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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1137261
審判番号 不服2003-6166  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2006-06-01 
事件の表示 平成 6年特許願第109520号「カメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月 8日出願公開、特開平 7-319034〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願の手続の経緯(概要)は以下のとおりである。
1)特許出願:平成6年5月24日付け
2)拒絶査定:平成15年3月3日付け
3)審判請求:同年4月10日付け
4)当審における拒絶理由通知:平成17年2月22日付け
5)上記「4)」に対する意見書及び手続補正書提出:同年5月2日付け
6)当審における拒絶理由通知:同年7月4日付け
7)上記「6)」に対する意見書提出:同年9月5日付け

(2)本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年5月2日付けの手続補正書(以下、『本件補正』という。)により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。
『撮影レンズを通過した光像を撮像する撮像センサと、上記撮像センサで撮像された画像をメモリに記憶させる記憶手段とを備えたカメラであって、
上記カメラ内に装填され、上記カメラによって撮影された画像を記録する媒体に設けられた情報記録領域に対して色補正に関するデータの書き込みと読み出しとを行うデータ録再手段と、
画像を表示するモニターと、
上記メモリに記憶された画像に、上記色補正に関するデータに応じて画像処理を施して上記モニターに表示させる第1の表示手段と、
上記色補正に関するデータを変更するための操作部材と、
上記操作部材の操作に応じて、上記画像に画像処理を施して上記モニターに表示させる第2の表示手段と、
更新指示が行われると、上記操作した色補正に関するデータにより上記データ録再手段によって上記情報記録領域における色補正に関するデータを更新させる更新制御手段とを備えたことを特徴とするカメラ。』(以下、『本願発明』という。)

2.当審からの拒絶理由通知(平成17年7月4日付け)
平成17年7月4日付けで当審から通知した拒絶の理由は、要するに、
『平成17年5月2日付でした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、平成6年改正前特許法第17条第2項の規定する要件を満たしていない。』
として、本願発明において『情報記録領域』が『上記カメラ内に装填され、上記カメラによって撮影された画像を記録する媒体に設けられた』とされている点について、『カメラ内に装填され、カメラによって撮影された画像を記録する媒体』という記載は、該『媒体』に感光媒体(フィルム)のみならずいわゆるデジタルスチル撮影のメディア類も含むものであるところ、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、『当初明細書』という。)では、『情報記録領域』は感光媒体(フィルム)に設けられるものと記載され、さらに『情報記録領域』に書き込み、読み出し、更新がなされるデータに関しても、『デイライトタイプのフィルム』や『タングステンタイプのフィルム』といった『フィルムのタイプ』に応じての補正という、感光媒体(フィルム)のみに当てはまる説明(当初明細書【0125】段落乃至【0126】段落)が記載されており、感光媒体(フィルム)以外の媒体にも『情報記録領域』を設けることについての記載又は示唆はなく、かつ自明な事項でもないので、本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内でしたものではないというものである。

