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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C |
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管理番号 | 1136843 |
審判番号 | 不服2003-12947 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-05-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-09 |
確定日 | 2006-05-19 |
事件の表示 | 特願2000-318280「三次元案内装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月22日出願公開、特開2001-140880〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【一】手続の経緯 本願は、平成7年10月6日に出願した特願平7-260401号の一部を平成12年10月18日に新たな特許出願としたものであって、平成15年6月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月8日付けで特許法(平成6年法律第116号により改正された特許法をいう。以下、同じ。)第17条の2第1項第3号の規定に該当する明細書についての手続補正がなされたものである。 【二】平成15年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲については、補正前の記載、 「【請求項1】 一方向に沿って所定半径に湾曲形成した移送曲面部を備えた基台と、上記移送曲面部の湾曲形成方向に沿って移動する移動台と、上記基台の移送曲面部及び上記移動台の間に上記移動方向に沿って配置した多数のボールからなるボール列とからなり、上記基台の移送曲面部に上記移動台の移動方向に沿って上記ボールが転動する複数列の基台ボール転動溝を上記移送曲面部の幅寸法にわたって並列形成し、また、上記移動台と上記基台ボール転動溝とで上記ボールを挟む複数列の移動台ボール転動溝を形成し、上記基台ボール転動溝と上記移動台ボール転動溝とで複数の負荷ボール通路を形成するとともに、上記移動台には上記負荷ボール通路に連通した複数の無負荷ボール通路を形成して、上記負荷ボール通路と上記無負荷ボール通路とでボールの無限循環路を複数形成した曲線案内装置を第1案内部とし、 また、基台と移動台とからなる上記の曲線案内装置を第2案内部とし、 上記第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材が上記第1案内部の移動台に固定され、上記第1案内部の移動台の運動平面と、上記第2案内部の基台及び移動台の他方の部材の運動平面とが交わるものとし、 さらに三次元案内装置の上記第1案内部の基台の下面、上記第1案内部の移動台と第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材との間、上記第2案内部の基台及び移動台の他方の部材の上面部の少なくとも1箇所には弾性体を設けるとともに、この弾性体を挟持した両部材を直接接触しないように取り付けた ことを特徴とする三次元案内装置。 【請求項2】 上記無限循環路のうち上記無負荷ボール通路には棒状部材を遊嵌させ、この棒状部材の両端に位置する2つのボール間で無負荷ボール通路内のボールの移動力を伝達するものとしたことを特徴とする請求項1記載の三次元案内装置。」 を、 「【請求項1】 一方向に沿って所定半径に湾曲形成した移送曲面部を有する基台と、上記移送曲面部の湾曲形成方向に沿って移動する移動台と、上記基台の移送曲面部と上記移動台との間に上記移動台の移動方向に沿って多数のボールを配置した多数のボールからなるボール列とを備え、 上記移送曲面部には上記移動台の移動方向に沿って形成された上記ボールが転動する基台ボール転動溝を上記移送曲面部の幅寸法にわたって並列形成し、上記移動台には上記基台ボール転動溝との間で上記ボールを挟む複数列の移動台ボール転動溝を形成し、上記基台ボール転動溝と上記移動台ボール転動溝とにより複数の負荷ボール通路を形成するとともに、上記移動台には上記負荷ボール通路に連通した複数の無負荷ボール通路を形成して、上記負荷ボール通路と上記無負荷ボール通路との組合せによりボールの無限循環路を複数形成した曲線案内装置を第1案内部とし、 他の基台とこの基台に沿って移動する移動台とからなる上記構成の曲線案内装置を第2案内部とし、 