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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1137785
異議申立番号 異議2000-74480  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-19 
確定日 2006-03-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3053391号「ビデオゲーム装置、ビデオゲームのプレイ制御方法及びその方法が記録された可読記録媒体」の請求項1乃至16に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3053391号の請求項1乃至16に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続きの経緯
特許3053391号の請求項1乃至16に係る発明は、平成10年12月11日に特願平10-375088号として特許出願され、平成12年4月7日に特許の設定登録がなされたところ、吉田清司及び株式会社スクウェアより特許異議の申立てがなされ、平成15年8月18日付けで取消理由通知がなされ、それに対し平成15年10月28日付けで意見書及び訂正請求書が提出されたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成15年10月28日付けでなされた訂正請求の内容は、以下のとおりである。
i.訂正事項a(下線部訂正個所)
請求項1乃至16の記載を以下のとおりに訂正する。
なお、記載が訂正されるのは請求項1,2,5,13乃至16であって、これらを引用する請求項3,4,6乃至12は、もとの記載のままである。
【請求項1】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶する記憶手段と、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段と、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するゲーム中断制御手段と、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するゲーム再開制御手段とを備えたビデオゲーム装置であって、
上記けがイベント制御手段は、けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動検出手段を備え、
上記行動検出手段は、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定することを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項2】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶する記憶手段と、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段と、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するゲーム中断制御手段と、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するゲーム再開制御手段とを備えたビデオゲーム装置であって、
上記けがイベント制御手段は、けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動検出手段と、行動検出手段によってけがイベントが発生する動機となる行動が検出されたときけがイベントを発生させるか否かを判定するけがイベント発生判定手段とを備え、
上記行動検出手段は、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定し、上記けがイベント発生判定手段は、上記遊技者が操作するプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かを判定することを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項3】上記けがイベント制御手段は、けがイベント対象キャラクタがゲームに復帰可能か否かを判定する復帰判定手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のビデオゲーム装置。
【請求項4】上記復帰判定手段は、キャラクタ情報によって復帰可能であるかを判定することを特徴とする請求項3記載のビデオゲーム装置。
【請求項5】野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段とを有するビデオゲーム装置において、
上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容を読み出して上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させるけがイベント発生手段と、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して確率的に治癒させるけが治癒手段と、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するプレイ制御手段とを備えたことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項6】上記行動記憶手段に記憶されるけが行動内容を複数種類とし、上記けが行動内容の指示結果に応じて上記けがイベント発生手段によるけがイベントの発生確率を変化させるけがイベント発生確率変化手段を備えたことを特徴とする請求項5記載のビデオゲーム装置。
【請求項7】プレイキャラクタの役割を記憶する役割記憶手段を備え、上記けがイベント発生手段が、この役割を考慮して上記けがイベントを発生させることを特徴とする請求項5又は6記載のビデオゲーム装置。
【請求項8】プレイキャラクタのキャラクタ情報であるスタミナ値を記憶するスタミナ値記憶手段を備え、上記けがイベント発生手段が、特定の役割であるプレイキャラクタについてのみ上記スタミナ値を考慮して上記けがイベントを発生させることを特徴とする請求項6記載のビデオゲーム装置。
【請求項9】上記けがイベント発生手段が、上記けが行動内容の指示結果に基づいてプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かを判断するけが判断手段と、けがイベントの対象となったと判断した場合には、このときの状況画面を上記表示器により表示するように画面制御を行うけが状況表示制御手段とを備えたものであることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のビデオゲーム装置。
【請求項10】プレイキャラクタのキャラクタ情報である特殊能力を記憶する特殊能力記憶手段を備え、この特殊能力に応じて上記けが治癒手段によるけがイベントの治癒確率を変化させるけが治癒確率変化手段を備えたことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載のビデオゲーム装置。
【請求項11】上記プレイ制御手段が、上記けが治癒手段による治癒内容に基づいて、けがイベントの対象となったプレイキャラクタのプレイへの復帰が可能か否かを判断する復帰/交代判断手段と、復帰が可能であると判断された場合には、プレイへの復帰指令を発し、復帰が不可能であると判断された場合には、選手交代指令を発する指令発生手段とを備えたことを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載のビデオゲーム装置。
【請求項12】上記プレイ制御手段が、上記指令発生手段により復帰指令が発せられた場合には、プレイキャラクタが復帰する画面を上記表示器により表示し、該指令発生手段により選手交代指令を発せられた場合には、プレイキャラクタが交代する画面を上記表示器により表示するように画面制御を行う復帰/交代表示制御手段を備えたことを特徴とする請求項11記載のビデオゲーム装置。
【請求項13】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶手段に記憶し、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御し、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断し、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法であって、
上記けがイベントの制御に際し、けがイベントが発生する動機となる行動を検出し、この検出において、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定することを特徴とするビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法。
【請求項14】野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段とを有するビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法において、
上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容を読み出して上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させた上で、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して確率的に治癒させ、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するようにしたことを特徴とするプレイ制御方法。
【請求項15】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶手段に記憶するステップと、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するステップと、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するステップと、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するステップとを備えたプレイ制御方法が記録された可読記録媒体であって、
上記けがイベントを制御するステップは、けがイベントが発生する動機となる行動を検出し、この検出において、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定するステップを備えたことを特徴とするプレイ制御方法が記録された可読記録媒体。
【請求項16】野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段とを有するビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法が記録された可読記録媒体において、
上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容を読み出して上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させるステップと、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して確率的に治癒させるステップと、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するステップとを備えたことを特徴とするプレイ制御方法が記録された可読記録媒体。
ii.訂正事項b
明細書の段落番号【0005】の記載を、
「請求項1の発明は、〔以下、【請求項1】の記載のとおり〕として構成されている。」と訂正し、
明細書の段落番号【0006】の記載を、
「この構成によれば、野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報が記憶手段に記憶され、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントがけがイベント制御手段により制御され、上記けがイベントが発生したときにゲーム中断制御手段によりゲームのプレイが中断され、上記けがイベントが終了したときにゲーム再開制御手段によりゲームのプレイが再開されるが、上記けがイベント制御手段による制御に際しては、けがイベントが発生する動機となる行動が行動検出手段により検出され、上記行動検出手段により、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けられて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かが判定される。このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることができるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。」と訂正し、
明細書の段落番号【0085】の記載を、
「【0095】【発明の効果】請求項1,13又は15の発明によれば、野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報が記憶手段に記憶され、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントがけがイベント制御手段により制御され、上記けがイベントが発生したときにゲーム中断制御手段によりゲームのプレイが中断され、上記けがイベントが終了したときにゲーム再開制御手段によりゲームのプレイが再開されるが、上記けがイベント制御手段による制御に際しては、けがイベントが発生する動機となる行動が行動検出手段により検出され、上記行動検出手段により、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作が受け付けられて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かが判定される。このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることができるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。」と訂正し、
明細書の段落番号【0086】の記載を、
「【0096】請求項2の発明によれば、野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報が記憶手段記憶に記憶され、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントがけがイベント制御手段により制御され、上記けがイベントが発生したときにゲーム中断制御手段によりゲームのプレイが中断され、上記けがイベントが終了したときにゲーム再開制御手段によりゲームのプレイが再開されるが、上記けがイベント制御手段による制御に際しては、けがイベントが発生する動機となる行動が行動検出手段により検出され、行動検出手段によってけがイベントが発生する動機となる行動が検出されたときけがイベントを発生させるか否かがけがイベント発生判定手段により判定される。具体的には上記行動検出手段により、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作が受け付けられて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かが判定され、上記けがイベント発生判定手段により、上記遊技者が操作するプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かが判定される。このようにして、遊技者はリアリティ感に溢れたプレイを楽しむことができるので、興趣に富むプレイが期待できる。」と訂正し、
明細書の段落番号【0089】の記載を、
「【0099】請求項5,14又は16の発明によれば、ビデオ画面に野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容が表示されるとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応する複数のメニューが表示され、操作部はそのうちから所望のメニューを選択指示する。すると、この選択指示されたメニューに対応する行動内容が実行される。この際、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作が受け付けられ、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがの原因となるけが行動内容が読み出される。そして、これにより上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させた上で、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに確率的に治癒が施され、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかが発せられる。このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることのできるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否について
上記訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,2,13,15に記載された「ゲーム」を「野球ゲーム」に、「ゲーム中」を「モニタ画面に表示されたゲームのプレイ中」に、「行動検出手段(行動を検出)」を「上記行動検出手段は(この検出において)、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定する」構成に訂正し、同じく請求項2に記載された「けがイベント発生判定手段」を「上記けがイベント発生判定手段は、上記遊技者が操作するプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かを判定する」構成に訂正し、同じく請求項5,14,16に記載された「プレイキャラクタ」を「野球ゲームにおけるプレイキャラクタ」、「上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、・・・遊技者により操作されるプレイキャラクタ」、「上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタ」、「上記遊技者により操作されるプレイキャラクタ」に訂正し、これにより下位概念に具体化限定化しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、上記訂正事項bは、前記特許請求の範囲の減縮に伴って、減縮された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるため、明細書の記載を訂正する、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、そして、これらの訂正事項a及びbは、特許明細書及び図面に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き及び第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議申立てについての判断
1.本件発明
本件特許第3053391号の請求項1乃至16に係る発明(以下、「本件発明1乃至16」という。)は、訂正が認められるから、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至16に記載されたとおり(前記第2.1.i.参照)のものである。

2.取消理由の概要
当審が平成15年8月18日付けで通知した取消理由は、本件発明1乃至16は、異議申立人吉田清司(以下、「申立人1」という。)が提出した特許異議申立書の第10頁第27行〜第29頁第25行に記載される理由、及び又は、異議申立人株式会社スクウェア(以下、「申立人2」という。)が提出した特許異議申立書の第12頁第27行〜第22頁第4行に記載される理由により、下記刊行物1乃至11、及び又は、検証物1乃至5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1乃至16の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきというものである。
刊行物1:「スーパーフォーメーションサッカー’94 ワールドカップ
ファイナルデータ スーパーファミコン公式ガイドブック」、
表紙、第2,3,12,13,18,19,26,27,144頁、1994年11月2
0日発行、(株)小学館 (申立人1提出の甲第1号証)
刊行物2:「スーパーフォーメーションサッカー’94 ワールドカップ
ファイナルデータ」のゲームソフトに同封された取扱説明書、
全頁、ヒューマン(株)発行 (申立人1提出の甲第2号証)
刊行物3:「スーパーフォーメーションサッカー公式ガイドブック」、
表紙、目次、第28,29,36,37,58,59,60,61頁、奥付、199
2年2月20日発行、(株)小学館
(申立人1提出の甲第3号証)(申立人2提出の甲第1号証)
刊行物4:「スーパーファミコン攻略ガイドブック スーパーフォーメー
ションサッカーII」、表紙、目次、第56,57,94-97頁、奥付
1993年7月20日発行、(株)小学館
(申立人1提出の甲第4号証)
刊行物5:「’98YEAR 甲子園 魔法公認 完全攻略本 〜野球部
に入ろう!〜」、表紙、裏表紙、目次、第74,75頁、奥付、
1998年6月19日発行、(株)デジキユーブ
(申立人1提出の甲第5号証)
刊行物6:「高校野球シミュレーション’98YEAR甲子園」に同封
された取扱説明書、表紙、裏表紙、第13,14頁、魔法(株)
(申立人1提出の甲第6号証)
刊行物7:「プロ野球グレイテストナイン’97ガイドブック」、
表紙、裏表紙、目次、第12,13頁、奥付、1997年4月1
8日発行、(株)毎日コミュニケーションズ
(申立人1提出の甲第7号証)
刊行物8:「詳解 サッカーのルールと審判法 1998年版」、
表紙、裏表紙、第144-151頁、奥付、1997年11月1日
発行、(株)大修館書店 (申立人1提出の甲第8号証)
刊行物9:「審判講習会テキスト 審判技術入門 改定第2版」、
表紙、目次、第3,5-8頁、奥付、1998年8月発行、東京
都サッカー協会審判委員会 (申立人1提出の甲第9号証)
刊行物10:「スーパーフォーメーションサッカー95 デッラ セリエA
SHVC-A95J-JPN取扱説明書」、表紙、裏表紙、第3,4,7-10,
25,26頁、ヒューマン(株)、1995年3月31日発売
(申立人2提出の甲第2号証)
刊行物11:「公式ガイドシリーズ 実況パワフルプロ野球 ’98開幕
番」、表紙、第40-43,46,47頁、裏表紙、コナミ(株)、
1998年9月14日発行(申立人2提出の甲第3号証)
検証物1:「スーパーフォーメーションサッカー’94 ワールドカップ
ファイナルデータ」のゲームソフト、ヒューマン(株)
(申立人1提出の検甲第1号証)
検証物2:「検証物1のゲームソフトのゲーム画面を録画したビデオテー
プ」(申立人1提出の検甲第2号証)
検証物3:「検証物2のビデオテープの画面をプリントアウトし、各画面
のゲームの説明を記載したゲームソフトの説明資料」
(申立人1提出の検甲第3号証)
検証物4:「高校野球シミュレーション ’98 YEAR 甲子園」の
ゲームソフト、魔法(株)(申立人1提出の検甲第4号証)
検証物5:「スーパーフォーメーションサッカー95 デッラ セリエA
SHVC-A95J-JPN」のゲームソフト、ヒューマン(株)、
1995年3月31日発売(申立人2提出の検甲第1号証)

