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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1136933
審判番号 不服2003-14866  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-31 
確定日 2006-05-18 
事件の表示 平成 8年特許願第308332号「車両駆動力制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 2日出願公開、特開平10-148148〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年11月19日の出願であって、平成15年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月31日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「車両の駆動力を制御する車両駆動力制御装置であって、
地図上における市街地領域を予め市街地の地域属性として記憶した地域属性記憶手段と、
自車両の現在位置を求めるために使用される位置用情報を検出する位置用情報検出手段と、
前記位置用情報検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置を演算決定する現在位置演算手段と、
前記地域属性記憶手段における地域属性と、前記現在位置演算手段による演算結果とを比較して、前記自車両が市街地を走行しているか否かを検出する検出手段と、からなる市街地走行判断手段と、
運転者がアクセルペダルを急激に閉じ側に操作したことを検出するアクセル操作検出手段と、
該市街地走行判断手段による判断結果および前記アクセル操作検出手段による検出結果に基づいて、前記車両のエンジンブレーキを通常よりも強くする駆動力特性変更手段とを備えたことを特徴とする車両駆動制御装置。」
と補正された。
前記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「市街地に関する地域属性」について「市街地領域」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-208242号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「次に、このコントローラ7によるパワープラントlの出力制御を説明するが、それに先立って、このパワープラントlの出力制御の定義をしておくと、ここでいうパワープラントlの出力制御とは、パワープラントlから自動車側に伝達される出力の制御という広義の意味でのパワープラントlの出力制御であり、スロットル制御によるエンジン2の出力制御は言うに及ばず、ブレーキ制御による外的制動力制御及び自動変速機3の変速制御によりエンジンブレーキを作動させるという内的制動力制御をも含むものであり、これらの各制御手段がそれぞれ特許請求の範囲でいうところの出力制御手段に該当するものである。そして、この実施例においては出力制御手段として上記三つの制御手段を全て備えているが、本発明の構成においては上記三つの制御手段のうち少なくともいずれかひとつを備えていればその目的を達成することができるものである。
以下、このコントローラ7によるパワープラント1の出力制御の実際を第4図ないし第15図を参照して説明する。
先ず、この出力制御の基本思想であるが、この実施例においては、市街地走行時にはドライバーの出力要求量の変化、即ちアクセルペダルの踏込量の変化とかブレーキペダルの踏込量の変化に対するパワープラント1の出力変化割合を高めてその応答性を向上させもって自動車の加・減速性能の向上を図り、また非市街地走行時には上記パワープラント1の出力変化割合を低めに設定して自動車の加・減速性能よりは運転性の向上を図るようにしている。そして、具体的にはパワープラント1の出力変化割合の変更をスロットル制御とブレーキ制御と変速制御の三者により行なうようにしている。即ち、第4図に示すように、制御開始後、先ず現在の自動車の走行状態が市街地走行状態であるのかそれとも非市街地走行状態であるのかを判別し(ステップS1)、その後、走行状態に応じて順次スロットル制御とブレーキ制御と変速制御を行なう(ステップS2〜S4)ようにしている。」(第3頁左上欄3行〜同頁左下欄1行)

イ.「以下、各制御を個別に説明する。
走行状態判別制御は、第5図に示すフローチャートに従って行なわれる。先ず、現在の車速を入力(ステップP1)するとともに、一定時間内(例えばこの実施例では2分間)における平均車速とその間における車速変動率を算出する(ステップP2)。
次に、上記ステップで算出した平均車速に対応する市街地走行時における車速変動率を第9図に示す制御マップから読み出す(ステップP3)。即ち、制御マップには、平均車速と車速変動率に対応して市街地走行判別ラインl1が設定されている。具体的には、平均車速が中速域で且つ車速変動率が大きい領域(市街地走行判別ラインlより上方の領域)を市街地走行領域として設定している。従って、例えば現在の平均車速が(V0)である場合には、市街地走行の判断基準となる車速変動率のマップ値は(α0)となる。
次に、この制御マップより求めたマップ値と上記ステップP2で求めた現在の車速変動率の計算値とを比較する(ステップP4)。そして、計算値がマップ値より大きい場合(例えば第9図において計算値が(α2)である場合)には、現在は市街地走行状態であると判断し、市街地走行フラグをセットする(ステップP5)。一方、計算値がマップ値より小さい場合(例えば第9図において計算値が(α1)である場合)には、現在は非市街地走行状態であると判断し、市街地走行フラグをリセットする(ステップP6)。
以下のスロットル制御、ブレーキ制御及び変速制御においては、この市街地走行フラグのセット、リセットにより市街地走行状態かそれとも非市街地走行状態かを判断することになる。」(第3頁左下欄2行〜同頁右下欄13行)