上記第1案内部の移動台の移動方向と上記第2案内部の移動台の移動方向とを交わる方向に向けて上記第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材を上記第1案内部の移動台に固定し、 上記第1案内部の基台の下面側に取り付ける下側取付プレートと上記第2案内部材の基台の上面側に取り付ける上側取付プレートとの少なくとも一方を設け、 さらに上記第1案内部の基台の下面側、上記第1案内部の移動台と第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材との間、上記第2案内部の基台及び移動台の他方の部材の上面側の少なくとも1箇所には弾性体を設けるとともに、この弾性体を挟持した両部材を直接接触しないように取り付けた ことを特徴とする三次元案内装置。 【請求項2】 上記無限循環路のうち上記無負荷ボール通路には棒状部材を遊嵌させ、この棒状部材の両端に位置する2つのボール間で無負荷ボール通路内のボールの移動力を伝達するものとしたことを特徴とする請求項1記載の三次元案内装置。」 と補正するものである。 2.補正の目的の適否 上記補正は、請求項1において、「三次元案内装置」を「上記第1案内部の基台の下面側に取り付ける下側取付プレートと上記第2案内部材の基台の上面側に取り付ける上側取付プレートとの少なくとも一方を設け」と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認める。 3.独立特許要件の判断 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である「特開平4-107339号公報」(以下、「引用刊行物」という。)には、 〔あ〕「本発明は防振装置に関し、詳しくはコンピュータ、精密計測機器、精密加工機器などの機器類を載置した床などの上部構造物を、スラブなどの下部構造物上に水平及び鉛直変位可能に支持し、交通振動や地震動による機器類の機能停止や機器類の横転、電気配線の断線などを未然に防止して機器類を交通振動や地震動から保護する防振装置に関する。」(1頁左下欄15行〜右下欄2行参照) 〔い〕「この防振装置(1)は、後述する支承体(4)とその支承体(4)の上下に配置されて防振床(3)及びスラブ(2)に夫々取付けられた上下一対のレール(5)(6)(以下上部及び下部レールと称す)とで構成される。」(2頁右下欄12〜16行参照) 〔う〕「上記支承体(4)は、一対のローラセグメント(7)(8)(以下上部及び下部ローラセグメントと称す)を上下に配置して上部ローラセグメント(7)と下部ローラセグメント(8)とを柱状の防振ゴム体(9)で連結した構造を有する。上部ローラセグメント(7)は複数のローラ(10)(10)…を上方に向けて凸曲面状となるようにX方向に並列させて支持枠(11)に回転自在に軸支したもので、これに対し、下部ローラセグメント(8)は複数のローラ(12)(12)…を下方に向けて凸曲面状となるようにY方向に並列させて支持枠(13)に回転自在に軸支したものである。」(2頁右下欄17行〜3頁左上欄8行参照) 〔え〕「一方、上部及び下部レール(5)(6)は上部及び下部ローラセグメント(7)(8)のローラ(10)…(12)…を受ける凹曲面状の転動面(14)(15)を有する。具体的には、鋼板などのレールベース(16)(17)に粘弾性体(18)(19)を加硫接着などにより一体的に固着し、その粘弾性体(18)(19)の下面及び上面を転動面(14)(15)とする。」(3頁左上欄16行〜右上欄3行参照) 〔お〕「また、この転動面(14)(15)は上述した粘弾性体で形成することが好ましいが、この粘弾性体がなくても、また、それ以外の材質で形成してもよいのは勿論である。」(3頁右上欄20行〜左下欄4行参照) 〔か〕「上記構成からなる防振装置(1)を実使用するに際しては、上部及び下部レール(5)(6)を各レールベース(16)(17)を防振床(3)の下面及びスラブ(2)の上面にネジ止め等で取付け固定することにより実装し、その上部レール(5)と下部レール(6)間に支承体(4)を介在させる。」(3頁左下欄5〜11行参照) 〔き〕「上記上部ローラセグメント(7)のローラ(10)(10)…が当接して転動する上部レール(5)の転動面(14)を粘弾性体(18)で形成したことにより、上部ローラセグメント(7)の移動時、ローラ(10)(10)…が粘弾性体(18)に局部的変形を与えながら転動し、この局部的変形によるエネルギーロスでもってローラ(10)(10)…の転動を速やかに減衰させることができ、ダンパを別に設置する必要もなくなる。」(4頁右上欄13行〜左下欄2行参照) 等の記載が認められる。 そして、上記「上部ローラセグメント(7)」及び「下部ローラセグメント(8)」は、「防振装置」の設計において想定する振動による加速度の範囲内において、直接接触しないように設計されていると考えるのが技術常識と認められる。 