3.各刊行物及び検証物に開示の発明
(1)刊行物1に記載の発明
i.刊行物1〔「スーパーフォーメーションサッカー’94 ワールドカップ ファイナルデータ スーパーファミコン公式ガイドブック」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「オリンピックをも凌ぐ、世界最大のスポーツの祭典-それが、ワールドカップだ。あの猛暑の余韻に浸りながら、モニター上でのキミの戦いが今始まる。」(第2頁第1〜5行)
(イ)「試合中は、ボタン操作によって選手のアクションが異なるので、局面に合わせたボタン操作が必要。」 (第12頁第2〜4行)
(ウ)「ダーティ・スライディングで負傷退場を狙う
ファウルしたときに、低確率ではあるが相手選手が負傷することがある。負傷すると各能力値が下がり、負傷の程度によっては退場となる場合もある。負傷させる確率は、ショルダータックルよりもスライディングタックルのほうが高い。そこで、どうしても止められない相手のドリブラーには、スライディングタックルをおみまいして退場してもらおう。ずるい戦法だが、守備がぐっと楽になる。1試合で負傷する人数は、1チーム最高3人まで。」(第19頁第27〜34行)
(エ)「反則も、再現すれば明らかだ!
ゴールシーンに比べて、あまり感動はないが、ファウルシーンのスロー再生もプレーの確認の上では重要だ。なぜ、ファウルになったか、どうすれば取られないかなど、次のプレーの参考になる。もちろんリプレイを見たくないときはBボタンキャンセルで飛ばすのもOK。ファウルの後の負傷にも2パターンある。担架が出てくると、残念ながら負傷退場ということになる。」(第26頁第12〜21行)
(オ)「「ワールドカップ’94」終了後に改訂された最新作「ファイナルデータ」の、チームと選手の全データを公開する。」(第27頁第9〜13行)
(カ)また、刊行物1に記載のサッカーゲームは、敵・味方に別れて対戦する2つのサッカーチームを構成する各選手のデータをスーパーファミコンの記憶手段に記憶するものであり、プレーヤは、自己のチームに属する特定の選手を必要に応じて操作することで、その選手がプレーヤの操作に応じて所定のアクションを行うようにしたものであることは明らかである。
(キ)そして、刊行物1の第26頁の最下段の左から3番目のゲーム画面には、ファウルによって選手が負傷(INJURY)したときのゲーム画面が、また、同第19頁の上から4番目及び第26頁の最下段の左から4番目のゲーム画面には、選手が負傷したときに、負傷した選手を担架で退場(OUT)させるためにゲームが中断するゲーム画面が掲載されている。
(ク)さらに、刊行物1の第18,19頁には、サッカーゲームにおける各選手による種々のアクションを表示する画面が掲載されているとともに、第12,13頁には、スーパーファミコンのコントローラに配置した各種操作ボタン(A,B,X,Y,L,R,十字)によって、各選手の種々のアクションが選択的に指示できることを示すメニュー画面が掲載されている。
ii.刊行物1には、前記(ア)乃至(ク)の記載事項によれば、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「サッカーゲームにおける各選手及びそのアクションを表示するモニタと、各選手による種々のアクションを選択的に指示可能とする各種操作ボタンを配置したコントローラと、前記各選手のデータを記憶する記憶手段を備え、前記コントローラからの操作に応じてプレーヤにより操作される特定の選手に所定のアクションを行わせるとともに、前記モニタに表示されるサッカーゲームのプレイ中に当該プレーヤにより操作される前記特定の選手が所定のアクションに基づいてある確率で負傷したときにゲームを中断するようにしたスーパーファミコン。」

(2)刊行物2に記載の発明
i.刊行物2〔「スーパーフォーメーションサッカー’94 ワールドカップファイナルデータ」のゲームソフトに同封された取扱説明書〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「怪我について
反則を受けた選手は怪我をすることがあります。怪我のレベルは5段階あり、レベル3以上の怪我の場合は担架でピッチの外に運び出されてしまいます。しかもエキシビジョン以外のモードの場合、次の試合に出場することができなくなってしまいます。レベル1、2の場合は試合に出場することができますが、能力パラメーターが下がった状態での出場になります。1試合休むと1レベルずつ回復していきます。」(第25頁第12〜21行)

(3)刊行物3に記載の発明
i.刊行物3〔「スーパーフォーメーションサッカー公式ガイドブック」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「選手によって相手にケガをさせる確率は違っている(P58〜)」(第28頁第25行)」
(イ)「エースのマラドナがタックルを受け、負傷退場した。さあ、ここからどう戦うかが問題だ。」(第36頁第7〜10行)
(ウ)「ディフェンスDATA
・・・
SHP(1〜10)
タックルをした時、相手にけがをさせる確率。数値が低いほど安全。
SHD(1〜10)
タックルをされた時、けがをする確率。高いほどけがをしない。」(第58頁第14〜26行)

(4)刊行物4に記載の発明
i.刊行物4〔「スーパーファミコン攻略ガイドブック スーパーフォーメーションサッカーII」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「SHP(1〜99%) 相手選手にショルダータックルをしたときにケガをさせるかどうか。数値が低いほど、ケガをしにくい。
SHD(1〜99%) 相手選手からショルダータックルを受けた時、ケガをするかどうか。数値が高いほど、ケガをしにくい。」(第57頁第7〜9行)

(5)刊行物5に記載の発明
i.刊行物5〔「’98YEAR 甲子園 魔法公認 完全攻略本 〜野球部に入ろう!〜」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「選手の疲労度は練習を行なうごとに溜まっていき、だんだんケガをしやすくなる。また、極度の疲労はより大きなケガを引き起こす原因となる。」(第75頁第37〜40行)」
(イ)「疲労度とケガの関係表
疲労度 ケガの確率 全治
8 1/64 1週間
16 1/16 2週間
24 1/8 2ヶ月
32 1/1 2ヶ月」(第75頁第29〜34行)」

(6)刊行物6に記載の発明
i.刊行物6〔「高校野球シミュレーション’98YEAR甲子園」に同封された取扱説明書〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「怪我 個人能力をアップさせる練習は強いチーム作りのためには不可欠ですが、練習による疲れが溜まると怪我が起こりやすくなります。」(第13頁第10〜12行)」

(7)刊行物7に記載の発明
i.刊行物7〔「プロ野球グレイテストナイン’97ガイドブック」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「苦手な打者をケガ退場に追い込み、相手チームの戦力ダウンを狙う。ケガ退場は自打球によるものと、デッドボールによるものがある。」(第13頁第15〜18行)」

(8)刊行物8に記載の発明
i.刊行物8〔「詳解 サッカーのルールと審判法 1998年版」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「ほとんどのケガはボールの奪い合いでの激しい身体接触で起きるから、どんな状態でぶつかったのか、どういうふうに倒れたのかをよく見ることである。これは反則の判定にも欠かせないことである。」(第148頁第7〜10行)
(イ)「このような場合、プレーがつづいていたら、ボールがゴール近くにある場合を除いて、ゲームを止めた方がよい。」(第148頁第14〜16行)
(ウ)「選手がプレーをつづけるか否かはチーム側の決めること」(第148頁第24〜25行)
(エ)「反則で負傷したときを含めて、倒れている選手のところへ行ってプレーをつづけられるか、自分で外へ出るか、治療のために担架で外へ出るかを聞いて、担架が必要ならばすぐに役員と担架を入れて外に運び出す。」(第149頁第7〜10行)
(オ)「治療のために外へ出た選手は、いつでも(インプレー中であっても)主審の承認があればはいることができる。」(第149頁第23〜24行)

(9)刊行物9に記載の発明
i.刊行物9〔「審判講習会テキスト 審判技術入門 改訂第2版」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「競技者が重傷を負ったと判断した場合は、試合を停止し負傷者をフィールドから運び出させる。」(第6頁第24〜25行)」

(10)刊行物10に記載の発明
i.刊行物10〔「スーパーフォーメーションサッカー95 デッラセリエA SHVC-A95J-JPN取扱説明書」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「怪我について
反則を受けた選手は怪我をすることがあります。怪我のレベルは5段階あり、その度合いに応じて能力パラメーターが下がってしまいます。レベル3以上の怪我をした選手はプレイ続行不可能となり、その時点で負傷退場となります。」(第25頁第9〜13行)」

(11)刊行物11に記載の発明
i.刊行物11〔「公式ガイドシリーズ実況パワフルプロ野球」〕には、以下の事項が記載されている。
(ア)「タフ度 ・・・数値が高いほど練習時にケガをしにくくなる」(第40頁第19〜23行)
(イ)「サクセスモードで身に付けられる特殊能力
ケガしにくい 練習時の故障率が低くなる
ケガしやすい 練習時の故障率が高くなる」(第47頁第1,45,46行)

(12)検証物1に記載の発明
検証物1〔「スーパーフォーメーションサッカー’94 ワールドカップファイナルデータ」〕は、刊行物1〔「スーパーフォーメーションサッカー’94 ワールドカップ ファイナルデータ スーパーファミコン公式ガイドブック」〕のゲームソフト本体であり、本件発明15及び16でいう「プレイ制御方法が記録された可読記録媒体」に当たる。

(13)検証物2に記載の発明
検証物2〔「検証物1に係るゲームソフトのゲーム画面を録画したビデオテープ」〕は、下記検証物3のビデオ本体である。

(14)検証物3に記載の発明
検証物3〔「検証物2のビデオテープの画面をプリントアウトし、各画面のゲームの説明を記載したゲームソフトの説明資料」〕は、上記検証物2に記録されているゲーム画面の具体的内容をプリントアウトし、摘示したものであり、ゲーム開始後0分40秒においてファウルにより相手選手が負傷し転倒する画面(第8頁)が、ついで、0分56秒において審判がゲームを中断しイエロ一カード(CAUTION)を出す画面(第10頁)が、また、9分42秒においてファウルにより相手選手が負傷し転倒する画面(第13頁)が、ついで、9分58秒においてファウルにより相手選手が負傷(INJURY)する画面(第15頁)が、さらに、10分12秒において選手が担架に担がれて退場(OUT)する画面(第16頁)が、そして、選手交代のためのメニュー画面(第17頁)が示されている。

(15)検証物4に記載の発明
検証物4〔「高校野球シミュレーション ’98 YEAR 甲子園」〕は、刊行物5〔「’98YEAR 甲子園 魔法公認 完全攻略本 〜野球部に入ろう!〜」〕のゲームソフト本体であり、本件発明15及び16でいう「プレイ制御方法が記録された可読記録媒体」に当たる。

(16)検証物5に記載の発明
検証物5〔「スーパーフォーメーションサッカー95 デッラ セリエA SHVC-A95J-JPN」〕は、刊行物10〔「スーパーフォーメーションサッカー95 デッラセリエA SHVC-A95J-JPN取扱説明書」〕のゲームソフト本体であり、本件発明15及び16でいう「プレイ制御方法が記録された可読記録媒体」に当たる。

