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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R |
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管理番号 | 1137099 |
審判番号 | 不服2003-7783 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-10-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-06 |
確定日 | 2006-05-25 |
事件の表示 | 平成9年特許願第73557号「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月9日出願公開、特開平10-270119号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成9年3月26日の出願であって,平成15年3月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年6月3日付けで手続補正がなされ,平成17年11月17日付けで同手続補正が却下されるとともに当審の拒絶理由通知がなされ,平成18年1月12日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明についての判断 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明は,平成18年1月12日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下,「本願発明」という。) 「一対のコネクタハウジングを相対向して嵌合し,本嵌合位置において前記コネクタハウジング内に収容するターミナル相互が電気接続されるコネクタにおいて,前記一対のコネクタハウジングに,外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びるスライダ挿入孔を設け,前記一対のコネクタハウジングのうちの一方に,前記スライダ挿入孔の内壁面から突出するカムピンを設け,前記スライダ挿入孔に挿入されるスライダには,挿入の初期に前記カムピンが係入し,完全挿入時に前記カムピンを介して前記一方のコネクタハウジングを本嵌合位置に押動するカム溝と,前記スライダの挿入面に沿う弾性支持部と,該弾性支持部に突設され,前端に垂直面を有し,前記スライダの挿入面から突出する方向に付勢され,挿入途中において他方のコネクタハウジングの垂直な壁部に前記垂直面を当接させることにより前記スライダの仮係止状態を得る慣性ロックと,前記スライダが完全挿入されたときに他方のコネクタに当接するストッパとを設け,両垂直面相互の当接でスライダ挿入方向に生じる慣性力により前記スライダが一気に完全挿入されるようにしたことを特徴とするコネクタ。」 2.引用例 (1)当審の拒絶理由通知に引用された特開平9-17508号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。 ア.「特に自動車などの技術分野では,嵌合すべきコネクタ組立体の信号線の極数も多くなる傾向にあり,しかも半嵌合を確実に防止する必要がある。本発明は,このような実状に鑑みてなされ,半嵌合状態を確実に防止することができ,しかも嵌合力の低減を図ることができるコネクタ組立体を提供することを目的とする。」(段落【0006】) イ.「図1に示すように,本発明の一実施例に係るコネクタ組立体は,第1ハウジング2と第2ハウジング4と嵌合検知ピン6とを有する。「(段落【0026】) ウ.「図2に示す第1ハウジング2の嵌合孔20内に,図3に示す第2ハウジング4の先端が正規に嵌合し,嵌合面2a,4a相互が均一に接触した状態で,雄型端子16と雌型端子18との接続が確実に成されるようになっている。図1,2に示すように,第1ハウジング2の外周の一側部(上部)には,軸方向に伸びる検知用挿入口22が形成してある。この検知用挿入口22には,図1,4に示す板状の嵌合検知ピン6の先端が挿入可能になっている。」(段落【0030】) エ.「図2に示すように,嵌合凸部24には,検知用挿入口22に対応して軸方向に伸びる貫通孔26が形成してある。この貫通孔26には,図1,4に示す嵌合検知ピン6の先端が挿通する。