aとして馬力4Pの油圧ポンプを用いたときに微小間隙46の調整に伴う平均差圧の変化の一例を示す。即ち、平均差圧の調整により、嫌気処理槽4へ送出する粉砕ペースト中の固形物の粒径を図3における粉砕機2aによる微粉砕と同程度とすることができる。」(段落【0011】)
(ク)「【表1】
微小間隙(mm) 0.7 0.6 0.5 0.4
平均差圧(kg/cm3)150 165 180 200
処理量(kg/hr) 220 180 150 130 」(段落【0012】)
(ケ)「筒体41の微小間隙46を通過するのは液状化した細胞性廃棄物のみであり、非細胞性廃棄物は液出口47から出力されない。従って非細胞性廃棄物が処理槽4に混入して生物学的処理を妨げるおそれがなく、嫌気処理を短時間で効率的に行うことができる。・・・更に、上記加圧により厨芥1中の非細胞性廃棄物が圧縮固定されて大幅に減容化できるので、圧縮後の取り扱い及び処分の容易化が図れる。
[実験例1]・・・嫌気処理槽4には、図6に示すような中空筒状のガラス繊維布製周壁37を合成樹脂製のらせん状枠体38で補強したガラス繊維製担体35の複数個を中空部が鉛直となる如く積み重ねて設け、高温菌をそれらのガラス繊維製担体35に担持させ、処理槽4を50〜60℃に維持した。」(段落【0013】〜【0014】)
(コ)「好ましくは、図1に示すように処理槽4内での分解処理時に生ずる可燃性ガスをガスホルダー6に蓄え、例えばそのガスを熱源とする発電手段(図示せず)を設け、高圧処理機40の加圧手段44a、45a、石臼式粉砕機2、各種ポンプ、及び処理槽4の加熱器5を電気ヒータとした場合の電力を供給することにより、自足的な厨芥処理システムとすることができる。・・・」(段落【0018】)
(サ)「(イ)嫌気処理槽への非細胞性廃棄物の混入が防止できるので、嫌気処理での消化速度の向上と消化率の改善が図れる。・・・」(段落【0023】)
(2)引用例2:特開昭56-51292号公報
(ア)「本発明によれば、この目的は、都市ごみを脱水機で脱水して脱水ごみと脱離水とに分離し、脱水ごみを熱分解炉に導入して熱分解し、他方、脱離水はメタン発酵処理に付すことによって達成される。」(第2頁右上欄1〜5行)
(イ)「本発明によれば、都市ごみは予め脱水してから熱分解されるので、熱分解に要する熱量は著しく節約され、熱分解により生成した分解ガス(発熱量約4000Kcal/m3N)を・・・エネルギー源として供給することができる。」(第2頁右上欄10〜16行)
(ウ)「他方、脱離水のBOD及びCODは高いので、これをメタンガスより成る可燃性ガス(発熱量約5000Kcal/m3N)が多量に発生し、メタン発酵に要する熱量に消費しても、なお多量の余剰ガスが得られ、これをエネルギー源として種々の目的に利用することができる。」(第2頁右上欄17行〜同頁左下欄3行)
(エ)「圧搾脱水機1で発生した脱離水9は、有機物濃度が極めて高く」(第3頁左上欄7〜8行)
(オ)「前記実施例においては、脱水機としては圧搾式の脱水機、熱分解炉としては外熱移動層式の熱分解炉を用いた場合につき説明したが、・・・他の型式のものを用いても、同様に良好な結果が得られる。」(第3頁右下欄16〜末行)
(3)引用例3:特開平11-153313号公報
(ア)「【従来の技術】近時、一般家庭からでるゴミの量および産業廃棄物の量は増加の一途を辿っており、このような廃棄物の増加は大きな社会問題となっている。」(段落【0002】)
(イ)「可燃性廃棄物の処理方法の一般的なものとして、燃焼焼却して処分する方法があるが、この燃焼による処理では、燃焼による煙、煤塵等の排出が起こりやすく・・・多量の煤塵や悪臭ガスの発生を伴い、地球環境汚染の一因ともなる等の不具合がある。」(段落【0004】)
