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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42F
管理番号 1137174
審判番号 不服2003-16740  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-29 
確定日 2006-05-26 
事件の表示 平成6年特許願第241970号「ファイル検索装置用ファイルバインダ」拒絶査定不服審判事件〔平成8年3月19日出願公開、特開平8-72458〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成6年9月9日の出願であって、平成15年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月29日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月29日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年9月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容及び目的
本件補正前後の【請求項1】の記載を比較すると、本件補正は、補正前の【請求項1】の「検索ユニットの側面に形成された突起により弾性変形する収容胴」を「検索ユニットの上端、及び下端に設けられた表示手段、及び接点を露出させることができ、かつ側面に形成された突起により弾性変形する収容胴」と限定したものと認められ、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。

2.補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された次の通りのものと認める。
「【請求項1】 書類を保持するバインダ本体に、検索ユニットの上端、及び下端に設けられた表示手段、及び接点を露出させることができ、かつ側面に形成された突起により弾性変形する収容胴を固着してなるファイル検索装置用ファイルバインダ。」
(以下、「補正発明」という。)

3.補正発明の独立特許要件の判断
以下、補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかを検討する。

3-1.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和59年5月10日に頒布された「実願昭57-164655号(実開昭59-068979号)のマイクロフィルム 」(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図示とともに記載されている。

ア.「本願は、一対の合成樹脂板によつて見出カードの挿入部をも一体に形成して成る書類ファイルを提供するもので、以下図面とともに本願の実施例を詳述すると、熱溶着可能な横長方形状の透明乃至半透明の合成樹脂板の長手方向中央を2つ折りにするとともに、この2つ折り部(1)から少許離れた左右位置を、2つ折り部(1)に対し等間隔で平行して夫々山折りし、この山折り部(2),(2)から夫々少許離れた位置をさらに谷折りし、この谷折り部(3),(3)によつて折り返された各片を前記山折り部(2),(2)の位置まで融着(4),(4)することにより、折込部(5),(5)を構成して、この折込部(5),(5)と合成樹脂板との間に見出カードaの挿入部(6)を形成して、1対の覆板(7)、(7)と、内面に挿入部(6)を有した背部(8)とを一体に構成しかつ覆板(7)、(7)の下縁を融着(9)せしめて成るものである。」(2頁5〜20頁)

イ.「以上の様に本願によれば、一枚の合成樹脂板を折曲し、かつ一部を融着することにより、1対の覆片と、見出カードの挿入部を備えた背部とを一体に構成したので、製造が簡単で量産性に秀れ、しかも折込部の開披によつて見出カードの挿入も容易に行えるなどの利点を有する。」(3頁8〜13行)

以上の記載からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一対の合成樹脂板によつて見出カードの挿入部をも一体に形成して成る、書類を保持する書類ファイルであって、折込部を開披することで見出カードを収容可能な挿入部を備えた書類ファイル。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成2年1月11日に頒布された「特開平2-8105号公報」(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図示とともに記載されている。

ウ.「本発明はファイル等被検索物の個別検索装置に関するもので、更に詳しく説明すると、例えば多数のファイルから必要とするファイルのみを取り出す時に使用されるファイル等被検索物の個別検索装置に関するものである。」(2頁右上欄4〜8行)

エ.「ファイルの検索装置に関しては本件出願人が特願昭62-255493において出願したものがあり、これはコンピュータで必要なファイルの検索を行い、そのファイルに対応したIDナンバーを発信すると、複数の棚に保管された大量のファイルの中からそのIDナンバーに合致するファイルの発光ダイオードだけが光り、これにより必要なファイルの取り出しを即座に行うことができるものである。」(2頁右上欄10〜18行)

