• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1137121
審判番号 不服2004-319  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2006-05-25 
事件の表示 平成 7年特許願第 57555号「エレベータの遠隔監視システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月 1日出願公開、特開平 8-256382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年3月16日の出願であって、平成15年11月27日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成16年1月5日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、同年2月2日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成16年2月2日付けの手続補正について
[結論]
平成16年2月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「各地に散在するエレベータそれぞれに接続され、エレベータの動作状態を検出し、異常発生時に異常情報を出力する遠隔保守端末と、前記遠隔保守端末と公衆回線を通じて接続され、前記各地のエレベータの動作状態を集中監視する遠隔監視装置とを備えて成るエレベータの遠隔監視システムにおいて、
前記エレベータに設置され、エレベータ制御部から入力される故障情報が、未応答のかご呼びが残っている状態での故障情報、或いは、荷重検出器によって荷重検出している状態での故障情報の場合、閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段と、
前記遠隔保守端末に設置され、閉込め事故検出手段が閉込め事故を検出したときに前記遠隔監視装置に自動発呼する自動発呼手段と、
エレベータかご内に設置され、前記自動発呼手段が前記遠隔監視装置と公衆回線を通じて接続されたときに通話可能となるエレベータ側通話手段と、
前記遠隔監視装置に設置されたセンター側通話手段と、
前記遠隔監視装置に設置され、前記自動発呼手段から自動発呼の着信を検出して前記センター側通話手段を前記公衆回線を介して前記エレベータ側通話手段と接続する回線接続切換手段とを備えて成るエレベータの遠隔監視システム。」という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである(アンダーラインは補正箇所を示す。)。

2.補正の適否
(2-1)新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段」について、「故障情報が予め想定される閉込め発生状態に該当するとき」とあるのを「故障情報が、未応答のかご呼びが残っている状態での故障情報、或いは、荷重検出器によって荷重検出している状態での故障情報の場合」と限定することにより、特許請求の範囲を限縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合する。

(2-2)独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の限縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2-1)補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(2-2-2)引用例
A.原査定の拒絶理由に引用された本願の出願の日前である平成6年5月24日に頒布された特開平6-144730号公報(以下、「引用例1」という。)には、「エレベータ遠隔監視装置」の発明に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「【請求項1】 エレベータの遠隔監視情報の伝送制御を司る制御装置と、
エレベータかご内に設置されたインターホンと、
前記インターホンのマイクの入力音量の程度を検出する入力音量検出手段と、
前記入力音量検出手段の検出した音量を基準音量と比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づき、入力音量が所定量以上である場合に、前記インターホンを遠隔監視センタに回線接続して直接通話を可能とするインターホン接続手段とを備えて成るエレベータ遠隔監視装置。」(第2頁第1欄【特許請求の範囲】)、
b)「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、電話回線を利用して、各地域に点在するエレベータを遠隔監視センターと結び、エレベータ状態情報の伝送や通話を行なうエレベータ遠隔監視装置に関する。」(第2頁第1欄)、
c)「【0026】次に、上記構成のエレベータ遠隔監視装置の動作について説明する。
【0027】エレベータ故障によって閉じ込め事故が発生すれば、エレベータ状態監視信号15に故障情報が乗せられてきてCPU14に入力される。また閉じ込められた乗客がかご20内のインターホン通話要求ボタンスイッチ22を操作すれば、その通話要求信号23がCPU14に入力される。
【0028】そこで、CPU14は、この故障信号とインターホン通話要求信号とのAND条件で、回線接続回路12に回線接続指令16を与え、同時に、インターホン接続回路13にインターホン接続指令17を与える。こうして、回線接続回路12は公衆電話回線11と接続し、あらかじめ登録されている保守会社の電話番号を自動ダイヤルし、インターホン21を通してかご内の乗客が保守会社の監視員と通話できるようにするのである。
【0029】また、この実施例のエレベータ遠隔監視装置では、故障信号15が入力されても、インターホン通話要求信号23が入力されなければ、インターホンの接続はなされないのであるが、かご内の乗客が大声を出す場合には、その音量を検出してインターホン21を自動的に保守会社と接続して、乗客が保守会社の監視員と通話できるようになるが、その動作について説明すると、次の通りである。
【0030】すなわち、かご20内に閉じ込められた乗客が、びっくりして大声を出したり、あるいは子供であれば泣きわめいたりするが、その音声をインターホン21のマイクがひろって音声信号30を入力音量検出回路31に入力する。
【0031】入力音量検出回路31では、可変抵抗VRによって基準電圧信号32が比較回路33に与えられているが、音声信号30もダイオードD1によって半波整流され、抵抗R1、コンデンサC、抵抗R2によって直流電圧に変換され、比較回路33に入力される。
【0032】そこで、比較回路33では基準電圧信号32とこの入力音量電圧信号とを比較し、入力音量電圧信号が基準電圧信号32よりも大きければ、かご20内に乗客が閉じ込められているものとの判定信号34をCPU14に与える。
【0033】そこで、CPU14は、インターホン通話要求信号23が入力された場合と同様にして、この判定信号34とエレベータ故障信号15とのAND条件で、回線接続回路12に回線接続指令16を与え、同時に、インターホン接続回路13にインターホン接続指令17を与える。こうして、回線接続回路12は公衆電話回線11と接続し、あらかじめ登録されている保守会社の電話番号を自動ダイヤルし、インターホン21を通してかご内の乗客が保守会社の監視員と通話できるようにするのである。」(第4頁第5〜6欄)。

