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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1137259
審判番号 不服2003-2996  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-25 
確定日 2006-06-01 
事件の表示 特願2000-363749「紙容器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 7日出願公開、特開2001-213426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年11月30日に出願した特願平5-300398号の一部を平成12年8月28日に特願2000-257165号としてさらにその一部を平成12年11月29日に特願2000-363749号として新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成15年3月13日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「少なくとも最外層、紙基材、アルミ箔、及び、最内層を、この順序で積層した製箱用積層シ-トを、ヒ-トシ-ルにより貼合して製箱した液体用の紙容器からなり、更に、上記の最外層は、高圧法低密度ポリエチレンによる押出しコ-ティング層から構成され、また、上記の紙基材とアルミ箔、および、上記のアルミ箔と最内層とは、エチレン-メタクリル酸共重合体による溶融押出樹脂層を介して積層して構成され、更に、上記の最内層は、シングルサイト触媒を用いて重合した、分子量分布が狭く且つ低分子量物の含有量が非常に少ないエチレン-αオレフィン共重合体で形成されている低温ヒ-トシ-ル性に優れているエチレン-αオレフィン共重合体層から構成されることを特徴とする紙容器。」

2.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である国際公開第93/3093号パンフレット(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、この国際公開パンフレットの内容の翻訳は特表平6-509528号公報に記載されているものと認められるので、以下特表平6-509528号公報の対応する記載を翻訳文として引用し、引用箇所として引用文献1の引用箇所と特表平6-509528号公報の対応する箇所の両者を括弧内に記載する。
記載事項1:「1.第一及び第二の製品部分の少なくとも一方を軟化させるに十分な温度における上記第一及び第二の製品部分の圧着によって形成されたシール領域を有する製品であって、少なくとも上記第一部分はエチレン共重合体又はエチレン共重合体ブレンドを含んでなるものであり、上記ブレンド又は個々の共重合体が50%以上の組成分布幅指数(CDBI)を有するように選択されたものであって、その結果上記部分が93℃未満のシール開始温度での接触でシールできることを特徴とする製品。
2.請求項1記載の製品であって、少なくとも前記第一部分がフィルムを含んでなり、任意には前記第二部分が前記共重合体又は共重合体ブレンド以外の重合体、金属箔、紙又は織物からなる同様のフィルム又は層を含んでなることを特徴とする製品。
6.先行請求項のいずれか1項記載の製品であって、前記ブレンド又は各共重合体の分子量分布が2.5以下であることを特徴とする製品。
7.請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の製品にして、前記ブレンド又は各共重合体が0.875〜0.96kg/cm3、好ましくは0.89〜0.93g/cm3の密度、及び10000〜1000000,好ましくは4000〜200000の重量平均分子量を有することを特徴とする製品」(請求の範囲第1、2、6及び7項。特表平6-509528号公報の請求の範囲1、2、6及び7項)
記載事項2:「技術分野 本発明は、そのヒートシール部分が共重合体又はそれらのブレンドでできているようなヒートシール製品に関する。さらに具体的には、本発明は組成分布が狭くかつ分子量分布の狭い共重合体からなる共重合体組成物並びに共重合体ブレンド組成物に関する。本発明の共重合体、特に共重合体ブレンドはヒートシール性に優れ、その他の物理的特性にも優れている。本発明の共重合体並びにそれらのブレンドは、フィルム類、バッグ類、パウチ類、タブ類、トレー類、蓋、包装材料、容器、その他のヒートシール材料の使われる製品の生産に使用することができる。」(1頁24行〜2頁2行。特表平6-509528号公報の3頁右上欄6〜17行)
記載事項3:「先行技術では、共重合体は、比較的広い組成分布をもつことが知られている。共重合体の組成分布が比較的広いのは、個々の重合体分子に取り込まれるα-オレフィンコモノマー分子の数が異なるためである。一般に、比較的低分子量の重合体分子は比較的多量のα-オレフィンコモノマーを含有しており、高分子量の重合体分子のα-オレフィンコモノマー含有率は比較的低い。コモノマー含有率の低い重合体分子は比較的結晶性が高く、融解温度も高いが、コモノマー含有率の高い重合体分子は非結晶性に富み、低温で融解する。融解温度の高すぎる成分の存在は、多くの用途、例えばヒートシールを要するような用途には不利である。一方、低温融解性成分中の多量のコモノマーの存在は、しばしば大量の抽出分、すなわちヘキサンやペンタンなどの溶剤に溶解するような低分子量重合体、をもたらし、食品と接触するような用途への使用が制限される。