(ウ)「そこで、最近では、・・・有機物中の炭素を固定化して可燃性廃棄物を処理する、いわゆる可燃性廃棄物の炭化処理が注目されつつある。このような炭化処理によると、可燃性廃棄物の減量化が可能となり、また、炭化処理で得られた炭化物(炭)を吸着材、土壌改良材等に再利用することが可能となり、さらに炭酸ガスの増加を防ぎ、地球の温暖化の防止にも役立つことができる。」(段落【0006】)
(4)引用例4:特開平11-128870号公報
(ア)「【従来技術】最近、廃棄物を焼却する際、猛毒のダイオキシン類が発生し大きな社会問題となっている。これを解決する一手段として、焼却工程を伴わない廃棄物の乾留・炭化による処理方法が取り上げられている。・・・」(段落【0002】)
(イ)「従って、本発明の目的は、・・・ダイオキシン類発生の抑制効果を維持しつつ、処理時間の短縮、エネルギーの削減、残渣の減量・減容および爆発事故防止が可能な廃棄物の炭化方法を提供することにある。」(段落【0007】
(5)引用例5:特開昭51-101001号公報
(ア)「都市ごみなどの有機質廃棄物から可燃ガスを回収する処理方法において、前記廃棄物を粉砕して微細なものと粗大なものとに分級し、微細なものを消化槽に投入して発生したメタンガスを回収し、粗大なものは乾留または焼却によって処理することを特徴とする有機質廃棄物の処理方法。」(特許請求の範囲請求項1)
(イ)「次に都市ごみを本発明の方法によって処理した実施例について説明する。・・・・本発明では、消化法と乾留法を併用することにより、乾留法から得られる排熱で消化槽を加温することにより、発生したメタンの全量を・・・他の用途に使用することができる。」(第2頁左上欄9行〜同頁左下欄4行)

4.対比・判断
(1)本願発明1について
引用例1には、記載事項ア、カによれば「高圧処理機と嫌気処理槽を備え、高圧処理機の筒体に嵌入され、相対し加圧手段により加圧される第1、第2ピストンの間に取入口から厨芥を投入し、取入口と液出口との間の部位で両ピストンにより厨芥に高圧を印加して細胞性成分を粉砕ペーストとし且つ該粉砕ペーストを微小間隙及び液出口を介して液出口に連通する嫌気処理槽へ送出し、前記粉砕ペースト送出後に前記第2ピストンを後退させて厨芥の残滓を前記払出口へ送出してなる高圧粉砕式厨芥処理システム」が記載されているといえる。また、この記載中の「粉砕ペースト」に関し、記載事項カに「微小間隙の通過時の圧力差により粉砕ペースト中の細胞の膜組織が破壊されるので、液出口からの送出時には細胞性有機固形物からなるペーストとなる」ことが記載されている。そして、同様に「嫌気処理槽」に関し、記載事項ケに「嫌気処理槽4には、ガラス繊維製担体の複数個を中空部が鉛直となる如く積み重ねて設け、高温菌をそれらのガラス繊維製担体に担持させ」ることが、また、記載事項ウに「嫌気処理槽に加熱器と該処理槽及び加熱器に連通するガスホルダーとを設け、前記処理槽内での嫌気性微生物による分解処理時に生ずる可燃性ガスを前記ガスホルダーを介して加熱器に導き燃焼させる」ことが記載され、さらに「処理システム」に関連して、記載事項コに「処理槽内での分解処理時に生ずる可燃性ガスをガスホルダーに蓄え、例えばそのガスを熱源とする発電手段を設け、高圧処理機の加圧手段、各種ポンプ、及び処理槽の加熱器を電気ヒータとした場合の電力を供給することにより、自足的な厨芥処理システムとすることができる」ことが記載されている。
これらの記載を本願発明1の記載振りに則して整理すると、「高圧処理機と嫌気処理槽を備え、高圧処理機の筒体に嵌入され、相対し加圧手段により加圧される第1、第2ピストンの間に取入口から厨芥を投入し、取入口と液出口との間の部位で両ピストンにより厨芥に高圧を印加して微小間隙の通過時の圧力差により細胞性成分を粉砕ペーストとし、該粉砕ペーストを微小間隙及び液出口を介して液出口に連通し且つ高温菌を担持させたガラス繊維製担体の複数個を中空部が鉛直となる如く積み重ねて設けた嫌気処理槽へ送出し、前記粉砕ペースト送出後に前記第2ピストンを後退させて厨芥の残滓を前記払出口へ送出してなり、処理槽内での分解処理時に生ずる可燃性ガスをガスホルダーに蓄えるとともに、加熱器に導き燃焼させる、自足的な高圧粉砕式厨芥処理システム」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。