オ.「第1図(イ)乃至(ハ)において1は、所望のファイルを検索するために使用されるコンピュータ本体で、該コンピュータ本体1には3個の各ファイル収納棚10の上部に載置された中継機5に対して固有のデジタル信号を発信し、また中継機5からのデジタル信号を受信するための発信受信兼用機6が接続されている。
2及び23は夫々前記中継機5に接続され、且つファイル収納棚10の棚板12の溝部16にファイル11の間隔毎に取りつけられた多数の赤外線発信器(赤外線発光ダイオード)及び赤外線受信機で、該溝部16には赤外線発信機2及び赤外線受信機23を保護するための透明なプラスチック板17が嵌められている。
3は各ファイル11の側面部19に内装された赤外線受信機3であり、また4及び22は夫々前記赤外線発信機2及び赤外線受信機23との距離を5センチ以内にすべくファイル11の側面底部18に取りつけられた該赤外線受信機3の受光部及び赤外線発信機である。
8は、ファイル11の側面部19に取付けられ、点灯により外部にファイル11の存在位置を知らせることを可能にした表示部である発光ダイオードである。」(4頁右上12行〜左下欄15行)

以上の記載からみて、引用例2には、次の技術的事項(以下、「引用例2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「被検索物が収納される棚に被検索物の間隔毎に発信機2及び受信機23の組を設け、被検索物であるファイル11には受信機3と発光ダイオード8を内装しておき、コンピュータ本体1が発信するデジタル信号に応じて検索対象であるファイル11に設けられた発光ダイオード8が点灯することにより、検索対象であるファイル11の存在を知らせることのできるファイル等の被検索物の個別検索装置。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成2年7月19日に頒布された「特開平2-185497号公報」(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が図示とともに記載されている。

カ.「本発明は多くの書類(カルテ、文献等)又は物体の中から検索すべき書類又は物体を迅速に検索する検索装置に関するものである。」(1頁右欄14〜16行)

キ.「従来この種の検索装置としては、第8図に示す構成のものがあった。即ち、表示用の発光ダイオード101、入力符号検出回路102、特定符号を判別し表示用発光ダイオード101を点灯させる符号判別回路103及び電源として電池104等を具備する構成であり、これらの素子や回路は1枚のナンバー札に備えられており、該ナンバー札を検索すべき書類又は物体に取り付けておく。上記構成の検索装置において、可視光線、赤外線、電磁波等を適当に変調してある符号信号を前記入力符号検出回路102で検知し、符号判別回路103で特定信号のみを識別して、表示用の発光ダイオード101を点灯させることにより、検索すべき書類又は物体を検出する。なお、前記特定符号は半導体メモリを利用し、事前に書き込み装置により記憶させておく。」(1頁右下欄18行〜2頁左上欄13行)

以上の記載からみて、引用例3には、次の技術的事項(以下、「引用例3記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「可視光線、赤外線、電磁波等を適当に変調してある符号信号を検知するナンバー札を検索すべき書類又は物体に取り付けておき、当該符号信号をナンバー札に備えられた入力符号検出回路102で検知し、特定符号を判別し表示用発光ダイオード101を点灯させる符号判別回路102により前記表示用発光ダイオード101を点灯させることにより、検索すべき書類又は物体を迅速に検索する検索装置。」

3-2.補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明を対比すると、引用発明の「書類ファイル」は書類を保持するためのものであることは明らかで、補正発明の「ファイルバインダ」に相当する。
また、引用発明は、書類ファイル自体が合成樹脂板から成るものであって、折込部を開披することで見出カードを納入可能であるとされることからして、当該引用発明の「見出カードの挿入部」が、弾性変形可能な収納部を構成していることが把握できる。
よって、当該引用発明の「見出カードの挿入部」は、弾性変形する収容部である点に限ってみれば、補正発明における弾性変形する収容胴に相当する。

してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「書類を保持するバインダ本体に、弾性変形する収容部を備えたファイルバインダ。」
<相違点1>
弾性変形する収容部の構成に関し、
補正発明は、「書類を保持するバインダ本体に、弾性変形する収容胴を固着」していると特定されているのに対し、
引用発明でかかる特定を有しない点。

<相違点2>
補正発明においては、「ファイル検索装置用」ファイルバインダであり、収容部が検索ユニットを収容するものであって、
「検索ユニットの上端、及び下端に設けられた表示手段、及び接点を露出させることができ、かつ側面に形成された突起により」収容胴を「弾性変形する」と特定されているのに対して、
引用発明は、「ファイル検索装置用」でなく、収容部が検索ユニットを収容するものではない点。

