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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1137554 |
審判番号 | 不服2003-232 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-06-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-06 |
確定日 | 2006-06-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第320910号「オンラインショッピングにおける回答方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月20日出願公開、特開平 9-160978〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年12月8日の出願であって、平成14年11月27日付で拒絶査定がされ、これに対し、平成15年1月6日に拒絶査定に対する審判が請求され、その後当審において平成17年12月20日に拒絶の理由が通知され、平成18年3月10日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年3月10日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「オンラインを介した端末とセンタ装置間における通信販売において、該センタ装置がカスタマ端末からの質問に対する回答を行うオンラインショッピングにおける回答方法において、 商品毎に複数の質問を表示して選択させる画面と、必要に応じて表示された質問以外の任意の質問を入力する画面をカスタマの端末画面に表示し、 前記表示した画面に対する選択の結果として前記端末より通知されるカスタマIDと商品番号と質問種別と質問メッセージとからなる質問情報を受信し、質問種別に基づき当該質問が前記回答データベースに格納されているか否かを判断し、格納されていると判断した場合に商品番号と質問種別に基づいて、該回答データベースを検索して回答を前記カスタマ端末の端末に対して出力し、 前記受信した質問情報に基づき当該質問が前記回答データベースに格納されていないと判断した場合に、前記カスタマ端末からの質問メッセージに対する追加登録される回答を、新規の質問種別を追加して該回答データベースに登録することにより該回答データベースの内容を更新することを特徴とするオンラインショッピングにおける回答方法。」 3.引用例 (3-1)当審の拒絶の理由に引用された、片山薫ほか、VIEW Classroom(遠隔分散教育システム)における教師生徒間の対話支援、情報処理学会研究報告、社団法人情報処理学会、第95巻 第12号(95-DBS-101)、1995年1月27日、第9〜16頁(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 ア「遠隔教育システムVIEW Classroomにおける教師と生徒の間の対話支援システムについて述べる。」(9頁5行) イ「図1はVIEW Classroomの概念図である。教師と生徒はそれぞれワークステーション、マイク、ビデオカメラと個人データを保管するデータベースを持っており、空間的に分散した環境で生活している。」(10頁右欄30行〜34行) ウ「現在VIEW ClassroomはSUN SPARCstation上の分散Smalltalkを使って開発している。生徒、教師のワークステーションは共にカメラ、マイクが装備されており、ワークステーション間はEthernetで接続されている。」(11頁左欄15行〜末行) エ「「質問メニュー」には教師が予め登録しておいた質問と、選択した「キーとなる文字列」に対して過去に生徒が行った質問のうち回答があるものとを合わせて表示する。これによって、過去の回答を有効に再利用することができ、また生徒が質問を入力する労力の削減にもなる。」(14頁左欄13〜19行) オ「生徒が過去に回答された質問を選択した場合は、「講義オブジェクト」に対して該当する講義の回答時間の部分だけを再生するよう指示する。」(14頁右欄25〜28行) カ「VIEW Classroomにおける質問回答は以下の手順を想定している。 1.講義資料からマウスによって「キーとなる文字列」を選択し、「質問メニュー」から自分の考えにあった質問を選択する。メニューに質問内容がない場合は、キーボードを利用して入力する。 2.過去にその質問に対する回答があった場合は、質問した生徒に対し即時にその回答が表示される(自動回答機能)。 3.教師は、自動回答できなかった質問を集計したリストを参考に、回答するものを選択する(質問表示ウインドウ)。 4.回答は講義の一部として、質問した生徒と対話しながら行われる。 5.特に回答がなくても理解できた質問は削除する(質問管理ウインドウ)。」(14頁右欄35行〜15頁左欄12行) キ「図5は生徒が講義資料上で(1)「キーとなる文字列」として「Smalltalk」を選択した後表示された(2)「質問メニュー」から「What does this mean?」を選択した場面を示している。「質問メニュー」で「Other question」を択すると、質問内容をキーボードで入力するためのウインドウが開く。」(15頁左欄15〜21行) ク「このリストから生徒を選択した時から回答が始まったとみなし、選択した生徒との回線を接続するとともに、「質問回答オブジェクト」は「講義オブジェクト」のIDと質問開始時刻を記録する。」