そして、本願発明1と引用1発明を対比すると、引用1発明の「厨芥」、「高圧処理機」、「高温菌」及び「嫌気処理槽」は、それぞれ本願発明1の「有機性廃棄物」、「高圧分別機」、「高温メタン生成菌」及び「発酵処理槽」に相当し、引用1発明の「高圧処理機の筒体に嵌入され、相対し加圧手段により加圧される第1、第2ピストンの間」の空間が「加圧室」となっていることは構成からみて明らかであり、また、引用1発明の「微小間隙」は、「微小間隙の通過時の圧力差により細胞性成分を粉砕ペーストと」するものであるから「ペースト化用微小間隙」といえる。そして、引用1発明の「担体の複数個を中空部が鉛直となる如く積み重ねて設けた」ことは、複数個の担体を積み重ねて形成していることからみれば「担体を充填」することに他ならないことから、
両者は「有機性廃棄物を投入する加圧室と、該加圧室に分別圧力を加えて廃棄物を粉砕する加圧手段と、該加圧室にペースト化用微小間隙を介して連なり廃棄物中の液状化可能成分を粉砕ペーストとして排出する流出口と、該加圧室に残る未粉砕残滓を取り出す払出口とを有する高圧分別機;前記流出口に連通し且つ高温メタン生成菌を主体とした嫌気性微生物が付着した担体を充填した発酵処理槽;並びに前記処理槽に連通し且つ前記処理槽で発酵処理時に生じるバイオガスに貯えるガスホルダーを備えてなる有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点a:本願発明1が「200〜250kg/cm2の分別圧力を加えて廃棄物を粉砕する」のに対し、引用1発明では、高圧であるが、具体的な圧力が特定されていない点
相違点b:本願発明1が「固形物粒径数100ミクロン程度の粉砕ペーストとして排出する」のに対し、引用1発明では、粉砕ペーストであるが、具体的な粒径が特定されていない点
相違点c:本願発明1が「加圧室に残る水分70%以下の未粉砕残滓」であるのに対し、引用1発明では、かかる構成が特定されていない点
相違点d:本願発明1は「炭素繊維製担体」であるのに対し、引用1発明では「ガラス繊維製担体」である点
相違点e:本願発明1が「前記払出口に連通した炭化装置」を有しているのに対し、引用1発明にはかかる構成を備えていない点
相違点f:本願発明1が「前記処理槽において粉砕ペーストから未粉砕残滓の炭化に必要な熱量より大きな発生熱量のバイオガスを回収し、前記炭化装置と連通する前記ガスホルダーの一部を前記炭化装置へ導き燃焼させることにより前記残滓を加熱炭化してなる」のに対し、引用1発明は「可燃性ガスを加熱器に導き燃焼させる、自足的なシステム」であるが、かかる構成がない点

そこで、これら相違点について検討する。
(i)まず、相違点a〜cについて、これらの相違点にかかる構成がいずれも高圧処理機の高圧処理に関するものであるから、併せみてみると、
