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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1136954 |
審判番号 | 不服2004-9129 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-08-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-30 |
確定日 | 2006-05-18 |
事件の表示 | 特願2000-29278「静電チャック」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月17日出願公開、特開2001-223260〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成12年2月7日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、願書に最初に添附した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「セラミック基板上に電極が形成され、前記電極上にセラミック誘電体膜が設けられた静電チャックにおいて、 前記電極は、一対の対向電極からなり、前記対向電極の角部の輪郭は、曲線により構成されてなることを特徴とする静電チャック。」 2.刊行物記載の発明(事項) 原査定の拒絶の理由に引用され本願の出願前に国内で頒布された刊行物である、特開平8-125002号公報(以下、「刊行物1」という。)及び特開平7-257751号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)刊行物1 (イ)特許請求の範囲 「【請求項1】 上層に誘電体、中層に電極、下層に基盤から成る静電チャックにおいて、該誘電体がTiO2を主成分とするセラミックスであり、該電極がPdにAgを65wt%以下含む導体であり、該基盤がAl2O3又はAlNセラミックスであることを特徴とする静電チャック。 ・・・ 【請求項3】 静電チャックの製造方法において、下層の基盤をあらかじめ焼成し、その表面を研削して平坦にした後、平坦にした面に中層の電極を形成し、その上面に上層の誘電体シートを熱圧着して、あるいはあらかじめ誘電体シートの下面に電極を形成したシートを基盤の上面に熱圧着してさらに焼成することを特徴とする静電チャックの製造方法。」 (ロ)図1〜3から、 「電極は一対の対向電極からなること」が看取できる。 上記の記載事項からみて、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。 「Al2O3又はAlNセラミックスの基盤上に一対の対向電極からなる電極が形成され、前記電極上にTiO2を主成分とするセラミックスからなる誘電体シートが設けられた静電チャック。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) (2)刊行物2 (イ)【特許請求の範囲】 「【請求項1】 静電吸引力を用いた浮上体の静電浮上搬送装置において、 (a)正電圧が印加される電極と負電圧が印加される電極とを絶縁基板上に均等に分割して配置するとともに、それらの全ての電極の外側面から導出されるリード線を有する静電浮上用電極と、 (b)該静電浮上用電極と対向する浮上体と、 (c)前記静電浮上用電極と浮上体とのギャップを検出する変位センサと、 (d)前記静電浮上用電極への印加電圧を制御する制御器と、 (e)前記静電浮上用電極への電圧の印加により前記浮上体を静電吸引力により吸引して無接触状態で保持して搬送を行い、浮上体が予定された位置に至ると前記静電浮上用電極への電圧の遮断により前記浮上体を前記静電浮上用電極より離脱させることを特徴とする静電浮上搬送装置。 ・・・ 【請求項11】 前記電極の角部にRを形成する請求項3記載の静電浮上用電極。」 (ロ)段落【0014】 「円形状の絶縁基板4上には分離帯11a,11bを挟んで、均等に分割された4つの扇状の電極10a,10b,10c,10dが配置された静電浮上用電極10が設けられる。 これらの4つの扇状の電極10a,10b,10c,10dに、正電圧と負電圧とが交互に印加されるが、その場合、電荷の集中を防ぐために、これらの扇状の電極10a,10b,10c,10dの角部にはRが形成されており、更に、扇状の電極10aの外側面にはリード線12aが、扇状の電極10bの外側面にはリード線12b(図示なし)が、扇状の電極10cの外側面にはリード線12cが、扇状の電極10dの外側面にはリード線12dが、それぞれ接続されている。」 上記の記載事項からみて、刊行物2には次の事項が記載されていると認められる。 「静電浮上搬送装置の静電浮上用電極の角部にRを形成し、電荷の集中を防止すること。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。) 3.対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「Al2O3又はAlNセラミックスの基盤」が前者の「セラミック基板」に、後者の「TiO2を主成分とするセラミックスからなる誘電体シート」が前者の「セラミック誘電体膜」に、それぞれ相当することは明らかである。 そうすると、両者は、「セラミック基板上に電極が形成され、前記電極上にセラミック誘電体膜が設けられた静電チャックにおいて、前記電極は、一対の対向電極からな」る点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点〉 前者は、対向電極の角部の輪郭が、曲線により構成されてなるのに対して、後者は、対向電極の角部の輪郭が、曲線により構成されてなるとは特定されていない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討するに、本願発明において、対向電極の角部の輪郭を、曲線により構成されてなるものとすることの技術的意義は、本願明細書段落【0009】の「・・・電極に数kVの高電圧を印加すると、X、Y等の角部に電場が集中し、この電場の影響により誘電体膜が歪んでクラック等が発生しやすくなるという問題があった。」との記載、段落【0010】の「本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、対向電極の角部に電場が集中しにくく、これに起因して誘電体膜等にクラックが発生することのない静電チャックを提供することを目的とする。」との記載等からみて、電場集中による誘電体膜等のクラック発生を防止することにあると認められる。 ところで、刊行物2には、「静電浮上搬送装置の静電浮上用電極の角部にRを形成し、電荷の集中を防止すること。」が記載されており、また、電荷の集中によりセラミック等の絶縁物質にクラック等の欠陥が発生することは、特開平7-145478号の段落【0013】、特開平11-233604号公報の段落【0008】に示されているように、従来周知の事項である。 そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の事項とは、ともに「静電吸着」という技術分野を共通にするとともに、円滑に静電吸着作用を発揮するという課題を共通にするものである。 したがって、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項及び従来周知の事項を組み合わせ、相違点に係る構成を本願発明のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び従来周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載に事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-09 |
結審通知日 | 2006-03-14 |
審決日 | 2006-03-27 |
出願番号 | 特願2000-29278(P2000-29278) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柴沼 雅樹 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
中島 昭浩 鈴木 孝幸 |
発明の名称 | 静電チャック |
代理人 | 安富 康男 |