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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1136922
審判番号 不服2003-3509  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-05 
確定日 2006-05-18 
事件の表示 平成 6年特許願第241699号「ポリアルキレンオキシド樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月23日出願公開、特開平 8-104802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成6年10月5日の出願であって、平成14年9月13日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成14年11月25日に意見書及び同日付けの手続補正書が提出され、その後、特許法第29条第2項の規定に違反するとの理由によって、平成15年1月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年3月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1乃至4に係る発明は、平成14年11月25日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるものであるところ、その請求項1に係る発明は、請求項1に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリアルキレンオキシドおよび、該ポリアルキレンオキシド100重量部あたり、一般式(I)

(式中、R1 、R2 およびR3 はそれぞれ独立に水素またはメチルを表し、R4 およびR5 はそれぞれ独立に炭素数1〜9のアルキルを表す)
で示されるフェノール系化合物を0.01〜2重量部含有することを特徴とするポリアルキレンオキシド樹脂組成物。」である。以下、これを「本願発明」という。

3.引用例の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2には下記の事項が記載されている。
(1)引用文献1(特開平6-92901号公報)
(1-1)「【請求項1】 一般式
【化1】

(式中、Xはアルキレン、-S-を示し、R1 、R2 は同一または異なって水素、炭素数1〜8個のアルキルを示す)により示されるフェノール化合物。
【請求項2】 2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第3級ブチル-3-メチルフェノール)モノアクリレートである請求項1記載のフェノール化合物。
【請求項3】 請求項1または請求項2のフェノール化合物からなる有機材料の安定剤。
【請求項4】 請求項1または請求項2のフェノール化合物を含有することを特徴とする安定化された有機材料。」(特許請求の範囲)
(1-2)「【課題を解決するための手段】本発明者らはこのような実状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、熱安定性がすぐれた特定のフェノール系化合物を有機材料に添加することにより加工安定性、耐熱性を向上させ、さらに加熱後の着色度合も改善された有機材料が得られることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は(1)一般式
【0006】
【化2】

【0007】(式中、Xはアルキレン、-S-を示し、R1 、R2 は同一または異なって水素、炭素数1〜8個のアルキルを示す。)により示されるフェノール化合物(以下、化合物(I)ともいう)、(2)2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第3級ブチル-3-メチルフェノール)モノアクリレート(以下、化合物(II)ともいう)、(3)当該化合物(I)または化合物(II)からなる有機材料の安定剤および(4)当該化合物(I)または化合物(II)を含有することを特徴とする安定化された有機材料に関する。
【0008】上記式中、アルキレンとは炭素数1〜8個の直鎖または分枝鎖状のアルキレンであって、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、2-エチルヘキサメチレンなどを、また炭素数1〜8個のアルキルとは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2級ブチル、第3級ブチル、アミル、イソアミル、第3級アミル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、1,1,3,3-テトラメチルブチルなどの炭素数1〜8個の直鎖または分枝鎖状のアルキルを意味する。」(段落【0005】〜【0008】)
(1-3)「本発明化合物により安定化される有機材料は、高分子重合体、油脂、鉱油など自体およびこれよりなるものに代表されるものである。高分子重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、・・・などの含ハロゲン合成樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、スチレンと他の単量体(無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体(スチレン系共重合体ともいう)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン樹脂、メタクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン樹脂(MBS樹脂)などのスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル、直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリウレタン、繊維素系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィッド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシベンゾイル、ポリイミド、ポリマレイミド、ポリアミドイミドなどをあげることができる。・・・より好ましくは、スチレン-ブタジエン共重樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリアセタール、ポリウレタンなどがあげられる。」(段落【0017】〜【0018】)
(1-4)「これらのフェノール化合物(I)の合成樹脂などの有機材料への添加量は0.01〜3重量部であり、好ましくは0.05〜2重量部である。また添加方法としては通常考えられる方法が採用され、例えば重合終了時に添加したり、押出機を用いてのペレタイズ時または射出成型時など成型加工時に添加する方法が考えられる。」(段落【0019】)
(1-5)「実施例2
市販スチレン-ブタジエン共重合樹脂をクロロホルムに溶解させメタノールにて晶出させた後、乾燥させた添加剤未添加スチレン-ブタジエン共重合樹脂100重量部に対し、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第3級ブチル-3-メチルフェノール)モノアクリレート2重量部を添加する。ブラベンダープラストグラフにて180℃,60rpmの条件でN2シール下、熱安定性を測定する。熱安定性の評価は50分後の着色度及びゲル生成量をそれぞれ肉眼判定及びクロロホルム不溶解物量により求める。その結果より本発明化合物が樹脂の安定剤として優れていることがわかる。」(段落【0033】)
(1-6)「【発明の効果】本発明の新規なフェノール化合物(I)は、有機材料に対して加工安定性、耐熱性を向上させ、さらに加熱後の着色度合も改善させることから、有機材料の酸化防止剤として有用である。」(段落【0034】)

(2)引用文献2(特開昭57-28154号公報)
(2-1)「ポリエチレングリコールに代表されるポリエーテル化合物は、・・・。ポリエーテル化合物は一般に酸化反応によって劣化し易いため、熱あるいは光によって分解し易く、改質特性の減退や変退色をもたらすので、実用上の大きな制約となっていた。
以上の欠点を解消するため従来よりポリエーテル化合物を安定化するために、酸化防止剤や熱安定剤あるいは紫外線吸収剤などの安定剤が用いられている。
しかしながら、多くの安定剤の中で殊にその効果が優れていて使用が不可欠ともいえるフェノール系抗酸化剤は、配合によって多くの場合、製品が燃焼ガスや塩素の作用でかえって着色物質に変化するため、それらの選定は目的とする効果と共に配慮すべき問題である。」(第2頁右上欄下から2行〜右下欄1行)