また、第1図及び第3図を参照すると、上記「転動面(14)」及び「転動面(15)」は、一方向に沿ってほぼ一定半径で湾曲形成されているように示されていると認められる。 したがって、引用刊行物には、 “一方向に沿って凹曲面状に湾曲形成した転動面(15)を有する下部レール(6)と、上記転動面(15)の湾曲形成方向に沿って移動する下部ローラセグメント(8)とを備え、上記下部ローラセグメント(8)にその移動方向に沿って多数のローラ(12)を配置した曲線案内装置を第1案内部とし、 転動面(14)を有する上部レール(5)とこの上部レール(5)に沿って移動する上部ローラセグメント(7)とからなる上記構成の曲線案内装置を第2案内部とし、 上記第1案内部の下部ローラセグメント(8)の移動方向と上記第2案内部の上部ローラセグメント(7)の移動方向とを交わる方向に向けて上記第2案内部の上部ローラセグメント(7)を上記第1案内部の下部ローラセグメント(8)に固定し、 上記第1案内部の下部レール(6)の下面側に取り付けるレールベース(17)と上記第2案内部材の上部レール(5)の上面側に取り付けるレールベース(16)を設け、 さらに上記第1案内部の下部ローラセグメント(8)と第2案内部の上部ローラセグメント(7)との間には防振ゴム体(9)を設けるとともに、この防振ゴム体(9)を挟持した両部材を直接接触しないように取り付けた防振装置” の発明が記載されていると認められる。 (2)対比 上記引用刊行物に記載された「防振装置」も「三次元案内」の機能を備えるものであるから「三次元案内装置」ということができる。そして、本願補正発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「下部レール(6)」は前者の「第1案内部の基台」に相当し、以下同様に、後者の「レールベース(17)」は前者の「下側取付プレート」に、後者の「上部レール(5)」は前者の「他の基台」に、後者の「レールベース(16)」は前者の「上側取付プレート」に、後者の「防振ゴム体(9)」は前者の「弾性体」に、それぞれ相当すると認められる。また、機能上、後者の「転動面(15)」は前者の「第1案内部の移送曲面部」に対応し、後者の「下部ローラセグメント(8)」は前者の「第1案内部の移動台」に、後者の「上部ローラセグメント(7)」は前者の「第2案内部の移動台」に対応するものと認められる。 したがって、両発明の一致点及び相違点は、本願補正発明の用語を用いて記載すると、次のとおりである。 [一致点] 「一方向に沿って湾曲形成した移送曲面部を有する基台と、上記移送曲面部の湾曲形成方向に沿って移動する移動台とを備えた曲線案内装置を第1案内部とし、 他の基台とこの基台に沿って移動する移動台とからなる上記構成の曲線案内装置を第2案内部とし、 上記第1案内部の移動台の移動方向と上記第2案内部の移動台の移動方向とを交わる方向に向けて上記第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材を上記第1案内部の移動台に固定し、 上記第1案内部の基台の下面側に取り付ける下側取付プレートと上記第2案内部材の基台の上面側に取り付ける上側取付プレートとの少なくとも一方を設け、 さらに上記第1案内部の基台の下面側、上記第1案内部の移動台と第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材との間、上記第2案内部の基台及び移動台の他方の部材の上面側の少なくとも1箇所には弾性体を設けるとともに、この弾性体を挟持した両部材を直接接触しないように取り付けた三次元案内装置」の点 [相違点A] 上記「湾曲形成した移送曲面部」の形状が、本願補正発明は「所定半径に湾曲形成した」形状であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「凹曲面状に湾曲形成した」形状であって「所定半径」に湾曲形成したものか不明である点 [相違点B] 本願補正発明は、上記「曲線案内装置」が、「上記基台の移送曲面部と上記移動台との間に上記移動台の移動方向に沿って多数のボールを配置した多数のボールからなるボール列」を備え、「上記移送曲面部には上記移動台の移動方向に沿って形成された上記ボールが転動する基台ボール転動溝を上記移送曲面部の幅寸法にわたって並列形成し、上記移動台には上記基台ボール転動溝との間で上記ボールを挟む複数列の移動台ボール転動溝を形成し、上記基台ボール転動溝と上記移動台ボール転動溝とにより複数の負荷ボール通路を形成するとともに、上記移動台には上記負荷ボール通路に連通した複数の無負荷ボール通路を形成して、上記負荷ボール通路と上記無負荷ボール通路との組合せによりボールの無限循環路を複数形成した」ものであるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「曲線案内装置」が、「移送曲面部を有する上記基台と移動方向に沿って多数のローラを配置した上記移動台とから構成される」点 (3)判断 (3-1)まず、上記相違点Aについて検討する。 