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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K |
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管理番号 | 1137326 |
審判番号 | 不服2004-10008 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-11-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-13 |
確定日 | 2006-05-31 |
事件の表示 | 特願2000-143869「釣り針カバー」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月20日出願公開、特開2001-321051〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年(2000年)5月16日に出願された特願2000-143869号の特許出願であって、原審における平成15年11月13日付の拒絶理由を通知したところ、出願人からは何らの応答もなく、前記拒絶理由により平成16年4月1日付で拒絶査定がなされたところ、前記拒絶査定を不服として、平成16年5月13日に拒絶査定不服審判が請求され、前記審判の請求の日から30日以内の平成16年6月10日付で明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 平成16年6月10日付の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成16年6月10日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成16年6月10日付の手続補正は、出願当初の明細書の特許請求の範囲についての 「【請求項1】 釣り針を内包可能な大きさに形成されている可撓性を有する表側カバー片と裏側カバー片とからなり、これら表裏カバー片の対向内面の一方に雌型面ファスナーが、他方に上記雌型面ファスナーに着脱自在に係合可能な雄型面ファスナーが設けられていることを特徴とする釣り針カバー。 【請求項2】 雌雄面ファスナーは表裏カバー片の対向内面の全面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の釣り針カバー。 【請求項3】 表裏カバー片は、釣り針の曲がり部に対向する基端部を互いに接合一体化し、この接合部を支点として開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の釣り針カバー。 【請求項4】 表裏カバー片の先端部における対向内面に雌雄面ファスナーのうちの何れか一方又は双方が設けられていない摘まみ部を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の釣り針カバー。 」 の記載を、 「【請求項1】 釣り針を内包可能な大きさに形成されている可撓性を有する表側カバー片と裏側カバー片とからなり、これら表裏カバー片の対向内面の一方に雌型面ファスナーを四角枠状に設け、他方に上記雌型面ファスナーに着脱自在に係合可能な雄型面ファスナーを上記雌型面ファスナーに対向させた状態に四角枠状に設けていることを特徴とする釣り針カバー。」 と補正する(以下、この補正を「本件補正」という。)ことを含むものである。 2.補正の適否の検討 しかして、上記本件補正は、平成16年5月13日の拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内になされた補正であるから、特許法第17条の2第1項第3号に該当する補正であることは明らかである。 そして、本件補正の請求項2ないし請求項4を削除する補正は、同法第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」を目的とするものに該当する。 また、本件補正の請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載されていた「雌型面ファスナーが……設けられ」及び「雄型面ファスナーが設けられ」の発明特定事項を、それぞれ「雌型面ファスナーを四角枠状に設け」及び「雄型面ファスナーを上記雌型面ファスナーに対向させた状態に四角枠状に設け」と限定するものであるから、同法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 上記のとおり、請求項1についての本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正であるので、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。 3.独立特許要件の有無 (1)本願の本件補正後の発明 本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、これを「本願補正発明」という。)は、以下のとおりのものである(上記「第2」の「1.補正の内容」欄を参照)。 「釣り針を内包可能な大きさに形成されている可撓性を有する表側カバー片と裏側カバー片とからなり、これら表裏カバー片の対向内面の一方に雌型面ファスナーを四角枠状に設け、他方に上記雌型面ファスナーに着脱自在に係合可能な雄型面ファスナーを上記雌型面ファスナーに対向させた状態に四角枠状に設けていることを特徴とする釣り針カバー。」 (2)引用刊行物及び周知技術文献 ア.原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願前に頒布された米国特許第3,940,873号明細書(以下、「引用刊行物」という。)