上記引用例1の記載、及びこの分野の技術常識によれば、引用例1には、
「各地域に点在するエレベータそれぞれに接続され、エレベータの動作状態を検出し、異常発生時に異常情報を出力するエレベータ遠隔監視装置と、前記エレベータ遠隔監視装置と公衆電話回線11を通じて接続され、前記各地域のエレベータの動作状態を集中監視する遠隔監視センタとを備えて成るエレベータ遠隔監視システムにおいて、
前記エレベータに接続され、エレベータ故障信号15とエレベータかご20内で発生する音の音量が所定基準以上の時に出力される判定信号34とのAND条件で閉込め事故発生と判定するCPU14と、
前記エレベータ遠隔監視装置に設置され、前記CPU14が閉込め事故を検出したときに前記遠隔監視センタに自動発呼する回線接続回路12と、
エレベータかご20内に設置され、前記回線接続回路12が前記遠隔監視センタと公衆電話回線11を通じて接続されたときに通話可能とされる前記かご20に設置されたインターホン21と、
前記遠隔監視センタに設置された通話手段と、
を備えて成るエレベータ遠隔監視システム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

B.また、本願の出願の日前である平成6年6月3日に頒布された特開平6-156906号公報(以下、「引用例2」という。)には、「エレベータ遠隔監視装置」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、分散して存在する複数のエレベータシステムと遠隔の保守センタに設置されている遠隔保守装置とを公衆回線を介して接続し、各エレベータシステムの運行履歴や故障状態を遠隔監視するエレベータ遠隔監視装置に関する。」(第2頁第1欄)、
b)「【0024】また、例えば、閉じ込め故障が発生した場合には、図4のフローチャートに示す手順によって閉じ込め故障発生を遠隔保守装置に自動発報し、救助を依頼する。すなわち、エレベータ制御装置2の接点群2aからの信号によって、エレベータの停止状態が検出されると(ステップS11)、エレベータが所定の停止階のレベルにかご床のレベルが一致しているかどうかをレベル検出接点の信号から検出し(ステップS12)、レベルが一致していなければ、階間の途中でエレベータが停止しているものと判断し、さらにかご内に人がいるかどうかを荷重検出接点の信号から判断し(ステップS13)、荷重検出がなされていれば、階間の途中でエレベータかごが停止し、かご内に人が閉じ込められている閉じ込め故障が発生したものと判断し(ステップS14)、CPU3cは運行状態記録部3dに閉じ込め故障の発生とその日時情報を記録し、同時に、ネットワーク制御部3gにより公衆回線6を通して遠隔保守装置5にオートダイヤルして閉じ込め故障発生を通報する(ステップS15)。」(第4頁第5欄)。

(2-2-3)引用発明との対比
そこで、補正後の発明と引用発明とを対比する。

a)引用発明の「各地域に点在するエレベータ」、「エレベータ遠隔監視装置」、「公衆電話回線11」、「遠隔監視センタ」は、それぞれ補正後の発明の「各地に散在するエレベータ」、「遠隔保守端末」、「公衆回線」、「遠隔監視装置」に相当することが明らかである。
b)補正後の発明の「閉込め事故検出手段」と引用発明の「CPU14」とは、「所定の条件の場合、閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段」という点で共通する。
c)引用発明の「自動発呼する回線接続回路12」、「かご20に設置されたインターホン21」、「通話手段」は、それぞれ補正後の発明の「自動発呼する自動発呼手段」、「エレベータ側通話手段」、「センタ側通話手段」に相当することが明らかである。
したがつて、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

