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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04K |
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管理番号 | 1137114 |
審判番号 | 不服2003-21090 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-10-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-30 |
確定日 | 2006-05-25 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 84623号「通信妨害装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月15日出願公開、特開平11-284602〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年3月30日の出願であって、平成15年6月24日付で拒絶理由が通知され、同年9月1日付で手続補正がされ、同年9月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月14日付で本願明細書について手続補正がなされたものである。 2.平成15年11月14日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年11月14日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の特許請求の範囲の記載 平成15年11月14日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成15年9月1日付手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を次のように補正することを含むものである。 「【請求項1】 電波発生源から到来する周波数ホッピング電波を受信して上記周波数ホッピング電波の周波数を検出する受信周波数検出回路と、上記検出した周波数を保存し、送信する妨害電波の周波数を設定する妨害波設定器と、上記妨害波設定器が設定する全ての周波数の電波を発振するマルチトーン発振器と、上記受信周波数検出回路とマルチトーン発振器の送受信の動作を交互に切換える送受切換制御部とを備えるとともに、上記送受信切換制御部は、上記周波数ホッピング電波の1ホップの間隔中に上記送受信の動作を少なくとも2回行うようにしたことを特徴とする通信妨害装置。 【請求項2】 妨害波設定器に受信周波数検出回路で検出した複数の電波発生源からの周波数ホッピング電波の周波数を記憶するとともに、上記妨害波設定器に記憶された複数の電波発生源からの周波数ホッピング電波の各周波数を上記マルチトーン発振器に設定し、妨害電波として電波発信するようにしたことを特徴とする請求項1記載の通信妨害装置。 【請求項3】 妨害波設定器に受信周波数検出回路で検出した周波数ホッピング電波の周波数を記憶するとともに、妨害波設定器に記憶された周波数ホッピング電波の周波数の内、特定の周波数を上記マルチトーン発振器に設定し、上記設定された周波数だけを妨害電波として電波発信するようにしたことを特徴とする請求項1記載の通信妨害装置。 【請求項4】 受信周波数検出回路に代えて、周波数ホッピング電波の周波数と受信レベルとを検出する受信電波諸元検出器を備えるとともに、妨害波設定器に予め受信レベルの上限と下限とを設定し、受信レベルが上記上限と下限の受信レベルの間に入る周波数のみを妨害電波として電波発信するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の通信妨害装置。 【請求項5】 電波の到来方位を検出する方位測定部を備えるとともに、上記妨害波設定器において、上記方位測定部の検出した電波の方位が予め設定された妨害対象電波の方位であるかどうかを判定し、妨害対象電波の方位である場合には、上記電波の周波数の妨害電波を電波発振するようにしたことを特徴とする請求項1または2または4いずれか一項記載の通信妨害装置。 【請求項6】 送受信切換制御部に代えて、受信された電波中の妨害電波を減衰させる干渉波除去回路を備えたことを特徴とする請求項4記載の通信妨害装置。」 (2)補正前の特許請求の範囲の記載 一方、補正前の特許請求の範囲であるところの、平成15年9月1日付手続補正により補正された特許請求の範囲は、以下のとおり記載されている。 「【請求項1】 電波発生源から到来する周波数ホッピング電波の周波数を検出するための受信の動作と、上記周波数ホッピング電波の周波数と同じ周波数の妨害電波を送信する妨害の動作とを交互に行うこととし、上記周波数ホッピング電波の1ホップの間隔中に上記受信及び妨害の動作を少なくとも2回行うようにしたことを特徴とする通信妨害方法。 【請求項2】 電波発生源から到来する周波数ホッピング電波を受信して上記周波数ホッピング電波の周波数を検出する受信周波数検出回路と、上記検出した周波数を保存し、送信する妨害電波の周波数を設定する妨害波設定器と、上記妨害波設定器により設定された妨害周波数で送信電波を発振する可変発振器と、上記受信周波数検出回路と可変発振器の送受信の動作を交互に切換える送受切換制御部とを備えるとともに、上記送受切換制御部は、上記周波数ホッピング電波の1ホップの間隔中に上記送受信の動作を少なくとも2回行うようにしたことを特徴とする通信妨害装置。 【請求項3】 妨害波設定器に受信周波数検出回路で検出した周波数ホッピング電波の周波数を記憶するとともに、可変発振器に代えて、複数の周波数の電波を発振するマルチトーン発振器を備え、上記妨害波設定器に記憶された全ての周波数を上記マルチトーン発振器に設定し、妨害電波として電波発信するようにしたことを特徴とする請求項2記載の通信妨害装置。 