前述のとおり、上記引用刊行物には、第1図及び第3図に、「転動面(14)」及び「転動面(15)」が、一方向に沿ってほぼ一定半径で湾曲形成されているように示されていると認められるから、上記「湾曲形成した移送曲面部」の形状を「所定半径に湾曲形成した」形状とすることは、上記引用刊行物に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 (3-2)次に上記相違点Bについて検討すると、基台の移送面部と移動台との間に上記移動台の移動方向に沿って多数のボールを配置した多数のボールからなるボール列を備え、上記移送面部には上記移動台の移動方向に沿って形成された上記ボールが転動する基台ボール転動溝を上記移送面部に並列形成し、上記移動台には上記基台ボール転動溝との間で上記ボールを挟む複数列の移動台ボール転動溝を形成し、上記基台ボール転動溝と上記移動台ボール転動溝とにより複数の負荷ボール通路を形成するとともに、上記移動台には上記負荷ボール通路に連通した複数の無負荷ボール通路を形成して、上記負荷ボール通路と上記無負荷ボール通路との組合せによりボールの無限循環路を複数形成した案内装置は、本件出願前に周知であり(例えば、特開昭60-155012号公報、特開平3-199710号公報、実願平2-83478号(実開平4-41113号)のマイクロフィルム、特開平6-323332号公報、等参照)、また、上記引用刊行物に記載された「三次元案内装置」(防振装置)において使用されるような「ローラ」も上記周知の案内装置に使用されるような「ボール」も、荷重を支持しながら移動する転動体として同様の作用機能をもつものとして本件出願前から適宜選択使用されているものと認められるから、上記引用刊行物に記載されたものにおいて、「ローラ」を使用する「下部ローラセグメント(8)」、「上部ローラセグメント(7)」構成に換えて、ボールを使用する上記周知の案内装置の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、転動体としてボールを使用する場合、支持する荷重の程度に応じてボールの列数やボール数を決定して負荷を分散させるのが通常と認められる(例えば、特開昭58-21021号公報、特開昭58-211013号公報、等参照)から、ボール列を移送曲面部の幅寸法にわたって並列形成することは、支持する荷重を考慮して当業者が容易に採用し得る事項である。 したがって、相違点Bにおける本願補正発明の「曲線案内装置」の構成は、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たとするのが相当である。 (3-3)このように、本願補正発明は、その発明を特定する事項が、上記引用刊行物に記載された事項及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、作用効果も、上記引用刊行物に記載された事項及び本件出願前周知の事項から予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。 (4)したがって、本願補正発明は、上記引用刊行物に記載された発明及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【三】本願発明について 1.本願発明 平成15年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、平成15年3月17日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。(その記載事項は、前記「【二】平成15年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「1.補正の内容」の補正前の請求項の記載を参照。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である上記引用刊行物「特開平4-107339号公報」には、前記「【二】平成15年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」「3.独立特許要件の判断」「(1)引用例」に記載したとおりの発明が記載されているものと認める。 3.対比・判断 (1)上記引用刊行物に記載された「防振装置」も「三次元案内」の機能を備えるものであるから「三次元案内装置」ということができ、本願発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「下部レール(6)」は前者の「第1案内部の基台」に相当し、以下同様に、後者の「上部レール(5)」は前者の「第2案内部の基台」に、後者の「防振ゴム体(9)」は前者の「弾性体」に、相当すると認められる。