[一致点]
各地に散在するエレベータそれぞれに接続され、エレベータの動作状態を検出し、異常発生時に異常情報を出力する遠隔保守端末と、前記遠隔保守端末と公衆回線を通じて接続され、前記各地のエレベータの動作状態を集中監視する遠隔監視装置とを備えて成るエレベータの遠隔監視システムにおいて、
所定の条件の場合、閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段と、
前記遠隔保守端末に設置され、閉込め事故検出手段が閉込め事故を検出したときに前記遠隔監視装置に自動発呼する自動発呼手段と、
エレベータかご内に設置され、前記自動発呼手段が前記遠隔監視装置と公衆回線を通じて接続されたときに通話可能となるエレベータ側通話手段と、
前記遠隔監視装置に設置されたセンター側通話手段と、
を備えてなるエレベータの遠隔監視システム。

[相違点1]
補正後の発明の「閉込め事故検出手段」における「閉込め事故発生と判定する所定の条件」は、「エレベータ制御部から入力される故障情報が、未応答のかご呼びが残っている状態での故障情報、或いは、荷重検出器によって荷重検出している状態での故障情報の場合」であるのに対して、引用発明の条件は「エレベータ故障信号15とエレベータかご20内で発生する音の音量が所定基準以上の時出力される判定信号34とのAND条件」である点。

[相違点2]
補正後の発明は、「前記遠隔監視装置に設置され、前記自動発呼手段から自動発呼の着信を検出して前記センター側通話手段を前記公衆回線を介して前記エレベータ側通話手段と接続する回線接続切換手段」を備えるのに対して、引用発明は「自動発呼後に公衆回線を介してセンター側通話手段とエレベータ側通話手段とが通話可能にされる」ものの、「回線接続切換手段」について明示がない点。

(2-2-4)判断
上記相違点1、相違点2について以下のとおり検討する。

[相違点1について]
エレベータの遠隔監視システムにおいて、「荷重検出接点からの信号により荷重検出(補正後の発明の「荷重検出によって荷重検出」に相当。)している状態での階間の途中でエレベータが停止しているとの判断(補正後の発明の「故障情報」に相当。)の場合、閉込め事故発生と判定する」手法は、上記引用例2に開示されている(上記(2-2-2)引用例のB.の記載参照)。
そして、引用発明と引用例2に記載されたものは、「エレベータ遠隔監視装置」として一致するとともに、当該引用例2に開示された閉込め判定手法を引用発明の閉込め判定手法に置き換えることを阻害する特段の事由は存在しない。
したがって、補正後の発明の「閉込め判定条件」における「、或いは」以前の構成である「エレベータ制御部から入力される故障情報が、未応答のかご呼びが残っている状態での故障情報」について検討するまでもなく、引用例2に記載された閉込め手法を引用発明のものに置き換え、補正後の発明のように構成することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
また、「閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段」が「エレベータに設置される(補正後の発明)」か、又は「エレベータに接続される(引用発明)」かの点は、補正後の発明の願書に添付された図1において「閉込め事故判定部は遠隔保守端末3に含まれている」点も考慮すれば、実質的な差異とはいえない。

[相違点2について]
エレベータ遠隔監視システムにおいて、監視センター側に、自動発呼の着信を検出して、センター側通話手段とエレベータ側通話手段とを接続する回線接続切換手段を設けることは周知である(例えば、特開平2-264400号公報の2頁左下欄10行ないし18行、特開平2-268399号公報の3頁左上欄6行ないし18行、参照)。
そして引用発明と当該周知のものとは「エレベータ遠隔監視システム」として共通するから、当該周知の点を明示しない引用発明において「遠隔監視装置に設置され、自動発呼手段から自動発呼の着信を検出して前記センター側通話手段を公衆回線を介してエレベータ側通話手段と接続する回線接続切換手段」を備えるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明、引用例2に記載されたもの、及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。
よって、本件補正後の発明は、引用例1、2に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、出願の際独立して特許を受けることができない。