ウ.「最後に、変速制御であるが、この実施例においては、自動変速機3の変速特性として、第14図に示す市街地走行時用特性図と第15図に示す非市街地走行時用特性図の二つの変速特性をもち、この二つの変速特性を走行状態に応じて選択使用するようにしている。即ち、非市街地走行時用の変速特性はこれを従来一般に採用されているように各変速ライン(シフトアップライン及びシフトダウンラインとも)を車速の上昇につれてスロットル開度が増大する構成としているが、市街地走行時用の変速特性はこれを従来とは異なった構成としている。具体的には、2-3シフトダウンラインと3-4シフトダウンラインを低スロットル開度側において高速段側に屈曲させている。このようにすると、例えば4速走行状態でアクセルペダルの踏込みが解除されスロットル開度が急速に低下する場合、非市街地走行時であれば変速段は4速のまま保持されるが、市街地走行時においては低スロットル開度域において4速から3速へシフトダウンされる。従って、市街地走行時には非市街地走行時よりもエンジンブレーキのききが良くなり、それだけドライバーの減速操作に対する減速応答性が良好となる。即ち、この変速制御は、減速時において有効に作用する。
・・・。
そして、この変速制御は次のようにして行なわれる。即ち、ステップT1において現在の走行状態を判別する。そして、現在の走行状態が市街地走行状態である場合には市街地走行時用の変速特性をセットし、また非市街地走行状態である場合には非市街地走行時用の変速特性をセットし(ステップT2、T4)、それぞれ走行状態に応じた変速段を設定すべく上記変速用ソレノイド6A、6B、6Cに制御信号を出力する(ステップT3)。」(第4頁左下欄16行〜第5頁左上欄12行)

前記記載事項ア.の「パワープラントlの出力制御とは、・・・スロットル制御によるエンジン2の出力制御は言うに及ばず、ブレーキ制御による外的制動力制御及び自動変速機3の変速制御によりエンジンブレーキを作動させるという内的制動力制御をも含むものであり、・・・そして、この実施例においては出力制御手段として上記三つの制御手段を全て備えているが、本発明の構成においては上記三つの制御手段のうち少なくともいずれかひとつを備えていればその目的を達成することができるものである。」なる記載を考慮し、前記記載事項ア.〜ウ.、及び第14、15図等によると、引用例1には、
「自動車のパワープラント1の出力制御装置であって、
現在の車速を入力するステップP1と、一定時間内における平均車速とその間における車速変動率を算出するステップP2と、ステップP2で算出した平均車速に対応する市街地走行時における車速変動率を制御マップから読み出すステップP3と、この制御マップより求めたマップ値と上記ステップP2で求めた現在の車速変動率の計算値とを比較するステップP4と、計算値がマップ値より大きい場合には、現在は市街地走行状態であると判断し、市街地走行フラグをセットするステップP5と、計算値がマップ値より小さい場合には、現在は非市街地走行状態であると判断し、市街地走行フラグをリセットするステップP6と、からなる走行状態判別制御と、
現在の走行状態を判別するステップT1と、現在の走行状態が市街地走行状態である場合には市街地走行時用の変速特性をセットし、また非市街地走行状態である場合には非市街地走行時用の変速特性をセットするステップT2、T4と、それぞれ走行状態に応じた変速段を設定すべく変速用ソレノイド6A、6B、6Cに制御信号を出力するステップT3と、からなる変速制御であって、市街地走行時用の変速特性は非市街地走行時用の変速特性に比べて2-3シフトダウンラインと3-4シフトダウンラインを低スロットル開度側において高速段側に屈曲させており、このようにすることで、現在の走行状態が市街地走行状態であると判別された場合およびアクセルペダルの踏込みが解除されスロットル開度が急速に低下する場合には、低スロットル開度域においてシフトダウンされ、非市街地走行時よりもエンジンブレーキのききが良くなる変速制御とを備えた自動車のパワープラント1の出力制御装置。」
の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-180023号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
カ.「【0005】この発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、自車両が住宅地の裏道や細い屈曲路等の道路を走行していることを適切に判断することが可能で、その道路条件等に応じて機関出力を適正に制御することの可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。」(第2頁2欄27〜32行)