3-3.相違点の判断及び補正発明の進歩性の判断
(1) 相違点1について
書類を保持するバインダにおいて、見出し等を収容する収容部をバインダ本体を構成する板材を折りまげて構成するもの、バインダ本体とは別に用意した収容部をバインダ本体に固着するもの、いずれも従来から周知のものである。
前者については、引用例1に加えて、実公昭38-26221号公報が存在しており、後者については、実願昭46-78638号(実開昭48-34614号)のマイクロフィルム、実公昭37-12931号公報、実公昭26-4306号公報等が存在する。
そして、これらバインダにおいて、見出し等を収容する収容部を弾性を有する材料から構成するか、堅い材料で構成するかについても、用途の要請に応じて適宜選択されていることであって、ことさら弾性を有する材料をもって収容部を構成することが格別なものとはいえない。
してみれば、補正発明のごとくになすことは、当業者であれば適宜選択し得た事項である。

(2) 相違点2について
前記に示した引用例2或いは引用例3にみられるように、棚に収容した書類或いは物を検索するに際し、被検索物が特定の検索信号を受信した場合に発光する発光部材(いずれも発光ダイオード)を取り付けておき、特定の検索信号を受信して、当該検索信号に対応して検索対象である被検索物に設けられた前記発光部材が発光することで被検索物を発見することを可能とする検索装置は周知である。

ここで、補正発明における「検索ユニット」なるものの技術的意味を検討するに、一般に「ユニット家具」、「ユニットバス」なる表現がされるように、「ユニット」とはひとまとまりとされた、或いはひとまとまりと認識し得るところの単位、構成単位を表す用語である。
よって、補正発明における「検索ユニット」は、検索信号を受信するための接点(必要に応じて、それに加えて電源供給のための接点)と、検索信号を受信した際に、被検索物である場合に、これを表示する表示手段とを少なくとも備えており、これらの複数の部材が、ひとまとまりに扱い得るユニット構成をなしているものと解される。
しかし、前記引用例3にみられるナンバー札は、検索信号に相当する入力符号を受信する入力符号検出回路102、当該入力符号の特定符号を判別して被検索物である際に表示用発光ダイオード101を点灯させる符号判別回路102、及び表示用発光ダイオード101が一体にされたものとして構成されており(第1図参照)、補正発明にいう「検索ユニット」と同様のユニット構成とされているといえる。
してみるに、前記周知の検索装置において、被検索物に装着する便宜を図るべく「検索ユニット」構成を採用することは、当業者であれば、必要に応じて適宜行い得る程度のことである。
また、当該周知の検索装置が使用される用途としてファイル検索はきわめて一般的であって、前記引用発明のファイルバインダに検索ユニットを備えることで、「ファイル検索装置用」とすることは、当業者であれば容易に想起し得る程度のことである。
そして、ファイルバインダにおいては、元来、ファイル特定のために見出しを収納するための収容部を設けているのであり、検索ユニットを備えるに際して、当該収容部を流用することに特段の困難性があるものとはいえない。
さらに、補正発明においては、
「検索ユニットの上端、及び下端に設けられた表示手段、及び接点を露出させることができ、かつ側面に形成された突起により」収容胴を「弾性変形する」という特定がなされているが、前記相違点1において提示した周知文献である実公昭37-12931号公報、実公昭38-26221号公報或いは実公昭26-4306号公報等にみられるように、見出しを挿入自在にするにあたって、挿入可能な開口部が必然的に設けられており、外部からの視認性を担保する上で、発光ダイオードを適宜の位置に露出させるように構成することは、既に、前記引用例2記載の技術事項或いは引用例3記載の技術事項に示した被検索物に備えられた発光ダイオードにおいて備えている構成であって、表示手段を露出させることは必要に応じて適宜なし得た程度のことである。
他方、補正発明における検索ユニットに設けられた前記接点と検索システムとの関連については、本願明細書の段落【0012】において、「図3は、前述の検索ユニット20の一実施例を示すもので、下端に接点23を備え、接点23を介して外部の給電線からの電力と、内蔵電池とにより作動して、やはり接点23からの検索データとの一致を判定し、一致した場合に上端の発光ダイオード等の表示手段21を作動させる信号処理手段を薄型のケースに収容して構成され、」と説明がされており、前記接点を介して外部からの給電がされると共に、検索ユニットに送られる検索データも該接点を介して伝えられるものとして説明されている。
しかしながら、検索ユニットに内装した信号処理手段に外部からの給電を行うのであれば、そのための接点を露出させる必要があること、また、検索データを電気信号として検索ユニットに伝えるのであれば、やはり接点を必要とすることは技術常識に属することである。
そして、検索ユニットを被検索物に取り付けるに際して、前記の電気信号の伝達或いは給電が良好に行われるためには、それら接点をファイルバインダを収容する棚等側に設けられた接点と確実に接続できるように構成されるべきであることも、技術常識に属することである。
してみれば、補正発明におけるごとく、「検索ユニットの上端、及び下端に設けられた表示手段、及び接点を露出させることができ」るように構成することは、検索ユニットをファイルバインダに収容するに際して当業者であれば当然に想起し得たことといわざるを得ない。