従来、LLDPEのようなポリエチレンも幅広い分子量分布を有しており、多くの面で不都合があった。例えば、以前から知られていたLLDPE樹脂は配向に付される比較的高分子量の分子を含んでいるため、二次加工プロセスの横断方向に対して縦方向に異方性を呈する結果となる。高分子量の分子はコモノマー含有率が低く、十分なヒートシール性にも乏しい。一方、比較的低分子量の分子を含有する樹脂には常にコモノマーが濃縮されており、ヒートシール性に優れているものの、高いブロッキング性及び粘着性を示す傾向がある。」(5頁9行〜6頁12行。特表平6-509528号公報の4頁右上欄2行〜左下欄2行)
記載事項4:「発明の詳細な説明 本発明の線状エチレン共重合体はエチレン単独重合体であっても、過半量のエチレンと少量のコモノマーの高次共重合体であってもよい。・・・エチレンと共重合して上記エチレン共重合体を得るのに適したコモノマーには、エチレンと共重合することができてブレンド成分に望まれるコモノマー分布を与えるようなモノマーが含まれる。好ましい種類のコモノマーは炭素原子数3ないし12のα-オレフィンであり、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデカンなどである。」(13頁14行〜14頁8行。特表平6-509528号公報の6頁右上欄15行〜左下欄18行)
記載事項5:「本発明の線状ポリエチレンブレンド成分は,CD及びMWD共に狭いエチレン共重合体を与えることの知られているメタロセンタイプの触媒系を用いて製造することができる。」(26頁1〜5行。特表平6-509528号公報の10頁左上欄5〜8行)
記載事項6:「本発明のブレンドは、望ましい成分を望ましい割合で、慣用のブレンド方法及び装置・・・を用いてブレンドすることによって製造される。・・・かかるブレンドは、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、顔料、充填剤、スリップ剤、ブロック剤などの、本技術分野で公知の各種の慣用添加剤と配合してもよい。好ましくは、このブレンドは、LLDPE樹脂のブレンドによって改善しようと望む性質に対してかなりの悪影響を与えるようなブレンド成分を含まない。」(32頁24行〜33頁5行。特表平6-509528号公報の12頁左上欄21行〜右上欄9行)
記載事項7:「本発明のフィルム類は単層フィルムでも多層フィルムでもよい。多層フィルムは、エチレン共重合体並びにそれらのブレンドから製造された1又はそれ以上の層で構成されていてもよい。かかるフィルムは、例えばポリエチレンやポリエステルやEVOHなどの別の重合体、金属箔、紙などのような他の材料でできた1又はそれ以上の追加層を有していてもよい。多層フィルムは本技術分野で公知の方法で製造できる。すべての層が重合体である場合には、これらの重合体を共押出用フィードブロック及びダイアセンブリに通して共押出を行って、組成の異なる2又はそれ以上の密着層を持つフィルムを得ることもできる。多層フィルムは、重合体をダイから吐出しながらその熱溶融重合体を基材に接触させるような押出被覆法によっても得ることができる。・・・押出被覆法は、エチレン共重合体ヒートシール層を施すべき基材が天然又は合成の繊維又は糸から織られているか編まれている場合(例えば織物)、或いは基材がガラスやセラミックや紙や金属のような非ポリマー材料である場合に、特に有用である。」(35頁4〜29行。特表平6-509528号公報の12頁右下欄18行〜13頁左上欄14行)記載事項8:「図13に、容器本体132及びシール部材134(これらは密封チャンバー136を画定する)をもつシール容器の断面の概略を示す。・・・シール部材は本発明のエチレン共重合体並びにそれらのブレンドだけからできていてもよいし、シール部材は多層フィルムであってもよい。シール部材が2以上の材料でできている場合、本発明のエチレン共重合体又はそれらのブレンドはヒートシールを形成すべき表面にだけ用いればよい。例えば、シール部材を図14に示すように作ることもできる。ここで、図14は二層フィルムの断面図である。シール部材144は基材層143とヒートシール層145で構成されていてもよい。」(39頁9行〜40頁3行、Fig-13〜14。特表平6-509528号公報の14頁左上欄18行〜右上欄19行、Fig-13〜14)
記載事項9:「100℃以下のような低いシール温度で運転される商業ラインに本発明の材料を使用することができる。」(54頁17〜19行。特表平6-509528号公報の3頁右上欄18頁18行〜20行)
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である実願昭63-120745号(実開平2-43228号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
記載事項10:「従来より、清酒、スープ等の内容物を収納する・・・液体紙容器は、その保護性を考慮して容器を形成する素材中にアルミ箔が用いられている。例えば、外側より、ポリエチレン(以下PEという)/紙/アルミ箔/PEの積層構成である。」(1頁14〜19行)