3.平成17年7月4日付け拒絶理由通知に対する請求人の主張
請求人は、上記当審からの平成17年7月4日付け拒絶理由通知に対して、平成17年9月5日付け意見書において、以下のように主張している。
『本願発明が、感光により得られた被写体画像を記録すると共に、その画像についての色の状態をすぐに、すなわちカメラ自体で確認し、必要であれば色補正を行い、画像と共にその色補正情報も記録しておいて、後のプリントのステージで使用可能とすることを発明の趣旨とするものであることは、既に主張してきたとおりであります。
これに関連して、本願の原明細書の実施例を参酌するに、実施例中には、先の意見書で述べたとおり、「40は感光フィルムに静止画を記録するフィルム撮影モード、ICカード51に静止画を記録する電子スチル撮影モード…の撮影モードの組合せを変更する撮影モード変更スイッチである。(段落番号0013)」、「ここで、上記「再生」のサブルーチンについて、図38を用いて説明する。先ず、銀塩スチルか電子スチルの撮影モードであるかどうかが判別され、(段落番号0107)」との記載があり、これらによれば、本願の実施例には、感光フィルムとICカードとがそれぞれ内部に、装填可能、とされており、感光フィルムに撮影した静止画を記録する撮影モードと、ICカードに撮影した静止画を記憶する電子スチル撮影モードとが実行しうることが記載されています。
ただし、審判官殿のご指摘のとおり、明細書の実施例中には、感光フィルムへの撮影モードにおいては「色補正に関するデータ」をフィルムの情報記録領域に記録することが明示されている一方、電子スチル撮影モードが選択された場合に「色補正に関するデータ」をどのように記録するかに関しては明示されていません。
ところで、本願の実施例にいう「感光フィルム」とは画像を記録するものであり、「感光」は記録するに至る手段であるから、原明細書の請求項1に記載の「感光媒体」とは「感光を経て記録する媒体」といえるものであって、すなわち「感光記録媒体」と表現するのがその実体を的確に表しているといえることは明らかであります。
一方、電子スチル撮影モードにおいては、感光はCCDである撮像素子、すなわち感光素子で行われ、記録はICカード等の記録媒体に行われることも、また当業者に周知であります。すなわち、感光フィルム撮影モードでは、感光と記録とが同一のもので行われ、電子スチル撮影モードでは感光と記録とが別々に行われているにすぎないものです。
そうすると、前述した発明の趣旨を勘案すれば、感光フィルムが実施例として詳細に記載されていたとしても、その実体は「感光」にあるのではなく、「記録」することにあるのであって、本願発明は、この「記録する」という特徴を利用して行われている発明であるから、感光を経て記録を行う他の媒体を除外しなければならない理由はなく、実際、明細書中で除外を明示しているものでもありません。
そして、感光を経て記録を行う媒体として、前述した感光フィルムや、CCDという感光素子を経て電子的に記録するものが含まれることは常套手段といえるものであり、さらに情報記録領域として感光フィルムにあってはその一部を利用し、同様に、電子的に記録するものでは、その一部の記憶領域を利用することも、当業者をして自明な技術常識であることは明らかであります。
この後者の点に関し、審判官殿は、電子的な記録媒体に色補正情報のための情報記録領域を設けることまでは自明とはいえないとご判断されておられます。
しかしながら、感光を経て記録を行う媒体が感光フィルムの場合にその一部を利用するとの記載があれば、この画像を記録した感光フィルムが後のプリントステージに供されるのであるから、かかる記載をもとに、当業者が、(実施例中に示唆のある)電子的な媒体の場合に、その一部領域、つまり記憶領域を利用することは、電子的な媒体が感光フィルムの場合と全く同様に後のプリントステージに供されることを考慮すれば、まさに記載されているも同然であると確信します。』

4.当審の判断
本願発明において『情報記録領域』が『上記カメラ内に装填され、上記カメラによって撮影された画像を記録する媒体に設けられた』とされている点について、当初明細書に記載した事項の範囲内のものであるか検討する。