には、「SHIELD FOR FISH HOOKS AND SIMILAR BARBED HOOK-LIKE MEMBERS」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。 「Turning now to the drawings, FIG.1 shows a front elevational view of a preffered embodiment of the invention in the open position. ………… Fishhook20 may be released by simply grasping tabs14,15 and forceably separating body portions11,12 by unfolding about hinge portion13.」(明細書1欄60行〜同2欄30行) 同上個所部分の当審によるあらましの翻訳は、以下のとおりである。 「さて図面について説明すると、図1は、本発明の開いた状態の好ましい具体例を正面側から見た図を示す。前記の好ましい具体例は、参照番号10で総称される単一構成材からなり、端縁が単一のヒンジ部13により結合されて一側片11と他側片12とが対向当接されるようになっている。前記各側片は、略長方形に形成されており、前記ヒンジ部13の反対側の自由端縁に耳状突片14,15が設けられている。一側片11と他側片12の内側表面同士を固着するために、一対の対向する略長方形のパッド17,18は、好ましくはベルクロ或いは当業者に知られた他の同様な材料でできている。単一構成材10は、ポリプロピレン、ポリウレタン、皮革、或いは他の当業者に知られた同等な材料のような、耐疲労性の可撓性材料でできていてもよい。魚釣りに使用されるときには、前記材料は勿論耐水性を備えることが好ましい。前記装置は、ハリス21に結わえられた釣針20のような鉤付き針をパッド17,18のどちらか一方に載せてから、構成材10をヒンジ部13のところで図2の透視図に示された閉じた状態に折り畳むようにして使用される。閉じられた状態では、釣針20の鉤部は完全に防護されて、対向当接する一側片11と他側片12とパッド17,18とにより揺動から守られる。図3の部分拡大断面図に示されるように、パッド17,18の周縁内に置かれた釣針20の前記鉤部は、ベルクロ地の一つひとつの繊維に包まれることにより、前記釣針20が本発明に係る防護体の外へ飛び出すのが抑えられる。その上、パッド17,18は、一側片11と他側片12を畳んだ状態にして、前記釣針20が偶然に剥き出しにならないようにしている。釣針20は、耳状突片14,15を掴んで簡単に剥がしてもよいし、一側片11と他側片12をヒンジ部13のところまで開いて力ずくで分離してもよい。」 そうすると、上記引用刊行物における前記摘記事項及び添付図面における記載からみて、引用刊行物には、次の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。 「対向当接する一側片11と他側片12とからなる可撓性材料製の釣針用防護体10であって、前記一側片11と他側片12の両者は略長方形に形成されているとともに、それぞれの端縁がヒンジ部13により結合されて前記ヒンジ部13の反対側のそれぞれの自由端縁に耳状突片14,15が設けられ、前記一側片11と他側片12の対向内面の一方に一つひとつの繊維を有するベルクロ地からなるパッド17が設けられ、他方にも同ベルクロ地からなるパッド18が設けられていて、一側片11と他側片12とを前記ヒンジ部13で折り畳み前記パッド18を前記パッド17に対向当接させて、両者のベルクロ地の繊維で釣針20の鉤部を防護するようにした釣針用防護体」 イ.本願特許出願前に頒布された刊行物である実願昭57-200397号(実開昭59-103714号)のマイクロフイルム(以下、「周知技術文献」という。)には、「釣手袋」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。 「左右に装備する雌雄ファスナーの何れか片方を手袋の甲部に逢着し、その中央部に磁性板を逢着し、該磁性板をファスナーの他方で被覆自在にしてなる釣手袋」(明細書1頁5〜8行の実用新案登録請求の範囲の記載) 「本案は手袋の甲部に雌雄ファスナーの片方を逢着し、その中央部に逢着した磁性板を他方で被覆するようにして磁性板に釣針を吸着させて釣場に携行するか、釣場で釣針を吸着させて、釣針の糸付毎に釣箱から取出す手間を省き、釣針の糸付作業を簡素化しようとする目的である。」(明細書1頁10〜16行) 「左右に装備する雌雄ファスナー1,2の何れか片方を手袋の甲部に逢着し、その中央部に磁性板3を逢着し、該磁性板3をファスナーの他方で被覆自在にしてなる構成に係るものである。4は手首部の緊締具、5は釣針を示す。 本案は上記のように手袋の甲部に磁性板3を雌雄ファスナーの片方に逢着し、他方で被覆するように構成してあるから磁性板3に釣り針5を吸着して釣場に携行できるから釣箱の携行の必要がないし、釣場では釣箱から離れて釣る場合が多いので釣針が魚に喰取られた際等に、釣針を釣箱まで取りに戻る不便を解消することができる。而して雌雄ファスナーの片方が逢着され、その中央部に磁性板3を逢着してあるから他方の被覆側のファスナーの周囲が片方のファスナーの周囲に一体に係合して磁性板3に吸着させた釣針5の脱落を防止することができる等各実用上有効な考案である。」(明細書1頁18行〜2頁17行) (3)対比及び一致点・相違点 引用刊行物に使用されている技術用語「the Velcro material(ベルクロ地)」が、「雌型面ファスナーと雄型面ファスナーとからなる面ファスナー」の意義で用いられていることは明らかである。 ここで、本願補正発明と前記引用発明とを対比すると、引用発明における「釣針20」、「一側片11」、「他側片12」、「ベルクロ地からなるパッド17」、「ベルクロ地からなるパッド18」及び「釣針用防護体10」のそれぞれが、本願補正発明の「釣り針」、「表側カバー片」、「裏側カバー片」、「雌型面ファスナー」、「雄型面ファスナー」及び「釣り針カバー」のそれぞれに対応する。 