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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1137555
審判番号 不服2003-964  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-16 
確定日 2006-06-08 
事件の表示 平成 7年特許願第110928号「スピニングリールのベール姿勢切り換え装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月19日出願公開、特開平 8-298902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年5月9日の出願であって、平成14年12月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年1月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年2月7日付けの手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「対向する一対のアーム部を有しリール本体に回転自在に支持されたロータと、前記両アーム部先端にそれぞれ揺動自在に装着されたベール支持部材と、前記両ベール支持部材の間に糸巻き取り姿勢と糸開放姿勢とを取り得るように設けられたベールとを備えたスピニングリールに設けられるベール姿勢切り換え装置であって、
前記ロータに設けられベールの姿勢変化に連動して移動するレバーと、前記レバーに当接可能な突出部を有し前記リール本体に設けられた切り換え部材とを有し、前記ベールを糸巻き取り姿勢及び糸開放姿勢に維持するとともに両姿勢間で反転させて姿勢を切り換える姿勢切り換え機構と、
前記アーム部に沿って延び先端側が前記アーム部に揺動自在に装着されたベール支持部材に係合するロッドと、前記ロッドの後端部が摺動自在に挿入され前記アーム部に揺動自在に装着され前記切り換え動作により揺動する筒状部材と、前記ロッドを前記先端側に付勢するバネとを有し、前記筒状部材が前記ベールの糸巻き取り姿勢となる第1位置と糸開放姿勢となる第2位置とを取り得るように設けられた第1トグルばね機構と、前記筒状部材の揺動経路に前記筒状部材との間に隙間をあけて対向して配置され前記筒状部材に押動されて揺動する前記レバーが、前記ベールの糸巻き取り姿勢となる第1位置と糸開放姿勢となる第2位置とを取り得るように設けられた第2トグルばね機構とを備え、前記ベール支持部材に連動して、前記第1位置と前記第2位置とを取り得るように前記アーム部内に配置されたトグルばね機構を有し、前記切り換え動作の際に、切り換え動作の途中から動作完了まで前記ベールを付勢して動作させる付勢切り換え手段と、 前記姿勢切り換え機構の前記レバー、前記第1トグルばね機構の筒状部材及び第2トグルばね機構で構成され、前記姿勢切り換え機構による切り換え動作で発音して切り換え動作を報知する発音報知手段を備えるスピニングリールのベール姿勢切り換え装置。」
と補正された。

そこで、上記補正事項について検討すると、補正前の請求項1に係る発明(出願当初ではなく、査定時の請求項1に係る発明)の構成の一部である、「切り換え動作により揺動する能動部材、前記能動部材の揺動経路に配置された受動部材、前記能動部材と前記受動部材とに配置され、前記能動部材の揺動により互いに接触および離反し、接触時または離反時に発音する発音部、及び前記能動部材および受動部材に配置された発音部のうち何れか一方の発音部を他方の発音部に向かって付勢する付勢手段を有し」という事項、すなわち、「接触時または離反時に発音する発音部を設ける」ことが、補正後削除されており、この補正によって、審判請求時の補正後に係る本願発明は、これ以外の発音部を設けること、例えば、本願の【図8】、【図10】等の実施例をも含むことになり、特許請求の範囲の減縮とは認められず、他のいずれの事項を目的とするものではない。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年2月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成14年8月6日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】対向する一対のアーム部を有しリール本体に回転自在に支持されたロータと、前記両アーム部先端にそれぞれ揺動自在に装着されたベール支持部材と、前記両ベール支持部材の間に糸巻き取り姿勢と糸開放姿勢とを取り得るように設けられたベールとを備えたスピニングリールに設けられるベール姿勢切り換え装置であって、