4.対比・判断

1)本願発明と引用文献1に記載された発明との対比
引用文献1には、加工安定性、耐熱性を向上させ、さらに加熱後の着色度合も改善された有機材料を得ることを目的とした発明として(摘示記載1-2)、
「 一般式
【化1】

(式中、Xはアルキレン、-S-を示し、R1 、R2 は同一または異なって水素、炭素数1〜8個のアルキルを示す)により示されるフェノール化合物を含有することを特徴とする安定化された有機材料。」(摘示記載1-1、請求項4)の発明が記載されており、上記式中、アルキレンとは炭素数1〜8個の直鎖または分枝鎖状のアルキレンであって、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、2-エチルヘキサメチレンなどを、また炭素数1〜8個のアルキルとは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2級ブチル、第3級ブチル、アミル、イソアミル、第3級アミル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、1,1,3,3-テトラメチルブチルなどの炭素数1〜8個の直鎖または分枝鎖状のアルキルを意味する(摘示記載1-2)。
ここで、Xがメチレンまたは炭素数2の分枝鎖状のアルキレン、R1 、R2 が炭素数1〜8個のアルキルの場合の化合物は、本願発明の一般式(I)においてR1が水素、R2が水素またはメチル、R3がメチル、R4、R5がそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキルである化合物に相当するものである。
また、引用文献1には、当該有機材料として、種々の合成樹脂が例示されている(摘示記載1-3)。
さらに、当該フェノール化合物の添加量は0.01〜3重量部(摘示記載1-4)であり、これは実施例2(摘示記載1-5)の記載からみて合成樹脂100重量部当たりと解するのが相当である。

そこで、本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は
「樹脂及び該樹脂100重量部あたり、一般式(I)

(式中、R1 は水素、R2は水素またはメチル、R3 はメチルを表し、R4 およびR5 はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキルを表す)で示されるフェノール系化合物を0.01〜2重量部含有することを特徴とする樹脂組成物。」
の点で一致し、本願発明は、樹脂としてポリアルキレンオキシド樹脂を用いるのに対し、引用文献1には樹脂としてポリアルキレンオキシド樹脂が明記されていない点でのみ相違する。

2)相違点に対する判断
ポリオキシアルキレングリコール(ポリアルキレンオキシドと同じ)は酸化、あるいは熱等によって分解し易いという問題があり、これを解決するために、安定剤としてフェノール系化合物を添加することは周知の事項である(摘示記載2-1、特開平3-207788号公報参照)。
そうであるから、引用文献1に記載された熱安定性等の改善が要求される樹脂として、酸化、あるいは熱等によって分解し易いという問題を有することが周知のポリアルキレンオキシド樹脂を用いることは、当業者が適宜行う事項にすぎない。
そして、引用文献1には、加工安定性、耐熱性が向上すること(摘示記載1-6)が記載されているから、本願発明の効果は、引用文献1のフェノール系化合物をポリアルキレンオキシド樹脂に適用し、樹脂の安定化を図ることによって予測される範囲のものであって、格別なものとはいえない。

3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において実験成績報告書を提示して、以下の主張をしている。
「文献1に開示されている高分子重合体は、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂やハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリアセタール及びポリウレタンに対して、好ましく適用されるものです。
そして、文献2に開示されているヒンダードフェノール構造を有する化合物等の各種安定剤を含むポリアルキレンオキシド組成物に比べて、本願に特定する安定剤及びポリアルキレンオキシドを含有する組成物は、耐熱性において格段に優れているものです。
そのうえ、本願に特定する安定剤と上記特定の高分子重合体であるポリアルキレンオキシドとを含有する組成物が、耐熱性において格段に優れることは文献1及び2に何ら開示されておらず、これらの文献から本願発明を容易に想到することは如何に当業者といえども決して容易なものではありません。」

しかしながら、引用文献1に記載されたフェノール系化合物によって安定化される樹脂は、段落【0017】に例示されているように多岐にわたるものであって、さらに同段落には「本発明化合物により安定化される有機材料は、高分子重合体、・・・などをあげることができる。」と記載されているように、例示された樹脂に限定されるものではないから、引用文献1に記載されたフェノール系化合物は高分子重合体全般に適用可能なものと解するのが相当である。
したがって、ポリアルキレンオキシドについて具体的な例示がないからといって、これを排除するものではない。
また、ポリアルキレンオキシドに対して適用できないとする格別な事情も認められない。
さらに言えば、好ましいとされているポリアセタールは、ポリエーテルという点からみれば、ポリアルキレンオキシドに類するものといえるものであり、ポリアルキレンオキシドに対する適用を容易に想到させるものである。
また、請求人の提示した実験成績報告書は、引用文献2に記載されたフェノール系化合物との比較にすぎず、引用文献1のフェノール系化合物に関するものではないから、これをもって、本願発明の効果が顕著であると認めることはできない。
よって、請求人の主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1および2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、請求項2乃至4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-22 
結審通知日 2006-02-28 
審決日 2006-03-31 
出願番号 特願平6-241699
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 淳子小野寺 務  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 石井 あき子
藤原 浩子
発明の名称 ポリアルキレンオキシド樹脂組成物  
代理人 榎本 雅之  
代理人 久保山 隆  
代理人 中山 亨  
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