そうすると、本願補正発明と引用発明とは、「釣り針を内包可能な大きさに形成されている可撓性を有する表側カバー片と裏側カバー片とからなり、これら表裏カバー片の対向内面の一方に雌型面ファスナーを設け、他方に上記雌型面ファスナーに着脱自在に係合可能な雄型面ファスナーを上記雌型面ファスナーに対向させた状態に設けている釣り針カバー」である点で、両者の構成が一致し、次の点で構成が相違する。 相違点:本願補正発明が、雌型面ファスナーを四角枠状に設け、雄型面ファスナーも四角枠状に設けるのに対し、引用発明は、ベルクロ地からなるパッド17及びベルクロ地からなるパッド18が四角枠状に設けられていない点。 (4)相違点についての判断 雌型面ファスナーと雄型面ファスナーとを着脱自在に係合可能にさせる場合において、前記雌型面ファスナーを表裏カバー片の対向内面の一方に、また、前記雌型面ファスナーに対向する雄型面ファスナーを前記表裏カバー片の対向内面の他方に、いずれも四角枠状に設けて、雌型と雄型の面ファスナーの両者を互いに分離するときに要する労力が、全面的に係合する雌型と雄型の面ファスナーの両者を分離する時に要する労力に比べて緩和するようにする技術は、本件特許出願時の周知技術〔その例として、手袋の甲部の中央部に逢着された磁性板3の周囲に形成される四角枠状の雌ファスナーと、他方の被覆側に逢着された四角枠状の雄ファスナーとの両者を着脱自在に係合させ、両者の中央部に釣針を収納するようにした周知技術文献に記載の「釣手袋」の例を参照。〕である。 そうしてみると、引用発明に前記周知技術を採用することにより、本願補正発明の上記相違点に係る「雌型面ファスナーを四角枠状に設け、雄型面ファスナーも四角枠状に設ける」構成とすることは、当業者が困難性を伴うことなく容易に想到できることである。 そして、本願補正発明の奏する作用・効果は、上記引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別顕著のものということができない。 したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおりであり、本件補正後の特許請求の範囲に記載された請求項1に係る発明が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定するところの「特許出願の際独立して特許を受けることができるもの」に適合していないから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 上記「第2」欄に前述した理由により、平成16年6月10日付の手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき本願発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるものであるところ、特にその請求項1に係る発明(以下、これを「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである(上記「第2」の「1.補正の内容」欄を参照)。 「釣り針を内包可能な大きさに形成されている可撓性を有する表側カバー片と裏側カバー片とからなり、これら表裏カバー片の対向内面の一方に雌型面ファスナーが、他方に上記雌型面ファスナーに着脱自在に係合可能な雄型面ファスナーが設けられていることを特徴とする釣り針カバー。」 2.引用刊行物及び該引用刊行物の記載事項 原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願前に頒布された引用刊行物〔米国特許第3,940,873号明細書〕には、上記「第2」の「3.独立特許要件の有無」の「(2)引用刊行物及び周知技術文献」の「ア.」欄に摘記したとおりの技術事項が記載されており、そして、前記引用刊行物に記載されている発明(引用発明)は、前記「ア.」欄に前示したとおりである。 3.対比・判断 前示のとおり、本件補正後の本願補正発明の構成は、補正前の請求項1に記載されていた「雌型面ファスナーが……設けられ」及び「雄型面ファスナーが設けられ」の発明特定事項を、それぞれ「雌型面ファスナーを四角枠状に設け」及び「雄型面ファスナーを上記雌型面ファスナーに対向させた状態に四角枠状に設け」と限定することにより請求項1に係る発明を限定をした補正の結果によるものであるから、本願発明1が本願補正発明の上位概念の発明であることは明らかである。 してみると、本願発明1の下位概念の発明に当たる本願補正発明が、前記「第2」の「3.独立特許要件の有無」の「(4)相違点についての判断」及び「(5)むすび」欄に前述したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願補正発明の上位概念に相当する構成からなる本願発明1は、本願補正発明についての理由と同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたというべきである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、上記引用刊行物に記載の発明(引用発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-22 |
結審通知日 | 2006-03-28 |
審決日 | 2006-04-10 |
出願番号 | 特願2000-143869(P2000-143869) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01K)
P 1 8・ 575- Z (A01K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
柴田 和雄 佐藤 昭喜 |
発明の名称 | 釣り針カバー |
代理人 | 山本 拓也 |