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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B |
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管理番号 | 1137506 |
審判番号 | 不服2004-16649 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-08-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-10 |
確定日 | 2006-06-08 |
事件の表示 | 特願2001- 9994「避難場所標示」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 2日出願公開、特開2002-216253〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年1月18日の出願であって、平成16年7月5日付で拒絶査定され、これに対し、同年8月10日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年9月8日付で手続補正がなされたものである。 2.平成16年9月8日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年9月8日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「標識柱の高位置に取り付けられ、避難場所の設備を絵文字で示す設備標示部と、 前記標識柱の低位置に設けられ、高齢者の注意を喚起させる認識マークと、 前記標識柱の低位置に設けられた点字による避難場所標示部と、を有することを特徴とする避難場所標示。」と補正された。 上記補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「設備標示部」について「標識柱の高位置に取り付けられ」るとの限定を、及び「避難場所標示」について「標識柱の低位置に設けられ、高齢者の注意を喚起させる認識マークと、標識柱の低位置に設けられた点字による避難場所標示部と、を有する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3037996号公報(以下「引用例」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア 「【考案の属する技術分野】 本願考案は、屋外の道路や歩道等の街頭、地下街等において、当該場所の番地、緊急避難場所、広域避難場所若しくはその避難路、又は防火水槽、交番、公衆トイレ等の公共施設の場所若しくはその経路を一般の人に知らせるための、又は私的な公告案内のための案内掲示装置に関する。」(【0001】) イ 「【課題を解決するための手段】 これらの課題を解決するために、複数の案内掲示を示す複数のパネルを一つの案内掲示手段にまとめて見やすく表示するとともに、個々の案内掲示はその案内内容の変更、案内期間の経過その他の個別の事情に応じて、取り外し・差し替えを容易とし、一面に複数のパネルを掲示する案内掲示装置であって、パネルを受け入れるための開口部を有するパネル保持枠を複数有する表示部と、上記表示部全体を覆い、かつ外部から上記パネルを目視可能とする窓部を有する蓋部と、からなる案内掲示装置を提供するものである。」(【0004】) ウ 「図1は、緊急避難場所等を示す案内掲示の例であって、パネルを受け入れるために開口部を有するパネル保持枠を複数有する表示部と、上記表示部の掲示面全体を覆い、かつ外部から上記パネルを目視可能とする窓部を有する蓋部とからなる案内掲示装置1が、街頭、公共施設又は遊園地等に設置されるポールに設置された場合の具体的実施例を示す。」(【0007】) エ 「・・・また、パネルの表面は、通常の印字のみならず立体的な表示凹凸加工、エッチング加工による処理や点字による表示も可能である。」(【0012】) オ 「パネルが固定された表示部3は、蓋部の面は窓部の面に接する状態で収まり、外部から目視又は触れることができる。接触も可能としたのは、点字等により視覚障害者にも認識可能とするためである。」(【0013】) カ 「図3は、本願考案に係る案内掲示装置の他の実施例を示す。当該例による案内掲示装置は、通路に面する柱、壁若しくは掲示板等に取り付けられたものである。」(【0018】) また、図3には、絵文字を含む緊急避難場所の案内よりも下部にパネルが配置された例が示されている。 これら記載事項から、引用例には、 「柱に取り付けられ、避難場所を絵文字で示す案内と、 前記案内よりも柱の下部に設けられた点字が表示されたパネルと、 を備えた避難場所を示す案内掲示装置」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)対 比 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、その作用、機能からみて、後者の「柱」が前者の「標識柱」に相当し、後者の「避難場所を示す案内掲示装置」が前者の「避難場所標示」に相当する。 また、上記記載事項エ、オの記載から、点字が表示されたパネルは案内掲示装置に表示された情報を視覚障害者に対して伝えるためであり、そして一般に点字を表示したパネルは手が届く程度の低位置に設けられることは当然であるので、後者の「標示部よりも柱の下部に設けられた点字が表示されたパネル」と前者の「標識柱の低位置に設けられた点字による避難場所標示部」とは、「標識柱の低位置に設けられた点字による情報標示部」との点で一致する。 更に、図3から、引用発明の「避難場所を絵文字で示す案内」は「点字が表示されたパネル」よりも上方に設けられており、そして、一般的に、このような案内表示は、ある程度離れた場所からでも見易いように柱の比較的高い位置に設置されることが普通であるので、後者の「柱に取り付けられ、避難場所を絵文字で示す案内」と前者の「標識柱の高位置に取り付けられ、避難場所の設備を絵文字で示す設備標示部」とは、「標識柱の高位置に取り付けられ、避難場所の情報を絵文字で示す標示部」との点で一致する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「標識柱の高位置に取り付けられ、避難場所の情報を絵文字で示す標示部と、 標識柱の低位置に設けられた点字による情報標示部と、 を有する避難場所標示」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 点字による情報標示部に関して、前者は「避難場所標示部」であるのに対して、後者はどのような情報が点字で表示されるかが明確でない点。 (相違点2) 避難場所の情報を絵文字で示す標示部に関して、前者は「避難場所の設備を絵文字で示す設備標示部」であるのに対して、後者は避難場所を絵文字で示す標示部である点。 (相違点3) 前者は「標識柱の低位置に設けられ、高齢者の注意を喚起させる認識マーク」を備えるのに対して、後者はかかる認識マークを備えていない点。 (4)当審の判断 ア 相違点1について 引用発明において、前記記載事項エ、オに示されるように、パネルに表示された点字は案内掲示装置に表示されるべき情報を視覚障害者に対して伝えるためのものである。そうすると、避難場所の情報を表示する引用発明において、その避難場所に関する情報を点字により表示させる構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。 イ 相違点2について 例えば、高速道路上のサービスエリアやパーキングエリアの案内表示板における、レストラン、ガソリンスタンド、或いは売店といった、サービスエリアやパーキングエリアの設備の絵文字標示に見られるように、案内板による特定の場所の案内表示において、該特定の場所が備える設備を絵文字で示すことは従来より慣用的に行われている手法であり、また、このような絵文字による設備表示が利用者にとり便利であることも、広く一般に知られていることである。 そうすると、上記慣用手法に基づけば、避難場所についての案内表示について、利用者の利便性を考慮して、当該避難場所が備える設備を表示させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 ウ 相違点3について 例えば、特開平7-229115号公報等で示されるように、標識柱の高い位置にある標識への注意喚起を促すマークを標識柱の低位置に設けることは、慣用的に行われている手法である。そして、このような注意喚起を促すマークが、本願補正発明の認識マークと同様に、高齢者に対しても注意喚起を行い得ることは自明である。 したがって、上記慣用手法に基づいて、引用発明に対して相違点2に係る本願補正発明の構成を設けることは、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明及び上記慣用技術から予測される以上の格別の効果を奏するものではない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び慣用手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年9月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「避難場所の設備を絵文字で示す設備標示部が含まれてなる避難場所標示。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「設備表示部」についての限定事項である「標識柱の高位置に取り付けられ」るとの発明特定事項と、「避難場所標示」についての限定事項である「標識柱の低位置に設けられ、高齢者の注意を喚起させる認識マークと、標識柱の低位置に設けられた点字による避難場所標示部と、を有する」との発明特定事項とを省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び慣用手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び慣用手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び慣用手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-05 |
結審通知日 | 2006-04-07 |
審決日 | 2006-04-18 |
出願番号 | 特願2001-9994(P2001-9994) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 恭司 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
高橋 学 丸山 英行 |
発明の名称 | 避難場所標示 |
代理人 | 鷹野 寧 |