【請求項4】 妨害波設定器に受信周波数検出回路で検出した複数の電波発生源からの周波数ホッピング電波の周波数を記憶するとともに、可変発振器に代えて、複数の周波数の電波を発振するマルチトーン発振器を備え、上記妨害波設定器に記憶された複数の電波発生源からの周波数ホッピング電波の各周波数を上記マルチトーン発振器に設定し、妨害電波として電波発信するようにしたことを特徴とする請求項2記載の通信妨害装置。 【請求項5】 妨害波設定器に受信周波数検出回路で検出した周波数ホッピング電波の周波数を記憶するとともに、可変発振器に代えて、複数の周波数の電波を発振するマルチトーン発振器を備え、妨害波設定器に記憶された周波数ホッピング電波の周波数の内、 特定の周波数をマルチトーン発振器に設定し、上記設定された周波数だけを妨害電波として電波発信するようにしたことを特徴とする請求項2記載の通信妨害装置。 【請求項6】 受信周波数検出回路に代えて、周波数ホッピング電波の周波数と受信レベルとを検出する受信電波諸元検出器を備えるとともに、妨害波設定器に予め受信レベルの上限と下限とを設定し、受信レベルが上記上限と下限の受信レベルの間に入る周波数のみを妨害電波として電波発信するようにしたことを特徴とする請求項2または請求項3または請求項5のいずれかに記載の通信妨害装置。 【請求項7】 電波の到来方位を検出する方位測定部を備えるとともに、上記妨害波設定器において、上記方位測定部の検出した電波の方位が予め設定された妨害対象電波の方位であるかどうかを判定し、妨害対象電波の方位である場合には、上記電波の周波数の妨害電波を電波発振するようにしたことを特徴とする請求項2または請求項3または請求項5または請求項6のいずれかに記載の通信妨害装置。 【請求項8】 送受信切換制御部に代えて、受信された電波中の妨害電波を減衰させる干渉波除去回路を備えるとともに、上記周波数ホッピング信号の周波数の切換に追随して妨害電波を発振するようにしたことを特徴とする請求項6記載の通信妨害装置。」 (3)補正の適否の判断 上記補正が,審判請求時における特許請求の範囲の補正についての特許法第17条の2第4項の規定に適合するかについて検討する。 上記補正後の請求項1の記載と、これに対応する補正前の請求項3の記載とを対比すると、補正前の請求項3には、「妨害波設定器に受信周波数検出回路で検出した周波数ホッピング電波の周波数を記憶するとともに、可変発振器に代えて、複数の周波数の電波を発振するマルチトーン発振器を備え、上記妨害波設定器に記憶された全ての周波数を上記マルチトーン発振器に設定し」と記載されており、この記載によれば、「妨害波設定器」は、受信周波数検出回路で検出した周波数ホッピング電波の周波数を「記憶する」ものであり、かつ、その「記憶された全ての周波数」をマルチトーン発振器に設定するものであるのに対して、補正後の請求項1は「上記検出した周波数を保存し、送信する妨害電波の周波数を設定する妨害波設定器と、上記妨害波設定器が設定する全ての周波数の電波を発振するマルチトーン発振器と」と記載されており、妨害波設定器について周波数を「記憶する」という語がなくなっており、例え、上記「保存」が「記憶」と同義であったとしても、「記憶された全ての周波数」をマルチトーン発振器に設定するという事項もなくっているのであるから、補正前の請求項3を補正後の請求項1とする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認めることができない。 また、この補正後の請求項1に係る補正は、請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。 したがって,補正後の請求項1に係る補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しておらず、また,同第1号の請求項の削除,同第3号の誤記の訂正又は同第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正のいずれにも該当しない。 また、上記補正後の請求項6の記載と、これに対応する補正前の請求項8の記載とを対比すると、補正前の請求項8には、「送受信切換制御部に代えて、受信された電波中の妨害電波を減衰させる干渉波除去回路を備えるとともに、上記周波数ホッピング信号の周波数の切換に追随して妨害電波を発振するようにした」と記載されており、この記載によれば、「受信された電波中の妨害電波を減衰させる干渉波除去回路」を備えるとともに「上記周波数ホッピング信号の周波数の切換に追随して妨害電波を発振するようにした」という構成も存在しているが、補正後の請求項6には、この「上記周波数ホッピング信号の周波数の切換に追随して妨害電波を発振するした」という記載がなくなっているので、補正前の請求項8を補正後の請求項6とする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認めることができない。 また、この補正後の請求項6に係る補正は、請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。 したがって,補正後の請求項6に係る補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しておらず、また,同第1号の請求項の削除,同第3号の誤記の訂正又は同第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正のいずれにも該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成15年11月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年9月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「電波発生源から到来する周波数ホッピング電波の周波数を検出するための受信の動作と、上記周波数ホッピング電波の周波数と同じ周波数の妨害電波を送信する妨害の動作とを交互に行うこととし、上記周波数ホッピング電波の1ホップの間隔中に上記受信及び妨害の動作を少なくとも2回行うようにしたことを特徴とする通信妨害方法。