補正発明における残る特定である「検索ユニットの・・・側面に形成された突起により」収容胴を「弾性変形する」について検討する。
この特定により得られる作用効果については前出段落【0012】から【0013】にかけて「図3は、前述の検索ユニット20の一実施例を示すもので、・・・ケースの側面には検索ユニット収容胴5を若干変形させることができる突起22、22が形成されている。
この実施例において、図4に示したように検索ユニット20の一端を収容胴5の開口5aに挿入して押し込むと、突起22が収容胴の側面を押し広げながら内部に移動する。このようにして表示手段21が収容胴5の上部から、また接点23が収容胴5の下部から露出する位置まで押し込んで、放置すると、収容胴5は、突起22、22に当接する領域を弾性変形して凹部を形成し、検索ユニット20がずり落ちるのを防止する。」と記載されている。
よって、当該突起は、検索ユニットを収容胴5中の所望位置に保持することを期待される構成である。
しかしながら、ファイルバインダにおいて、収容部に収容した見出しが脱出してしまうことを防止するべく、収納部内面に突出部を設けることは、実願平4-22337号(実開平5-74881号)のマイクロフィルムや、前出の実公昭26-4306号公報にみられるように慣用されていることであり、実願昭61-111580号(実開昭63-18283号)のマイクロフィルムにみられるように、見出しの脱落を防止して保持するための止め部材においても、突起を形成することが行われている等からして、検索ユニットの脱落を防止するための手段として、検索ユニットの側面に突起を形成する程度のことは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得た程度のことといえる。

なお、請求人は、
「引用文献2乃至3には、被検索対象物に検索ユニットを取り付け、外部からの検索信号に応答する検索システムが記載されているが、検索ユニットを取り付けるための具体的構成は記載されていない。
一方、引用文献1に記載された発明は、バインダ本体に設けられているものは、「書類検索用の見出しの挿入部」であり、また挿入した見出しの落下防止は、折り返しによる挟み込みであるから、検索ユニットのように見出しよりも厚手の部材を収容することを示唆するものではない。
本願発明は、バインダに他の部材を収容する袋ものを付帯させただけでははなく、収容した部材の抜け出しを簡単な構成で防止する構成、つまり収容胴の形状を可及的に一定に維持しつつ、被収容物の突起で弾性変形させて抜け出しを防止するという、引用文献1から示唆されない構成を備えたものである。
原審は、固着手段として、突起等による弾性変形を用いることは常套手段であると認定したが、いかなる手段を想定されているのか、請求人には推測ができない。すくなくとも、ファイルの分野で被収容物に形成された突起により弾性変形させて固着することが周知であるか、否かについては、出願人は不知である。」と主張する。

しかしながら、たとえ、引用例2乃至3に検索ユニットを取り付けるための具体的構成が記載されていないとしても、当業者であれば、補正発明のような構成を想起することは容易になし得るものである。
また、請求人は、引用例1に記載された発明には、「書類検索用の見出しの挿入部」があるのみで、検索ユニットのような見出しよりも厚手の部材を収容することが示唆されていないとも主張するが、検索ユニットと見出しとを対比してどの程度の厚みを有するものであるか、検索ユニットを収容する収容胴が如何なる形状・構成であるかが、補正発明において明確に特定されているわけではないことからして、請求人の主張を採用することはできない。
さらに、請求人は、原審において、固着手段として、突起などによる弾性変形を用いることが常套手段であると認定したことに対して、いかなる手段を想定するか推測できないとも主張するが、前記で検討したように、ファイルバインダにおいて、突起を用いて見出し保持を行うことは、常套手段といえるのであるから、この請求人の主張も採用することはできない。