前記ロータに設けられベールの姿勢変化に連動して移動するレバーと、前記レバーに当接可能な突出部を有し前記リール本体に設けられた切り換え部材とを有し、前記ベールを糸巻き取り姿勢及び糸開放姿勢に維持するとともに両姿勢間で反転させて姿勢を切り換える姿勢切り換え機構と、
前記切り換え動作により揺動する能動部材、前記能動部材の揺動経路に配置された受動部材、前記能動部材と前記受動部材とに配置され、前記能動部材の揺動により互いに接触および離反し、接触時または離反時に発音する発音部、及び前記能動部材および受動部材に配置された発音部のうち何れか一方の発音部を他方の発音部に向かって付勢する付勢手段を有し、前記姿勢切り換え機構による切り換え動作で発音して切り換え動作を報知する発音報知手段を備える
スピニングリールのベール姿勢切り換え装置。
【請求項2】〜【請求項8】(記載を省略。)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用文献とこれに記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実公昭51-12389号公報(以下、「引用文献」という。)には、下記のような記載がある。
実用新案登録請求の範囲に「アウトサイドスプールのローター両側からローター前縁に向け突設した一対の腕部に糸導杆一端のアームレバーと糸導杆他端部を夫々軸着し、ローター内底面には一端をローター底面外に突出しかつ該部に左右両方向に弾発できる発条を設けたレバーを軸着すると共に該レバーの他端を略中央部を腕部に軸装し先端部を糸導杆他端部に関着した作動杆の他端部と係合せしめ、アームレバー軸着部の腕部にアームレバーを左右両方向に弾発できる発条を設け更に筐体のローター接合部には前記レバー突出部を作動する作動突起を設けたことを特徴とする魚釣用スピニングリール。」
1頁2欄37行〜2頁4欄6行に「4は前記スプール1の円筒部1’内に嵌合し公知の如くハンドル3の回転作用により回動するローターであつて、その底部両側には前縁に向け一対の腕部5,5’が一体に突設形成され、一方の腕部5先端部には糸導杆6のアームレバー6’が、また他方の腕部5’先端部には糸導杆6の他端が夫々回動自在に軸着されている。
しかして・・・他方の腕部5’の略中央部に設けた軸10には先端部にピン11を他端部に係合凹欠12を夫々設けた作動杆13の略中央部の長孔14を嵌合し前記ピン11は糸導杆6軸着部に形成した円弧状の係合溝15に嵌装されている。
ローター4の底部内側には一端を透孔16よりローター4外に突出せしめて作動片17を形成しかつ該部を発条18で第3図b-b線を中心に左右両方向に弾発するレバー19を軸着し、該レバーの他端は前記作動杆13の係合凹欠12に係合している。
20は筐体21とローター4との接合部に設けた作動突起であつて、ローター4の回動により前記レバー19の作動片を作動してレバー19を発条18により反対方向に弾発するように形成されている。
・・・
しかしてこの状態において回転ハンドル3を回転してローター4を回動するとレバー19の作動片17は筐体21の作動突起20に衝接してレバー19を発条18に抗して右廻り回動せしめそのデツドポイント(第3図b-b線)を超えて該発条18はレバー19を右廻り方向に弾発し、この弾発作用によつてレバー他端部は作動杆13を回動して糸導杆6を釣糸捲取状態に反転復帰させる」。
また、アームレバー6’は糸導杆6の支持部材といえるし、第7図にも糸導杆6の支持部材といえるものが記載されており、第6図及び第7図によれば、レバー19の他端は作動杆13の係合凹欠12内に隙間を有して配置されていることは明らかである。
これらの記載および第1〜7図を参照すると、引用文献には
「対向する一対の腕部5,5’を有し筐体21に回転自在に支持されたローター4と、前記両腕部先端にそれぞれ揺動自在に装着された糸導杆支持部材と、前記糸導杆支持部材の間に釣糸捲取状態と釣糸放出状態とを取り得るように設けられた糸導杆6とを備えたスピニングリールであって、
前記ロータ-4に設けられ糸導杆6の状態変化に連動して移動するレバー19と、前記レバー19に当接可能な前記筐体21に設けられた作動突起20とを有し、前記糸導杆6を釣糸捲取状態及び釣糸放出状態に維持するとともに両状態間で反転させて状態を切り換える状態を切り換える機構と、前記切り換え動作により回動するレバー19、前記レバー19の回動経路に配置された作動杆13、及びレバー19の回動に伴う弾発作用により作動杆13の係合凹欠12に隙間を有して係合しているレバー19の他端が作動杆17を回動するようレバー19を付勢する発条18を有する
スピニングリール」という発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。