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第4103236号明細書(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (A)「 This invention relates to an electronic jamming system and is particularly concerned with a method of and apparatus for jamming wireless communication with the aid of a powerful jamming transmitter, for the purpose of impairing message transmission by an enemy over as large an operation range as possible. 」(1欄4〜9行) (訳:本発明は電子ジャミングシステムに関し、特には、できる限り広い作動範囲にわたって、敵対側によるメッセージ伝送を阻害するために、強力なジャミング送信機を使用してワイヤレス通信をジャミング(妨害)する方法と装置に関する。) (B)「The jamming of wireless or radio communications poses particular difficulties when a channel is switched in only briefly, for radiating short messages with a duration of about one-tenth second, which is being done for the purpose of rendering difficult the detection of the involved transmitter and therewith the switching of a jamming transmitter. Known jamming methods, which are intended for more prolonged message transmission, fail in such cases. This situation produces a problem and a need for a new jamming method adapted to effectively jam not only prolonged radio communications but also radiation operating in spurts to transmit brief messages. 」(1欄10〜22行) (訳:約10分の1秒の持続時間での短時間メッセージを放射するために、チャンネルが極短時間で切換えられる場合、つまり、関係する送信機の検出と、それに伴うジャミング送信機の切り換えの検出を困難にするために極短時間で切換えられる場合には、ワイヤレスまたは無線のジャミングは特に困難になる。延長されたメッセージ伝送用を目的とした公知のジャミング方法は、この場合には役に立たない。この状況では問題が発生するので、効果的に長い無線通信を妨害するだけでなく、短いメッセージを急激に伝送する場合に対しても放射動作を実施するために適した新規のジャミング方法の必要性がある。) (C)「According to the invention, the jamming with the aid of a powerful jamming transmitter is made possible by searching with a detection receiver (radio direction finder), in alternate detection and jamming intervals, the wave range which is to be subjected to jamming, so as to detect transmitting stations, automatically respectively seizing and storing upon detection of a suspect transmitter, the frequency radiated therefrom, thereupon interrupting the detection operation and producing a jamming frequency spectrum for a jamming channel which embraces the stored frequency, thereafter automatically switching in the jamming transmitter to effect in the next following jamming interval amplified transmission of the jamming frequency spectrum, and automatically disconnecting the jamming transmitter at the end of the jamming interval and reconnecting the radio detection receiver for renewed detection operation. 