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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1137433 |
審判番号 | 不服2003-24043 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-11-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-11 |
確定日 | 2006-05-29 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第101302号「電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月12日出願公開、特開平 8-298541〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成7年4月25日の出願であって,平成15年11月6日付けで拒絶査定され、同年12月11日に審判請求がなされたものであり、その請求項2に係る発明は、平成14年10月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「着信時に応答がされないまま着信が検出されなくなる不在着信が発生したときその着信に基づく時刻情報を不在着信時刻として記憶手段に記憶させる電話機において、 新たな不在着信が発生したとき、該新たな不在着信の発生の度毎にその時刻を不在着信時刻として記憶するとともに、全不在着信の累計件数を前記記憶手段に記憶し、待機時における電話機の表示部に現在時刻と共に全不在着信の累計件数を表示したことを特徴とする電話機。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願の日前である平成2年9月11日に頒布された「特開平2-228857号公報 」(以下「引用例」という。)には,次の事項が記載されている。 (ア)「〔産業上の利用分野〕 本発明は電話番号及び通話時間等を表示するための表示器を備える表示器付電話機に関する。」(1ページ左欄下から2行目〜右下欄1行目) (イ)「第2図において、従来の表示付電話機は待機状態では制御回路6の制御により表示器10に日時,時刻が表示されている」(1ページ右下欄14〜16行) (ウ)「〔発明が解決しようとする課題〕 上述した従来の表示器付電話機は、待機状態では制御回路の制御により表示器に日時、時刻が表示され、ダイヤル発信後相手応答すると極性検知回路が動作して通話時間をカウントして表示器にそれを表示するようになっているが、不在時の着信呼の件数や着信時刻等を表示器に表示することができないという欠点がある。」(2ページ左上欄4〜11行目) (エ)「〔実施例〕 次に、本発明について図面を参照して説明する。 第1図は本発明の一実施例を示す表示器付電話機の機能ブロック図である。 第1図において、・・・中略・・・、従来の表記付電話機と異る点は、従来の表示器付電話機にトーンリンガ回路4と並列に着信音検出回路11か接続され、その出力に3秒おきに着信音検出回路11の出力を得た時のみ有効信号を出力する同期検出回路12が接続され、不在時着信の回数と時刻を記憶するメモリ14と、同期検出回路12の出力と制御回路6の時刻出力とが接続される着信時刻制御回路13と、リセットキー(以下Rキート記す)15と、表示変換キー(以下Cキーと記す)16とを有して構成され、・・・中略・・・。 次に、本実施例の動作について説明する。 回線から着信呼出音を受信すると着信検出回路11が動作し、論理出力(着信音有りでハイレベル「H」、無音でローレベル「L」と記す)に変換し、同期検出回路12へ入力する。同期検出回路12では、第1回目の「H」入力後、例えば、3秒おきに「H」が入力されるかを確認し、入力が2回以上連続した場合に、-着信呼有りとして出力を「L」から「H」とし継続出力する。着信時刻制御回路13では同期検出回路12の「H」出力を受けると、制御回路6からの時刻信号をメモリ14に書込む。着信呼がなくなって同期検出回路12の出力が「L」となると、その時刻をメモリ14に書込んで1件の着信処理を完了する。 同様に順次不在時の着信呼をメモリ14に書込んでいく。最新の書込アドレスを参照することで総着信呼件数を明らかとなる。 次に、例えば帰宅時に不在時の着信呼の確認方法としては、待機時の表示器10は時計表示であるが、Cキー16の押下で制御回路6を通して着信時刻制御回路13が動作し、初めに着信件数を表示器10に表示させるとともに、順次古い方から着信時刻を予め設定したT秒おきに表示器10へ表示させる。」