(2-2-5)むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定に基き却下すべきものである。

第3.本願発明について
(3-1)本願発明
平成16年2月2日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年4月21日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「各地に散在するエレベータそれぞれに接続され、エレベータの動作状態を検出し、異常発生時に異常情報を出力する遠隔保守端末と、前記遠隔保守端末と公衆回線を通じて接続され、前記各地のエレベータの動作状態を集中監視する遠隔監視装置とを備えて成るエレベータの遠隔監視システムにおいて、
前記エレベータに設置され、エレベータ制御部から入力される故障情報が予め想定される閉込め発生状態に該当するとき、閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段と、
前記遠隔保守端末に設置され、閉込め事故検出手段が閉込め事故を検出したときに前記遠隔監視装置に自動発呼する自動発呼手段と、
エレベータかご内に設置され、前記自動発呼手段が前記遠隔監視装置と公衆回線を通じて接続されたときに通話可能となるエレベータ側通話手段と、
前記遠隔監視装置に設置されたセンター側通話手段と、
前記遠隔監視装置に設置され、前記自動発呼手段から自動発呼の着信を検出して前記センター側通話手段を前記公衆回線を介して前記エレベータ側通話手段と接続する回線接続切換手段とを備えて成るエレベータの遠隔監視システム。」

(3-2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、及びその記載事項(引用発明)は、前記「2.(2-2-2)引用例」に記載したとおりである。

(3-3)引用発明との対比
本願発明と引用発明とを以下のとおり対比する。

a)引用発明の「各地域に点在するエレベータ」、「エレベータ遠隔監視装置」、「公衆電話回線11」、「遠隔監視センタ」は、それぞれ本願発明の「各地に散在するエレベータ」、「遠隔保守端末」、「公衆回線」、「遠隔監視装置」に相当することが明らかである。
b)本願発明の「閉込め事故検出手段」と引用発明の「CPU14」とは、「所定の閉込め発生状態に該当するとき、閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段」という点で共通する。
c)引用発明の「自動発呼する回線接続回路12」、「かご20に設置されたインターホン21」、「通話手段」は、それぞれ本願発明の「自動発呼する自動発呼手段」、「エレベータ側通話手段」、「センタ側通話手段」に相当することが明らかである。
したがつて、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

[一致点]
各地に散在するエレベータそれぞれに接続され、エレベータの動作状態を検出し、異常発生時に異常情報を出力する遠隔保守端末と、前記遠隔保守端末と公衆回線を通じて接続され、前記各地のエレベータの動作状態を集中監視する遠隔監視装置とを備えて成るエレベータの遠隔監視システムにおいて、
所定の閉込め発生状態に該当するとき、閉込め事故発生と判定する閉込め事故検出手段と、
前記遠隔保守端末に設置され、閉込め事故検出手段が閉込め事故を検出したときに前記遠隔監視装置に自動発呼する自動発呼手段と、
エレベータかご内に設置され、前記自動発呼手段が前記遠隔監視装置と公衆回線を通じて接続されたときに通話可能となるエレベータ側通話手段と、
前記遠隔監視装置に設置されたセンター側通話手段と、
を備えて成るエレベータの遠隔監視システム。

[相違点1]
本願発明の「閉込め事故検出手段」における「閉込め事故発生と判定する所定の閉込め発生状態」は、「エレベータ制御部から入力される故障情報が予め想定される閉込め発生状態」であるのに対して、引用発明における所定の閉込め発生状態は「エレベータ故障信号15の発生とエレベータかご20内で所定基準以上の音の発生の双方が同時に発生する閉込め発生状態」である点、及び当該検出手段が本願発明ではエレベータに設置されるのに対して、引用発明ではエレベータに接続される点。

[相違点2]
本願発明は、「前記遠隔監視装置に設置され、前記自動発呼手段から自動発呼の着信を検出して前記センター側通話手段を前記公衆回線を介して前記エレベータ側通話手段と接続する回線接続切換手段」を備えるのに対して、引用発明は「自動発呼後に公衆回線を介してセンター側通話手段とエレベータ側通話手段とが通話可能になる」ものの、「回線接続切換手段」について明示がない点。

(3-4)判断
上記相違点1、相違点2について、以下のとおり検討する。

[相違点1について]
引用発明と本願発明は「エレベータの遠隔監視システム」として一致する点、引用発明における「エレベータ故障信号15」はエレベータを制御する手段から入力されることが自明である点を踏まえれば、引用発明における「エレベータ故障信号15の発生とエレベータかご20内で所定基準以上の音の発生の双方が同時に発生する閉込め発生状態」を上位概念化し、本願発明の「エレベータ制御部から入力される故障情報が予め想定される閉込め発生状態」(下線加筆)のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

[相違点2について]
上記(2-2-4)の[相違点2について]に述べたように、相違点2は、引用発明に周知のものを備えるように明示したものだから、当業者が容易になし得ることである。

上記相違点1、2についての判断に加え、本願発明の作用効果も、引用発明、及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

(3-5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-24 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-10 
出願番号 特願平7-57555
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 良平  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 宮下 誠
浜野 友茂
発明の名称 エレベータの遠隔監視システム  
代理人 三好 秀和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