」(1欄23〜40行) (訳:本発明によると、検出受信機(無線方向ファインダ)で、検出とジャミングの交互の間隔で、ジャミングを受ける電波の範囲を検出して、被疑送信機、そこから放射される周波数を各々自動的に捕捉して記憶し、同時に検出動作を中断して、記憶した周波数を含むジャミングチャンネル用にジャミング周波数を生成し、その後で自動的にジャミング送信機をジャミング周波数スペクトルの次の継続するジャミング間隔増幅伝送が有効になるように切換え、ジャミング間隔の最後にジャミング送信機を遮断し、次の検出動作のために無線検出受信機を再接続することによって、強力なジャミング送信機を使用するジャミングが可能になる。) (D)「It is with this system possible to effect automatic switching in of the jamming transmission with very short time delay amounting, for example, to one-hundredth of a second after the start of the enemy transmission. The required short switching times can be obtained owing to the fact that the detection of the enemy radio transmission and the corresponding frequency analysis as well as the switching in of the jamming transmitter are effected fully automatically.」(1欄41〜49行) (訳:このシステムでは、敵対側の伝送の開始後、極めて短い時間遅れで、例えば、100分の1秒でジャミング伝送の自動切換えを効果的に行うことができる。敵対側無線伝送と対応する周波数分析、さらにはジャミング送信機の切換えは完全に自動的に行われるので、必要な短時間切り換え時間で実施できるようになる。) (E)「The detection and jamming intervals continuously follow one another in brief periodic sequence, for example, by utilizing detection and jamming time intervals amounting to a few milliseconds. The jamming operation begins, for example, after a detection interval of about 0.5 milliseconds. The jamming channels in which enemy communications had been detected by the detection operation, are thereupon radiated during a transmission time of about 8.5 milliseconds. There follows then advantageously a brief pause of about 1 millisecond, in which the detection receiver remains disconnected so as to avoid reception of reflected signals coming from some targets. The cycle with a total time of about 10 milliseconds then continues after this pause. 」(1欄50〜63行) (訳:例えば、検出とジャミング時間間隔を数ミリ秒で利用することによって、検出とジャミング間隔が連続的に交互に短時間シーケンスで行われる。例えば、ジャミング動作は約0.5ミリ秒の検出間隔の後で開始する。検出動作によって敵対側通信が検出されたジャミングチャンネルは、この時に、約8.5ミリ秒の伝送時間中に放射される。その後で、約1ミリ秒の短時間休止が効果的に行われ、ここで、同じ目標から放出される反射信号の受信を回避するように検出受信機は遮断された状態になる。ここで、この休止の後で、約10ミリ秒の合計時間のサイクルが継続する。) (F)「Referring now to FIG. 1, the frequency range which is to be jammed is assumed to have a bandwidth of 20 megacycles and extends over a range from 220 to 240 megacycles. It is assumed, as an example, that this band or range is without gaps subdivided into 200 channels each with a bandwidth of 100 kilocycles. The detection receiver comprises a high freuency part HF with an input filter of 20 megacycles bandwidth, followed by a mixer part M in which the received high frequency band of 220 to 240 megacycles is, by means of a quartz oscillator 0 of 195 megacycles, transferred into the intermediate frequency position of 25 to 45 megacycles. The intermediate frequency band is amplified, in a linear intermediate frequency amplifier IF of 20 megacycles, only to such extent that practically no combination