(16頁左欄3〜7行) したがって、アないしク、図1ないし5の記載から、引用例1には、 「Ethernetで接続された教師のワークステーションと生徒のワークステーションを有し、それぞれのワークステーションにデータベースが設けられている遠隔教育システムにおける、教師と生徒の間の対話支援方法であり、生徒が講義資料からキーとなる文字列を選択すると、そのキーとなる文字列に対して過去に生徒が行った質問のうち回答があるものとOther questionからなる質問メニューが表示され、生徒が回答がある質問を選択した場合は、講義オブジェクトに対して該当する講義の回答時間の部分だけを再生することにより回答を提示し、生徒がOther questionを選択した場合は質問内容を入力するためのウインドウが開き、生徒が質問を入力し、質問に対して自動回答できなかった場合には、教師が回答を講義の一部として行い、記録するもの」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。 (3-2)当審の拒絶の理由に引用された、特開平5-165856号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 ケ「【産業上の利用分野】本発明は、パソコン通信によるオンラインショッピングシステムにおいて、利用者がショッピングサービス提供者に対して、画面上に表示された商品について質問したい場合に簡単にサービス提供者と応対できるようにしたオンラインショッピングシステムに関する。」(2頁左欄43〜48行) (3-3)当審の拒絶の理由に引用された、八木伸行ほか、C言語で学ぶ実践画像処理、株式会社オーム社、第1版、1992年5月30日発行、17-23頁(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 コ「メイン・プログラムは、メニューを表示して、入力された処理番号でswitch文を制御しているだけですから、新しい処理手法を追加する場合はprintf文とcase文を追加するだけです。皆さんの作った画像処理も追加してみてください。」(19頁9〜11行) 4.対比 「Ethernet」(登録商標)が周知のネットワーク規格であり、「オンライン」がネットワークを介して情報のやりとりができる状態を指す語であることから、引用発明1の「Ethernetで接続された」は、本願発明の「オンラインを介した」に相当する。 本願発明の「端末」、「センタ装置」、引用発明1の「教師のワークステーション」、「生徒のワークステーション」はいずれもオンラインを介したコンピュータである点で一致している。 引用発明1の「質問内容を入力するためのウインドウ」は、本願発明の「任意の質問を入力する画面」に相当する。 したがって、両者は、 「オンラインを介した複数のコンピュータを有し、一方のコンピュータに複数の質問を表示して選択させる画面と、任意の質問を入力するための画面とを表示し、選択された質問について回答を表示する方法。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 本願発明が、オンラインを介して接続された端末とセンタ装置間における通信販売において、該センタ装置がカスタマ端末からの質問に対する回答を行うオンラインショッピングにおける回答方法であるのに対し、引用発明1は、オンラインを介して接続された教師のワークステーションと生徒のワークステーションを有する遠隔教育システムにおいて、生徒からの質問に対する回答を行う対話支援方法である点。 (相違点2) 本願発明が、商品毎に複数の質問を表示して選択させる画面と、必要に応じて表示された質問以外の任意の質問を入力する画面とをカスタマの端末画面に表示するのに対し、引用発明1は、生徒が講義資料からキーとなる文字列を選択すると、そのキーとなる文字列に対して過去に生徒が行った質問のうち回答があるものとOther questionからなる質問メニューが表示され、生徒がOther questionを選択した場合は質問内容を入力するためのウインドウが開く構成である点。 (相違点3) 本願発明が、カスタマIDと商品番号と質問種別と質問メッセージからなる質問情報を受信し、質問種別に基づき当該質問が回答データベースに格納されているか否かを判断し、格納されていると判断した場合に商品番号と質問種別に基づいて、回答データベースを検索して回答を端末に出力するのに対し、引用発明1は生徒がメニューから回答がある質問を選択した場合はその回答が出力される点。 (相違点4) 本願発明が、端末からの質問メッセージに対する追加登録される回答を、新規の質問種別を追加して回答データベースに登録することにより回答データベースの内容を更新するのに対し、引用発明1は、教師が回答を講義の一部として行い、記録する点。 5.判断 (相違点1)について 引用発明1は、生徒からの質問に対する教師の回答を示す方法であるから、回答方法とみることができる。 引用例2の前掲ケには、オンラインを介して接続された利用者のコンピュータと店側のコンピュータ間におけるオンラインショッピングシステムにおいて、利用者のコンピュータの画面に表示された商品について、質問を受け付ける機能を設けることが記載されている。 引用発明1と引用例2に記載された発明は、オンラインシステムである点で共通しているから、引用発明1において教師のワークステーションを店側のコンピュータとし、生徒のワークステーションを利用者のコンピュータとし、提供するサービスを講義から商品販売とすることにより、オンラインショッピングにおける回答方法とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (相違点2)について オンラインショッピングにおけるカスタマの質問はもっぱら商品に関するものであることは自明であるから、引用発明1に上述した周知のオンラインショッピング技術を適用する際に、表示された商品についての質問を表示して選択させる画面を表示するよう構成することは、当業者にとって格別困難であるとは認められない。 