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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1136962
審判番号 不服2004-23969  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-24 
確定日 2006-05-18 
事件の表示 平成10年特許願第309577号「容器詰め食品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月 4日出願公開、特開2000- 95211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年9月24日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年2月24日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「保存中の容器内の容積および内圧が一定範囲となるように容器への内容物の充填時に所定量のヘッドスペースを残し、上記ヘッドスペースを炭酸ガス濃度100%によるガスで置換後、蓋材で密封を行い、上記ガスを内容物に溶解させてヘッドスペースを減少し、密封後の容器内を、蓋材を剥がしたときの容器本体の満注容積に対して90〜100%となる状態に変化させると共に、-0.1〜-0.01kgf/(平方センチメートル)の微減圧状態にすることを特徴とするカップ容器詰め食品の製造方法。」

2.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平6-1324号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
記載事項1:「パウチ詰食品の充填・密封時に炭酸ガスをフラッシュしてヘッドスペースの空気を炭酸ガスに置換して密封し、密封後に食品中に前記ヘッドスペース内の炭酸ガスを溶解させることにより、パウチのヘッドスペースを殆ど無くすようにしたことを特徴とするパウチ詰食品の充填・密封方法。」(【特許請求の範囲】)

記載事項2:「本発明は、パウチ詰食品の充填・密封方法、特にパウチ詰食品の密封充填後にヘッドスペースを無くすように充填・密封する方法に関する。(段落【0001】)

記載事項3:「以上の説明から明らかなように、本発明は次のような格別の効果を奏する。パウチ詰液体食品の場合、従来のように脱気板により液面を上昇させる必要がないため、液のシール面への付着が大幅に軽減でき、シール部外観不良やシール不良が殆ど無くなる。そして、ヘッドスペース中の炭酸ガスは、食品に吸収されるため、出来上がり製品はヘッドスペースが殆どなく、液中シールしたような外観となる。・・・」(段落【0013】)

以上の事項から、引用文献1には、パウチへの内容物の充填時に所定量のヘッドスペースを残し、上記ヘッドスペースを炭酸ガスで置換後、密封を行い、上記ガスを内容物に溶解させてヘッドスペースを減少させるパウチ詰食品の充填・密封方法、が記載されている。

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平3-14401号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項4:「内容物がヘッドスペースを残して収納された成形容器に蓋部をヒートシールすることにより封緘する方法において、該成形容器のヒートシールされるべき部分に沿って、未ヒートシール部となる部位を残して蓋部をヒートシールした後、ヘッドスペースの気体の一部を未ヒートシール部の隙間を通って強制排出して、ヘッドスペースの容積を減少させ、その後直ちに少なくとも未ヒートシール部をヒートシールすることを特徴とする成形容器の封緘方法。」(特許請求の範囲)

記載事項5:「本発明は、スープやミートソース等の高温の液状食品を、ヘッドスペースを残してカップ状容器等の成形容器に収納した後、平坦な蓋部をヒートシールすることにより封緘する方法に関する。」(1頁左下欄17行〜20行)

記載事項6:「容器1は不活性ガス吹込みステーション11において、不活性ガス吹込み装置12の吹出し孔12aから常時吹出される不活性ガス13、例えば窒素ガスをヘッドスペース5に吹込まれる。この吹込みによってヘッドスペース5の水蒸気および空気は殆んどが不活性ガス13によって置換される。」(2頁右下欄17行〜3頁左上欄3行)

3.対比
本願発明における「カップ容器」と引用文献1における「パウチ」はいずれも食品を収納する収納体であるから、それを考慮して本願発明と引用文献1に記載されたものとを対比すると、
両者は、「収納体への内容物の充填時に所定量のヘッドスペースを残し、上記ヘッドスペースを炭酸ガスで置換後、密封を行い、上記ガスを内容物に溶解させてヘッドスペースを減少させる収納体詰め食品の製造方法。」である点で一致し、以下の5つの点で相違している。

