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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1137667
審判番号 不服2005-2520  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-14 
確定日 2006-06-09 
事件の表示 平成11年特許願第164630号「便座カバーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月19日出願公開、特開2000-350674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月11日(優先権主張平成11年4月7日)の出願であって、平成17年1月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年2月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月16日に手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
この補正は、特許請求の範囲を下記のように補正するものを含んでいる。
「【請求項1】 口径が大きくて上下方向に短い丸筒状に丸編みした伸縮性布製のカバー本体(3)の上端開口周縁(3a)が、拡開可能な小口径に絞り加工されているとともに、カバー本体(3)の下端開口周縁(3b)に可撓性のパイプ(5)が装着されているO型便座(1)用の便座カバー(2)を対象とし、O型便座(1)と実質的に同一形状、すなわち平面視で前後方向に長い円環状に形成されて上面(6a)が平坦面に形成された多数の型板(6)を用い、各型板(6)の中央口(9)に便座カバー(2)のカバー本体(3)をこれの外表面(10)が内周に位置するよう縦方向に通し、 カバー本体(3)の下端開口周縁(3b)は、可撓性パイプ(5)を利用して外側に折り返すことにより型板(6)の下面の中央側に掛け止めるとともに、カバー本体(3)の上端開口周縁(3a)は、拡開して外側に折り返すことにより型板(6)の上面(6a)を跨いで型板(6)の下面の外側に掛け止めて、型板(6)の上面(6a)にカバー本体(3)の外表面(10)をこれが上面外側に位置するよう伸展状態にセットし、 プリント装置において多数の型板(6)を縦軸心まわりに間欠的に旋回させながら、各型板(6)にセットしたカバー本体(3)の外表面(10)に使用色の数に応じて染料捺染ついで加熱乾燥の工程を繰り返すことにより、プリント柄(7)を印刷するようにしたことを特徴とする便座カバーの製造方法。」
この補正の適否を検討するに、上記補正のうち、「多数の型板(6)」を用いる点、「多数の型板(6)を縦軸心まわりに間欠的に旋回させながら印刷する」点は、補正前の特許請求の範囲に記載されていなかった型板の数やプリント装置における型板の動きといった観点を、新たに発明の特定事項として追加するものであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
したがって、この補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、この補正を含む上記手続補正は、その余のことを検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年3月16日付けの手続補正が上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成16年8月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりである。
「【請求項1】 口径が大きくて上下方向に短い丸筒状に丸編みした伸縮性布製のカバー本体3の上端開口周縁3aが、拡開可能な小口径に絞り加工されているとともに、カバー本体3の下端開口周縁3bに可撓性のパイプ5が装着されているO型便座1用の便座カバー2を対象とし、上面6aが平坦面に形成された円環状の型板6を用い、型板6の中央口9に便座カバー2のカバー本体3をこれの外表面10が内周に位置するよう縦方向に通し、型板6の下面側に、カバー本体3の下端開口周縁3bと上端開口周縁3aとを外側に折り返して掛け止めることにより、型板6の上面6aにカバー本体3の外表面10をこれが上面外側に位置するよう伸展状態にセットし、カバー本体3の外表面10にプリント柄7を染料捺染するようにしたことを特徴とする便座カバーの製造方法。」