(2ページ右上欄3行目〜右下欄6行目) 上記摘記事項(ウ)の「不在時の着信呼の件数や着信時刻等を表示器に表示することができないという欠点がある。」、摘記事項(エ)の「不在時着信の回数と時刻を記憶するメモリ14と、同期検出回路12の出力と制御回路6の時刻出力とが接続される着信時刻制御回路13」及び「回線から着信呼出音を受信すると着信検出回路11が動作し、・・・中略・・・、同期検出回路12へ入力する。同期検出回路12では、・・・中略・・・、-着信呼有りとして出力を「L」から「H」とし継続出力する。着信時刻制御回路13では同期検出回路12の「H」出力を受けると、制御回路6からの時刻信号をメモリ14に書込む。着信呼がなくなって同期検出回路12の出力が「L」となると、その時刻をメモリ14に書込んで1件の着信処理を完了する」の各記載から、引用例に記載のものは、「不在着信時の時刻をメモリに書き込む表示器付電話機」に係るものといえる。 また、上記摘記事項(エ)に「同様に順次不在時の着信呼をメモリ14に書込んでいく。」と記載されているものの、同(エ)には、「不在時着信の回数と時刻を記憶するメモリ14」、「着信呼がなくなって同期検出回路12の出力が「L」となると、その時刻をメモリ14に書込んで1件の着信処理を完了する」、「順次古い方から着信時刻を予め設定したT秒おきに表示器10へ表示させる。」と記載されているから、引用例記載のものは、「順次不在着信時の時刻をメモリに書込む」ものであるといえる。 また、上記摘記事項(エ)の「表示変換キー(以下Cキーと記す)16」、「最新の書込アドレスを参照することで総着信呼件数を明らかとなる。」及び「Cキー16の押下で制御回路6を通して着信時刻制御回路13が動作し、初めに着信件数を表示器10に表示させる」の各記載から、引用例記載のものは、表示変換キーの押下により総着信呼件数を表示器10に表示することは明らかである。 したがって、上記引用例の摘記事項(ア)〜(エ)の各事項、関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「不在着信時の時刻をメモリに書込む表示器付電話機において、 順次不在着信時の時刻をメモリに書込み、表示変換キーの押下により表示器に総着信呼件数を表示することを特徴とする表示器付電話機」 3.周知例 特開昭63-38349号公報(以下「周知例1」という)には、図面と共に次の記載がある。 (オ)「産業上の利用分野 本発明は表示器を備えた電話機に関する。 従来の技術 一般に表示器を備えた電話機は公知であるが、この種のものはいずれも表示器によって通話時間、ダイヤル番号等を表示するように構成しただけのものである。 発明が解決しようとする問題点 したがって、この種の電話機では留守中に電話があってもそれを表示することは全く不可能であり、留守にしていると表示器は何の役にも立たない。」(1ページ左下欄12行〜右下欄3行) (カ)「上記実施例において、回線aに第2図aに示すような着信信号が到来すると着信検出回路1がそれを検出し、第2図bに示すような信号を出力する。第2図bに示すような信号は着信タイマー2に入力され、ここで、その信号が予め定められた一定周期で一定回数以上到来したか否かが判定される。予め定められた一定周期で一定回数以上到来したと判定されると第2図cに示すような信号が出力されそれがカウンタ3に入力される。カウンタ3では第2図cに示すような信号が入力される毎にカウント値を1増大し、それを表示器4で表示させる。したがって表示器4によって表示される値は着信がある毎に1づつ増大することになる。・・・中略・・・。 このように、上記実施例によればハンドセットを持ち上げないでそのまま放置しておくと着信がある毎に表示器4の表示が1づつ増大することになり、留守中に何回電話があったかが容易に判断できることになる。そしてハンドセットを持ち上げるとそれによって、上記表示が“0”に復帰するため、再び着信がある毎に表示が1増大することになり、不在の間の着信回数を正確に表示することになる。」(2ページ左上欄15行〜右上欄20行) (キ)「尚、実施例では専用の表示器を用いているが従来公知の電話料金表示機能、ダイヤル番号表示機能等を備えた電話機等に適用する場合にはこれらの表示を行なう表示器をそのまま着信回数表示用の表示器として兼用することも可能である。」(2ページ左下欄11〜15行) また、特開平1-109851号公報(以下「周知例2」という)には、図面と共に次の記載がある。 (ク)「〔産業上の利用分野〕 本発明は電話機に関し、特に着信の回数をかぞえて表示する機能を備えた電話機に関するものである。 〔従来の技術〕 従来の電話機では、着信があってもハンドセットがオンフックされたままで、オフフックされない場合、その着信に関して特に記録は残されない。 〔発明が解決しようとする問題点〕 従って、従来の電話機では、例えば留守中に着信があったかどうか、また着信があった場合、その回数はどれくらいかといったことを知ることはできない。 本発明の目的は、このような欠点を除去し、ハンドセットがオンフックされた状態で着信があったとき、その着信の回数をかぞえて表示することのできる電話機を提供することにある。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明の電話機は、 ハンドセットのオンフックあるいはオフフックによりオンまたはオフするフックスイッチと、 回線からの着信信号を検出する着信信号検出部と、 数字を表す信号を受け取り、この信号が表す数字を表示する表示部と、 前記フックスイッチのオンまたはオフにより、前記ハンドセットのオンフック、またはオフフックを検出するハンドセット検出手段と、 前記ハンドセット検出手段が前記ハンドセットのオンフックを検出している状態で、前記着信信号検出部が着信信号を検出したとき、着信信号を検出するごとに1ずつ増加する数字を表す信号を前記表示部に出力し、また前記ハンドセット検出手段が前記ハンドセットがオフフックされたことを検出したとき、零を表す信号を前記表示部に出力するカウンタ手段とを備えたことを特徴としている。」(1ページ右下欄4行〜2ページ左上欄20行) (ケ)「次に、動作を説明する。まず、利用者が通話を行うため、ハンドセットをオフフックしたとする。このとき、フッタスイッチHS2はオンとなり、制御部2のフックスインチ検出部22はこれを検出してリセット信号を出力する。カウンタ21はこの信号が入力されると、その計数値を零とし、零を表す着信計数信号を表示部3に出力する。表示部3はこの信号を受け取り、零を表示する。・・・中略・・・。 その後例えば利用者が外出し、留守の間に着信があったとすると、着信信号はフックスイッチHS1を通じて回線Lから着信信号検出部1に入力され、着信信号検出部1はこれを検出して着信検出信号を制御部2に出力する。 これにより、制御部2のカウンタ21は歩進し、1を表す着信計数信号を表示部3に出力して、1を表示させる。 以後、着信信号が入力されるごとに着信信号検出部1はこれらを検出して着信検出信号を出力し、カウンタ21は着信検出信号が入力されるごとに歩進して着信の回数を表す着信計数信号を出力する。表示部3はこの信号を受け取ると、信号が表す数字を表示する。その結果、利用者が外出から戻ったとき、表示部3に表示されている数字を見ることによって、留守の間に着信があったかどうか、そして着信があった場合には、何回着信があったかを知ることができる。」(2ページ左下欄20行〜3ページ左上欄11行) また、特開平5-268320号公報(以下「周知例3」という)には、図面と共に次の記載がある。 (コ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、公衆電話回線や構内交換機などに接続し、通話を行なうための留守番電話装置に関する。」(2ページ1欄8〜11行) (サ)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の留守番電話装置では、留守セット状態以外では、局線閉結部が動作しないため、着信件数が記憶できないという問題があった。 【0004】本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、留守セット解除時、着信の有無または件数を記憶表示できる留守番電話装置の提供を目的とする。 ・・・・中略・・・。 【0006】 【作用】したがって、本発明によれば留守セットすることなく、着信検出手段によって得られた着信情報を制御部および記憶手段に記憶させることができる。 【0007】 【実施例】図1は、本発明の構成を示すものである。図1において、3は局線を閉結させ着信応答させる局線閉結部であり、制御部6によって、制御されている。着信情報は着信検出手段5から、制御部6を経て記憶手段7に記憶される。記憶された着信情報(回数)は、可聴部9,可視部10にて表示させることができる。」(2ページ1欄18行〜2欄13行) 以上の各周知例の記載によれば、 「電話機において、待機時における電話機の表示部に全不在着信の累計件数を表示すること」は周知であるといえる。 