また、機能上、後者の「転動面(15)」は前者の「第1案内部の移送曲面部」に対応し、後者の「下部ローラセグメント(8)」は前者の「第1案内部の移動台」に、後者の「上部ローラセグメント(7)」は前者の「第2案内部の移動台」に対応するものと認められる。 したがって、両発明の一致点及び相違点は、本願発明の用語を用いて記載すると、次のとおりである。 [一致点] 「一方向に沿って湾曲形成した移送曲面部を備えた基台と、上記移送曲面部の湾曲形成方向に沿って移動する移動台とを備えた曲線案内装置を第1案内部とし、 また、基台と移動台とからなる上記の曲線案内装置を第2案内部とし、 上記第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材が上記第1案内部の移動台に固定され、上記第1案内部の移動台の運動平面と、上記第2案内部の基台及び移動台の他方の部材の運動平面とが交わるものとし、 さらに三次元案内装置の上記第1案内部の基台の下面、上記第1案内部の移動台と第2案内部の基台及び移動台のいずれか一方の部材との間、上記第2案内部の基台及び移動台の他方の部材の上面部の少なくとも1箇所には弾性体を設けるとともに、この弾性体を挟持した両部材を直接接触しないように取り付けた三次元案内装置」の点 [相違点C] 上記「湾曲形成した移送曲面部」の形状が、本願発明は「所定半径に湾曲形成した」形状であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「凹曲面状に湾曲形成した」形状であって「所定半径」に湾曲形成したものか不明である点 [相違点D] 本願発明は、「曲線案内装置」が「上記基台の移送曲面部及び上記移動台の間に上記移動方向に沿って配置した多数のボールからなるボール列」を備え、「上記基台の移送曲面部に上記移動台の移動方向に沿って上記ボールが転動する複数列の基台ボール転動溝を上記移送曲面部の幅寸法にわたって並列形成し、また、上記移動台と上記基台ボール転動溝とで上記ボールを挟む複数列の移動台ボール転動溝を形成し、上記基台ボール転動溝と上記移動台ボール転動溝とで複数の負荷ボール通路を形成するとともに、上記移動台には上記負荷ボール通路に連通した複数の無負荷ボール通路を形成して、上記負荷ボール通路と上記無負荷ボール通路とでボールの無限循環路を複数形成した」ものであるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「曲線案内装置」が、「移送曲面部を有する上記基台と移動方向に沿って多数のローラを配置した上記移動台とから構成される」点 (2)そして、上記相違点C及びDは、上記相違点A及びBと、それぞれ実質的に同じものであるから、相違点C及びDにおける本願発明を特定するための事項は、それぞれ、前記「【二】平成15年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」「3.独立特許要件の判断」「(3)判断」の(3-1)及び(3-2)に記載した理由と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものである。 (3)このように、本願発明は、その発明を特定するための事項が、上記引用刊行物に記載された事項及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、作用効果も、上記引用刊行物に記載された事項及び本件出願前周知の事項から予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。 したがって、本願発明は、上記引用刊行物に記載された発明及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項1に係る発明(本願発明)が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-08 |
結審通知日 | 2006-03-14 |
審決日 | 2006-03-27 |
出願番号 | 特願2000-318280(P2000-318280) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16C)
P 1 8・ 121- Z (F16C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔、田合 弘幸 |
特許庁審判長 |
船越 巧子 |
特許庁審判官 |
藤村 泰智 町田 隆志 |
発明の名称 | 三次元案内装置 |
代理人 | 土橋 皓 |