4.取消理由〔特許法第29条第2項違反〕に係る判断
本件発明1乃至16の特許が、前記2.において示した取消理由に係る特許法第29条第2項違反に該当するものか否か、以下、対比判断する。
(1)本件発明1について
i.本件発明1と引用発明(刊行物1に記載された発明)との対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における、「選手データ」、「モニタ」、「負傷」、「アクション」、「プレーヤ」、「特定の選手」、「スーパーファミコン」は、それぞれ本件発明1における、「キャラクタ情報」、「モニタ画面」、「けがイベント」、「行動」、「遊技者」、「プレイキャラクタ」、「ビデオゲーム装置」に相当する。
また、引用発明における「サッカーゲーム」は、本件発明1における「野球ゲーム」と対比して、いずれも「ビデオゲーム」であることで共通する。
そして、引用発明は、「ゲームのプレイ中に特定の選手がある確率で負傷したときにゲームを中断する」ことにより、負傷した該選手を担架で退場させた後にゲームを再開するものであるから、本件発明1における「ゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段と、けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断する制御機能としてのゲーム再開制御手段と、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開する制御機能としてのゲーム再開制御手段」を備えていることが明らかである。
さらに、引用発明においては、「ゲームのプレイ中に特定の選手が所定のアクションに基づいてある確率で負傷した」こととするには、その前提として遊技者により操作される特定の選手が確率的に負傷が発生する原因となった所定のアクションが行われたことを検出する必要があるから、本件発明1における「けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動検出手段」を備えていることが明らかであるとともに、該「行動検出手段」が、対戦する双方の遊技者を特定しない範囲で「ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタにキャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動が起きたか否かを判定する」機能のものであることで本件発明1と共通する。
そうすると、本件発明1と引用発明は、下記の点で一致並びに相違するものと認められる。
一致点.「ビデオゲームにおける複数のキャラクタ情報を記憶する記憶手段と、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段と、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するゲーム中断制御手段と、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するゲーム再開制御手段とを備えたビデオゲーム装置であって、
上記けがイベント制御手段は、けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動検出手段を備え、
上記行動検出手段は、上記ビデオゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動が起きたか否かを判定するビデオゲーム装置。」
相違点A.ビデオゲームの対象が、本件発明1は、野球ゲームであるのに対して、引用発明は、サッカーゲームである点。
相違点B.遊技者により操作されるプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を判定するのに、本件発明1は、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが前記行動を起こしたか否かを判定するのに対して、引用発明は、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが前記行動を起こしたか否かを判定するのか明らかでない点。

ii.相違点の検討
相違点Aについては、まず、人間が行う現実の野球の試合においてけがが発生することがあるのは一般常識であって、これをビデオゲームとしての野球ゲームに取り入れたものは、周知技術(例えば、刊行物6〔「高校野球シミュレーション’98YEAR甲子園」に同封された取扱説明書〕、刊行物7〔「プロ野球グレイテストナイン’97ガイドブック」〕参照。以下「周知技術A」という。)である。
そうすると、野球ゲーム及びサッカーゲームは、いずれも遊技者により操作される選手により対戦を行うフィールドゲームであるから、引用発明に開示される、けがイベントが発生するようにしたサッカーゲームについて、前記一般常識あるいは前記周知技術Aに基づいて、前記けがイベントを野球ゲームに応用して、前記相違点Aに係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
ついで、相違点Bについては、引用発明に示されるサッカーゲームにおける、一方の遊技者により操作されるプレイキャラクタとしての選手のスライディングタックルという行動によって、ドリブルという行動をしている相手側の選手にけがが発生するという事象は、対戦する他方の遊技者にとっては、自己操作の選手のドリブルという行動が原因となって相手選手のファウル行動により前記自己側の選手にけがが発生するものであるから、行動検出手段がけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定するものといえる。そして、前記の如きけがイベントが発生するゲームを制御するためには、行動検出手段により前記スライディングタックルという行動を一方の遊技者により操作される選手が起こしたか否かを判定するとともに、前記ドリブルという行動を他方の遊技者により操作される選手が起こしたか否かをも判定する必要があることは明らかである。
また、刊行物7〔「プロ野球グレイテストナイン’97ガイドブック」〕には、「苦手な打者をケガ退場に追い込み、相手チームの戦力ダウンを狙う。ケガ退場は自打球によるものと、デッドボールによるものがある。」(記載事項(ア)と記載されていることからして、野球ゲームにおいて打者が自打球によりけがをすること、すなわち、遊技者により操作されるプレイキャラクタの行動によりそのプレイキャラクタ自身がけがをする事象が開示されており、何らかの行動検出手段がプレイキャラクタが前記行動を起こしたか否かを判定することが明らかである。
そうすると、引用発明に開示される、けがイベントが確率的に発生するようにしたサッカーゲームについて、引用発明について検討した前記事項あるいは前記刊行物7に記載の発明に基づいて、前記けがイベントを野球ゲームに応用して、前記相違点Bに係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明1の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明1は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)本件発明2について
i.本件発明2と引用発明との対比
本件発明2は、本件発明1の構成に加えて、「行動検出手段によってけがイベントが発生する動機となる行動が検出されたとき、けがイベントを発生させるか否か、すなわち、遊技者が操作するプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かを判定するけがイベント発生判定手段」を備えるものである。
そこで、前記(1)i.における本件発明1と引用発明との対比を踏まえて、本件発明2と引用発明とを対比すると、引用発明においては、「ゲームのプレイ中に特定の選手がある確率で負傷したときにゲームを中断する」前提として、遊技者が操作する選手がある確率で負傷するか否か判定する必要があることからみて、本件発明1における、前記けがイベント発生判定手段を備えていることが明らかである。
したがって、本件発明2と引用発明は、前記相違点A及びBにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。

ii.相違点の検討
相違点A及びBについては、前記(1)において検討したとおりである。
そうすると、本件発明2は、引用発明及び刊行物7に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明2の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明2は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)本件発明3について
i.本件発明3と引用発明との対比
本件発明3は、本件発明1の構成に加えて、「けがイベント制御手段は、けがイベント対象キャラクタがゲームに復帰可能か否かを判定する復帰判定手段」を備えることを1つの発明要件とするものである。
そこで、前記(1)i.における本件発明1と引用発明との対比を踏まえて、本件発明3と引用発明とを対比すると、本件発明3と引用発明は、前記相違点A及びBにおいて相違することに加えて、下記の相違点Cにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点C.けがイベント制御手段が、本件発明3は、けがイベント対象キャラクタがゲームに復帰可能か否かを判定する復帰判定手段を備えているのに対して、引用発明は、前記復帰判定手段を備えているか明らかでない点。

ii.相違点の検討
相違点A及びBについては、前記(1)において検討したとおりである。
相違点Cについては、引用発明を認定した刊行物1に「負傷すると各能力値が下がり、負傷の程度によっては退場となる場合もある。」(記載事項(ウ))及び「ファウルの後の負傷にも2パターンある。担架が出てくると、残念ながら負傷退場ということになる。」(記載事項(エ))と記載されているように、けがの程度に応じて、けがをした選手をゲームに復帰させるか否か判定することが開示されているとともに、人間が行う現実のサッカー及び野球の試合において、けがの程度に応じて、けがをした選手を試合に復帰させたり、あるいは、他の選手に交代させたりすることが、実際に行われている(例えば、刊行物8〔詳解 サッカーのルールと審判法 1998年版〕参照。)ことというべきであるから、引用発明において、刊行物1の前記記載事項(ウ)及び(エ)、あるいは、前記現実のサッカー及び野球の試合におけるけがの発生に係る事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Cに係る本件発明3のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明3の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明3は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)本件発明4について
i.本件発明4と引用発明との対比
本件発明4は、本件発明1を引用する本件発明3の構成に加えて、「復帰判定手段は、キャラクタ情報によって復帰可能であるかを判定すること」を備えることを1つの発明要件とするものである。
そこで、前記(3)i.における本件発明3と引用発明との対比を踏まえて、本件発明4と引用発明とを対比すると、本件発明4と引用発明は、前記相違点A乃至Cにおいて相違することに加えて、下記の相違点Dにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点D.本件発明4は、キャラクタ情報によって復帰可能であるかを判定する復帰判定手段を備えているのに対して、引用発明は、前記復帰判定手段を備えていない点。

ii.相違点の検討
相違点A乃至Cについては、前記(3)において検討したとおりである。
相違点Dについては、人間が行う現実のサッカー及び野球の試合において、けがをした選手のポジションや体力などの個人の属性に応じて、負傷の程度をみつつ負傷した選手を試合に復帰させたり、あるいは、他の選手に交代させたりすることは、実際に行われていることというべきであるから、引用発明において、前記現実のサッカー及び野球の試合において発生するけがイベントに係る事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Dに係る本件発明4のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明4の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明4は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(5)本件発明5について
i.本件発明5と引用発明との対比
本件発明5と引用発明とを対比すると、引用発明における、「特定の選手」、「アクション」、「モニタ」、「コントローラ」、「プレーヤ」、「負傷」、「スーパーファミコン」は、それぞれ本件発明1における、「プレイキャラクタ」、「行動」、「表示器」、「操作部」、「遊技者」、「けがイベント」、「ビデオゲーム装置」に相当する。
また、引用発明における「サッカーゲーム」は、本件発明5における「野球ゲーム」と対比して、いずれも「ビデオゲーム」であることで共通する。
そして、引用発明は、「各選手及びそのアクションを表示するモニタと、各選手による種々のアクションを選択的に指示可能とする各種操作ボタンを配置したコントローラと、前記各選手のデータを記憶する記憶手段を備え、前記コントローラからの操作に応じてプレーヤにより操作される特定の選手に所定のアクションを行わせる」ものであるから、本件発明5における「操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段」を備えていることが明らかである。
さらに、引用発明は、「プレイ中にプレーヤにより操作される特定の選手が所定のアクションにもとづいてある確率で負傷したときにゲームを中断する」ものであるから、本件発明5における「遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させるけがイベント発生手段」を備えていることが明らかである。
そうすると、本件発明5と引用発明は、下記の点で一致並びに相違するものと認められる。
一致点.「ビデオゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容を表示する表示器と、プレイキャラクタに種々の行動を選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段とを有するゲーム装置において、
上記ビデオゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容を読み出して遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させるけがイベント発生手段を備えたビデオゲーム装置。」
相違点E.ビデオゲームの対象が、本件発明5は、野球ゲームであるのに対して、引用発明は、サッカーゲームである点。
相違点F.本件発明5は、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部とを備えているのに対し、引用発明は、前記各機能に係る表示器及び操作部を備えていない点。
相違点G.本件発明5は、けがイベントの対象となる遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して確率的に治癒させるけが治癒手段と、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するプレイ制御手段とを備えているのに対して、引用発明は、前記けが治癒手段及び前記プレイ制御手段を備えていない点。