4.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「メモリ」は、本願発明の「記憶手段」に相当し、引用発明の「表示器」は、本願発明の「電話機の表示部」に相当し、引用発明の「総着信呼件数」は、本願発明の「全不在着信の累計件数」に相当する。 また、引用発明の「不在着信時の時刻」と、本願発明の「着信時に応答がされないまま着信が検出されなくなる不在着信が発生したときその着信に基づく時刻情報」との間に実質的な差はない。 また、引用発明の「順次不在着信時の時刻をメモリに書込み」ことと、本願発明の「新たな不在着信が発生したとき、該新たな不在着信の発生の度毎にその時刻を不在着信時刻として記憶する」こととの間に実質的な差はない。 また、引用発明の「表示変換キーの押下により表示器に総着呼件数を表示すること」と、本願発明の「待機時における電話機の表示部に現在時刻と共に全不在着信の累計件数を表示」することとは、「電話機の表示部に全不在着信の累計件数を表示」する点で一致する。 よって、両者は、「着信時に応答がされないまま着信が検出されなくなる不在着信が発生したときその着信に基づく時刻情報を不在着信時刻として記憶手段に記憶させる電話機において、 新たな不在着信が発生したとき、該新たな不在着信の発生の度毎にその時刻を不在着信時刻として記憶するとともに、電話機の表示部に全不在着信の累計件数を表示したことを特徴とする電話機。」において一致し、下記の各点で異なる。 [相違点1] 本願発明が「全不在着信の累計件数を前記記憶手段に記憶」しているのに対し、引用発明では、「全不在着信の累計件数」が記憶されているか否か明らかでない点。 [相違点2] 本願発明が「待機時における電話機の表示部に現在時刻と共に全不在着信の累計件数を表示」しているのに対し、引用発明では、「全不在着信の累計件数」を「待機時における表示部に現在時刻と共に表示」させていない点。 次に、前記相違点1,2について検討する。 [相違点1]について 上記引用例(上記「2.」の「(ウ)」)の「最新の書込アドレスを参照することで総着信呼件数を明らかとなる。」との記載から、「最新の書込アドレス」が「全不在着信の累計件数」を表すことは明らかであって、「最新の書込アドレス」をさらに「全不在着信の累計件数」として記憶手段に記憶させることは当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項に過ぎない。 [相違点2]について 引用例(「2.」の「(イ))」)にも記載されているように、電話機において、待機時に「現在時刻」を表示させることは慣用手段である。引用発明は、「表示変換キー」の押下後に「全不在着信の累計件数」を表示させているが、該「全不在着信の累計件数」を表示させる場合、該「累計件数」の表示を「待機時」又は「表示変換キー押下後」のいずれかに行うかは、表示部の表示スペース等を考慮して当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎないから、引用発明においても、「待機時における表示部」に「現在時刻」と共に「全不在着信の累計件数」を表示させることに格別な困難性はない。 また、上記、「3.」で示したように、「電話機において、待機時における電話機の表示部に全不在着信の累計件数を表示すること」は周知であり、一般に、通信装置の待機時における表示部に「現在時刻」以外に他の表示を行うことは慣用手段である(例えば、特開平6-133142号公報段落【0143】、図43、参照。)から、引用発明に周知技術を適用し、「表示部」に「現在時刻」と「全不在着信の累計件数」とを「待機時」に表示させることに格別な困難性はない。 したがって、いずれにしても、引用発明において、「待機時における電話機の表示部に現在時刻と共に全不在着信の累計件数を表示」させるよう構成することは当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の効果は、上記引用発明及び周知技術から当業者が予測しうる範囲内のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-24 |
結審通知日 | 2006-03-28 |
審決日 | 2006-04-17 |
出願番号 | 特願平7-101302 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮田 繁仁 |
特許庁審判長 |
廣岡 浩平 |
特許庁審判官 |
宮下 誠 畑中 博幸 |
発明の名称 | 電話機 |