(2)対比・判断
本願発明と、上記引用文献記載の発明を比較すると、引用文献記載の発明の「腕部5,5’」が「アーム部」に相当し、以下同様に、「筐体21」が「リール本体」に、「ローター4」が「ロータ」に、「糸導杆支持部材」が「ベール支持部材」に、「釣糸捲取状態」が「糸巻き取り姿勢」に、「釣糸放出状態」が「糸開放姿勢」に、「糸導杆6」が「ベール」に、「レバー19」が「レバー(能動部材)」に、「状態」が「姿勢」に、「作動突起20」が「突出部を有した切り換え部材」に、「回動」が「揺動」に、「作動杆13」が「受動部材」に、「発条18」が「付勢手段」に、それぞれ、相当し、引用文献記載の発明において「レバー19の他端は作動杆13の係合凹欠12内に隙間を有して配置されている」ということは、「レバー19の回動によりレバー19の他端は作動杆19の係合凹欠12内壁と互いに接触および離反する」機構を備えているといえるから、
両者は、
「対向する一対のアーム部を有しリール本体に回転自在に支持されたロータと、前記両アーム部先端にそれぞれ揺動自在に装着されたベール支持部材と、前記両ベール支持部材の間に糸巻き取り姿勢と糸開放姿勢とを取り得るように設けられたベールとを備えたスピニングリールに設けられるベール姿勢切り換え装置であって、
前記ロータに設けられベールの姿勢変化に連動して移動するレバーと、前記レバーに当接可能な突出部を有し前記リール本体に設けられた切り換え部材とを有し、前記ベールを糸巻き取り姿勢及び糸開放姿勢に維持するとともに両姿勢間で反転させて姿勢を切り換える姿勢切り換え機構と、
前記切り換え動作により揺動する能動部材、前記能動部材の揺動経路に配置された受動部材、前記能動部材と前記受動部材とに配置され、前記能動部材の揺動により互いに接触および離反し、及び付勢手段を有するスピニングリールのベール姿勢切り換え装置」の点で一致し、下記の点で相違している。
(相違点)
本願発明では、接触時または離反時に発音する発音部、及び能動部材および受動部材に配置された発音部のうち何れか一方の発音部を他方の発音部に向かって付勢する付勢手段を有し、姿勢切り換え機構による切り換え動作で発音して切り換え動作を報知する発音報知手段を備えるのに対し、引用文献記載の発明では、レバーの回動に伴う弾発作用により作動杆の係合凹欠に係合しているレバーの他端が作動杆を回動するようレバーを付勢する発条を有しているが、発音部を有し、切り換え動作で発音して切り換え動作を報知する発音報知手段を備えているといえるか否かが明らかでない点。

上記相違点について検討する。
ところで、引用文献記載の発明においても、レバー19の回動に伴う弾発作用により作動杆13の係合凹欠12に係合して、レバー19の他端が作動杆13を回動するように構成されており、第6,7図を参照すると、上記したように、作動杆13の係合凹欠12とレバー19間には隙間が設けられていることから、その弾発作用によりレバー19の他端が作動杆を回動する際に、レバー19の他端は作動杆13の係合凹欠12内壁に衝突することは明らかである。そして、この衝突の際に、その衝突する部分で衝撃音が発生する(査定時の明細書段落【0035】等参照。)ものと解される。また、仮に、そのような衝撃音が報知音というものではないとしても、一般に、レバー等の切換動作位置等が替わったことをクリック音を用いて知らせることは、従来から行われていることであり、さらに、スピニングリールにおいても、糸捲取位置から糸放出位置への反転を知らせるためのブザー等の発音手段を設けることが従来から行われていることである(拒絶理由通知において引用した、実願平3-3580号(実開平4-100378号)のマイクロフィルム等参照。)。してみると、引用文献記載の発明において、相違点に係る本願発明のようにすることは、当業者が容易に想到する程度のことである。
そして、本願発明の作用効果も、引用文献記載の発明から当業者が予測できる範囲内のものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-06 
結審通知日 2006-04-11 
審決日 2006-04-24 
出願番号 特願平7-110928
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
P 1 8・ 572- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 恭  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 柴田 和雄
大元 修二
発明の名称 スピニングリールのベール姿勢切り換え装置  
代理人 小野 由己男  

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