frequencies can be produced by nonlinearities. Next in series are disposed 200 plural circuit band filters for carrying out the frequency analysis, each filter having a band width of 100 kilocycles, such band filters being parallel connected at the respective input and output sides. Only one of these filters marked F is shown in the drawing. The received signal at the filter output is in a selective amplifier SA, disposed ahead of each filter, amplified to a constant level. The amplified signal is rectified in a rectifier R for the purpose of actuating a relay switch or electronic channel switch SW which connects the filter in the IF position at the transmitting side, with a successive wideband amplifier IF'. One or more filters in which voltages are ascertained, received during the detection period, from transmitters which are to be jammed, are in this manner switched through, thereby storing or marking the ascertained frequencies by the actuation of the respective relays or switches SW.」(2欄59行〜3欄24行) (訳:図1においては、妨害される周波数範囲は、20メガサイクルの帯域幅であり、220から240メガサイクルの範囲にわたっていると仮定する。例として、この帯域または範囲は、100キロサイクルの帯域幅を有する各々の200チャンネルに細かく分割されたギャップが設けられていないものと仮定する。検出受信機は、220から240メガサイクルの受信された高周波数バンドが195メガサイクルの水晶発振器Oによって25から45の中間周波数位置へ転送されるミキサー部Mが続く、20メガサイクル帯域幅の入力フィルタ付き高周波数部HFから構成される。中間周波数バンドは、20メガサイクルの線形中間周波数増幅器IF内で、実質的に非線形性によって結合周波数が生成されない範囲のみに増幅される。次に、周波数分析を実施する200個の複数の回路バンドフィルタが直列に配設され、各バンドフィルタは100キロサイクルの帯域幅を有し、該バンドフィルタは入力側と出力側の各々で並列に接続される。Fのマークが付けられたこれらのフィルタの一つだけが図面に示されている。フィルタ出力部での受信された信号は、各フィルタの前に配置された選択的増幅器SA内にあり、一定のレベルに増幅される。増幅された信号は、連続的ワイドバンド増幅器IFとともに、伝送側のIF位置内においてフィルタを接続するリレースイッチまたは電子チャンネルスイッチSWを作動させるために、整流器R内で整流される。検出期間中に、妨害を行う送信機から電圧を探知し、受信する一つ以上のフィルタは、このように切り換えられ、これにより、各々のリレーまたはスイッチSWの作動によって、探知された周波数を記憶し、またはマークが付けられる。) (G)「The transmission interval or period is initiated, for example, by an electronic switch S1, which is operated by a timer T to switch the filter channels from the detector to the noise generator NG, such noise generator delivering a uniform humming noise in the range from 25 to 45 megacycles. The filters which had been before, in the detection period, connected with the detection amplifier, now operate as transmission filters and take from the wide noise band of the generator NG only those narrow frequency bands containing the frequencies of the transmitter which had been detected by the detection receiver during the detection period. The timer T is at the same time operative to actuate, for example, an electronic switch S2 so as to switch the quartz oscillator O to the transmitter converter TC in which the intermediate frequency is restored to the high frequency position of 220 to 240 