後述するように,図1,4に示す嵌合検知ピン6が,図2に示す検知用挿入口22から本挿入された状態では,嵌合検知ピン6の先端は,第1ハウジング2の外周において,検知用挿入口22と反対側に形成された先端挿入口27内に挿入される。(段落」(【0032】) オ.「図1,3に示すように,第2ハウジング4には,嵌合検知ピン6を通すための検知ピン用凹部34が,ハウジング4の略中心軸を通り,嵌合凹部30と交差するように形成してある。嵌合凹部30を構成する内壁34a,34b間の幅は,板状の嵌合検知ピン6の板厚よりも少し広い程度であり,図2に示す検知用挿入口22,貫通孔26および先端挿入口27の幅と略同一程度である。」(段落【0033】) カ.「図3に示すように,検知ピン用凹部34の一方の内壁34aにおいて,ハウジング4の先端で嵌合凹部30の直下部には,円柱状の第1ガイドリブ36が形成してある。また,検知ピン用凹部34の他方の内壁34bにおいて,ハウジング4の先端で嵌合凹部30の直上部には,円柱状の第2ガイドリブ38が形成してある。これらガイドリブ36,38の突出高さは,検知ピン用凹部34の幅の1/2以下であることが好ましい。これらガイドリブ36,38の外径は,略同等である。」(段落【0034】) キ.「これらガイドリブ36,38は,図4,5に示す板状の嵌合検知ピン6の両面6a,6bにそれぞれ形成してある第1,第2カム溝42,46の第1,第2傾斜壁40,44に係合するようになっている。これらの係合の状態は,図12,13に示す。ただし,図12,13では,第1ガイドリブ36と第1カム溝42との関係のみを示す。第2ガイドリブ38と第2カム溝46との関係についても同様である。」(段落【0035】) ク.「図4に示すように,第1カム溝42は,嵌合検知ピン6の一方の面6aの先端側に形成してある。第1カム溝42の溝深さは,板状の嵌合検知ピン6の板厚の略半分程度である。図3に示す円柱状の第1ガイドリブ38は,図4に示す嵌合検知ピン6の先端に形成された導入部41からカム溝42内に入り,傾斜壁40に沿って上り,ロック溝48内に落ちつくようになっている。同時に,図3に示す円柱状の第2ガイドリブ38は,図5に示す嵌合検知ピン6の先端に形成された導入部43からカム溝46内に入り,傾斜壁44に沿って上り,ロック溝51内に落ちつくようになっている。図5に示すように,第1カム溝42は,第2カム溝46に比較して,嵌合検知ピン6の先端側に形成してあり,それらの溝の形状自体は同様である。」(段落【0036】) ケ.「図1,4に示すように,嵌合検知ピン6の後端(図では上端)には,ストッパ片60が形成してある。」(段落【0038】) コ.「まず,図1,2に示す第1ハウジング2の側部に形成された検知用挿入口22から,第1ハウジング2の略中心軸線を通るように,図1,4に示す板状の嵌合検知ピン6を,図6,7に示すように,仮挿入した状態で,第1ハウジング2の嵌合穴20内に第2ハウジング4の先端部を挿入する。」(段落【0041】) サ.「次に,図12,13に示すように,嵌合検知ピン6を,第1ハウジング2の検知用挿入口22内に,さらに押し込みんで本挿入し,図3に示す第2ハウジング4に形成された検知ピン用凹部34の対向する内壁34a,34bに形成されたガイドリブ36,38を,図4,5に示す嵌合検知ピン6に形成された傾斜壁40,44を持つカム溝42,46にそれぞれ係合させる。ガイドリブ36,38は,嵌合検知ピン6の両面で,先端側導入部41,43からカム溝42,46内に導入される。これらカム溝42,46とガイドピン36,38との係合により,第2ハウジング4の先端部を,図2に示す第1ハウジング2の嵌合穴20内にさらに押し込む。」(段落【0044】) シ.「本実施例では,嵌合検知ピン6を本挿入することで,ガイドピン36,38とカム溝42,46との係合により,第2ハウジング4を第1ハウジング2の嵌合穴20内に同芯状態で押し込み,両ハウジング2,4の捻れが補正され,全てのリード線8,12についての接続が確保される。」(段落【0046】) ス.「本実施例では,両ハウジング2,4が完全に嵌合した状態でなければ,嵌合検知ピン6を,第1ハウジング2の検知用挿入口22から本挿入して押し込むことができないので,押し込まれていない嵌合検知ピン6を観察することにより,きわめて容易に半嵌合状態を検知することができる。