キ.「【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、この発明においては図1に示すように、車両に搭載された内燃機関M1の出力を制御するために駆動制御されて機関制御量を変更する機関制御量変更手段M2と、内燃機関M1の出力を任意に変更するために運転者によって操作されるアクセル操作手段M3の操作量を検出するアクセル操作量検出手段M4と、主要道路に関する地図情報を予め記憶した地図情報記憶手段M5と、自車両の現在位置を求めるために使用される位置用情報を検出する位置用情報検出手段M6と、その位置用情報検出手段M6の検出結果に基づき自車両の現在位置を演算決定する現在位置演算手段M7と、地図情報記憶手段M5における地図情報と現在位置演算手段M7の演算結果とを比較して自車両の現在位置が地図情報の主要道路上にあるか否かを判断する主要道路上位置判断手段M8と、その主要道路上位置判断手段M8により自車両の現在位置が地図情報の主要道路上にないと判断された場合には、アクセル操作量検出手段M4の検出による同一アクセル操作量に対する内燃機関M1の出力を相対的に小さく制御すべく、機関制御量変更手段M2を駆動制御する駆動制御手段M9とを備えている。」(第2頁2欄34行〜第3頁3欄4行)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-142711号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
サ.「【0007】そこで、本発明は上記課題を解決するもので、運転者の減速の意図を確実に判定して、適切なエンジンブレーキ力を利用することが可能な車両の自動変速装置を提供することを目的とする。」(第2頁2欄31〜34行)

シ.「【課題を解決するための手段】本発明の第1の構成では、遊星歯車列4A〜4Cの各構成要素を選択的に連結ないし固定する複数の摩擦締結要素C1〜C3、B1〜B4を車両の運転状態に応じて作動せしめて、エンジン動力より所望の車輪駆動力を得るべくシフトアップないしシフトダウンを行う車両の自動変速装置1において、スロットル弁の開度を検出するスロットル弁開度検出手段32と、スロットル弁開度の減少速度が所定値以上で、かつスロットル弁開度の減少量が所定量以上の時にエンジンブレーキ力を増大せしめるべくシフトダウンをなすエンジンブレーキ力増大手段2とを具備している。」(第2頁2欄36〜46行)

ス.「【0003】ところで、通常走行において使用する「D」レンジでは、例えば図5に示すように、スロットル開度と車速に応じて図中実線の如く、ファースト(1st)、セカンド(2nd)、サード(3rd)、オーバドライブ(OD)の各ギヤへとシフトアップがなされるとともに、図中破線の如くODから1stへのシフトダウンがなされる。」(第2頁1欄49行〜同頁2欄5行)

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明を対比すると、引用例1記載の発明の「自動車のパワープラント1の出力制御装置」は、その技術的意義からみて、本願補正発明の「車両の駆動力を制御する車両駆動力制御装置」に相当する。引用例1記載の発明の「走行状態判別制御」は、市街地走行判断手段の限りにおいて、本願補正発明の「市街地走行判断手段」に相当し、引用例1記載の発明の「現在の走行状態が市街地走行状態であると判別された場合」は、市街地走行判断手段による判断の限りにおいて、本願補正発明の「市街地走行判断手段による判断結果」に相当する。同様に、引用例1記載の発明の「アクセルペダルの踏込みが解除されスロットル開度が急速に低下する場合」は本願補正発明の「運転者がアクセルペダルを急激に閉じ側に操作したこと」に、「低スロットル開度域においてシフトダウンされ、非市街地走行時よりもエンジンブレーキのききが良くなる」は「車両のエンジンブレーキを通常よりも強くする」に、「変速制御」は「駆動力特性変更手段」に、それぞれ、相当する。

してみると、両者は、
「車両の駆動力を制御する車両駆動力制御装置であって、
市街地走行判断手段と、
該市街地走行判断手段による判断結果および運転者がアクセルペダルを急激に閉じ側に操作したことに基づいて、前記車両のエンジンブレーキを通常よりも強くする駆動力特性変更手段とを備えた車両駆動制御装置。」
の点で一致し、次の相違点1、2で相違する。

[相違点1]
市街地走行判断手段が、本願補正発明においては、地図上における市街地領域を予め市街地の地域属性として記憶した地域属性記憶手段と、自車両の現在位置を求めるために使用される位置用情報を検出する位置用情報検出手段と、前記位置用情報検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置を演算決定する現在位置演算手段と、前記地域属性記憶手段における地域属性と、前記現在位置演算手段による演算結果とを比較して、前記自車両が市街地を走行しているか否かを検出する検出手段と、からなるのに対し、引用例1記載の発明においては、現在の車速を入力するステップP1と、一定時間内における平均車速とその間における車速変動率を算出するステップP2と、ステップP2で算出した平均車速に対応する市街地走行時における車速変動率を制御マップから読み出すステップP3と、この制御マップより求めたマップ値と上記ステップP2で求めた現在の車速変動率の計算値とを比較するステップP4と、計算値がマップ値より大きい場合には、現在は市街地走行状態であると判断し、市街地走行フラグをセットするステップP5と、計算値がマップ値より小さい場合には、現在は非市街地走行状態であると判断し、市街地走行フラグをリセットするステップP6と、からなる点。

