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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L |
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管理番号 | 1136876 |
審判番号 | 不服2003-12015 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-08-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-26 |
確定日 | 2006-05-15 |
事件の表示 | 特願2000- 33980「多重通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月17日出願公開、特開2001-223726〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年2月10日の出願であって、平成15年5月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年7月28日付けで手続補正がなされ、その後平成17年8月4日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月4日付けで手続補正がなされたものである。 2.補正の適否及び本願発明 平成17年10月4日付けの手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項4に記載された「に記載に記載」という誤記を、「のいずれかに記載」に訂正するものであるから、特許法第17条の2第4項第3号(誤記の訂正)の規定に適合している。 よって、本願の請求項1に係る発明は、平成17年10月4日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明1」という。) 「トークンを複数のノードの間で巡回させ、トークンを受信したノードがデータ送信権を有し、当該データ送信権を取得したノードが他の特定のノードを送信先として指定してデータを送信する多重通信方法において、 データ送信権を受信したノードは、時刻情報を取得するステップと、 当該取得した時刻情報を送信すべき前記データに付加するステップと をさらに具えたことを特徴とする多重通信方法。」 3.引用例 これに対して、当審において平成17年8月4日付けで通知した拒絶の理由で引用された特開平3-266542号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (イ)「(産業上の利用分野) この発明は、時計機能を持つ複数の局がLAN(ローカルエリアネットワーク)等の伝送媒体を介してつながれる伝送装置に係り、特に、一つの局が他の局に時刻情報を送り、他の局がその時刻情報を受信して自らの時刻を合せる時刻同期方式に関する。 (従来の技術) この種の伝送装置として、例えば、第7図に示すものがあった。これは一つの局を時刻送信局S1、これ以外の局を時刻受信局S2〜Snとすると、これらの局がCSMA/CD型のLANでつながれている。そして、時刻送信局S1が時刻情報を送信すると、時刻受信局S2〜Snがこの時刻情報を受信し、それぞれ自局の時計を時刻送信局S1の時計に合せている。」(1ページ右下欄3〜18行目) (ロ)「この時刻誤差はCSMA/CD方式のLANを使用した場合に限って生じるものではなく、トークンパッシング方式のLANを使用した場合にも発生する。 第10図はこのトークンパッシング方式のLANを用いた場合の時刻誤差の発生を示す説明図である。すなわち、時刻送信局が時刻T1にて送信要求を出しても、トークンが巡ってこなければ送信できないから、トークンが巡ってきた時刻T2にて時刻送信局が上記フレーム情報を送信した場合、(T2-T1)の時刻誤差を生じる。」(2ページ右上欄15行目〜同ページ左下欄4行目) (ハ)「いま、時刻情報を送信する場合、マイクロプロセッサ1は予め時計9の時刻情報を時刻情報としてメモリ3に書込んでおく一方、・・・中略・・・、送信タイミングとしての時計9からの割込みによってDMAコントローラ5に選択信号を与えてこのDMAコントローラ5に起動をかける。 起動がかけられたDMAコントローラ5は、・・・中略・・・、メモリ3に書込まれた時刻情報の先端データから最終データである時間測定値までを、マイクロプロセッサ1のデータ信号・コントロール信号に従って、伝送コントローラ4に書込んでその動作を終了する。 伝送コントローラ4は、デコーダ2から出力される伝送コントローラ選択信号を受けてバスの空くのを待ち、書込まれたデータをCSMA/CD方式の手順に従って送信する。 第2図はかかる時刻情報の送信フォーマットである。同図において、他局がデータを送信中である時刻T1にて、マイクロプロセッサ1が送信要求、すなわち、DMAコントローラ5に起動をかけたとする。このとき、タイマ8にタイマ選択信号が与えられ、これによってタイマ8は時間の測定を開始する。そして、他局がデータを送信し終わった後の時刻T2にて時刻情報の送信、すなわち、プリアンブルおよび時刻情報の送信を開始し、時刻情報の送信が終了する時刻T3にて、予めタイマ選択信号をなくしてその時のタイマ8の測定値をメモリ3に書込んでおいた時間測定値を伝送コントローラ4に書込んで送信すると、時刻受信局が時刻T4にて受信を完了する。」(3ページ右上欄4行目〜左下欄20行目) (ニ)「なおまた、上記実施例では、・・・中略・・・、第1図に示した伝送コントローラ4をトークンパッシング用に伝送コントローラを変更することにより、時刻送信局および時刻受信局がトークンパッシング方式のLANに接続される伝送装置にも適用することができる。因みに、トークンパッシング方式の伝送フォーマットを示すと第5図のようになる。この場合も時刻T1、時刻T4、時間a、時間bを定めれば、上記(1)式の関係が成立し、上記実施例と同様にして正確な時刻同期をとることが可能である。」(4ページ左上欄7〜20行目) (ホ)また、第3図には、「時刻情報」と「他の情報」を含む送信フォーマットが図示されている。 上記(ロ)、(ニ)から、引用例1に記載されたものは、「複数の局がトークンパッシング方式のLANに接続される伝送装置」に係るものであることは明らかである。 また(ロ)及び(ニ)に記載の「時刻送信局」は、「データ送信権を受信した特定の局」であるといえる。 また、上記(ハ)の記載から、引用例1に記載されたものは、「送信要求された時の時刻情報と送信要求された時から時刻情報の送信が終了するまでの時間とを取得する手段」を有しているものといえる。 