(2)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物3である特開平10-212644号公報(以下、「引用例3」という。)には、「【請求項1】 編地を構成する編目とほぼ同じ大きさで、編目のループを模し、かつ上下左右に配列した際に実質的に隙間が生じないループモデルを用いたプリント柄を、プリンタで編地表面にプリントしたプリント編地。【請求項2】 編地をコース方向に引き伸ばしてプリントすることにより、無張力の状態で隠れて張力を加えた状態で現れる、編地の部分にもプリントを施したことを特徴とする、請求項1のプリント編地。」が記載され(a:特許請求の範囲の請求項1及び請求項2)、引き伸ばす方法として、「例えば同じプリントを施すべき編地を2枚袋状に縫い、型40を差し込んで編地24のコース方向の幅を、W0からWへと1.4〜1.5倍程度引き伸ばす。・・・なお、図では流し編みのため長方形の型40を示したが、成形編み等の場合は編地の形状に応じた型を用いる。」(b:段落[0027])とあり、さらに、「編地は、いわゆる流し編みでも成形編みでも、あるいは無縫製用の筒状編成でも良い」(c:段落[0023])と記載されている。
同じく刊行物4である特開昭62-57992号公報(以下、「引用例4」という。)には、「ラッセル編生地等の伸縮性生地により構成されたパンティストッキング等の筒形繊維製品の筒形内へ、少なくとも一方的に所定の伸張状態を形成するための扁平な型板を挿入した後、所望の連続模様型を施したスクリーンが張られ且つ開閉自在となった捺染枠間に、前記伸張状態にした筒形繊維製品を装着し、染料と顔料の両性質を具備した比較的高粘度の捺染用インクを使用して、扁平伸張状態の筒形繊維製品の表面にスクリーン捺染した後、該模様を所定の温度で乾燥し焼付固定することを特徴とする連続模様付筒形繊維製品の製造方法」(d:特許請求の範囲第1項)が記載され、これは「伸縮性生地により構成されたパンティストッキング、ティシャツ等の繊維製品」(e:1頁右欄1〜2行)に用いられるものであり、従来の技術として、「一般に繊維製品の各種の柄模様顕出は、異色糸を使用して編組の段階で編み出すか・・・である。・・・しかし、前記した編み出し手段による場合には、その編組作業の能率が極端に低下してコストが高騰し採算が取れないだけでなく」(f:1頁右欄6〜13行)と記載され、その作用効果として、「伸張力の作用しない通常の状態から着用のために所定量伸張しても、その伸張によって捺染された模様等が破損されることなく順応して模様形態のくずれがない」旨(g:2頁右下欄5〜10行)、記載され、実施例では、パンティストッキングを例に挙げ、型板として等身大の二本の脚形を偏平かつ平坦に形成した脚形板を使用している(h:2頁右上欄下から4行〜左下欄下から6行)。
同じく刊行物5の実願昭55-119410号(実開昭57-42700号)のマイクロフィルム(以下、「引用例5」という。)には、「短筒状生地の一方の開口周縁部に弾性芯環を取付けた便座カバーにおいて、他方開口部の便座取付基部に当接する部分を切欠して、切欠部を含めた周縁部全体に伸縮性条体を廻らせ、前記切欠部を廻る伸縮性条体の起部と終部の二点の部位に係合部材を取付けて成る便座カバー」が記載され(i:実用新案登録請求の範囲第1項)、「弾性芯環を便座の内周に嵌合し、内側から本体の周縁側を引き出し、外側に広げて条体を便座の外周に嵌着して係合部を係合することにより便座に被着するものである」旨(j:3頁下から3行〜4頁2行)、説明されている。

(3)対比・判断
そこで、本願発明と引用例4に記載された発明を比較すると、引用例4には、aとして摘記したように「伸縮性生地からなるパンティストッキング等の筒形繊維製品の筒形内へ、少なくとも一方向に所定の伸張状態を形成するための扁平な型板を挿入し、伸張状態で捺染する連続模様付筒形繊維製品の製造方法」の発明が記載されているから、両者は「筒形繊維製品に上面が平坦面に形成された型板を装着して伸展状態にセットし、製品の外表面にプリント柄を染料捺染した筒形繊維製品の製造方法」という点で一致するものの、下記の点で相違している。
相違点
イ:筒形繊維製品が、本願発明は「口径が大きくて上下方向に短い丸筒状に丸編みした伸縮性布製のカバー本体の上端開口周縁が、拡開可能な小口径に絞り加工されているとともに、カバー本体の下端開口周縁に可撓性のパイプが装着されているO型便座用の便座カバー」であるのに対して、引用例4に記載された発明は「パンティストッキング、ティシャツ等の筒形繊維製品」とあるだけで特定はなく、実施例としてパンティストッキングが挙げられている点。
ロ:型板が、本願発明は「円環状」であるのに対して、引用例4に記載された発明は「扁平な型板」であって、その実施例に記載されたものは「等身大の脚形」である点。
ハ:被染物(筒形繊維製品)を型板に装着する方法が、本願発明は「型板の中央口に便座カバーのカバー本体をこれの外表面が内周に位置するよう縦方向に通し、型板の下面側に、カバー本体の下端開口周縁と上端開口周縁とを外側に折り返して掛け止めることにより、型板の上面にカバー本体の外表面をこれが上面外側に位置するようにセットしている」のに対して、引用例4に記載された発明は「筒形内に型板を挿入している」点。