当初明細書には、上記『情報記録領域』が設けられる媒体に関して、以下の記載がある。
記載事項1:『【特許請求の範囲】【請求項1】撮影レンズを通過した光像であって、ある撮影条件の下で感光媒体に感光される光像を撮像する撮像手段と、上記撮像手段で撮像された画像を記憶する記憶手段と、上記感光媒体に設けられた情報記録領域に対して上記撮影条件に関するデータの書き込みと読み出しとを行うデータ録再手段と、モニターと、上記記憶手段に記憶された画像に、上記データ録再手段より読み出したデータに応じて画像処理を施して上記モニターに表示する第1の表示手段と、上記撮影条件に関連するデータの入力操作が可能なデータ入力手段と、上記データ入力手段よりデータが入力されると、この入力データに応じて、上記記憶手段からモニターに表示されている画像に画像処理を施して上記モニターに表示する第2の表示手段と、更新指示手段と、上記更新指示手段が操作されると、上記データ入力手段から入力されたデータを上記データ録再手段により上記情報記録領域に更新する更新制御手段とを備えてなるカメラ。』
記載事項2:『【0001】【産業上の利用分野】本発明は、被写体の撮影時に設定された撮影条件がフィルム等の感光媒体の情報記録領域に記録され、この記録データに基づいて撮影画像の現像が行われるカメラに係り、特に撮影条件を変更の際の画像確認に好適なカメラに関する。
【0002】【従来の技術】フィルムの一部に磁気記録媒体を塗布した帯状の情報記録領域を設け、各コマへの撮影毎にそのコマに対応する情報記録領域にその撮影に関する情報、例えば撮影モード、プリント枚数等のデータを書き込ようにしたカメラにおいて、カメラ内にデータ表示手段を設け、上記書き込まれたデータを表示させ、必要に応じてこれらのデータを変更可能にし、かつ変更後のデータを情報記録領域に更新させるカメラが提案されている・・・。
【0003】【発明が解決しようとする課題】上記従来の撮影に関する情報を更新可能にしたカメラでは・・・変更後の再生画像がどのようになるのかを確認することなしに、・・・変更操作を行っていた。したがって、変更によって却って意図したものとは異なる写真として焼き付けされるなど、・・・実用面で十分ではなかった。』
記載事項3:『【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、撮影レンズを通過した光像であって、ある撮影条件の下で感光媒体に感光される光像を撮像する撮像手段と、上記撮像手段で撮像された画像を記憶する記憶手段と、上記感光媒体に設けられた情報記録領域に対して上記撮影条件に関するデータの書き込みと読み出しとを行うデータ録再手段と、モニターと、上記記憶手段に記憶された画像に、上記データ録再手段より読み出したデータに応じて画像処理を施して上記モニターに表示する第1の表示手段と、上記撮影条件に関連するデータの入力操作が可能なデータ入力手段と、上記データ入力手段よりデータが入力されると、この入力データに応じて、上記記憶手段からモニターに表示されている画像に画像処理を施して上記モニターに表示する第2の表示手段と、更新指示手段と、上記更新指示手段が操作されると、上記データ入力手段から入力されたデータを上記データ録再手段により上記情報記録領域に更新する更新制御手段とを備えたものである。
【0006】【作用】本発明によれば、撮影レンズを通過した光像は、撮影時において人為的あるいは自動的に設定された撮影条件の下で感光媒体に感光され、一方、この光像は撮像手段で撮像されて記憶手段に記憶される。上記感光媒体には情報記録領域が設けられており、この情報記録領域に上記撮影条件に関するデータがデータ録再手段により書き込みまれる。モニターには、第1の表示手段によって、上記記憶手段に記憶された画像であって、上記データ録再手段から読み出されたデータに応じた画像処理が施された画像が表示される。撮影条件に関するデータとしては、例えばアスペクト比、露出値及び色温度の他、撮影条件として設定可能な各種の要素が考えられる。』
記載事項4:『【0016】・・・各コマの下には、それと対応する磁気記録部453(斜線部)が設けられている。磁気記録部453には、撮影条件に関するデータ(アスペクトモード,焼き度合(露出値(シャッタスピード及び絞り値)),色温度情報)及び必要に応じてその他のデータが記録される。・・・
【0018】・・・フィルム45の各コマ452毎に上記撮影に関するデータを磁気記録部453に記録する。』
記載事項5:『【0115】・・・銀塩スチル撮影モードであれば、フィルム45の1コマ分の巻上げが開始され(#562)、このとき必要な情報がフィルム45の磁気記録部453に・・・所定のタイミングで書き込まれる(#564)。・・・
【0116】・・・銀塩フィルムに対するアスペクトデータである、Pモード,Hモード,Lモードのうちの選択されているモードが記録される(#580)。次いで、色温度情報の記録、更に焼き度合の記録がそれぞれ行われて(#582,#584)、リターンする。・・・
【0118】次に、「プレビュー」のサブルーチンを、図45,46を用いて説明する。・・・所定のコマの画像の表示中であれば、この表示画像に対して、「露出補正(PV)プレビュー」、「色補正」、「アスペクト比変更」の各サブルーチンが実行される(#592,#594,#596)。・・・』
記載事項6:『【0171】【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、データ入力手段が操作されて撮影条件に関連するデータが入力されると、この入力されたデータに応じて、記憶手段からモニターに出力されている表示中の画像に画像処理を施して上記モニターに表示するとともに、更新指示手段が操作されると、データ入力手段から入力されたデータをデータ録再手段により感光媒体に設けられた情報記録領域に書き換える構成としたので、撮影条件に関連するデータの変更に伴う変更後の再生画像を確認でき、これによりデータ変更内容の適否の確実な判断が可能かつ容易となる。しかも、この変更後のデータを感光媒体の情報記録領域に更新可能にしたので、撮影情報の変更に際し、常に意図する写真を得ることができる。』
記載事項7:『【0125】・・・色補正のための操作が行われたときの制御の説明を行う。この色補正は、以下に説明するように、装填されるフィルムのタイプに応じた補正を加えるものである。
【0126】写真撮影の際の光源には種々のものが存在する。・・・日中の自然光は分光的にはあまり偏りは見られないが、タングステン光では赤色領域に偏った特性が見られる。・・・一方、カラーフィルムはB(青),G(緑),R(赤)の3色の内、各1色ずつに感度を持つ3つの感光層を有しており、このB/G/Rの比で全ての色を作り出している。・・・デイライトタイプのフィルムはタングステンタイプのフィルムに比してRの光に対する感度が高いため、R成分の多いタングステン光で撮影した場合は赤味掛かった写真になってしまう。・・・このようなフィルムによる見えの違いをモニター47上で補正することにより仕上がり具合を事前に確認しうるようにすることは必要である。』