ii.相違点の検討
相違点Eについては、前記(1)の相違点Aの検討において検討したとおり、人間が行う現実の野球の試合においてけがが発生することがあるのは一般常識であって、これをビデオゲームとしての野球ゲームに取り入れたものは、周知技術Aである。
そうすると、野球ゲーム及びサッカーゲームは、いずれも遊技者により操作される選手により対戦を行うフィールドゲームであるから、引用発明に開示される、けがイベントが発生するようにしたサッカーゲームについて、前記一般常識あるいは前記周知技術Aに基づいて、前記けがイベントを野球ゲームに応用して、前記相違点Eに係る本件発明5のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
ついで、相違点Fについては、一般にビデオゲーム装置において、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示器に表示するとともに、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを操作部から選択的に指示可能とすることは、ゲームの種類を問わず、周知技術(以下、「周知技術F」という。)であるから、引用発明において、前記周知技術Fを採用して、前記相違点Fに係る本件発明5のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
さらに、相違点Gについては、まず、前記(1)の相違点Bの検討において検討したとおり、引用発明に示されるサッカーゲームにおける、一方の遊技者により操作されるプレイキャラクタとしての選手のスライディングタックルという行動によって、ドリブルという行動をしている相手側の選手にけがが発生するという事象は、対戦する他方の遊技者にとっては、自己操作の選手のドリブルという行動が原因となって相手選手のファウル行動により前記自己側の選手にけがが発生するものであるから、けがイベントの対象となる行動を起こした、遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して、そのけがの程度をみるものといえる。
また、刊行物7〔「プロ野球グレイテストナイン’97ガイドブック」〕には、「苦手な打者をケガ退場に追い込み、相手チームの戦力ダウンを狙う。ケガ退場は自打球によるものと、デッドボールによるものがある。」(記載事項(ア)と記載されていることからして、野球ゲームにおいて打者が自打球によりけがをすること、すなわち、自己操作の選手の行動によりその選手自身がけがをする事象が開示されており、このことから、前記と同様に、けがイベントの対象となる行動を起こした、遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して、そのけがの程度をみるものといえる。
そして、引用発明を認定した刊行物1に「負傷すると各能力値が下がり、負傷の程度によっては退場となる場合もある。」(記載事項(ウ))及び「ファウルの後の負傷にも2パターンある。担架が出てくると、残念ながら負傷退場ということになる。」(記載事項(エ))と記載されていることからして、引用発明には、けがの程度に応じて治癒可能かどうかをみて、けがをした選手を復帰あるいは選手交代のいずれかとすることが開示されており、また、人間が行う現実のサッカー及び野球の試合において、けがの程度に応じて治癒可能かどうかをみて、けがをした選手を復帰あるいは選手交代のいずれかとすることは、実際に行われている(例えば、刊行物8〔詳解 サッカーのルールと審判法 1998年版〕参照。)ことである。
そうすると、野球ゲーム及びサッカーゲームは、いずれも遊技者により操作される選手により対戦を行うフィールドゲームであるから、引用発明に開示される、けがイベントが確率的に発生するようにしたサッカーゲームについて、前記一般常識あるいは前記刊行物7に記載の発明に基づいて、前記けがイベントを野球ゲームに応用するとともに、刊行物1の前記記載事項(ウ)及び(エ)、あるいは、現実の野球の試合におけるけがをした選手の復帰あるいは選手交代に係る事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Gに係る本件発明5のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明5の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明5は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(6)本件発明6について
i.本件発明6と引用発明との対比
本件発明6は、本件発明5の構成に加えて、「行動記憶手段に記憶されるけが行動内容を複数種類とし、上記けが行動内容の指示結果に応じてけがイベント発生手段によるけがイベントの発生確率を変化させるけがイベント発生確率変化手段」を備えるものである。
そこで、前記(5)i.における本件発明5と引用発明との対比を踏まえて、本件発明6と引用発明とを対比すると、本件発明6と引用発明は、前記相違点E乃至Gにおいて相違することに加えて、下記の相違点Hにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点H.行動記憶手段及びけがイベント発生手段において、本件発明6は、行動記憶手段に記憶されるけが行動内容を複数種類とし、上記けが行動内容の指示結果に応じてけがイベント発生手段によるけがイベントの発生確率を変化させるけがイベント発生確率変化手段を備えているのに対して、引用発明は、前記けが行動の種類及びけがイベント発生確率変化手段の構成が明らかでない点。

ii.相違点の検討
相違点E乃至Gについては、前記(5)において検討したとおりである。
相違点Hについては、引用発明を認定した刊行物1に「負傷させる確率は、ショルダータックルよりもスライディングタックルのほうが高い。」(記載事項(ウ))と記載されていることからして、引用発明には、相手選手にけがをさせる確率が異なる複数種類の行動内容が存在することが開示されており、また、現実のサッカー及び野球の試合において、その発生確率が異なるけが行動が複数存在することは一般常識であるから、引用発明に開示される、けがイベントが確率的に発生するようにしたサッカーゲームについて、刊行物1の前記記載事項(ウ)、あるいは、現実のサッカー及び野球の試合におけるけがの発生に係る事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Hに係る本件発明6のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明6の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明6は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(7)本件発明7について
i.本件発明7と引用発明との対比
本件発明7は、本件発明5の構成に加えて、「プレイキャラクタの役割を記憶する役割記憶手段を備え、けがイベント発生手段が、この役割を考慮してけがイベントを発生させること」を1つの発明要件とするものである。
そこで、前記(5)i.における本件発明5と引用発明との対比を踏まえて、本件発明7と引用発明とを対比すると、本件発明7と引用発明は、前記相違点E乃至Gにおいて相違することに加えて、下記の相違点Iにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点I.本件発明7は、プレイキャラクタの役割を記憶する役割記憶手段を備え、けがイベント発生手段が、この役割を考慮してけがイベントを発生させるのに対して、引用発明は、前記役割記憶手段及びけがイベント発生手段の前記構成が明らかでない点。

ii.相違点の検討
相違点E乃至Gについては、前記(5)において検討したとおりである。
相違点Iについては、前記(5)i.において認定したように、引用発明が「各プレイキャラクタのデータを記憶する記憶手段」を備えていることは明らかであり、遊技者により操作されるプレイキャラクタを含めて、プレイキャラクタの役割を記憶する役割記憶手段を備え、けがイベント発生手段が、この役割を考慮してけがイベントを発生させることは、当業者が適宜になし得るものというべきであるから、引用発明に開示されるサッカーゲームについて、前記相違点Iに係る本件発明7のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明7の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明7は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(8)本件発明8について
i.本件発明8と引用発明との対比
本件発明8は、本件発明6の構成に加えて、「プレイキャラクタのキャラクタ情報であるスタミナ値を記憶するスタミナ値記憶手段を備え、けがイベント発生手段が、特定の役割であるプレイキャラクタについてのみ上記スタミナ値を考慮してけがイベントを発生させること」を備えるものである。
そこで、前記(6)i.における本件発明6と引用発明との対比を踏まえて、本件発明8と引用発明とを対比すると、本件発明8と引用発明は、前記相違点E乃至Hにおいて相違することに加えて、下記の相違点Jにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点J.本件発明8は、プレイキャラクタのキャラクタ情報であるスタミナ値を記憶するスタミナ値記憶手段を備え、けがイベント発生手段が、特定の役割であるプレイキャラクタについてのみ上記スタミナ値を考慮してけがイベントを発生させるのに対して、引用発明は、前記スタミナ値記憶手段及びけがイベント発生手段の前記構成が明らかでない点。

ii.相違点の検討
相違点E乃至Hについては、前記(6)において検討したとおりである。
相違点Jについては、現実のサッカー及び野球の試合において、出場選手のスタミナの程度とけがの発生とに相関関係があることや、チームの主力選手がけがをすると勝敗に大きく影響することは一般常識であり、また、スタミナに近似する概念として選手の疲労度や選手のタフ度とけがの発生確率とに相関関係があることを野球ゲームに取入れたものがそれぞれ刊行物5〔「’98YEAR 甲子園 魔法公認 完全攻略本 〜野球部に入ろう!〜」〕及び刊行物11〔「公式ガイドシリーズ実況パワフルプロ野球」〕に開示されていることからみても、引用発明に開示されるサッカーゲームについて、けがの発生に係る事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Jに係る本件発明8のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明8の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明8は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(9)本件発明9について
i.本件発明9と引用発明との対比
本件発明9は、本件発明5の構成に加えて、「けがイベント発生手段が、けが行動内容の指示結果に基づいてプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かを判断するけが判断手段と、けがイベントの対象となったと判断した場合には、このときの状況画面を表示器により表示するように画面制御を行うけが状況表示制御手段」を備えることを1つの発明要件とするものである。
そこで、前記(5)i.における本件発明5と引用発明との対比を踏まえて、本件発明9と引用発明とを対比すると、引用発明を認定した刊行物1に「ファウルシーンのスロー再生もプレーの確認の上では重要だ。」(記載事項(エ))及び「ファウルによって選手が負傷(INJURY)したときのゲーム画面」(記載事項(キ))が記載されていることからみて、引用発明がファウルに関係する行動により選手が負傷を引き起こしたか否かをコントローラの操作に基づいて検出判断するけが判断手段と、そのときの状況画面として表示器にプレー画面と重ねて「INJURY」と文字表示することにより表示するけが状況表示制御手段を備えていることは明らかであるから、本件発明9と引用発明は、前記相違点E乃至Gにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。

ii.相違点の検討
相違点E乃至Gについては、前記(5)において検討したとおりである。
また、本件発明9の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明9は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(10)本件発明10について
i.本件発明10と引用発明との対比
本件発明10は、本件発明5の構成に加えて、「プレイキャラクタのキャラクタ情報である特殊能力を記憶する特殊能力記憶手段を備え、この特殊能力に応じてけが治癒手段によるけがイベントの治癒確率を変化させるけが治癒確率変化手段」を備えることを1つの発明要件とするものである。
そこで、前記(5)i.における本件発明5と引用発明との対比を踏まえて、本件発明10と引用発明とを対比すると、本件発明10と引用発明は、前記相違点E乃至Gにおいて相違することに加えて、下記の相違点Kにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点K.本件発明10は、プレイキャラクタのキャラクタ情報である特殊能力を記憶する特殊能力記憶手段を備え、この特殊能力に応じてけが治癒手段によるけがイベントの治癒確率を変化させるけが治癒確率変化手段を備えているのに対し、引用発明は、前記特殊能力記憶手段及び前記けが治癒確率変化手段を備えていない点。

ii.相違点の検討
相違点E乃至Gについては、前記(5)において検討したとおりである。
相違点Kについては、「特殊能力」とは特許明細書によれば「けがをしやすい」「けがをしにくい」ことであるところ、現実のサッカー及び野球の試合において、選手によってけがのしやすさが異なることや、けがのしにくい選手ほどけがが治癒しやすいことは一般常識であり、また、前記「特殊能力」を野球ゲームに取入れたものが刊行物11〔「公式ガイドシリーズ実況パワフルプロ野球」(記載事項(イ)〕に開示されていることからみて、引用発明に開示されるサッカーゲームについて、けがの発生及び治癒に係る事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Kに係る本件発明10のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明10の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明10は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(11)本件発明11について
i.本件発明11と引用発明との対比
本件発明11は、本件発明5の構成に加えて、「プレイ制御手段が、けが治癒手段による治癒内容に基づいて、けがイベントの対象となったプレイキャラクタのプレイへの復帰が可能か否かを判断する復帰/交代判断手段と、復帰が可能であると判断された場合には、プレイへの復帰指令を発し、復帰が不可能であると判断された場合には、選手交代指令を発する指令発生手段」を備えることを1つの発明要件とするものである。
そこで、前記(5)i.における本件発明5と引用発明との対比を踏まえて、本件発明11と引用発明とを対比すると、本件発明11と引用発明は、前記相違点E乃至Gにおいて相違することに加えて、下記の相違点Lにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点L.本件発明11は、プレイ制御手段が、けが治癒手段による治癒内容に基づいて、けがイベントの対象となったプレイキャラクタのプレイへの復帰が可能か否かを判断する復帰/交代判断手段と、復帰が可能であると判断された場合には、プレイへの復帰指令を発し、復帰が不可能であると判断された場合には、選手交代指令を発する指令発生手段とを備えているのに対し、引用発明は、前記プレイ制御手段が前記復帰/交代判断手段及び前記指令発生手段を備えていない点。