また、引用発明1においてOther questionを選択することは、質問メニューに表示された質問以外の質問を行うためにすることであるから、質問内容を入力するためのウインドウを開くことは、本願補正発明の「表示された質問以外の任意の質問を入力する画面」を表示することに相当する。 よって、引用発明1において表示された商品についての質問を表示して選択させる画面と、質問メニューに表示された質問以外の任意の質問を入力する画面を表示するよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。 (相違点3)について メニュー項目の選択による制御を、各メニュー項目を識別する情報をパラメータとした分岐制御構文(switch case 構文)を用いて実装し、選択されたメニュー項目に対応した処理がなされるよう構成することは、引用例3の前掲コに記載されているように情報処理の分野において慣用手段である。 引用発明1においては、質問メニューから質問のメニュー項目が選択された場合に、選択されたメニュー項目を特定し、特定されたメニュー項目に基づいて回答処理が行われるが、この処理を実現する際に、上述したメニュー項目を識別するための情報をパラメータとした分岐制御構文を用いた技術を採用することは、当業者にとって格別困難であるとはいえない。 また、引用発明1においては、過去の回答を再利用することからみて、過去の回答を何らかの形で格納し、必要に応じて読み出すための構成が設けられていると認められる。ここで、過去に得られた情報をデータベースに蓄積し、利用することは情報処理の分野において慣用手段であり、かつ、引用発明1の「教師のワークステーション」と「生徒のワークステーション」にはそれぞれデータベースが設けられていることから、過去の回答がこのデータベースに格納されているということができ、これは本願発明の「回答データベース」に相当する。 ここで、引用発明1においてOther questionが選択された場合には回答処理が行われず、回答を記録する処理が行われることから、質問メニューから選択されたメニュー項目を特定するための情報に基づいて、回答が予め用意されているか否かを決定しているといえる。この選択されたメニュー項目を特定するための情報は、本願発明の「質問種別」に相当する。 通常、質問と回答とは1対1に対応づけられるものであるから、回答を求めるためには質問を特定する情報があれば十分である。引用発明1においてOther questionが選択されれば、質問の入力がなされ、入力された質問の内容が教師側に送られ、Other question以外の質問を選択すれば、予め格納されている質問を特定する情報が教師側に送られているといえる。 そして、オンラインショッピング技術において、商品を商品番号を用いて管理すること、カスタマIDを用いて情報処理を行うことは、いずれも普通に行われることである。 よって、引用発明1においてカスタマID、商品番号、質問種別と質問メッセージからなる質問情報を受け、質問種別に基づき当該質問の回答が回答データベースに格納されているか否かをメニューの選択によって得られた質問種別に基づいて判断し、格納されていると判断した場合に商品番号と質問種別に基づいて回答データベースを検索して出力する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (相違点4)について 引用発明1は、生徒が過去に行った質問のうち回答があるものをメニューに表示し、選択されると講義オブジェクトに対して該当する講義の回答部分だけを再生するよう指示が出され、そして質問に自動回答できなかった場合には、教師が回答を講義の一部として行い、記録しておく構成を有する。 ここで、(相違点3)について述べたように、引用発明1は本願発明の回答データベースに相当する構成を有している。回答について注目すると、自動回答ができないもののうち回答が作成された場合、この回答は記録され再利用可能となる。さらに、質問メニューから質問が選択されると、対応する回答が再利用される回答データベースにおいても、利用者の利便を考えると、その充実、更新が当然の課題となっているといえる。そして、データベースにデータを登録する際に、個々のデータを呼び出すための識別情報を付与することは、情報処理の分野において普通に行われることである。 してみると、引用発明1において、端末から入力された質問に対して追加登録される回答を、新規の識別情報を追加して回答データベースに登録することにより、回答データベースの内容を更新するよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1、引用例2、3に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-28 |
結審通知日 | 2006-04-04 |
審決日 | 2006-04-17 |
出願番号 | 特願平7-320910 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
田口 英雄 |
特許庁審判官 |
田中 幸雄 大野 弘 |
発明の名称 | オンラインショッピングにおける回答方法及び装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |