• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D04H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D04H
管理番号 1137160
審判番号 不服2002-15224  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-04 
確定日 2006-05-12 
事件の表示 平成9年特許願第509139号「手術用ガーゼ」拒絶査定不服審判事件〔平成9年2月27日国際公開、WO97/07273〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、1996年8月7日(優先権主張:1995年8月11日,日本国、及び1995年12月28日,日本国)を国際出願日とする出願であって、平成14年3月20日付け手続補正書により補正され、平成14年5月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年7月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年8月2日付け手続補正書により補正されたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月2日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載された事項で特定される次のとおりのものである。

「精錬した絹繊維を繊維長さ1〜10cmに切断して得られる絹短繊維のみをニードルパンチ法で絡合させて成る、目付が50〜200g/m2の手術用ガーゼ。」

【2】引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平7-189097号公報)及び引用文献3(特開平6-25956号公報)は、何れも本件出願の優先権主張の日前に頒布されたものであって、その記載事項は、以下のとおりである。
(2-1)引用文献1
(a)「直接肌を拭浄する拭浄品または直接肌に接する接肌品からなる肌当て用品であって、絹を原料とする不織布によって形成されていることを特徴とする肌当て用品。」(特許請求の範囲請求項1)
(b)「本発明で適用される絹の不織布は常法に従って製造される。その製造方法は、・・・(中略)・・・紡績用のカードで布状にしたあとニードルパンチでフェルト状にするニードルパンチ法、・・・(中略)・・・等が挙げられるが、製造方法については特に限定されるものではなく、どのような方法で製造されてもよい。」(段落【0019】)
(c)「因に、本実施例において使用されている絹の不織布の製造方法について以下説明する。まず、原料としては、養蚕工程で発生する選除繭等の副蚕糸を使用することができる。なお、通常の絹糸を原料にしてもよい。この原料を半練り若しくは七分練り程度に調節しつつアルカリ液で処理する予備精錬を行って真綿状の予備精錬品にする。この予備精錬品を2〜8cm四方に裁断し、裁断状態の精錬品から不純物を除去する。その後アルカリ液を用いて本練りを行う本精錬が実行され、絹のフイブロイン中のセリシンが略100%溶脱され、粘り気のない清浄な精錬品が得られる。」(段落【0020】)
(d)「このようにして得られた清浄な絹の精錬品を対象として、常法に従った開繊処理が施され、この開繊処理によって得られた開繊精錬品が、上記・・・(中略)・・・ニードルパンチ法によって不織布にされ、本発明の肌当て用品の原料として使用される。」(段落【0021】)
(e)「まず図1には、拭浄品Aとして医療用に適用されるガーゼ10が折り畳まれた状態を示している。このガーゼ10は、上記のようにして製造された絹の不織布を所定寸法の矩形状に裁断することのみによって得ることができる。このようなガーゼ10を用いて例えば怪我の傷口を拭浄すれば、絹の肌触りがソフトであり、しかも絹そのものに脱臭作用や殺菌作用が備わっているため、ガーゼ10を清潔に保つことができる。・・・」(段落【0024】)
(f)「以下、参考のために、本実施例において使用された不織布の、・・・(中略)・・・日本薬局方に基づいたガーゼ試験の試験結果を表2に示す。」(段落【0040】)
(2―2)引用文献3
(a)「三角真綿その他の生糸屑を原料とし、繊維長3.5cm〜5.0cmに裁断され、精練処理及び櫛梳開繊され、繊維方向を異ならせて目付25〜300g/m2の範囲に積層され、ニードリングにより不織布とされた絹繊維100%からなることを特徴とする絹繊維製不織布。」(特許請求の範囲請求項1)