ii.相違点の検討
相違点E乃至Gについては、前記(5)において検討したとおりである。
相違点Lについては、前記(5)ii.の相違点Gの検討において検討したように、引用発明を認定した刊行物1に「負傷すると各能力値が下がり、負傷の程度によっては退場となる場合もある。」(記載事項(ウ))及び「ファウルの後の負傷にも2パターンある。担架が出てくると、残念ながら負傷退場ということになる。」(記載事項(エ))と記載されていることからして、引用発明には、けがの程度に応じて治癒可能かどうかをみて、けがをした選手を復帰あるいは選手交代のいずれかとすることが開示されており、また、現実のサッカー及び野球の試合において、試合監督がけがの治癒内容に基づいてプレイへの復帰が可能か否かを判断することや、復帰が可能であるか否かに応じてプレイへの復帰指令又は選手交代指令を発することは一般常識であることからみて、引用発明に開示されるサッカーゲームについて、けがの治癒内容に基づいてプレイへの復帰又は選手交代を行う事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Lに係る本件発明10のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明11の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明11は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(12)本件発明12について
i.本件発明12と引用発明との対比
本件発明12は、本件発明5の構成に加えて、「プレイ制御手段が、指令発生手段により復帰指令が発せられた場合には、プレイキャラクタが復帰する画面を表示器により表示し、該指令発生手段により選手交代指令を発せられた場合には、プレイキャラクタが交代する画面を表示器により表示するように画面制御を行う復帰/交代表示制御手段」を備えることを1つの発明要件とするものである。
そこで、前記(5)i.における本件発明5と引用発明との対比を踏まえて、本件発明12と引用発明とを対比すると、引用発明を認定した刊行物1に「選手が負傷したときに、負傷した選手を担架で退場(OUT)させるためにゲームが中断するゲーム画面」(記載事項(キ))が記載されていることからみて、引用発明が選手交代指令を発せられた場合には、プレイキャラクタが交代する画面を表示器により表示するように画面制御を行う復帰/交代表示制御手段を備えていることは明らかであるから、本件発明12と引用発明は、前記相違点E乃至Gにおいて相違することに加えて、下記の相違点Mにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点M.本件発明12は、プレイ制御手段が、指令発生手段により復帰指令が発せられた場合には、プレイキャラクタが復帰する画面を表示器により表示するように画面制御を行う復帰/交代表示制御手段を備えているのに対し、引用発明は、前記プレイ制御手段が前記復帰/交代表示制御手段を備えているか明らかでない点。

ii.相違点の検討
相違点E乃至Gについては、前記(5)において検討したとおりである。
相違点Mについては、現実のサッカー及び野球の試合において、試合監督がけがの治癒内容に基づいてプレイへの復帰指令が発せられた場合に、プレイキャラクタが試合に復帰する状況が現出することは一般常識であることからみて、引用発明に開示されるサッカーゲームについて、プレイへの復帰指令が発せられた場合にプレイキャラクタが復帰する事象をゲーム上に再現するという着想に基づいて、前記相違点Mに係る本件発明12のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本件発明12の作用効果は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