megacycles. The converted frequencies are in this position amplified by a high frequency amplifier HF' which is switched to the power amplifier PA of the transmitter, such switching being effected by means of a switch S3 which is likewise operatively controlled by the timer T. The switch S3 thus serves for switching in the transmission terminal stage at the start of the jamming and also for the interruption of the transmission (jamming) during the detection period. 」(3欄25〜50行) (訳:例えば、フィルタチャンネルを検出器からノイズ発生器NGへ切り換えるタイマーTによって動作する電子スイッチS1により、伝送間隔または期間が開始され、該ノイズ発生器は、25から45メガサイクルの範囲内で均一なハミングノイズを送出する。検出期間内で、前に検出増幅器に接続されたフィルタは、ここでは、伝送フィルタとして作動し、発生器NGの広いノイズバンドから、検出期間中に検出受信機によって検出された送信機の周波数を含む狭い周波数バンドのみを取り出す。例えば、タイマーTは、水晶発振器0を、中間周波数が220から240メガサイクルの高周波数位置へ戻される送信機コンバータTCへ切り換えるように電子スイッチS2を時間によって作動させる。変換された周波数は、この位置で送信機のパワー増幅器PAへ切り換えられる高周波数増幅器HF‘によって増幅され、タイマーTによって同様に作動が制御されるスイッチS3によりこの切り換えが行われる。ここで、スイッチS3は、ジャミングの開始時における伝送最終段階で切り換え、また検出期間中の伝送(ジャミング)の中断用に機能する。) (H)「The transmitter delivers, for example, a radiated jamming power of about 10kW and always shall deliver the maximum power irrespective of the number of jamming channels which are switched through. The output power of the transmitter is advantageously held constant, by an automatic amplifier regulation, since the involvement of jamming channels can fluctuate rapidly and strongly. An amplifier regulation circuit ARC is for this purpose branched off in back of the transmitter converter TC, such circuit affecting the noise generator NG and regulating the output voltage thereof so that the transmitter is responsive to addition or reduction of jamming channels always held at maximum power output. 」(3欄51〜64行) (訳:例えば、送信機は約10kWの放射されたジャミング電力を送出し、常に、切り換えられるジャミングチャンネルの数量に関わらず最高の電力を送出しなければならない。関係するジャミングチャンネルは急速に強く変動する可能性があるので、送信機の出力電力は、自動増幅器規制により効果的に一定に保持される。増幅器の規制回路ARCは、このために、送信機コンバータTCの後部で分岐され、当該回路はノイズ発生器NGに影響を与えて、送信機が最大電力出力に常に保持されるジャミングチャンネルの追加または減少に対応するように出力電圧を規制する。) (I)「The jamming method shall of course be operative to jam only the radio communication of the enemy, while the own radio communication which takes place in the region of the jamming transmitter shall be maintained substantially free of trouble. This is made possible according to the invention by the provision of switching means for disconnecting manually or by remote control, as needed, those jamming channels which are to be held free for own radio communication. There are for this purpose provided cutout switches such as CS, respectively in all filter channels or in the channels which are to be held free, by means of which the respective channels can be temporarily or permanently excluded from the jamming operation, as desired. 