3.対比
引用文献1には、積層シートをヒートシールにより貼合して製箱した紙容器であって(記載事項1及び2)、最内層はシングルサイト触媒すなわちメタロセン触媒を用いて重合したエチレン-αオレフィン共重合体で形成されること(記載事項3〜5、記載事項8)が記載されており、さらに、ポリエチレンやポリエステルやEVOHなどの別の重合体、金属箔、紙などのような他の材料でできた1又はそれ以上の追加層を有していてもよい(記載事項7)ことが記載されている。
また、引用文献1には、分子量分布が狭い点(記載事項2)が記載されており、かつ記載事項1の請求項7には、本願明細書[0027]欄に記載された分子量と同一の重量平均分子量を有するものが記載されていることから見て、本願発明の「分子量分布が狭く且つ低分子量物の含有量が非常に少ないエチレン-αオレフィン共重合体」が記載されていると認められ、さらに低温ヒートシール性に優れている点(記載事項9)も記載されている。
以上の点を考慮して、本願発明と引用文献1に記載されたものとを対比すると、両者は、「少なくとも最外層、紙基材、アルミ箔、及び、最内層を積層した製箱用積層シ-トを、ヒ-トシ-ルにより貼合して製箱した紙容器からなり、上記の最内層は、シングルサイト触媒を用いて重合した、分子量分布が狭く且つ低分子量物の含有量が非常に少ないエチレン-αオレフィン共重合体で形成されている低温ヒ-トシ-ル性に優れているエチレン-αオレフィン共重合体層から構成されることを特徴とする紙容器。」である点で一致し、
本願発明では、少なくとも最外層、紙基材、アルミ箔、及び、最内層を、この順序で積層したのに対し、引用文献1では、別の重合体、紙基材やアルミ箔と積層させることは記載されているが、その層の順序について記載がない点(相違点1)
本願発明では、紙容器が液体用であるのに対し、引用文献1では、容器に収納するものについて特段の記載はない点(相違点2)
本願発明では、最外層は、高圧法低密度ポリエチレンによる押出しコ-ティング層から構成され、また、上記の紙基材とアルミ箔、および、上記のアルミ箔と最内層とは、エチレン-メタクリル酸共重合体による溶融押出樹脂層を介して積層されているのに対し、引用文献1には、これらについて記載がない点(相違点3)

4.当審の判断
相違点1について
引用文献1に記載された発明は、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン-αオレフィン共重合体層と他の材料とを積層することについては記載されているが、その層順についての記載はない。
しかし、液体を収納する紙容器において、外側より、ポリエチレンすなわち最外層/紙/アルミ箔/最内層であるポリエチレンという積層構成とすることは、引用文献2の記載事項10にもあるように公知の事項であって、本願発明のような積層の順序とすることは当業者が容易になし得ることにすぎない。
相違点2について
本願発明では、液体用の紙容器であるが、引用文献2の記載事項10にもあるように紙容器に酒等の液体を収納することは周知の事項であるから、紙容器の用途として液体用という限定を付することに何ら困難性は認められない。
相違点3について
本願発明では、最外層、紙基材及びアルミ箔に関し、最外層は高圧法低密度ポリエチレンによる押出しコ-ティング層から構成される点、紙基材とアルミ箔、および、上記のアルミ箔と最内層とは、エチレン-メタクリル酸共重合体による溶融押出樹脂層を介して積層されている点を限定している。
最外層を高圧法低密度ポリエチレンによる押出しコ-ティング層から構成する点については、ポリエチレンを押出被覆法で形成することは記載事項7にも記載されているように周知の手法であるし、ポリエチレンとして高圧法低密度ポリエチレンは周知のものであってこの材料を用いることに何ら困難性は認められない。
また、紙基材とアルミ箔、および、アルミ箔と最内層とは、エチレン-メタクリル酸共重合体による溶融押出樹脂層を介して積層されている点については、液体用紙容器の各層を接着するための材料として、エチレン-メタクリル酸共重合体の溶融押出樹脂層は、特開平3-111248号公報、特開平4-339755号公報及び特開平4-152135号公報にも記載されているように容器の分野においては周知の事項であって、このような限定を付することは当業者が容易になし得ることにすぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1から2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-29 
結審通知日 2006-04-04 
審決日 2006-04-19 
出願番号 特願2000-363749(P2000-363749)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 溝渕 良一  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 石田 宏之
豊永 茂弘
発明の名称 紙容器  
代理人 金山 聡  

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