上記記載事項1乃至7について検討するに、記載事項1乃至6においては、『情報記録領域』が設けられる媒体として、感光媒体(フィルム)のことだけが記載されている。さらに記載事項7においては、その『情報記録領域』に書き込み、読み出し、更新がなされるデータに関しても、『デイライトタイプのフィルム』や『タングステンタイプのフィルム』といった『フィルムのタイプ』に応じての色補正という、感光媒体(フィルム)にのみ当てはまる説明が記載されている。
このように、当初明細書の上記記載では、感光媒体(フィルム)以外の媒体に『情報記録領域』を設ける旨の開示がない。また、当初明細書の上記以外の部分を参照しても、そのような開示はない。

なおここで、当初明細書には、『カメラ本体20内のフレームメモリに記憶された静止画を電気的に記録する、電気的メモリとしてのICカード51が装填可能』(明細書【0011段落】)、及び『40は・・・ICカード51に静止画を記録する電子スチル撮影モード・・・を変更する撮影モード変更スイッチである。』明細書【0013段落】)等の、カメラが、銀塩スチル撮影モード及びそのための感光媒体(フィルム)だけではなく、電子スチル撮影モードを有しておりそのための電子的媒体も装填される旨の記載はある。しかし、これらの記載においても、カメラが、電子スチル撮影モードを有しそのための電子的媒体が装填されるという以上のこと、すなわち、『情報記録領域』を電子スチル撮影モードの電子的媒体に設けることに関しては何も述べていない。

これに対し、本件補正により本願発明の構成とされた『上記カメラ内に装填され、上記カメラによって撮影された画像を記録する媒体に設けられた情報記録領域』との構成は、該『媒体』に感光媒体(フィルム)のみではなく、電子的な媒体、すなわち電子スチル撮影の媒体類も含む技術思想から成る発明をも包含するものである。そして、当初明細書においては、『情報記録領域』についてそれが設けられる媒体が感光媒体(フィルム)との構成は開示されているものの、上記の技術思想から成る発明は開示されていないことは、上述のとおりである。