」(3欄65行〜4欄10行) (訳:当然ながら、ジャミング方法は、敵対側の無線通信だけを妨害するように動作しなければないが、ジャミング送信機の範囲内で行う自分自身の無線通信は実質的に問題が発生しないように保持されなければならない。本発明によれば、自分自身の無線通信に対して問題を発生しないように保持されるジャミングチャンネルを手動で切り離す切り換え手段、または必要に応じて遠隔制御の方法によって、これが可能になる。この目的のために、全てのフィルタチャンネル内、または要望に応じて、ジャミング操作から一時的または永続的に除外される各々のチャンネルによって問題なく保持されるチャンネル内の各々にCS等のカットアウトスイッチを設ける。) (J)「1. A method of jamming wireless communications having a frequency falling within a predetermined frequency band, by means of a powerful jamming transmission, comprising the steps of separating out from the predetermined frequency band, by an electrical filtering operation, a suspect transmission signal falling therein, producing an interference signal band having a band width sufficient to include all filtered frequencies, separating out, by an electrical filtering operation, a signal having a frequency corresponding to the frequency of the previously filtered suspect signal, from said interference signal band, and utilizing said last filtered signal at the interference frequency in the wireless transmission of a jamming signal, the frequency of which corresponds to the frequency of the suspect transmission signal so detected. 」(5欄67行〜6欄14行) (訳:1.強力なジャミング伝送により、所定の周波数帯域内に入る周波数を有するワイヤレス通信をジャミングする方法において、電気的フィルタリング操作によって所定の周波数帯域に入る被疑伝送信号を所定の周波数帯域から分離し、全ての濾過された周波数を充分に含むような帯域幅を有する干渉信号帯域を生成し、電気的フィルタリング操作によって、前記干渉信号帯域から、前回に濾過された被疑信号の周波数に対応する周波数を有する信号を分離し、さらに、ジャミング信号のワイヤレス伝送内の干渉周波数での前記最終濾過信号、検出された被疑伝送信号の周波数に対応する周波数を利用するステップから成ることを特徴とする方法。) そして、上記(A)によれば、この引用例に記載された発明は、敵対側から無線信号として送信されるメッセージ伝送を阻害するために、強力なジャミング送信機を使用して、その無線通信を妨害する方法と装置に関するものである。 また、上記(B)、(C)によれば、敵対側から送信される無線信号は約10分の1秒の持続時間での短時間メッセージを伝送するものであって、その周波数チャンネルは短時間で切換えられるものである。この無線信号をジャミングするために、検出受信機とジャミング送信機を備え、検出受信機で、検出とジャミングの交互の間隔で、ジャミングを受ける電波の範囲を検出して、被疑送信機から放射される周波数を各々自動的に捕捉して記憶し、同時に検出動作を中断して、記憶した周波数を含むジャミングチャンネル用にジャミング周波数を生成し、その後で自動的にジャミング送信機をジャミング周波数スペクトルの次の継続するジャミング間隔増幅伝送が有効になるように切換え、ジャミング間隔の最後にジャミング送信機を遮断し、次の検出動作のために無線検出受信機を再接続することによって、強力なジャミング送信機を使用するジャミングが可能になるようにした無線通信のジャミング方法が開示されている。 さらに、上記(D),(E)によれば、敵対側の伝送の開始後、極めて短い時間遅れで、例えば、100分の1秒でジャミング伝送の自動切換えを効果的に行うことができること、敵対側無線伝送と対応する周波数分析、さらにはジャミング送信機の切換えは完全に自動的に行われ、その切り換え時間も短時間で実施できるようになること、検出とジャミング時間間隔を数ミリ秒で利用することによって、検出とジャミング間隔が連続的に交互に短時間シーケンスで行われること、及び、例えば、ジャミング動作は約0.5ミリ秒の検出間隔の後で開始し、検出動作によって敵対側通信が検出されたジャミングチャンネルは、この時に、約8.5ミリ秒の伝送時間中に放射され、その後、約1ミリ秒の短時間休止が効果的に行われ、ここで、同じ目標から放出される反射信号の受信を回避するように検出受信機は遮断された状態になり、この休止の後で、約10ミリ秒の合計時間のサイクルが継続することが開示されている。 