そこで、上記の相違点について検討する。
イ.の点について
引用例5に記載の便座カバーは、iとして摘記したように「短筒状生地の一方の開口周縁部に弾性芯環を取付け、他方の開口周縁部に伸縮性条体を廻らせたO型便座用の便座カバー」と認められるところ、本願発明で対象とされる「口径が大きくて上下方向に短い丸筒状に丸編みした伸縮性布製のカバー本体の上端開口周縁が、拡開可能な小口径に絞り加工されているとともに、カバー本体の下端開口周縁に可撓性のパイプが装着されているO型便座用の便座カバー」はこれと実質的に差異がなく、本願発明で対象とされる便座カバーは引用例5に記載されるように公知の日用品である。ところで、身につけるものに限らず身近に存在する日用品に美的効果を狙って模様を捺染することは普通に行われていることであり、しかも便座カバーに模様を捺染することができないという特別の理由も存在しないから、引用例4の発明において筒形繊維製品としてパンティストッキングやティシャツに代えて、共に身近な日用品である引用例5に記載の便座カバーを採用することは格別困難なことではなく当業者が適宜になし得る程度のことといえる。
ロ.の点について
型板については、引用例3には、「なお、図では流し編みのため長方形の型40を示したが、成形編み等の場合は編地の形状に応じた型を用いる」(摘記b)とあり、また、引用例4ではパンティストッキングの場合の型板は等身大の脚形であるように、使用時の伸展状態で絵柄が最もきれいに見えるように配慮するのは普通のことであるところ、これらのことを考慮すればそれぞれの製品の使用時の形体にあわせて型板を採用するのは当然のことであるから、O型便座用の便座カバーを採用すればO型便座と同形の円環状のものになるのは必然であり、この点に創意を要したものとは認められない。
ハ.の点について
型板に被染物(筒形繊維製品)であるO型便座用の便座カバーを装着するにあたり、引用例5には「弾性芯環を便座の内周に嵌合し、内側から本体の周縁側を引き出し、外側に広げて条体を便座の外周に嵌着して係合部を係合することにより便座に被着させる」(摘記j)と記載され、これは「型板の中央口に便座カバーを通し、型板の下面側に、カバー本体の下端開口周縁と上端開口周縁とを外側に折り返して掛け止め、便座カバーをセットする」ことであり、本願発明における便座カバーの装着方法はこれと実質的に差異がない。
したがって、本願発明では引用例5により知られている便座カバーの装着方法と同じ方法を採用しているだけと認められ、当業者が通常試みる範囲内のものである。

本願発明の効果について
本願発明の効果は、本願明細書の段落[0029]に記載されるように、「伸縮性布を型板に伸展状態でセットしたのち、その外表面にプリント柄を印刷処理するようにしたので、伸展した使用状態でもプリント柄をこれがぼけないように端正に入れることができ、柄模様が多品種少ロッドで変更される場合にもこれによく対応して安価に製造できる利点を有する。とくに、伸縮性を有する便座カバーのカバー本体の外表面にプリント柄を入れるのに有利である。」というものであるが、使用状態でもプリント柄がぼけないという効果は、引用例4に「着用のために所定量伸張しても、その伸張によって捺染された模様等が破損されることなく順応して模様形態のくずれがない」旨(摘記g)、記載されるように、伸張して捺染することにより生じる公知の効果である。また、柄模様が多品種少ロッドで変更される場合にもこれによく対応して安価に製造できるという効果も、本願明細書の段落[0002]に「当初から編み機で柄模様入りに丸編みすることは可能ではあるが、他種類の柄模様を少量ずつ用意しようとすると著しくコスト高になる。」という課題を解決できることを意味するものと認められ、同様の課題の解決のために筒形繊維製品に型板を用いて捺染することは、fとして摘記したように引用例4に既に示されており、これも公知の効果である。
したがって、本願発明の効果も、当業者の予測の範囲を超えて優れたものではない。

(4)結論
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例3、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって、他の請求項に係る発明については言及するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-06 
結審通知日 2006-04-12 
審決日 2006-04-27 
出願番号 特願平11-164630
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47K)
P 1 8・ 572- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 直子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 原田 隆興
鈴木 紀子
発明の名称 便座カバーの製造方法  
代理人 折寄 武士  

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