(a)相違点a:圧力については、引用例1には、記載事項キ及びクによれば、「高圧処理機の微小間隙の平均差圧は、微小間隙の調節と加圧手段の圧力調整により調整可能である」こと、「高圧処理機の微小間隙の平均差圧の調整で、固形物粒径が調整可能である」ことが記載されているといえ、【表1】に「馬力4Pの油圧ポンプを用いたときの微小間隙の調整に伴う平均差圧の変化の一例」が示されるとともに、「即ち、平均差圧の調整により、嫌気処理槽へ送出する粉砕ペースト中の固形物の粒径を粉砕機による微粉砕と同程度とすることができる」と記載されている。そして、この一例として挙げられた【表1】には、「微小間隙0.4mmで平均差圧200kg/cm3」が例示されている。これらの記載からみれば、引用例1には、「微小間隙0.4mmで平均差圧200kg/cm3」が挙げられ、微小間隙の調節と加圧手段の圧力調整により調整される平均差圧を粉砕機による微粉砕と同程度とするように調整できることが記載されているといえ、また、この【表1】が単なる一例であることを参酌すれば、微小間隙の調整により、さらに200kg/cm3以上の高い平均差圧をも想定できる。そしてまた、記載事項イには「所定微小間隙及び/又は前記加圧手段による加圧強さの調節により前記粉砕ペースト中の固形物を前記嫌気処理に適する大きさに微細化」することが記載されている。そうすると、引用例1には、挙げられた「微小間隙0.4mmで平均差圧200kg/cm3」が本願発明1の分別圧力と同レベルとみれ、それ以上の高い平均差圧をも想定できるから、本願発明1の同程度の圧力或いはそれ以上の圧力をかけることが記載乃至は示唆され、また、所定微小間隙及び/又は前記加圧手段による加圧強さの調節により粉砕ペースト中の固形物の粒径を粉砕機による微粉砕と同程度で、嫌気処理に適する大きさに微細化することが開示されているといえる。
(b)また、相違点b:粒径については、引用例1の記載事項カには「粉砕ペースト中の細胞の膜組織が破壊されるので、細胞性有機固形物からなるペースト」となって液出口からの送出されることが記載されている。この記載から、引用1発明の高圧処理によって細胞の膜組織が破壊され、高圧処理機から細胞性固形物が流出するものといえる。そして、上記(a)で記載したとおり、粉砕ペースト中の固形物粒径は、高圧処理機の微小間隙の平均差圧によって調整可能であり、それは粉砕機による微粉砕と同程度で、嫌気処理に適する大きさに微細化される。また、引用例1の記載事項クには、上記したとおり【表1】に「微小間隙が0.4mm」が例示され、この細胞性固形物が0.4mmの微小間隙を通過する以上、その粒径は0.4mm以下となっているともみれる。
(c)また、相違点c:水分については、引用例1の記載事項ケには「加圧により厨芥1中の非細胞性廃棄物が圧縮固定されて大幅に減容化できるので、圧縮後の取り扱い及び処分の容易化が図れる」ことが記載されている。この記載の「加圧」は、相違点aでみたとおり本願発明1の同程度の圧力を意味し、この圧力により廃棄物が圧縮され大幅な減容化が図られ、取り扱い及び処分の容易化が図れるとみれる。
そうすると、引用1発明の高圧処理機の高圧処理において、加圧強さの調節によって嫌気処理に適する大きさに微細化するために、引用1発明における本願発明1と同程度の平均差圧200kg/cm3前後の圧力の中から相違点aにかかる本願発明1の分別圧力の範囲に選定することは格別困難なく行え、また、この高圧処理された細胞性固形物は、細胞の膜組織が破壊されるものであり、しかも粉砕ペースト中の固形物の粒径を粉砕機による微粉砕と同程度とするものであって、嫌気処理に適する大きさに微細化されたものであること、及び、この細胞性固形物が0.4mmの微小間隙を通過するものであることから、粒径が小さくなれば生物処理の効率が向上することも自明であることを勘案すると、固形物粒径を嫌気処理に適する大きさに微細化された範囲で、数100ミクロン程度に選択し、限定することも格別なこととはいえない。さらに、引用1発明が上記したとおり200kg/cm3程度の高圧で圧縮されるものでは、大幅な減容化が図られ、取り扱い及び処分の容易化が図れる程度に脱水されるものとみれ、また、細胞の膜組織が破壊されて高圧処理機から細胞性固形物が流出した残りの非細胞性廃棄物を考慮すると相当程度の含水比率とみれ、その上限の程度を適宜選定することに格別困難性はない。なお、水分が圧力に基づくことは本願明細書段落【0021】に「200kg/cm3程度の圧力で圧縮するため、・・・水分は70%以下となる」旨の記載からみても明らかである。