以上からすれば、本件補正により本願発明の構成とされた『上記カメラ内に装填され、上記カメラによって撮影された画像を記録する媒体に設けられた情報記録領域』との構成は、明らかに上記の当初明細書に記載されていない技術思想の発明を包含するものであり、この構成が当初明細書に記載されたものではないことは明らかである。

ここで、平成17年9月5日付け意見書において請求人は、『・・・明細書の実施例中には、感光フィルムへの撮影モードにおいては「色補正に関するデータ」をフィルムの情報記録領域に記録することが明示されている一方、電子スチル撮影モードが選択された場合に「色補正に関するデータ」をどのように記録するかに関しては明示されていません。』と、当初明細書には、『情報記録領域』を感光媒体(フィルム)以外の媒体、すなわち電子スチル撮影モード時の媒体に設ける旨の記載がないという点は認めつつも、
『・・・感光フィルムが実施例として詳細に記載されていたとしても、その実体は「感光」にあるのではなく、「記録」することにあるのであって、本願発明は、この「記録する」という特徴を利用して行われている発明であるから、感光を経て記録を行う他の媒体を除外しなければならない理由はなく、実際、明細書中で除外を明示しているものでもありません。
そして、感光を経て記録を行う媒体として、前述した感光フィルムや、CCDという感光素子を経て電子的に記録するものが含まれることは常套手段といえるものであり、さらに情報記録領域として感光フィルムにあってはその一部を利用し、同様に、電子的に記録するものでは、その一部の記憶領域を利用することも、当業者をして自明な技術常識であることは明らかであります。
この後者の点に関し、審判官殿は、電子的な記録媒体に色補正情報のための情報記録領域を設けることまでは自明とはいえないとご判断されておられます。
しかしながら、感光を経て記録を行う媒体がフィルムの場合にその一部を利用するとの記載があれば、この画像を記録したフィルムが後のプリントステージに供されるのであるから、かかる記載をもとに、当業者が、(実施例中に示唆のある)電子的な媒体の場合に、その一部領域、つまり記憶領域を利用することは、電子的な媒体がフィルムの場合と全く同様に後のプリントステージに供されることを考慮すれば、まさに記載されているも同然であると確信します。』と主張している。
しかし、上記主張は採用できない。すなわち、要するに上記主張は、フィルムも電子的な媒体も、ともに、画像を記録して後にプリントステージに供されるものであることを考慮すれば、当初明細書にフィルムに関しての記載しかなくても、電子的な媒体についても『記載されているも同然である』というものである。しかし、フィルムと電子的な媒体とは機構的に別個のものであり、『情報記録領域』を設けることについても別々の機構となるところ、一方について『情報記録領域』を設ける旨の記載があったとき、他方についても『情報記録領域』を設けることが『記載されているも同然である』と成り得る理由はない。別の言い方をすれば、電子的な媒体に『情報記録領域』を設けるという技術的思想が開示されていたならば、その細部についての具体的記載がなくても、フィルムについての記載をもとに当業者が技術常識で補うことは可能だったと仮にしても、当初明細書には、そもそも電子的な媒体に上記『情報記録領域』を設けるという技術思想自体の記載又は示唆がないのである。

よって、平成17年5月2日付け手続補正書による明細書の補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

なお、上記「2.」で摘記した、平成17年7月4日付け拒絶理由通知における、『平成6年改正前特許法第17条第2項の規定する要件を満たしていない』という記載について、正確には、単に第17条第2項ではなく、『第17条の2第2項において準用する』第17条第2項という形容が付されるべきであったが、上記平成17年9月5日付け意見書における請求人の主張をみても、該拒絶理由通知の実質的な意図は請求人に正しく伝わっているので、改めて拒絶理由を通知し直すことはしない。

5.むすび
以上のとおり、本件特許出願の願書に添付した明細書又は図面についてした平成17年5月2日付けの手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲内においてしたものではなから、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同第17条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-23 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-14 
出願番号 特願平6-109520
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川俣 洋史濱野 隆  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 前川 慎喜
青木 和夫
発明の名称 カメラ  
代理人 小谷 悦司  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 樋口 次郎  

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