したがって、上記引用例1記載の各事項、関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。 「複数の局がトークンパッシング方式のLANに接続される伝送装置において、 データ送信権を受信した特定の局は、 送信要求された時の時刻情報と送信要求された時から時刻情報の送信が終了するまでの時間とを取得する手段と、 前記時刻情報と前記時間とを送信する手段と、 を具えたことを特徴とする伝送装置。」 4.周知例 特開平2-309741号公報(以下「周知例」という)には、図面と共に次の記載がある。 (ヘ)「〔実施例〕 以下本発明の実施例を図面に基づき説明する。 第1図は本発明の一実施例であるネットワークシステムの構成を示すブロック構成図である。・・・中略・・・各局は送信時データを生成する際に、時刻付加機構において計時機構から得た時刻情報をフレーム内に付加すると共に、データ処理機構にも時刻情報を与え、トレース機構に対して送信先やフレームの種類などの情報と共に動作履歴として保存させる。この時付加する時刻情報は標準時刻を24時間制で表示するものとする。一方、受信時はデータ受信と同時にその時刻を計時機構から得ると共に、時刻抽出機構において送信時刻を抜出し、受信時刻,発振元,フレームの種類などの情報と共に動作履歴として保存させる。計時機構を各局で同期させるには、各局ごとに計時機構を標準時刻に合わせることによって行なう。 第2図は本発明による送信フレームの一例である。フレーム生成時に送信時刻を付加する。 第3図は本発明を用いるネットワークシステムの構成例である。」(2ページ右上欄6行目〜左下欄9行目) 以上の周知例の記載によれば、「複数の局が接続されるネットワークシステムにおいて、データの送信を行う各局が、送信時刻を示す時刻情報を取得し、得られた前記時刻情報を前記データに付加すること」は、周知であるといえる。 5.対比・判断 そこで,本願発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「局」は、本願発明1の「ノード」に相当する。 また、一般に、トークンパッシング方式は、トークンを複数の局の間で巡回させ、トークンを受信した局がデータ送信権を有し、当該データ送信権を取得した局が他の特定の局を送信先として指定してデータを送信する通信方式であることは技術常識であるから、引用発明1の「複数の局がトークンパッシング方式のLANに接続される伝送装置」と、本願発明1の「トークンを複数のノードの間で巡回させ、トークンを受信したノードがデータ送信権を有し、当該データ送信権を取得したノードが他の特定のノードを送信先として指定してデータを送信する多重通信方法」との間に実質的な差異はない。 よって、両者は、「トークンを複数のノードの間で巡回させ、トークンを受信したノードがデータ送信権を有し、当該データ送信権を取得したノードが他の特定のノードを送信先として指定してデータを送信する多重通信方法。」において一致し、下記の各点で異なる。 [相違点a] 本願発明1において、データ送信権を受信したノードが、時刻情報を取得するステップを具えているのに対し、引用発明1では、データ送信権を受信した「特定の」ノードのみが、送信要求された時の時刻情報と送信要求された時から時刻情報の送信が終了するまでの時間とを取得している点。 [相違点b] 本願発明1において、データ送信権を受信したノードが、取得した時刻情報を送信すべきデータに付加するステップを具えているのに対し、引用発明1では、取得した時刻情報を送信すべきデータに付加することについて明確に記載されていない点。 上記相違点について検討する。 [相違点a]について 本願発明の「時刻情報」の詳細は明らかではないが、この点について発明の詳細な記載を参酌すると、 「【0063】 (他の実施形態3-1) 上述の実施形態では図4に示すフォーマットのデータを他のノードに転送したが、図21に示すように時刻データを付加すると、2つのデータ送信元と送信先のノードは時刻データに基づいて装置の内部時計を調整し、同期をとることができる。また、時刻データを付加する第1モードと付加しない第2モードを切替(選択)することもできる。このための回路構成を図20に示す。・・・中略・・・。また、第2のモードが指示された場合には、時刻データ対応記憶領域のデータを使用せず、残りのデータと時計1002から取得した時刻情報を合成して送信データを作成する。この場合のマイクロシーケンサ101がデータ選択回路1003として機能する。こうすることで、送る瞬間の時刻データをネットワーク上に送ることができる。」と記載されていることから、「時刻情報」は「送る瞬間の時刻」を示すものであって、「送る瞬間の時刻」が「送信時刻」であることは明らかである。 そして、上記「4.」に示したように、複数の局が接続されるネットワークシステムにおいて、データの送信を行う各局が、送信時刻を示す時刻情報を得ることは、周知である。 よって、引用発明1においても、データ送信権を受信したノードに、時刻情報を取得するステップを具えることに格別な困難性は認められない。 [相違点b]について 「[相違点a]について」において述べたように、データ送信権を受信したノードに、時刻情報を取得するステップを具えることに格別な困難性は認められず、また、上記「4.」に示したように、データの送信を行う各局が、時刻情報を該データに付加することは周知であって、引用例1(「3.」の「(ホ)」)には、送信フォーマットに「時刻情報」と「他の情報」とを含ませることも記載されている。 よって、引用発明1において、データ送信権を受信したノードに、取得した時刻情報を送信すべきデータに付加するステップを具えるようにすることも当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願発明1の作用効果も,引用発明1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明1は,引用発明1及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明1は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-22 |
結審通知日 | 2006-02-24 |
審決日 | 2006-03-30 |
出願番号 | 特願2000-33980(P2000-33980) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中木 努 |
特許庁審判長 |
羽鳥 賢一 |
特許庁審判官 |
浜野 友茂 畑中 博幸 |
発明の名称 | 多重通信方法 |
復代理人 | 濱中 淳宏 |
代理人 | 阿部 和夫 |
復代理人 | 濱中 淳宏 |
代理人 | 谷 義一 |
代理人 | 谷 義一 |
代理人 | 阿部 和夫 |