iii.まとめ
よって、本件発明12は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(13)本件発明13について
まず、本件発明13と本件発明1とを対比すると、本件発明13が「ビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法」という方法の発明であるのに対して、本件発明1が「ビデオゲーム装置」という物の発明であることで相違する点を除いて、両者は、その発明の技術思想を同じくするものである。
しかして、本件発明1は、前記(1)にて対比判断したように、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明13についても、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
よって、本件発明13は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(14)本件発明14について
まず、本件発明14と本件発明5とを対比すると、本件発明14が「プレイ制御方法」という方法の発明であるのに対して、本件発明5が「ビデオゲーム装置」という物の発明であることで相違する点を除いて、両者は、その発明の技術思想を同じくするものである。
しかして、本件発明5は、前記(5)にて対比判断したように、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明14についても、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
よって、本件発明14は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(15)本件発明15について
まず、本件発明15と本件発明1とを対比すると、本件発明15が「プレイ制御方法が記録された可読記録媒体」という物の発明であるのに対して、本件発明1が「ビデオゲーム装置」という物の発明であることで相違する点を除いて、両者は、その発明の技術思想を同じくするものである。
しかして、本件発明1は、前記(1)にて対比判断したように、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明15についても、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
よって、本件発明15は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(16)本件発明16について
まず、本件発明16と本件発明5とを対比すると、本件発明16が「プレイ制御方法が記録された可読記録媒体」という物の発明であるのに対して、本件発明5が「ビデオゲーム装置」という物の発明であることで相違する点を除いて、両者は、その発明の技術思想を同じくするものである。
しかして、本件発明5は、前記(5)にて対比判断したように、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明16についても、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
よって、本件発明16は、引用発明及び刊行物7に記載の発明並びに前記周知技術A及びFに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本件発明1乃至16は、引用発明及び刊行物7に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1乃至16についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ビデオゲーム装置、ビデオゲームのプレイ制御方法及びその方法が記録された可読記録媒体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶する記憶手段と、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段と、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するゲーム中断制御手段と、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するゲーム再開制御手段とを備えたビデオゲーム装置であって、上記けがイベント制御手段は、けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動検出手段を備え、
上記行動検出手段は、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定することを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項2】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶する記憶手段と、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段と、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するゲーム中断制御手段と、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するゲーム再開制御手段とを備えたビデオゲーム装置であって、上記けがイベント制御手段は、けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動検出手段と、行動検出手段によってけがイベントが発生する動機となる行動が検出されたときけがイベントを発生させるか否かを判定するけがイベント発生判定手段とを備え、
上記行動検出手段は、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定し、上記けがイベント発生判定手段は、上記遊技者が操作するプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かを判定することを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項3】上記けがイベント制御手段は、けがイベント対象キャラクタがゲームに復帰可能か否かを判定する復帰判定手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のビデオゲーム装置。
【請求項4】上記復帰判定手段は、キャラクタ情報によって復帰可能であるかを判定することを特徴とする請求項3記載のビデオゲーム装置。
【請求項5】野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段とを有するビデオゲーム装置において、
上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容を読み出して上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させるけがイベント発生手段と、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して確率的に治癒させるけが治癒手段と、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するプレイ制御手段とを備えたことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項6】上記行動記憶手段に記憶されるけが行動内容を複数種類とし、上記けが行動内容の指示結果に応じて上記けがイベント発生手段によるけがイベントの発生確率を変化させるけがイベント発生確率変化手段を備えたことを特徴とする請求項5記載のビデオゲーム装置。
【請求項7】プレイキャラクタの役割を記憶する役割記憶手段を備え、上記けがイベント発生手段が、この役割を考慮して上記けがイベントを発生させることを特徴とする請求項5又は6記載のビデオゲーム装置。
【請求項8】プレイキャラクタのキャラクタ情報であるスタミナ値を記憶するスタミナ値記憶手段を備え、上記けがイベント発生手段が、特定の役割であるプレイキャラクタについてのみ上記スタミナ値を考慮して上記けがイベントを発生させることを特徴とする請求項6記載のビデオゲーム装置。
【請求項9】上記けがイベント発生手段が、上記けが行動内容の指示結果に基づいてプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かを判断するけが判断手段と、けがイベントの対象となったと判断した場合には、このときの状況画面を上記表示器により表示するように画面制御を行うけが状況表示制御手段とを備えたものであることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のビデオゲーム装置。
【請求項10】プレイキャラクタのキャラクタ情報である特殊能力を記憶する特殊能力記憶手段を備え、この特殊能力に応じて上記けが治癒手段によるけがイベントの治癒確率を変化させるけが治癒確率変化手段を備えたことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載のビデオゲーム装置。
【請求項11】上記プレイ制御手段が、上記けが治癒手段による治癒内容に基づいて、けがイベントの対象となったプレイキャラクタのプレイへの復帰が可能か否かを判断する復帰/交代判断手段と、復帰が可能であると判断された場合には、プレイへの復帰指令を発し、復帰が不可能であると判断された場合には、選手交代指令を発する指令発生手段とを備えたことを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載のビデオゲーム装置。
【請求項12】上記プレイ制御手段が、上記指令発生手段により復帰指令が発せられた場合には、プレイキャラクタが復帰する画面を上記表示器により表示し、該指令発生手段により選手交代指令を発せられた場合には、プレイキャラクタが交代する画面を上記表示器により表示するように画面制御を行う復帰/交代表示制御手段を備えたことを特徴とする請求項11記載のビデオゲーム装置。
【請求項13】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶手段に記憶し、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御し、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断し、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法であって、上記けがイベントの制御に際し、けがイベントが発生する動機となる行動を検出し、この検出において、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定することを特徴とするビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法。
【請求項14】野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段とを有するビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法において、
上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容を読み出して上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させた上で、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して確率的に治癒させ、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するようにしたことを特徴とするプレイ制御方法。
【請求項15】野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶手段に記憶するステップと、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するステップと、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するステップと、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するステップとを備えたプレイ制御方法が記録された可読記録媒体であって、上記けがイベントを制御するステップは、けがイベントが発生する動機となる行動を検出し、この検出において、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定するステップを備えたことを特徴とするプレイ制御方法が記録された可読記録媒体。
【請求項16】野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの行動内容を記憶する行動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた行動内容を上記行動記憶手段から読み出してプレイキャラクタに行わせる行動制御手段とを有するビデオゲーム装置におけるプレイ制御方法が記録された可読記録媒体において、
上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容を読み出して上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させるステップと、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに対して確率的に治癒させるステップと、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するステップとを備えたことを特徴とするプレイ制御方法が記録された可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊技者の代わりにビデオ画面上のプレイキャラクタに疑似体験(プレイング)させることのできるビデオゲーム装置、ビデオゲームのプレイ制御方法及びその方法が記録された可読記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、遊技者がビデオ画面上のプレイキャラクタとして疑似体験を行うプレイングゲームとして、プレイキャラクタがプレイ中にけがというマイナスイベントの対象となる場面を含むものが知られている。この場合、プレイ終了後にけがイベントの対象となったことが分かり、次のプレイにそのプレイキャラクタが登場できなくなることとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際のプレイでは、そのような場合には、けがの治癒程度によって実技プレイヤーがプレイに復帰し、あるいは、他の実技プレイヤーに選手交代するので、従来のゲームはリアリティ感に乏しく、その点で興趣に欠けるものであった。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることのできるビデオゲーム装置、ビデオゲームのプレイ制御方法及びその方法が記録された可読記録媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報を記憶する記憶手段と、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段と、上記けがイベントが発生したときにゲームのプレイを中断するゲーム中断制御手段と、上記けがイベントが終了したときにゲームのプレイを再開するゲーム再開制御手段とを備えたビデオゲーム装置であって、上記けがイベント制御手段は、けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動検出手段を備え、上記行動検出手段は、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かを判定することを特徴とするビデオゲーム装置として構成されている。
【0006】
この構成によれば、野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報が記憶手段に記憶され、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントがけがイベント制御手段により制御され、上記けがイベントが発生したときにゲーム中断制御手段によりゲームのプレイが中断され、上記けがイベントが終了したときにゲーム再開制御手段によりゲームのプレイが再開されるが、上記けがイベント制御手段による制御に際しては、けがイベントが発生する動機となる行動が行動検出手段により検出され、上記行動検出手段により、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作を受け付けられて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かが判定される。このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることができるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態としてのゲームシステム1を示す構成図である。
【0008】
このゲームシステム1は、ゲーム機本体と、ゲーム画面を表示する表示器であるテレビジョンモニタ(以下「モニタ」という。)2と、ゲームの音声を出力するための増幅回路3及びスピーカ4と、画像データ、音データ並びにプログラムデータからなるゲームプログラムの記録された記録媒体5とからなる。記録媒体5は、例えば上記ゲームプログラムやオペレーティングシステムのプログラムデータの記憶されたROM等がプラスチックケースに収納された、いわゆるROMカセットや、光ディスク、フレキシブルディスク等である。
【0009】
ゲーム機本体は、CPU6にアドレスバス、データバス及びコントロールバスからなるバス7が接続され、このバス7に、RAM8、インターフェース回路9、インターフェース回路10、信号処理プロセッサ11、画像処理プロセッサ12、インターフェース回路13、インターフェース回路14がそれぞれ接続され、インターフェース回路10に操作情報インターフェース回路15を介してコントローラ16が接続され、インターフェース回路13にD/Aコンバータ17が接続され、インターフェース回路14にD/Aコンバータ18が接続されて構成される。
【0010】
ここで、上記RAM8、インターフェース回路9及び記録媒体5でメモリ部19が構成され、上記CPU6、信号処理プロセッサ11及び画像処理プロセッサ12で、ゲームの進行を制御するための制御部20が構成され、上記インターフェース回路10、操作情報インターフェース回路15及びコントローラ16で操作入力部21が構成され、上記モニタ2、インターフェース回路13及びD/Aコンバータ17で画像表示部22が構成され、上記増幅回路3、スピーカ4、インターフェース回路14及びD/Aコンバータ18で音声出力部23が構成される。
【0011】
信号処理プロセッサ11は、主に3次元空間上における計算、3次元空間上での位置から擬似3次元空間上での位置への変換のための計算、光源計算処理、並びに音データの生成、加工処理を行う。
【0012】
画像処理プロセッサ12は、信号処理プロセッサ11における計算結果に基づいて、RAM8の表示エリアに対して描画すべき画像データの書き込み処理、すなわちテクスチャデータの書き込み処理を行う。
【0013】
コントローラ16は、外部から操作可能な操作部として、スタートボタン16a、Aボタン16b、Bボタン16c、十字キー16d、スティック型コントローラ16e、左トリガボタン16f、右トリガボタン16g、C1ボタン16h、C2ボタン16i、C3ボタン16j、C4ボタン16k及び奥行きトリガボタン16nを有し、各ボタンに対する操作内容に応じた操作信号をCPU6に送出するものである。
【0014】
スティック型コントローラ16eは、ジョイスティックとほぼ同一構成になっている。すなわち、直立したスティックを有し、このスティックの所定位置を支点として前後左右を含む360°方向に亘って傾倒可能な構成で、スティック
の傾倒方向及び傾倒角度に応じて、直立位置を原点とする左右方向のX座標及び前後方向のY座標の値が、インターフェース回路15,10を介してCPU6に送出されるようになっている。
【0015】
また、コントローラ16は、例えばゲームの進行状態等を一時的に記憶するためのカード型メモリ等が着脱可能なコネクタ16mを備えている。
【0016】