また,半嵌合状態では,嵌合検知ピン6の後端が,第1ハウジング2の側部から突出した状態なので,この状態で,図13に示すように,第1ハウジング2をパネル66のパネル穴68に取り付けようとしても,嵌合検知ピン6の後端がパネル穴68に引っかかり固定することができない。そのため,半嵌合状態で,コネクタ組立体がパネル穴68に取付固定されることを有効に防止することができる。」(段落【0048】) セ.【図1】-【図3】,【図6】,【図7】には,第1ハウジング2にリード線8,第2ハウジング4にリード線12がそれぞれ取り付けられた点,検出用挿入口22,貫通孔26,先端挿入口27が第1ハウジング2の外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びる点,及び,検知ピン用凹部34が第2ハウジング4の外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びる点が,それぞれ図示されている。【図11】-【図13】には,該嵌合検知ピン6が本挿入される時,ストッパ片60が第1ハウジング2に当接する点が図示されている。 上記記載事項ウ.の「図2に示す第1ハウジング2の嵌合孔20内に,図3に示す第2ハウジング4の先端が正規に嵌合し,嵌合面2a,4a相互が均一に接触した状態で,雄型端子16と雌型端子18との接続が確実に成されるようになっている。」からみて,第1ハウジング2と第2ハウジング4が相対向して嵌合することは自明である。 上記記載事項ア.ないしス.及び図示事項セ.からみて,引用例1には,以下の事項が記載されているといえる。 「第1ハウジング2と第2ハウジング4を相対向して嵌合し,完全に嵌合した位置で前記ハウジング2,4に取り付けられたリード線8,12が接続されるコネクタにおいて,前記第1ハウジング2に外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びる検出用挿入口22,貫通孔26,先端挿入口27と前記第2ハウジング4に外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びる検知ピン用凹部34を設け,前記第2ハウジング4に前記検知ピン用凹部34の内壁34a,34bから突出するガイドリブ36,38を設け,前記検知ピン用凹部34に挿入される嵌合検知ピン6には,仮挿入後に前記ガイドリブ36,38が係合し,本挿入時に前記ガイドリブ36,38により前記第2のハウジング4を完全に嵌合した位置に押し込むカム溝42,46と,該嵌合検知ピン6が本挿入されたときに第1ハウジング2に当接するストッパ片60とを設けたコネクタ。」(以下,「引用発明1」という。) (2)当審の拒絶理由通知に引用された特開平9-50862号公報(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。 ア.「【従来の技術】この種のコネクタとして,図11及び図12に示すものがある。この雌型コネクタ1は,雌型端子2を収容する角筒形の端子収容部3を備え,この端子収容部3が相手方の雄型コネクタ4の雄型端子5を包囲するハウジング6内に挿入される。端子収容部3の上面には,支持脚部7により支持されたロックアーム8が,その支持脚部7を中心に矢印方向に弾性的に傾動可能となっている。」(段落【0002】) イ.「一方,相手方コネクタ4のハウジング6上面には係合突部9が突設されており,雌型コネクタ1の端子収容部3を雄型コネクタ4のハウジング6内に挿入することでロックアーム8の先端が係合突部9の当接面9aに当接し(図11参照),ここから更に強く挿入することによりロックアーム8が係合突部9に乗り上げるように弾性的に傾動変形し(図12参照),ついには係合突部9を乗り越えてロックアーム8が弾性的に復帰変形するといういわゆる節度動作によってロックアーム8と係合突部9の係合面9bとが互いに係合し,雌雄の両端子2,5が互いに嵌合接続した状態で両コネクタ1,4がロックされるのである。このロックを解除するには,ロックアーム8の後端を指で押し下げれば,支持脚部7を支点にしてロックアーム8が傾動して係合突部9との係合が外れることになる。」(段落【0003】) ウ.「ところで,この種のコネクタでは,いわゆる慣性ロックと称される設計思想に基づき,ロックアーム8が係合突部9を乗り越える際に生ずる挿入抵抗を大きくして強い節度感を得ようとする場合がある。これは,ロックアーム8が係合突部9を乗り越える際に生ずる挿入抵抗を,雌雄両端子2,5の嵌合に伴う嵌合抵抗よりも大きく設定するものである。