以上のことから、相違点a〜cにかかる本願発明1の構成については、具体的な数値は記載がないものの、引用1発明と実質的には大差がないものであって、嫌気処理に適する大きさに微細化するために、引用1発明に基づいて実験等を通じて微小間隙や圧力の強さを調整し、圧力、さらには固形物粒子径並びに水分の比率を検証し、数値化することは通常の創作能力の発揮にすぎなく、相違点a〜cにかかる本願発明1の構成を選択することは、当業者であれば容易になし得たものといえる。
なお、請求人は、当審拒絶の理由に対する意見書において、相違点bの固形物粒径について「引用例1〜5は何れも本願発明の必須要件『有機性廃棄物をメタン発酵処理おけるバイオマスガス量が多い粒径数100ミクロン程度まで粉砕すること』を記載せず、示唆しません。・・・200Nm3程度のバイオガス回収量は有機性廃棄物を粒径数100ミクロン程度の粉砕ペーストとすることにより初めて達成できるものであり、粒径1mm以上の粉砕ペーストでは達成は困難であります。」(第4頁5〜21行)旨主張している。この主張の「粒径1mm以上の粉砕ペーストでは達成は困難である」ことをみると、相違点bにかかる本願発明1の「固形物粒径数100ミクロン程度」というのは、粒径1mmより小さいものと解することができ、引用例1には、記載事項クの【表1】に、「微小間隙(mm)が0.7、0.6、0.5、0.4」と例示される。これらの微小間隙はいずれも1mmより小さいものであり、この微小間隙を通過する固形粒径は1mm以下であるともみれることから、引用1発明の高圧処理機の処理において数100ミクロン程度は通常の範囲であるともみれる。また、引用例1では好ましい態様として「粉砕ペーストを擦り潰す石臼式粉砕機を設ける」ことが記載(段落【0009】)され、その粉砕機の粒径と同程度である(記載事項カ)ことや、より微細化することが生物学的処理の効率上望まれることを鑑みると、引用例1の記載事項サの「嫌気処理槽への非細胞性廃棄物の混入が防止できるので、嫌気処理での消化速度の向上と消化率の改善が図れる」との記載をみれば、粒径1mm以下の数100ミクロン程度にすることで微細化された粒子がメタン発酵効率を向上する点において本願発明1と引用1発明とでは格別差異があるとはいえないことから、この主張を認めることはできない。

(ii)次に、相違点dについては、生物処理槽における微生物担体として炭素繊維製担体は、ガラス繊維製担体と同様周知のものである(周知技術として、「特開平10-323186号公報」、「特開平11-207379号公報」を提示する。)から、引用1発明の「ガラス繊維製担体」に代えて「炭素繊維製担体」を用いることは当業者が適宜為し得るものといえる。
また、請求人は、担体に関しても、上記意見書において「本願発明は、高温メタン生成菌を主体とした嫌気性微生物を炭素繊維製担体に保持させることにより、担体に付着する微生物量を増大させ、粉砕ペーストと嫌気性微生物とを効率的に接触させることができます」(第2頁19〜31行)と主張しているが、本願明細書には「炭素繊維製担体」は「ガラス繊維製担体」と同列に記載されるものであって、何処にも「炭素繊維担体」の優位性については記載がない。たとえ、「炭素繊維製担体」が上述するように生物処理上効率的であるとしても、上記周知例として挙げた「特開平11-207379号公報」に開示されているのであるから、この主張を認めることもできない。