上記ゲームシステム1は、用途に応じてその形態が異なる。
【0017】
即ち、ゲームシステム1が、家庭用として構成されている場合においては、モニタ2、増幅回路3及びスピーカ4は、ゲーム機本体とは別体となる。また、ゲームシステム1が、業務用として構成されている場合においては、図1に示されている構成要素はすべて一体型となっている1つの筐体に収納される。
【0018】
また、ゲームシステム1が、パーソナルコンピュータやワークステーションを核として構成されている場合においては、モニタ2は、上記コンピュータ用のディスプレイに対応し、画像処理プロセッサ12は、記録媒体5に記録されているゲームプログラムデータの一部若しくはコンピュータの拡張スロットに搭載される拡張ボード上のハードウェアに対応し、インターフェース回路9,10,13,14、D/Aコンバータ17,18、操作情報インターフェース回路15は、コンピュータの拡張スロットに搭載される拡張ボード上のハードウェアに対応する。また、RAM8は、コンピュータ上のメインメモリ若しくは拡張メモリの各エリアに対応する。
【0019】
本実施形態では、ゲームシステム1が家庭用として構成されている場合を例にして説明する。
【0020】
次に、このゲームシステム1の概略動作について説明する。
【0021】
電源スイッチ(図示省略)がオンにされ、ゲームシステム1に電源が投入されると、CPU6が、記録媒体5に記憶されているオペレーティングシステムに基づいて、記録媒体5から画像データ、音データ及びプログラムデータからなるゲームプログラムを読み出す。読み出されたゲームプログラムの一部若しくは全部は、RAM8に格納される。
【0022】
以降、CPU6は、RAM8に記憶されているゲームプログラム、並びにゲームプレーヤがコントローラ16を介して指示する内容に基づいて、ゲームを進行する。即ち、CPU6は、ゲームプレーヤーによるコントローラ16に対する操作内容に応じてコントローラ16から送出される操作信号に基づいて、適宜、描画や音出力のためのタスクとしてのコマンドを生成する。
【0023】
信号処理プロセッサ11は、上記コマンドに基づいて3次元空間上(勿論、2次元空間上においても同様である)におけるキャラクタの位置等の計算や光源計算を行うとともに、音データの生成処理を行う機能を有する。
【0024】
続いて、画像処理プロセッサ12は、上記計算結果に基づいて、RAM8の表示エリア(フレームバッファ)上に、描画すべき画像データの書き込み処理等を行う。D/Aコンバータ17は、インターフェース回路13を介して、RAM8に書き込まれた画像データを所定周期毎にアナログ映像信号に変換し、モニタ2の管面上に画像として表示させる。
【0025】
一方、信号処理プロセッサ11から出力された音データは、インターフェース回路14を介してD/Aコンバータ18に供給され、ここでアナログ音信号に変換された後に、増幅回路3を介してスピーカ4から背景音、効果音や音声として出力される。
【0026】
次に、図9〜図17を用いて記録媒体5に記録されているゲームプログラムにより実行されるビデオゲームの概要について説明する。図9〜図17はゲームの一画面を示す図である。
【0027】
本ビデオゲームは、遊技者によるコントローラ16に対する操作に従って、プロ野球選手(プレイキャラクタ)が野球ゲームを行う。
【0028】
各チームの選手は、図9に示すように、出場可能な者として選手登録されている。つまり、画面上に選択可能なメニューとして表示されている。そして、遊技者による操作コントローラ16の操作により、このメニューから選択された選手は、攻撃側にあっては、図10に示すように、打者としてバッターボックスに立つという行動をとり、相手投手からの投球を待っている。あるいは、走者として塁にでるという行動をとる。この時のキャッチャーミットの位置が画面の上部中央に表示されている。また、走者がいる場合には、その走者が画面の上部左右に表示されている。そして、打者は、投球されたボールに対して打撃動作に入る。【0029】
また、操作コントローラ16の操作により、上記メニューから選択されたスタメン選手は、守備側にあっては、同図に示すように、投手としてマウンドに立ち、相手打者に向かって投球するという行動をとる。あるいは、野手としてそれそれの守備位置に分散するという行動をとる。
【0030】
けがイベントは、このような行動の中、以下のようなけが行動をした状況下で、ある確率によって起こる。ただし、けがイベントは任意に発生させることも可能である。
【0031】
(1)打者がデッドボールを受けた時
(2)打者が自打球に当たった時
(3)投手がひじを壊した時
(4)投手が強襲ヒットを受けた時
(5)走者がヘッドスライディングした時
(6)走者が体当たりした時
(7)野手がフェンスに激突した時
(8)野手がダイビングキャッチした時
(9)捕手がブロックした時
ただし、上記(3)におけるような投手のひじを壊すけがは、その投手のスタミナ値が0以下になった時のみ、投球毎にある確率でけがイベントの対象となる。この場合においても、けがイベントは任意に発生させることも可能である。
【0032】
また、上記(3)〜(9)におけるような状況が生じた時は、図11,図12に示すようにビックリマークが出るが、このビックリマークの色の違いにより、けがイベントの対象となったか否かを知らせる。すなわち、図11では、例えば黒いビックリマークを出して、選手がけがイベントの対象とならなかったことを知らせるが、図12では、例えば赤いビックリマーク(便宜上、図中では白抜きとしている。)を出して、選手がけがイベントの対象となったことを知らせる。なお、ここでは、キャラクタ情報である「タフさ」などの影響は受けないものとしている。
【0033】
次にけがイベントによる選手交代の判定について説明する。
【0034】
上記において、選手がけがイベントの対象となった場合には、その選手はベンチに下がり、治療を受ける。この際、図13に示すような表示によってその状況が知らされる。そして、けがイベントの対象となるに至った状況(例えばけがの程度等)によって、「プレイ続行」か、あるいは、「選手交代」かが判定される。このとき、「けがをしやすい」などのキャラクタ情報もこの判定に考慮される。
【0035】
「プレイ続行」と判定された場合には、選手は何の影響も受けずに試合に復帰でき、図14に示すような表示によってその状況が知らされる。一方、「選手交代」と判定された場合は、強制的に選手交代され、図15に示すような表示によってその状況が知らされる。このように「選手交代」を判定された選手は、以後、この試合には参加できない。この際、図16に示す画面により選手交代を行うが、交代される選手の名前の色が変わって、そのことを知らせる。すなわち、例えばその選手名だけが赤く表示される(同図中では、便宜上、交代される「大塚」選手の名前を太枠で囲んでいる)。
【0036】
次いで、試合後におけるけがイベントの影響について説明する。
【0037】
すなわち、けがによって「選手交代」を判定された選手は、以下の2通りの処理が行われる。
【0038】
(1)けがイベントの影響は大したことがなく、次の試合にその影響を与えない。
【0039】
(2)けがイベントの影響がひどく、次の試合以降、何試合か試合に出場できない。このとき、試合に出場できない日数は、選手のキャラクタ情報である「タフさ」の影響を受けて判定される。また、けがの程度によって選手の能力低下が起こる。
【0040】
図2は上記図1の主要部の機能ブロック図である。なお、以下では、その理解を容易にするために上記したような野球ゲームに適用した場合について説明するが、本発明は、その他のゲームにも同様に適用できることは勿論である。
【0041】
同図に示すように、本実施形態にかかるビデオゲーム装置(以下、「本装置」という。)は、ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報(選手一人一人の特殊能力やスタミナ値)を記憶する記憶手段Aと、ゲーム中におけるけがイベントを制御するけがイベント制御手段Bと、上記けがイベントが発生したときにゲームを中断するゲーム中断制御手段Cと、上記けがイベントが終了したときにゲームを再開するゲーム再開制御手段Dとを備えている。
【0042】
さらに、上記けがイベント制御手段Aは、けがイベントが発生する動機となる行動を検出する行動を検出する行動検出手段(不図示)と、この行動検出手段によってけがイベントが発生する動機となる行動が検出されたときけがイベントを発生させるか否かを判定するけがイベント発生判定手段(不図示)とを備えてもよい。さらに、上記けがイベント制御手段Aは、けがイベント対象キャラクタがゲームに復帰可能か否かを判定する復帰判定手段(不図示)を備えてもよい。さらに、上記復帰判定手段は、キャラクタ情報によって復帰可能であるかを判定することとしてもよい。
【0043】
このような構成を有する本装置は、例えば、プレイキャラクタである選手及びその選手の行動内容を表示するとともに、選手の種々の行動に対応するメニューを表示するモニタ2等である画像表示部(表示器)22と、これら種々のメニューから任意の行動に対するメニューを選択的に指示可能な操作コントローラ16等である操作入力部(操作部)21と、操作入力部21での操作内容と対応して選手の行動内容を記憶する記録媒体5等からなるメモリ部19の行動記憶手段61と、操作入力部21からの指示に応じた行動内容を行動記憶手段61から読み出して選手に行わせるCPU6等からなる制御部20の行動制御手段60と、行動記憶手段61から選手のプレイ中におけるけがイベント発生原因となるけが行動内容(例えばデッドボール,自打球等)を読み出してプレイ中の選手に確率的に発生させるけがイベント発生手段70と、上記けがイベントの対象となる選手に対して確率的に治癒させるけが治癒手段80と、上記治癒内容に応じて選手のプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかを発するプレイ制御手段90とを備えたものである。
【0044】
さらに、行動記憶手段61に記憶されるけが行動内容を複数種類とし、このけが行動内容の指示結果に応じてけがイベント発生手段70によるけがイベントの発生確率を変化させるけがイベント発生確率変化手段71を備えてもよい。さらに、選手の役割(例えば打者,走者等)を記憶する役割記憶手段72を備え、けがイベント発生手段70が、この役割を考慮して上記けがを発生させてもよい。さらに、選手のスタミナ値を記憶するスタミナ値記憶手段73を備え、けがイベント発生手段70が、特定の役割(例えば投手)である選手についてのみ上記スタミナ値を考慮して上記けがイベントを発生させてもよい。さらに、けがイベント発生手段70が、上記けが行動選択内容に基づいて選手がけがイベントの対象となったか否かを判断するけがイベント発生状況判断手段74と、けがイベントの対象となったと判断した場合には、このときの状況画面を上記画像表示部22より表示するように画面制御を行うけがイベント発生状況表示制御手段75とを備えてもよい。さらに、選手の特殊能力(例えば、「けがをしやすい」等)を記憶する特殊能力記憶手段81を備え、この特殊能力に応じてけが治癒手段80によるけがの治癒確率を変化させるけが治癒確率変化手段82を備えてもよい。さらに、プレイ制御手段90が、けが治癒手段80による治癒内容に基づいて、けがイベントの対象となった選手のプレイへの復帰が可能か否かを判断する復帰/交代判断手段91と、復帰が可能であると判断された場合には、プレイへの復帰指令を発し、復帰が不可能であると判断された場合には、選手交代指令を発する指令発生手段92とを備えてもよい。さらに、プレイ制御手段90が、指令発生手段92により復帰指令が発せられた場合には、選手がグラウンドに復帰する画面を画像表示部22により表示し、この指令発生手段92により選手交代指令を発せられた場合には、選手交代する画面を画像表示部22により表示するように画面制御を行う復帰/交代状況表示制御手段93を備えてもよい。
【0045】
なお、役割記憶手段72,スタミナ値記憶手段73及び特殊能力記憶手段81は上記記憶手段Aに相当するが、これらはメモリ部19内に構成される。また、けがイベント発生手段70,けがイベント発生確率変化手段71,けがイベント発生状況判断手段74,けがイベント発生状況表示制御手段75,けが治癒手段80,けが治癒確率変化手段82及びプレイ制御手段90のうちの復帰/交代判断手段91はけがイベント制御手段(行動検出手段,けがイベント発生判定手段及び復帰判定手段を含む。)Bに相当するが、これらは制御部20内に構築される。さらに、プレイ制御手段90の指令発生手段92及び復帰/交代状況表示制御手段93はゲーム中断制御手段C及びゲーム再開制御手段Dに相当するが、これらも制御部20内に構築される。
【0046】
次に、図3〜図8のフロー図を参照して、本装置の動作を説明する。この動作により、ビデオゲームのプレイ制御方法を具現化できる。
【0047】
まず、図3において、ビデオ画面に複数のメニューが表示され、操作入力部21はそのうちから所望のメニューを選択指示する。すると、この選択指示されたメニューに対応する行動内容が実行される。具体的には、スタメン選手により、上記したように、野球ゲームプレイが進行する(ステップST1)。
【0048】
この際、選手のプレイ中において、遊技者の操作コントローラ16の操作に従い、その選手がけがイベント発生原因となるけが行動をとったとすると、このけが行動内容に応じてその処理が行われる(ステップST2)。
【0049】
(打者▲1▼の場合の処理内容)
例えば、選手が打者であって、デッドボールを受けたとする。このときの処理は、図4に示すようになる。即ち同図において、けがイベント発生手段70は、役割記憶手段72により予め記憶された当該選手の役割(ここでは、「打者」である。)に応じて以下の処理をとる。従って、遊技者は、この選手の役割に応じて、いわゆるプレイを楽しむことができるので、興趣に富むゲームが期待できる。
【0050】
けがイベント発生状況判断手段74により、「打者がデッドボールを受けた」というけがイベントが発生したか否かが判定され(ステップST10)、「打者がデッドボールを受けていない」と判定されると処理が終了する(つまり、「リターン」される。以下、同様である)。
【0051】
けがイベント発生状況判断手段74により、「打者がデッドボールを受けた」いうけがイベントが発生したと判定されると、このときの様子が、けがイベント発生状況表示制御手段75を介して、画像表示部22により画面表示される(例えば、図17は「デッドボールを受けた」と判定された場合の一画面である。以下、同様に判定結果が画面表示される)。つまり、ここでは、けがイベント発生状況判断手段74は上記けがイベント制御手段Aの行動検出手段として機能する(以下、同様)。
【0052】
さらに、この場合は、同手段74により、選手がけがイベントの対象となったか、即ち「けがが発生したか」が判定され(ステップST11)、「けがが発生していない」と判定されると処理が終了する。つまり、ここでは、けがイベント発生状況判断手段74は上記けがイベント制御手段Aのけがイベント判定手段として機能する(以下、同様)。
【0053】
このように、本ゲームでは、遊技者は、臨場感に溢れたプレイを楽しむことができる。
【0054】
けがイベントの発生確率は、例えば乱数等を用いて確率的に判定されるが、さらに、けがイベント発生確率変化手段71により、選手のけが行動内容、つまりその選手がどのようなプレイをしたかにより、その確率を変化させる。例えば、選手がここでいう打者の場合と、投手の場合とでは、けがイベントの発生確率は異なる。また、同じ打者でも、この例のようにデッドボールを受けた場合と、次の例で示すように自打球を当てた場合とでも、けがイベントの発生確率は異なる。この点で本ゲームは、単調なものとならず、リアリティ感に溢れたものとなる。
【0055】
けがイベント発生状況判断手段74により、けがが発生したと判定されると、さらに、同手段74により、けがイベントの対象となってもプレイ続行可能であるか、つまり「けがをしても、試合が続行できるか」が判定され(ステップST12)、例えば「けがの程度が軽いため試合が続行できる」と判定されると処理が終了する。
【0056】
けがイベント発生状況判断手段74により、「試合が続行できない」と判定されると、そのけがイベントの対象となった選手はベンチ裏に一時戻って治療をうける(ステップST13)。この治療後に、同手段74により、「その選手が退いても試合が続行できるか」が判定され(ステップST14)、例えば「控え選手がいない場合等により試合が続行できない」と判定されると、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST15)。
【0057】
けがイベント発生状況判断手段74により、「その選手が退いたら試合を続行できない」と判定されると、プレイ制御手段90により、けが治癒手段80による上記治療を受けて、「その選手のけがが治癒したか」が判定される(ステップST16)。
【0058】
ここでは、例えば乱数による確率で治癒したかが判定されるが、その際、特殊能力記憶手段81に予め記憶しておいた当該選手の特殊能力が考慮される。即ち、その選手が特殊能力の「けがしやすい」や「けがしにくい」をもっていると、けが治癒確率変化手段82により、上記けが治癒手段80によるけが治療における治癒確率が有利になったり、不利になったりする。この点でも本ゲームは、単調なものとならず、リアリティ感に溢れたものとなる。
【0059】
そして、プレイ制御手段90の復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒した」と判定されると、指令発生手段92による復帰指令によって、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST17)。一方、プレイ制御手段90の復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒していない」と判定されると、指令発生手段92による選手交代指令によって、その選手は強制退場となり、選手交代モードに移行する(ステップST18)。これらの様子が復帰/交代状況表示手段93によって、画像表示部22に表示される。つまり、ここでは、復帰/交代判断手段91は上記けがイベント制御手段Aの復帰判定手段として機能し、指令発生手段92及び復帰/交代状況表示手段93は上記ゲーム中断制御手段及びゲーム再開制御手段として機能する(以下、同様)。
【0060】
このように、選手のグラウンドへの復帰あるいは選手交代をすることにより、ゲームはさらにリアリティ感に溢れ、より興趣に富むものとなる。さらに、上記選手の復帰/交代の判定は選手一人一人の特殊能力やスタミナ値等によって異なるものとなり、この点でも、ゲームはさらにリアリティ感に溢れ、より興趣に富むものとなる。
【0061】
(打者▲2▼の場合の処理内容)
例えば、選手が打者であって、自打球を当てたとする。このときの処理は、図5に示すようになる。即ち同図において、けがイベント発生手段70は、役割記憶手段72により予め記憶された当該選手の役割(ここでは、「打者」である。)に応じて以下の処理をとる。
【0062】
まず、遊技者からの操作入力部21による指示等により、上記図10に示すように、画面上で打者が、バッターボックスに立ち、相手投手の投げた球を打つ(ステップST30)。次いで、けがイベント発生状況判断手段74により、けがイベントが発生したかが次のように判定によりされる。つまり、「打球がバウンドしたか」が判定され(ステップST31)、「打球がバウンドした」と判定されると、処理が終了する。
【0063】
けがイベント発生状況判断手段74により、「打球がバウンドしなかった」と判定されると、「強振か」が判定され(ステップST32)、「強振しなかった」と判定されると、処理が終了する。
【0064】
けがイベント発生状況判断手段74により、「強振した」と判定されると、「早振りか」が判定され(ステップST33)、「早振りした」と判定されると、処理が終了する。
【0065】
けがイベント発生状況判断手段74により、「早振りしなかった」と判定されると、「打球の飛んだ方向が打者の方向か」が判定され(ステップST34)、「打球の飛んだ方向が打者の方向でない」と判定されると、処理が終了する。
【0066】
けがイベント発生状況判断手段74により、「打球の飛んだ方向が打者の方向である」と判定されると、「打球が選手に当たったか」が判定され(ステップST35)、「打球が打者に当たらなかった」と判定されると、処理が終了する。【0067】
けがイベント発生状況判断手段74により、「打球が打者に当たった」と判定されると、次に、けがイベントの対象となったか、つまり「けがが発生したか」が判定され(ステップST36)、「けがが発生しなかった」と判定されると、処理が終了する。
【0068】
けがイベント発生状況判断手段74により、「けがが発生した」と判定されると、「その選手がけがをしても試合が続行できるか」が判定され(ステップST37)、「試合が続行できる」と判定されると、処理が終了する。
【0069】