仮に上述とは逆に,ロックアーム8が係合突部9を乗り越える際に生ずる挿入抵抗を,両端子2,5の嵌合抵抗よりも小さく設定すると,両端子2,5が半嵌合状態にあることを気付かずに挿入操作が止められてしまうことが有り得るが,上述のような関係に設定すると,ロックアーム8が係合突部9を抵抗を受けながら乗り越えて「カチッ」という節度動作に伴う音が聞こえるまでコネクタの挿入を行えば,ロックアーム8が係合突部9を乗り越えた勢いで両端子2,5が完全な嵌合状態に至ることが保証されるからである。これによれば,機器の組立ラインにおけるコネクタの半嵌合の発生を未然に防止できるという優れた効果が得られる。」(段落【0004】) エ.【図11】及び【図12】には,ロックアーム8の先端が垂直な壁部を形成している点,係合突部9は雄型コネクタ4の挿入方向に沿って形成されたハウジング6に突設された点,当接面9aがほぼ垂直に立ち上がる形状である点,及び,雌型コネクタ1の挿入方向に沿ってロックアーム8が設けられた点が図示されている。 上記記載事項ア.ないしウ.及び図示事項エ.からみて,引用例2には,以下の発明が記載されている。 「コネクタにおいて,弾性的に傾動変形するとともにコネクタの挿入方向に沿って雌型コネクタに設けられたロックアーム8の先端の垂直な壁部と,雄型コネクタ4の挿入方向に沿って形成されたハウジング6に突設され当接面9aがほぼ垂直に立ち上がる係合突部9とを有し,該ロックアーム8が該係合突部9を乗り越える際に生ずる挿入抵抗を,雌雄両端子の嵌合に伴う嵌合抵抗よりも大きく設定することにより,ロックアームが係合突部を乗り越えた勢いで両端子が完全な嵌合状態に至ることを保証する慣性ロックを備えたコネクタ。」(以下,「引用発明2」という。) 3.対比 本願発明と引用発明1を対比するに,両者の文言の意味,機能又は作用等からみて,後者の「第1ハウジング2と第2ハウジング4」は前者の「一対のコネクタハウジング」に相当し,以下同様に,後者の「完全に嵌合した位置」は前者の「本嵌合位置」に,後者の「前記ハウジング2,4に取り付けられたリード線8,12が接続される」は前者の「前記コネクタハウジング内に収容するターミナル相互が電気接続される」に,後者の「前記第1ハウジング2に外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びる検出用挿入口22,貫通孔26,先端挿入口27と前記第2ハウジング4に外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びる検知ピン用凹部34を設け」は前者の「前記一対のコネクタハウジングに,外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びるスライダ挿入孔を設け」に相当し,後者の「前記第2ハウジング4」は前者の「前記一対のコネクタハウジングのうちの一方」に,後者の「内壁34a,34b」は前者の「内壁面」に,後者の「ガイドリブ36,38」は前者の「カムピン」に,後者の「嵌合検知ピン6」は前者の「スライダ」に,後者の「仮挿入後に」は前者の「挿入の初期に」に,後者の「本挿入」は前者の「完全挿入」に,後者の「前記ガイドリブ36,38により前記第2のハウジング4を完全に嵌合した位置に押し込むカム溝42,46」は前者の「前記カムピンを介して前記一方のコネクタハウジングを本嵌合位置に押動するカム溝」に,後者の「第1ハウジング2」は前者の「他方のコネクタ」に,後者の「ストッパ片60」は前者の「ストッパ」に,それぞれ相当する。 してみれば,両者は,次の点で一致する。 (一致点) 「一対のコネクタハウジングを相対向して嵌合し,本嵌合位置において前記コネクタハウジング内に収容するターミナル相互が電気接続されるコネクタにおいて,前記一対のコネクタハウジングに,外面から嵌合方向に対して交叉する方向に延びるスライダ挿入孔を設け,前記一対のコネクタハウジングのうちの一方に,前記スライダ挿入孔の内壁面から突出するカムピンを設け,前記スライダ挿入孔に挿入されるスライダには,挿入の初期に前記カムピンが係入し,完全挿入時に前記カムピンを介して前記一方のコネクタハウジングを本嵌合位置に押動するカム溝と,前記スライダが完全挿入されたときに他方のコネクタに当接するストッパとを設けたコネクタ。」 そして,両者は次の点で相違する。 (相違点) 本願発明においては,「前記スライダの挿入面に沿う弾性支持部と,該弾性支持部に突設され,前端に垂直面を有し,前記スライダの挿入面から突出する方向に付勢され,挿入途中において他方のコネクタハウジングの垂直な壁部に前記垂直面を当接させることにより前記スライダの仮係止状態を得る慣性ロック」を設けたことで,「両垂直面相互の当接でスライダ挿入方向に生じる慣性力により前記スライダが一気に完全挿入されるようにした」のに対し,引用発明1においてはそのような構成がない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 上記記載事項「2.(2)」によれば,引用発明2は,コネクタにおいて,半嵌合の発生を未然に防止し完全な嵌合状態に至ることを保証するため,ロックアームが係合突部を乗り越えた勢いで一気に両端子が完全な嵌合状態に至る,いわゆる慣性ロックを用いるものである。そして,コネクタにおいて慣性ロック機構を用いることは従来周知の事項である。(特開平7-22110号公報,実願平5-12461号(実開平6-72176号)のCD -ROM,実願平3-14425(実開平4-111166号)のマイクロフィルムを参照のこと。) ここで,上記記載事項「2.(1)」によれば,引用発明1は,嵌合検知ピン6の挿入により第1ハウジング2と第2ハウジング4とを嵌合するコネクタにおいて,半嵌合を確実に防止することを目的とするものであり,引用発明1と引用発明2の技術的課題は共通するとともに,この技術的課題を解決する手段は異なり,それら手段は互いに干渉せず両立する関係にある。 してみれば,半嵌合をより確実に防止するために,引用発明1に引用発明2の慣性ロックを用いるようにすることは,当業者であれば容易に考え付くことであり,その際に,相対的に変位する第1ハウジング,第2ハウジング,嵌合検知ピンのどの部材間に慣性ロックを備えるようにするかは単なる設計的事項に過ぎず,操作力を加える部材に慣性ロックからの反力を生じさせるようにすることが,部材の強度や剛性の観点から好ましいので,操作力を加える嵌合検知ピンに,慣性ロックの構成の一部を設けるようにし,また,嵌合検知ピンに慣性ロックの構成の一部を設けるのであれば,慣性ロックの採用に伴うコネクタの構造の複雑化を避けるために,嵌合検知ピンが最初に嵌合する検知用挿入口22を有する第1ハウジングに,慣性ロックの構成の残りの部分を設けるようにすることは,当業者であれば容易に想到することである。そして,嵌合検知ピンは第1ハウジングの検知用挿入口22,貫通孔26,先端挿入口27に挿入されるので,嵌合検知ピンは雄型を形成し,第1ハウジングは雌型を形成しているといえるから,嵌合検知ピンと第1ハウジング間に引用発明2の慣性ロックを設けるに当たって,雄型の嵌合検知ピンに当接面がほぼ垂直に立ち上がる突起を設け,雌型の第1ハウジングの検知用挿入口22の入り口端部に垂直な壁を設けるようにするとともに,上記嵌合検知ピンに設ける突起を挿入面に沿う弾性支持部に突設するようにすることは,引用発明2の慣性ロックにおいても,壁部と突起のどちらかが弾性的に支持されていれば,慣性ロックとしての機能を奏することは明らかであり,また,コネクタにおいて,係合手段としての突起を挿入面に沿う弾性支持部に突設することは従来周知の技術であるから(例えば,引用例1の段落【0038】及び第2図を参照。),当業者であれば適宜なし得たものである。 よって,引用発明1,引用発明2及び従来周知の事項に基づいて,上記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。 さらに,上記相違点によって,本願発明が奏する作用,効果も,引用発明1,引用発明2及び従来周知の事項から予測される範囲のものであって,格別なものとは認められない。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明1,引用発明2及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-23 |
結審通知日 | 2006-03-28 |
審決日 | 2006-04-11 |
出願番号 | 特願平9-73557 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金丸 治之 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 柳 五三 |
発明の名称 | コネクタ |
代理人 | 越智 浩史 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 垣内 勇 |
代理人 | 松村 貞男 |