[相違点2]
本願補正発明においては、運転者がアクセルペダルを急激に閉じ側に操作したことを検出するアクセル操作検出手段を備え、駆動力特性変更手段は、市街地走行判断手段による判断結果およびアクセル操作検出手段による検出結果に基づいて、車両のエンジンブレーキを通常よりも強くするのに対し、引用例1記載の発明においては、駆動力特性変更手段は、市街地走行判断手段による判断結果および運転者がアクセルペダルを急激に閉じ側に操作したことに基づいて、車両のエンジンブレーキを通常よりも強くする点。

(4)当審の判断
前記[相違点1][相違点2]について検討する。
[相違点1]について
引用例2には、前記記載事項カ.キ.によると、自車両が住宅地の裏道や細い屈曲路等の道路を走行していることを適切に判断することが可能で、その道路条件等に応じて機関出力を適正に制御することの可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的として、「主要道路に関する地図情報を予め記憶した地図情報記憶手段M5と、自車両の現在位置を求めるために使用される位置用情報を検出する位置用情報検出手段M6と、その位置用情報検出手段M6の検出結果に基づき自車両の現在位置を演算決定する現在位置演算手段M7と、地図情報記憶手段M5における地図情報と現在位置演算手段M7の演算結果とを比較して自車両の現在位置が地図情報の主要道路上にあるか否かを判断する主要道路上位置判断手段M8とを備える」技術が開示されている。一方、「ナビゲーション装置のCD-ROMなどに、地図上における市街地領域を予め市街地の地域属性として記憶する」ことは、周知技術(特開平6-324138号公報の段落【0096】【0097】等、特開平5-119700号公報、特開昭61-290474号公報)である。そして、引用例1記載の発明は、そもそも、市街地走行状態であるか否かを判断する市街地走行判断手段を備えているのであるから、引用例1記載の発明において、引用例2開示の前記技術を適用し、当該適用に際し前記周知技術を勘案して、前記[相違点1]に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。

[相違点2]について
引用例3には、前記記載事項サ.〜ス.によると、運転者の減速の意図を確実に判定して、適切なエンジンブレーキ力を利用することが可能な車両の自動変速装置を提供することを目的として、「遊星歯車列4A〜4Cの各構成要素を選択的に連結ないし固定する複数の摩擦締結要素C1〜C3、B1〜B4を車両の運転状態に応じて作動せしめて、エンジン動力より所望の車輪駆動力を得るべくシフトアップないしシフトダウンを行う車両の自動変速装置1において、スロットル弁の開度を検出するスロットル弁開度検出手段32と、スロットル弁開度の減少速度が所定値以上で、かつスロットル弁開度の減少量が所定量以上の時にエンジンブレーキ力を増大せしめるべくシフトダウンをなすエンジンブレーキ力増大手段2とを具備する」技術が開示されており、スロットル弁開度の減少は、アクセルペダルを閉じ側に操作したときに生じる。よって、引用例3には、「車両の運転状態に応じてシフトアップないしシフトダウンを行う自動変速装置において、運転者がアクセルペダルを急激に閉じ側に操作したことを検出する時、シフトダウンを行うことにより車両のエンジンブレーキを通常よりも強くする」技術思想が開示されていると認められる。
したがって、引用例1記載の発明において、引用例3開示の前記技術思想を適用して、前記[相違点2]に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。

また、本願補正発明の効果についてみても、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、引用例3開示の前記技術思想及び前記周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、引用例3開示の前記技術思想及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年8月26日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明]という。)は、平成14年8月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「車両の駆動力を制御する車両駆動力制御装置であって、
予め地図上に市街地に関する地域属性を記憶した地域属性記憶手段と、
自車両の現在位置を求めるために使用される位置用情報を検出する位置用情報検出手段と、
前記位置用情報検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置を演算決定する現在位置演算手段と、
前記地域属性記憶手段における地域属性と、前記現在位置演算手段による演算結果とを比較して、前記自車両が市街地を走行しているか否かを検出する検出手段と、からなる市街地走行判断手段と、
運転者がアクセルペダルを急激に閉じ側に操作したことを検出するアクセル操作検出手段と、
該市街地走行判断手段による判断結果および前記アクセル操作検出手段による検出結果に基づいて、前記車両のエンジンブレーキを通常よりも強くする駆動力特性変更手段とを備えたことを特徴とする車両駆動制御装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「市街地に関する地域属性」の限定事項である「市街地領域」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、引用例3開示の前記技術思想及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、引用例3開示の前記技術思想及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、引用例3開示の前記技術思想及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-08 
結審通知日 2006-03-14 
審決日 2006-03-29 
出願番号 特願平8-308332
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 義彦  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 飯塚 直樹
清田 栄章
発明の名称 車両駆動力制御装置  
代理人 後藤 政喜  

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