したがって、上記(A)〜(J)の記載によれば、引用例には、図1とともに、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 「敵対側から送信される無線信号であって、約10分の1秒の持続時間での短時間メッセージを放射するために、周波数チャンネルが極短時間で切換えられる無線信号をジャミングするために、検出受信機とジャミング送信機を備え、検出受信機で、検出とジャミングの交互の間隔で、ジャミングを受ける電波の範囲を検出して、被疑送信機から放射される周波数を各々自動的に捕捉して記憶し、同時に検出動作を中断して、記憶した周波数を含むジャミングチャンネル用にジャミング周波数を生成し、その後で自動的にジャミング送信機をジャミング周波数スペクトルの次の継続するジャミング間隔増幅伝送が有効になるように切換え、ジャミング間隔の最後にジャミング送信機を遮断し、次の検出動作のために無線検出受信機を再接続する無線通信のジャミング方法であって、周波数の検出とジャミング間隔が連続的に交互に短時間シーケンスで行われ、ジャミング動作は約0.5ミリ秒の検出間隔の後で開始し、検出動作によって敵対側通信が検出されたジャミングチャンネルは、約8.5ミリ秒の伝送時間中に放射され、その後、約1ミリ秒の短時間休止が効果的に行われ、ここで、同じ目標から放出される反射信号の受信を回避するように検出受信機は遮断された状態になり、この休止の後で、約10ミリ秒の合計時間のサイクルが継続するよう構成されたことを特徴とする無線通信のジャミング方法。」 (3)対比 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、両者は、共に周波数が短時間で変化する無線通信を妨害するものであり、引用発明における、「検出受信機における敵対側の被疑送信機から放射される周波数を各々自動的に捕捉して記憶するための受信動作」は、本願発明における、「電波発生源から到来する電波の周波数を検出するための受信の動作」に対応しており、また、引用発明における、「記憶した周波数を含むジャミングチャンネル用にジャミング周波数を生成し、その後で自動的にジャミング送信機をジャミング周波数スペクトルの次の継続するジャミング間隔増幅伝送が有効になるように切換える動作」は、本願発明における「上記電波の周波数と同じ周波数の妨害電波を送信する妨害の動作」に対応している。 さらに、引用発明において、約10分の1秒(100ミリ秒)の持続時間での短時間メッセージを放射するために、周波数チャンネルが極短時間で切換えられる無線信号をジャミングするために、周波数の検出とジャミング間隔が連続的に交互に短時間シーケンス、約10ミリ秒の合計時間のサイクルで行われるということは、上記短時間メッセージが送信される周波数が持続される期間、つまり約10分の1秒(100ミリ秒)内に、周波数の検出動作とジャミング動作が連続的に交互に複数回行われることが開示されていると認められ、この事項は、本願発明における「周波数を検出するための受信の動作と、妨害電波を送信する妨害の動作とを交互に行うこととし、上記周波数ホッピング電波の1ホップの間隔中に上記受信及び妨害の動作を少なくとも2回行うようにした」ことに対応している。 したがって両者は、 <一致点> 「電波発生源から到来する周波数が短時間に切り換えられる電波の周波数を検出するための受信の動作と、上記周波数が短時間に切り換えられる電波の周波数と同じ周波数の妨害電波を送信する妨害の動作とを交互に行うこととし、上記周波数が短時間に切り換えられる電波の1周波数にある時間間隔中に上記受信及び妨害の動作を少なくとも2回行うようにしたことを特徴とする通信妨害方法。」 の点で一致しており、以下の点で相違している。 <相違点> 妨害を与える対象となるところの周波数が短時間で切り換えられる電波が、本願発明においては、「周波数ホッピング電波」であるのに対して、引用発明においては、単に周波数が短時間で切り換えられる電波であって、「周波数ホッピング電波」であることは開示されていない点。 (4)判断 上記、相違点について検討すると、 無線電波を使用する通信において、周波数が短時間で切り換えられる電波信号として「周波数ホッピング電波」が使用されることは、特開平8-111654号公報、特開平6-37735号公報、特開平2-309834号公報、及び、山内雪路著,「スペクトラム拡散通信 次世代高性能通信に向けて」,東京電機大学出版局,1994年11月20日,p.77-89、に開示されているように周知であり、かつ引用発明は、敵対側から送信される電波の周波数チャンネルが短時間にどのように切り換えられるのかが不明な電波に対応できるように、ジャミング対象となる無線電波の周波数チャネルを検出する受信の動作を行うものであるので、「周波数ホッピング電波」にも対応可能であることは明らかであり、引用発明を「周波数ホッピング電波」に適用することは当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 なお、仮に、上記平成15年11月14日付の手続補正が却下されなかったとしても、補正後の請求項1に記載されている「受信周波数検出回路」、「妨害波設定器」、「マルチトーン発振器」、及び「送受切換制御部」に対応する装置構成を備えた通信妨害装置が上記引用例には開示されていると認められるので、この通信妨害装置を周知の周波数ホッピング電波の妨害に適用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 よって、補正後の請求項1に係る発明についても、上記引用発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-27 |
結審通知日 | 2006-03-28 |
審決日 | 2006-04-10 |
出願番号 | 特願平10-84623 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04K)
P 1 8・ 572- Z (H04K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中里 裕正 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
堀江 義隆 長島 孝志 |
発明の名称 | 通信妨害装置 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 中鶴 一隆 |
代理人 | 高橋 省吾 |