・相違点1:本願発明では、内容物である食品を充填する収納体がカップ容器であるのに対し、引用文献1では、パウチに充填している点。

・相違点2:本願発明では、密封するのに蓋材を用いているのに対し、引用文献1では、密封はするものの蓋材を用いていない点。

・相違点3:本願発明では、保存中の容器内の容積および内圧が一定範囲となるように容器への内容物の充填時に所定量のヘッドスペースを残しているのに対し、引用文献1では、内容物の充填時に所定量のヘッドスペースを残す点については記載されているが、保存中の容器内の容積および内圧が一定範囲となるようにとの限定については特段の記載はない点。

・相違点4:本願発明では、ヘッドスペースを炭酸ガス濃度100%によるガスで置換しているのに対し、引用文献1では、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換する点については記載されているが、炭酸ガスの濃度については特段の記載がない点。

・相違点5:本願発明では、密封後の容器内を、蓋材を剥がしたときの容器本体の満注容積に対して90〜100%となる状態に変化させると共に、-0.1〜-0.01kgf/(平方センチメートル)の微減圧状態にしているのに対し、引用文献1では、この点について記載がない点。

4.当審の判断
相違点1について
食品を保存する収納体として、カップ容器は引用文献2に記載されているように周知のものであって、引用文献1に記載されているパウチへの食品の充填・密封方法をカップ容器に食品を充填する際に適用することに何ら困難性は認められないし、また、適用できないとする格別の理由があるものとも認められない。

相違点2について
本願発明では、容器を密封するのに蓋材を用いているが、容器を蓋で密封することは引用文献2に記載されているように周知の事項であり、このような構成とすることに何ら困難性は認められない。

相違点3について
本願発明では、容器への内容物の充填時に所定量のヘッドスペースを残すに際して、保存中の容器内の容積および内圧が一定範囲となるようにする点を限定している。
しかし、容器中に内容物を充填するに際して、容積や内圧が一定範囲となるように充填することは当業者が当然考慮すべき事項であって、このような限定をすることに何ら困難性は認められない。

相違点4について
引用文献1に記載の発明では、炭酸ガスの濃度に関しては特に記載はなされていないが、炭酸ガスを用いることが記載されているのであるから、不可避的に含有される成分を除いて他のガスを特に含むものとは認められず、本願発明のように炭酸ガス濃度を100%と限定することは当業者が容易になし得ることにすぎない。

相違点5:本願発明では密封後の容器内の状態を数値により限定している。
密封後の容器内を、蓋材を剥がしたときの容器本体の満注容積に対して90〜100%となる状態に変化させる点については、引用文献1の発明においても、ヘッドスペースの炭酸ガスを内容物に溶解させてヘッドスペースを減少させるものであるから、満注容積のほぼ100%になっているものと認められる。
また、密封後の容器内を、-0.1〜-0.01kgf/(平方センチメートル)の微減圧状態にする点についても、密封された容器内のヘッドスペースの炭酸ガスを内容物に溶解させてヘッドスペースを減少させることからすれば、当然容器内は微減圧状態になるものと認められる。そして、-0.1〜-0.01kgf/(平方センチメートル)という数値範囲についても微減圧状態であるということ以上に格別の技術的理由に基づいて定められたものとも認められないから、このような数値範囲とすることに格別の困難性があるものとも認められない。
してみれば、相違点5にかかる数値限定は、ヘッドスペースの炭酸ガスを内容物に溶解させることにより当然生じている状態を単に記載したものにすぎず、当業者が容易になし得ることにすぎない。

そして、本願発明の奏する効果についても引用文献1及び2の発明から当業者が予測できる程度のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-09 
結審通知日 2006-03-14 
審決日 2006-04-05 
出願番号 特願平10-309577
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 真  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 種子 浩明
豊永 茂弘
発明の名称 容器詰め食品の製造方法  
代理人 原田 卓治  
代理人 坂本 徹  

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