けがイベント発生状況判断手段74により、「試合が続行できない」と判定されると、その選手はベンチ裏に一時戻り治療を受ける(ステップST38)。この治療後に、同手段74により、「その選手が退いても試合が続行できるか」が判定され(ステップST39)、「試合が続行できない」と判定されると、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST40)。
【0070】
けがイベント発生状況判断手段74により、「その選手が退いたら試合を続行できない」と判定されると、プレイ制御手段90により、けが治癒手段80による治療を受けて、「その選手のけがが治癒したか」が判定される(ステップST41)。
【0071】
そして、プレイ制御手段90の復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒した」と判定されると、指令発生手段92による復帰指令によって、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST42)。一方、復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒していない」と判定されると、指令発生手段92による選手交代指令によって、その選手は強制退場となり、選手交代モードに移行する(ステップST43)。
【0072】
(投手の場合の処理内容)
例えば、選手が投手であって、ひじを壊す場合であるとする。このときの処理は、図6に示すようになる。即ち同図において、けがイベント発生手段70は、役割記憶手段72により予め記憶された当該選手の役割(ここでは、「投手」である。)に応じて以下の処理をとる。
【0073】
けがイベント発生状況判断手段74により、スタミナ値記憶手段73に予め記憶された投手のスタミナ値が参照され、そのスタミナ値が0であるかが判定される(ステップST50)。スタミナ値が0以下でないと判定されると、ひじを壊すおそれがないので、処理が終了する。このように、特定の役割をもつ選手の個性に応じて、遊技者がプレイを楽しむことができる。
【0074】
けがイベント発生状況判断手段74により、スタミナ値が0以下であると判定されると、「けがが発生したか」が判定され(ステップST51)、「けがが発生していない」と判定されると処理が終了する。
【0075】
けがイベント発生状況判断手段74により、「けがが発生した」と判定されると、「けがをしても、試合が続行できるか」が判定され(ステップST52)、「試合が続行できる」と判定されると処理が終了する。
【0076】
けがイベント発生状況判断手段74により、「試合が続行できない」と判定されると、そのけがをした選手はベンチ裏に一時戻って治療をうける(ステップST53)。この治療後に、同手段74により、その選手が退いても試合が続行できるかが判定され(ステップST54)、試合が続行できないと判定されると、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST55)。
【0077】
けがイベント発生状況判断手段74により、「その選手が退いたら試合を続行できない」と判定されると、プレイ制御手段90により、けが治癒手段80による上記治療を受けて、「その選手のけがが治癒したか」が判定される(ステップST56)。
【0078】
そして、プレイ制御手段90の復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒した」と判定されると、指令発生手段92による復帰指令によって、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST57)。一方、復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒していない」と判定されると、指令発生手段92による選手交代指令によって、その選手は強制退場となり、選手交代モードに移行する(ステップST58)。
【0079】
(野手の場合の処理内容)
例えば、選手が野手であるとする。このときの処理は、図7に示すようになる。即ち同図において、けがイベント発生手段70は、役割記憶手段72により予め記憶された当該選手の役割(ここでは、「野手」である。)に応じて以下の処理をとる。
【0080】
まず、遊技者からの操作入力部21による指示等により、その野手がけがイベント発生原因となる行動を起こす(ステップST70)。例えば、野手では、ピッチャー強襲、フェンス激突、ダイビングキャッチ、キャッチャーブロックの場合である。次いで、けがイベント発生状況判断手段74により、「けがが発生したか」が判定され(ステップST71)、「けがが発生していない」と判定されると処理が終了する。
【0081】
けがイベント発生状況判断手段74により、「けがが発生した」と判定されると、このときの様子が、けがイベント発生状況表示制御手段75からの表示指令を受けた画像表示部22により画面表示される(例えば、上記した図11,図12はフェンスに激突した場合の各場面である)。この場合は、さらに同手段74により、けがをしても試合が続行できるかが判定され(ステップST72)、試合が続行できると判定されると処理が終了する。
【0082】
けがイベント発生状況判断手段74により、試合が続行できないと判定されると、そのけがをした選手はベンチ裏に一時戻って治療をうける(ステップST73)。このときの様子が、けがイベント発生状況表示制御手段75からの表示指令を受けた画像表示部22により画面表示される(例えば、上記した図13の場面である)。この治療後に、同手段74により、その選手が退いても試合が続行できるかが判定され(ステップST74)、試合が続行できないと判定されると、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST75)。このときの様子が、けがイベント発生状況表示制御手段75からの表示指令を受けた画像表示部22により画面表示される(例えば、上記した図14の場面である)。
【0083】
けがイベント発生状況判断手段74により、「その選手が退いたら試合を続行できない」と判定されると、プレイ制御手段90により、けが治癒手段80による上記治療を受けて、「その選手のけがが治癒したか」が判定される(ステップST76)。
【0084】
そして、プレイ制御手段90の復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒した」と判定されると、指令発生手段92による復帰指令によって、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST77)。このときの様子が、けがイベント発生状況表示制御手段75からの表示指令を受けた画像表示部22により画面表示される(例えば、上記した図14と同じ場面である)。
【0085】
一方、復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒していない」と判定されると、指令発生手段92による選手交代指令によって、その選手は強制退場となり、選手交代モードに移行する(ステップST78)。このときの様子が、けがイベント発生状況表示制御手段75からの表示指令を受けた画像表示部22により画面表示される(例えば、上記した図15の場面である)。このように、その場面,場面に応じた判定結果の明確な画面が得られ、ゲームはリアリティ感に溢れたものとなる。
【0086】
(走者の場合の処理内容)
例えば、選手が走者であるとする。このときの処理は、図8に示すようになる。即ち同図において、けがイベント発生手段70は、役割記憶手段72により予め記憶された当該選手の役割(ここでは、「走者」である。)に応じて以下の処理をとる。
【0087】
まず、遊技者からの操作入力部21による指示等により、その走者がけがイベント発生原因となる行動を起こす(ステップST80)。例えば、走者では、スライディング、ヘッドスライディング、体当たりの場合である。次いで、けがイベント発生状況判断手段74により、「けがが発生したか」が判定され(ステップST81)、「けがが発生していない」と判定されると処理が終了する。
【0088】
けがイベント発生状況判断手段74により、「けがが発生した」と判定されると、「けがをしても、試合が続行できるか」が判定され(ステップST82)、「試合が続行できる」と判定されると処理が終了する。
【0089】
けがイベント発生状況判断手段74により、「試合が続行できない」と判定されると、そのけがをした選手はベンチ裏に一時戻って治療をうける(ステップST83)。この治療後に、同手段74により、「その選手が退いても試合が続行できるか」が判定され(ステップST84)、「試合が続行できない」と判定されると、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST85)。
【0090】
けがイベント発生状況判断手段74により、「その選手が退いたら試合を続行できない」と判定されると、プレイ制御手段90により、けが治癒手段80による上記治療を受けて、「その選手のけがが治癒したか」が判定される(ステップST86)。
【0091】
そして、プレイ制御手段90の復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒した」と判定されると、指令発生手段92による復帰指令によって、その選手はグラウンドに復帰する(ステップST87)。一方、復帰/交代判断手段91により、「選手のけがが治癒していない」と判定されると、指令発生手段92による選手交代指令によって、その選手は強制退場となり、選手交代モードに移行する(ステップST88)。
【0092】
そして、上記各ステップは試合が終了するまで続けられる(図3のステップST3)。なお、試合後、けがイベントの影響がなくなるまで、つまり「けがの完治」に複数日かかるか否かの判定が行われ、その結果が報告される(同図のステップST4)。
【0093】
このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることのできるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。
【0094】
なお、上記各行程(ステップST1〜S4等)は、本装置のゲームプログラムデータとして可読記録媒体に記録され、ゲーム開始時に読み出されてゲームに供されるものである。
【0095】
【発明の効果】
請求項1,13又は15の発明によれば、野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報が記憶手段に記憶され、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントがけがイベント制御手段により制御され、上記けがイベントが発生したときにゲーム中断制御手段によりゲームのプレイが中断され、上記けがイベントが終了したときにゲーム再開制御手段によりゲームのプレイが再開されるが、上記けがイベント制御手段による制御に際しては、けがイベントが発生する動機となる行動が行動検出手段により検出され、上記行動検出手段により、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作が受け付けられて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かが判定される。このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることができるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。
【0096】
請求項2の発明によれば、野球ゲームにおける1つまたは複数のキャラクタ情報が記憶手段記憶に記憶され、モニタ画面に表示されるゲームのプレイ中におけるけがイベントがけがイベント制御手段により制御され、上記けがイベントが発生したときにゲーム中断制御手段によりゲームのプレイが中断され、上記けがイベントが終了したときにゲーム再開制御手段によりゲームのプレイが再開されるが、上記けがイベント制御手段による制御に際しては、けがイベントが発生する動機となる行動が行動検出手段により検出され、行動検出手段によってけがイベントが発生する動機となる行動が検出されたときけがイベントを発生させるか否かがけがイベント発生判定手段により判定される。具体的には上記行動検出手段により、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作が受け付けられて、遊技者により操作されるプレイキャラクタに上記キャラクタ情報に応じたけがイベントを確率的に発生させる原因となる行動を、当該遊技者により操作されるプレイキャラクタが起こしたか否かが判定され、上記けがイベント発生判定手段により、上記遊技者が操作するプレイキャラクタがけがイベントの対象となったか否かが判定される。このようにして、遊技者はリアリティ感に溢れたプレイを楽しむことができるので、興趣に富むプレイが期待できる。
【0097】
さらに請求項3の発明のように、上記けがイベント制御手段は、けがイベント対象キャラクタがゲームに復帰可能か否かを判定する復帰判定手段を備えれば、遊技者はさらにリアリティ感に溢れたプレイを楽しむことができるので、より興趣に富むプレイが期待できる。
【0098】
さらに請求項4の発明のように、上記復帰判定手段は、キャラクタ情報によって復帰可能であるかを判定することとすれば、遊技者はさらにリアリティ感に溢れたプレイを楽しむことができるので、より興趣に富むプレイが期待できる。【0099】
請求項5,14又は16の発明によれば、ビデオ画面に野球ゲームにおけるプレイキャラクタ及びその行動内容が表示されるとともに、プレイキャラクタの種々の行動に対応する複数のメニューが表示され、操作部はそのうちから所望のメニューを選択指示する。すると、この選択指示されたメニューに対応する行動内容が実行される。この際、上記野球ゲームのプレイごとに、操作部からの操作が受け付けられ、上記行動記憶手段から遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイ中におけるけがの原因となるけが行動内容が読み出される。そして、これにより上記遊技者により操作されるプレイ中のプレイキャラクタにけがイベントを確率的に発生させた上で、上記けがイベントの対象となる上記遊技者により操作されるプレイキャラクタに確率的に治癒が施され、上記治癒内容に応じて上記遊技者により操作されるプレイキャラクタのプレイへの復帰指令あるいは選手交代指令のいずれかが発せられる。このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタに実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることのできるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。
【0100】
さらに請求項6の発明のように、上記行動記憶手段に記憶されるけが行動内容を複数種類とし、上記けが行動選択内容に応じて上記けがイベント発生手段によるけがの発生確率を変化させるけがイベント発生確率変化手段を備えれば、ゲームが単調になることを防止し、興趣に富むものとなる。
【0101】
さらに、請求項7の発明のように、プレイキャラクタの役割を記憶する役割記憶手段を備え、上記けがイベント発生手段が、この役割を考慮して上記けがを発生させれば、プレイキャラクタの役割に応じて、遊技者がロールプレイを楽しむことができるので、興趣に富むプレイが期待できる。
【0102】
さらに、請求項8の発明のように、プレイキャラクタのスタミナ値を記憶するスタミナ値記憶手段を備え、上記けがイベント発生手段が、特定の役割であるプレイキャラクタについてのみ上記スタミナ値を考慮して上記けがを発生させれば、この特定の役割をもつプレイキャラクタの個性に応じて、遊技者がロールプレイを楽しむことができるので、興趣に富むプレイが期待できる。
【0103】
さらに、請求項9の発明のように、上記けがイベント発生手段が、上記けが行動選択内容に基づいてプレイキャラクタがけがをしたか否かを判断するけが判断手段と、けがをしたと判断した場合には、このときの状況画面を上記表示器により表示するように画面制御を行うけが状況表示制御手段とを備えれば、その場面,場面に応じた判断結果の明確な画面が得られ、ゲームはリアリティ感に溢れるものとなる。
【0104】
さらに、請求項10の発明のように、プレイキャラクタの特殊能力を記憶する特殊能力記憶手段を備え、この特殊能力に応じて上記けが治癒手段によるけがの治癒確率を変化させるけが治癒確率変化手段を備えれば、ゲームが単調になることを防止し、興趣に富むものとなる。
【0105】
さらに、請求項11の発明のように、上記プレイ制御手段が、上記けが治癒手段による治癒内容に基づいて、けがをしたプレイキャラクタのプレイへの復帰が可能か否かを判断する復帰/交代判断手段と、復帰が可能であると判断された場合には、プレイへの復帰指令を発し、復帰が不可能であると判断された場合には、選手交代指令を発する指令発生手段とを備えれば、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなる。
【0106】
さらに、請求項12の発明のように、上記プレイ制御手段が、上記指令発生手段により復帰指令が発せられた場合には、プレイキャラクタが復帰する画面を上記表示器により表示し、該指令発生手段により選手交代指令を発せられた場合には、プレイキャラクタが交代する画面を上記表示器により表示するように画面制御を行う復帰/交代表示制御手段を備えれば、その場面,場面に応じた判断結果の明確な画面が得られ、ゲームはリアリティ感に溢れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態としてのゲームシステムを示す構成図である。
【図2】
本装置の主要部の機能ブロック図である。
【図3】
本装置の概略動作を示すフロー図である。
【図4】
本装置の概略動作を示すフロー図である。
【図5】
本装置の概略動作を示すフロー図である。
【図6】
本装置の概略動作を示すフロー図である。
【図7】
本装置の概略動作を示すフロー図である。
【図8】
本装置の概略動作を示すフロー図である。
【図9】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図10】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図11】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図12】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図13】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図14】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図15】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図16】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【図17】
ビデオゲームの一画面を示す図である。
【符号の説明】
A 記憶手段
B けがイベント制御手段(行動検出手段,けがイベント発生判定手段及び復帰判定手段を含む。)
C ゲーム中断制御手段
D ゲーム再開制御手段
19 メモリ部
20 制御部
21 操作入力部(操作部)
22 画像表示部(表示器)
60 行動制御手段
61 行動記憶手段
70 けがイベント発生手段
71 けがイベント発生確率変化手段
72 役割記憶手段
73 スタミナ値記憶手段
74 けがイベント発生状況判断手段
75 けがイベント発生状況表示制御手段
80 けが治癒手段
81 特殊能力記憶手段
82 けが治癒確率変化手段
90 プレイ制御手段
91 復帰/交代判断手段
92 指令発生手段
93 復帰/交代状況表示制御手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2006-01-26 
出願番号 特願平10-375088
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 渡部 葉子
塩崎 進
登録日 2000-04-07 
登録番号 特許第3053391号(P3053391)
権利者 株式会社コナミコンピュータエンタテインメントスタジオ
発明の名称 ビデオゲーム装置、ビデオゲームのプレイ制御方法及びその方法が記録された可読記録媒体  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 悦司  
代理人 谷 義一  

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