【3】対比・判断
引用文献1には、上記(2-1)の(a)ないし(f)の記載事項を総合すると、「絹糸に対して予備精錬を行って真綿状の予備精錬品にし、上記予備精錬品を2〜8cm四方に裁断し、その後本精錬を実行し、セリシンを略100%溶脱し、得られた精錬品を対象として開繊処理を施し、得られた絹の開繊精錬品をニードルパンチにより不織布とし、得られた不織布を原料として製造されたガーゼ10であって、拭浄品として怪我の傷口を拭浄することができる医療用に適用されるガーゼ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「絹の開繊精錬品」は、その機能及び構成からみて、前者の「精錬した絹繊維」に相当する。
そして、後者のガーゼは、絹糸に対して予備精錬を行って真綿状の予備精錬品にし、上記予備精錬品を2〜8cm四方に裁断し、その後本精錬を実行し、セリシンを略100%溶脱し、得られた精錬品を対象として開繊処理を施し、得られた絹の開繊精錬品をニードルパンチにより不織布とし、得られた不織布を原料として製造されたものであるから、後者は、前者の「繊維長さ1〜10cmに切断して得られる絹短繊維のみをニードルパンチ法で絡合させて成る」構成に相当する構成を備えたものといえる。
したがって、前者と後者は、「精練した絹繊維を1〜10cmに切断して得られる絹短繊維のみをニードルパンチ法で絡合させて成るガーゼ。」である点で一致し、次の点で相違する。

【相違点1】:
ガーゼの目付に関して、本願発明では、「50〜200g/m2」であるのに対して、引用発明では、そのような目付のものであるか否か明らかでない点。
【相違点2】:
ガーゼの用途に関して、本願発明では、「手術用」であるのに対して、引用発明では、拭浄品として怪我の傷口を拭浄することができる医療用に適用されるものであるが、「手術用」のものであるか否か明らかでない点。

上記相違点について検討する。
相違点1について
引用文献3の上記(2-2)の(a)には、絹繊維製不織布において、「繊維長3.5cm〜5.0cm」の絹繊維を用い、「目付25〜300g/m2」であるものが記載されているように、相違点1に係る目付が50〜200g/m2の数値範囲を有する不織布は、周知の技術といえる。
また、本願明細書の記載事項及び図面の図示内容を参酌してみても、相違点1に係る数値範囲が、格別の臨界的意義を有するものとはいえない。
したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び上記周知の技術から当業者が適宜なし得たものといえる。
相違点2について
請求人は、平成14年8月2日付け手続補正書により補正された審判請求書において、「手術用として使用されるガーゼは、切開により露出した人体の内部組織に直接接触する可能性のあるものであり、皮膚を拭き取る、或いは皮膚の創傷部に当接する一般の医療用ガーゼとは、その要求性能が全く異なります。」と主張している。
ところが、本願明細書には、「手術用ガーゼと称されるものの中には、手術中に組織保護用として使われる患部ガーゼ、吸収や拭き取り用として使われる尺角ガーゼ(ワイパー)、及び、外科処置に使うガーゼ(ドレッシング)等がある。・・・(中略)・・・また、創部の侵出液の吸収或いは保護を目的とするドレッシングには、綿糸織布ガーゼが使用されている。」と記載されているように、「手術用ガーゼ」は、請求人の主張するような「人体の内部組織に直接接触する可能性のあるもの」ばかりでなく、尺角ガーゼ(ワイパー)、外科処置に使うガーゼ(ドレッシング)を含む手術に際して用いられるガーゼ一般を意味すると解することが相当である。
そして、引用発明の「拭浄品として怪我の傷口を拭浄することができる医療用に適用されるガーゼ」は、医療行為としての手術に使用できないとする根拠は見あたらず、少なくとも上記尺角ガーゼ(ワイパー)或いは外科処置に使うガーゼ(ドレッシング)として手術に際して用いることができるものと理解するのが相当であるから、引用発明の「拭浄品として怪我の傷口を拭浄することができる医療用に適用されるガーゼ」は、本願発明の「手術用ガーゼ」と実質的に相違するといえない。
なお、請求人が主張するように、手術用として使用されるガーゼは、切開により露出した人体の内部組織に直接接触する可能性のあるものとしても、従来、絹繊維が外科手術用縫合糸として用いられており、抗アレルギー性、柔軟性等の特性を有することは、当業者に十分に認識されていたこと、ガーゼの構成において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項の他に格別の相違はなく、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、少なくとも当業者が適宜なし得た程度のものである以上、引用発明の絹の不織布である医療用のガーゼを、切開により露出した人体の内部組織に直接接触する手術用のものとすることは、格別困難なこととはいえない。

また、本願発明の奏する作用効果も、引用発明並びに上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【4】むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用文献1に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-27 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-23 
出願番号 特願平9-509139
審決分類 P 1 8・ 575- Z (D04H)
P 1 8・ 121- Z (D04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 利直中田 とし子平井 裕彰  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 鴨野 研一
石井 克彦
発明の名称 手術用ガーゼ  
代理人 小林 良平  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