(iii)また、相違点eについては、引用例2の記載事項アには「都市ごみを脱水機で脱水して脱水ごみと脱離水とに分離し、脱水ごみを熱分解炉に導入して熱分解し、他方、脱離水はメタン発酵処理にする」ことが記載され、この「脱水機」及び「熱分解炉」は記載事項オによれば「圧搾式脱水機」及び「外熱移動層式熱分解炉」であり、また「脱離水」は記載事項エによれば「有機物濃度の高いもの」である。そうすると、引用例2には、「都市ごみを圧搾式脱水機で脱水して脱水ごみと有機物濃度の高い脱離水とに分離し、脱水ごみを外熱移動層式熱分解炉に導入して熱分解し、他方、脱離水はメタン発酵処理にする」都市ごみ処理装置の発明(以下、「引用2発明」という。)が記載されているといえる。そうすると、引用1発明では、確かに「厨芥の残滓」は「払出口へ送出」するものであり、その後の処理については何ら記載されていないが、引用1発明の残滓の処理として、引用2発明の脱水ごみの処理の外熱移動層式熱分解炉に導入して熱分解することを適用することに何ら困難はなく、脱水してから熱分解するので熱分解に要する熱量は著しく節約されることやメタン発酵によるガスをエネルギー源として種々の目的に利用できることが記載(記載事項イ、ウ)されるのであるから、自足的処理システムをめざす引用1発明に引用2発明を適用することに格別の阻害要因もないというべきである。またさらに、引用例5の記載事項ア、イによれば「有機質廃棄物を粉砕して微細なものと粗大なものとに分級し、微細なものを消化槽に投入して発生したメタンガスを回収し、粗大なものは乾留によって処理する」ことが記載されているといえることからみても、厨芥残滓処理として炭化処理は容易に想起し得るものとみれる。
また、残滓の処理量が増減したり、引用例3の記載事項アにあるように廃棄物の量の増加はごく一般的な問題であり、その減量・減容処理のために炭化処理を導入することは、引用例3、4に記載(引用例3の記載事項ウ、引用例4の記載事項ア、イ)されるように、よく知られた技術事項であり、また炭化処理により炭化処理で得られた炭化物の有効利用や地球温暖化の防止、ダイオキシン類発生の防止などにも有効であることが知られているのであるからみても、引用1発明の厨芥の残滓の後処理として炭化処理を導入することが格別困難であるとはいえない。
(iv)また、相違点fについては、相違点dにかかる本願発明1の構成に基づいて構築されるエネルギーシステムであり、本願明細書の段落【0022】の「新たに外部からエネルギーを補充することなく未粉砕残滓を炭化し」及び段落【0031】の「炭化装置へ供給されず残ったバイオガスを・・・処理槽の加熱器等の動力として利用することにより、発酵処理装置の自足性を高める」などの記載からみると、相違点fにかかる本願発明1の技術的意義は、バイオガスを回収し、炭化装置の加熱のための供給及び処理装置のエネルギーの自足性を高めることを意図したものといえる。そうするために如何なる構成としたか明らかではないが、仮に、これが特に相違点a〜eにかかる本願発明1の構成を採用することによってもたらされるとしても、相違点a〜eについては上記したとおりであり、引用1発明は、「加熱器に導き燃焼させ、処理槽からのガスを多くのエネルギー源として利用する、自足的なシステム」であることから、引用例1の「嫌気処理を短時間に効率的に行うことができる」、「加圧により圧縮後の処分の容易化が図れる」(記載事項ケ)の記載や「嫌気処理での消火速度の向上と消化率の改善が図れる」(記載事項サ)の記載、引用例2の「都市ゴミは予め脱水してから熱分解されるので、熱分解に要する熱量は著しく節約され」る(記載事項イ)との記載を参酌すれば、炭化処理を採用することに伴って炭化装置への供給や処理槽の加熱器の利用等自足的なシステムを導き出すことが格別なこととはいえない。
そして、本願発明1の相違点a〜fの構成を採ることによる明細書記載の効果もこれら引用例1〜5及び周知技術から予測し得るものといえる。