(3) 補正発明の進歩性の判断
相違点1乃至相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を寄せ集めて採用したことにより格別の作用効果が生じるとも認めることができない。
したがって、補正発明は、引用発明及び引用例2記載の技術事項、引用例3記載の技術事項並びに周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.まとめ
以上のとおり、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[補正の却下の決定のむすび]
本件補正前の請求項1を限定的に減縮した補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法126条第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての当審の判断

1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月14日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 書類を保持するバインダ本体に、検索ユニットの側面に形成された突起により弾性変形する収容胴を固着してなるファイル検索装置用ファイルバインダ。」

2.本願発明と引用発明との対比
本願発明は、前記補正発明から、検索ユニットに係る「検索ユニットの上端、及び下端に設けられた表示手段、及び接点を露出させることができ、」なる特定を除いたものである。
してみれば、本願発明と引用発明を対比すると、補正発明との対比におけると同様の一致点を有すると共に、前記相違点1に加えて、以下の相違点3を有する。

<一致点>
「書類を保持するバインダ本体に、弾性変形する収容部を備えたファイルバインダ。」
<相違点1>
弾性変形する収容部の構成に関し、
補正発明は、「書類を保持するバインダ本体に、弾性変形する収容胴を固着」されていると特定されているのに対し、
引用発明は、かかる特定を有しない点。

<相違点3>
補正発明においては、「ファイル検索装置用」ファイルバインダであり、収容部が検索ユニットを収容するものであって、
「検索ユニットの側面に形成された突起により」収容胴を「弾性変形する」と特定されているのに対して、
引用発明は、「ファイル検索装置用」でなく、収容部が検索ユニットを収容するものではない点。

3.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1) 相違点1について
「第2[理由]3-3.(1)」で述べたとおり、相違点1に係る本願発明の構成は格別のものではない。

(2) 相違点3について
当該相違点3は、「第2[理由]3-3.(1)」で検討した相違点2より、検索ユニットに係る「検索ユニットの上端、及び下端に設けられた表示手段、及び接点を露出させることができ、」なる特定を除いたものである。
ここで、「第2[理由]3-3.(2)」で検討したとおり、引用例2或いは引用例3にみられるように、棚に収容した書類或いは物を検索するに際し、被検索物に特定の検索信号を受信した場合に発光する「受信ユニット」を取り付けておき、特定の検索信号を発信して、当該検索信号に対応して検索対象である被検索物に設けられた前記「受信ユニット」が発光することで被検索物を発見することを可能とする検索装置は周知である。
そして、同じく「第2[理由]3-3.(2)」で検討したとおり、当該検索装置においては、予め被検索物に検索信号に応答する部材及び表示する部材が取り付けられており、これらの部材をユニット化することは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得た程度のことであり、本願発明にいう「検索ユニット」を構成することにより格別の作用効果が得られるものとはいえず、また、ファイルバインダにおいては、元来、ファイル特定のために見出しを収納するための収容部を設けているのであり、検索ユニットを備えるに際して、当該収容部を流用することに特段の困難性があるものとはいえない。
してみるに、当該周知の検索装置において使用すべく、前記引用発明のファイルバインダに検索ユニットを備えて、「ファイル検索装置用」とすることは、当業者であれば容易に想起し得る程度のことである。
したがって、相違点3に係る本願発明の構成となすことは、当業者であれば容易になし得た程度のことである。

(3) 本願発明の進歩性の判断
相違点1及び相違点3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を寄せ集めて採用したことにより格別の作用効果が生じるとも認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の技術事項、引用例3記載の技術事項並びに周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-27 
結審通知日 2006-03-29 
審決日 2006-04-12 
出願番号 特願平6-241970
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 藤本 義仁
藤井 勲
発明の名称 ファイル検索装置用ファイルバインダ  
代理人 木村 勝彦  

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