してみると、本願発明1は引用例1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用し、これに「処理槽にガスホルダーに連通した加熱器を設け、バイオガスを加熱器へ導き燃焼させることにより処理槽を50〜60℃に加熱」することを付加し限定するものである。この限定する技術的事項については、引用例1の記載事項ウに開示されていることから、これを引用1発明に適用することに格別困難はないといえる。
してみると、本願発明2は、引用例1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本願発明3について
本願発明3は、本願発明1又は2を引用し、更に「高圧分別機に、一対のピストンを内部に有し両ピストンの所定加圧位置の間に前記加圧室を画成するシリンダー、前記シリンダー内周面との間に前記廃棄物のペースト化用間隙を形成する前記ピストン周縁の凹部に対向する前記シリンダー上の部位に開口する前記粉砕ペーストの流出口、及び前記シリンダー上における両ピストンの所定払出し位置から前記未粉砕残滓を取り出す払出口を設け」ることを限定するものであるが、この技術的事項は引用1発明と実質的な差異はないものである。
してみると、本願発明3は引用例1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本願発明4について
本願発明4は、本願発明1〜3の何れかを引用し、更に「高圧分別器の流出口と前置処理槽との間に、前記粉砕ペーストを微粉砕する微粉砕機、及び前記微粉砕後のペーストを蓄えるスラリー調整槽を設けてなる」ことを限定するものであるが、この技術的事項は引用例1の記載事項イ、エに開示されるものであるから、これを引用1発明に付加することは格別なものとはいえない。
してみると、本願発明4は、引用例1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本願発明5について
本願発明5は、本願発明4を引用し、更に「処理槽の消化液の吐出口に連通させて曝気槽を設け、前記曝気槽において前記消化液を曝気処理した処理水の一部を前記粉砕ペーストのスラリー用希釈水として前記調整槽へ戻してなる」ことを限定するものであるが、この技術的事項は引用例1の記載事項ウに開示されるものであり、希釈水の返送経路を種々変更することも当業者が適宜なし得ることであるから、この技術的事項を格別なものとすることはできない。
してみると、本願発明5は、引用例1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本願発明6について
本願発明6は、本願発明1〜5の何れかを引用し、更に「処理槽に中空筒状の炭素繊維製周壁を枠体で補強した担体の複数個をその中空部が鉛直となる如く積み重ねて設け、メタン生成菌を前記担体を担持させ」ることを限定するものであるが、この担体についての技術的事項はガラス繊維製担体について引用例1の記載事項エに開示されるのであるから、これを炭素繊維製担体に適用することは格別困難なく行えるものといえる。
してみると、本願発明6は、引用例1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明1〜6は、引用例1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-14 
結審通知日 2006-03-15 
審決日 2006-03-29 
出願番号 特願平11-224889
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 野田 直人
増田 亮子
発明の名称 有機性廃棄物の少残滓型メタン発酵処理装置  
代理人 市東 篤  
代理人 市東 禮次郎  
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