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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1137787
異議申立番号 異議2003-73473  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-10-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3437069号「光触媒組成物」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3437069号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 同請求項3ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3437069号の発明は、平成9年9月18日に特許出願(優先日 平成8年9月19日 日本)され、平成15年6月6日にその特許権の設定登録がなされ、その後、関西ペイント株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年1月26日に特許異議意見書および訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
全文訂正明細書の記載からみて、特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりのものと認める。
訂正事項a
請求項1を削除する。
訂正事項b
請求項2の項番を請求項1に繰り上げ、新請求項1(訂正前の請求項2)の
「顔料が酸化チタンである請求項1に記載の光硬化性組成物。」を
「9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物、及び酸化チタンからなる光硬化性組成物。」と訂正する。
訂正事項c
請求項3の項番を請求項2に繰り上げ、新請求項2(訂正前の請求項3)の「請求項1または2」を「請求項1」とする。
訂正事項d
請求項4の「請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性組成物をガリウム含有ランプで光硬化する硬化方法。」を引用請求項に対応する3つの請求項に分割し、それぞれを以下のとおり、新請求項3、新請求項4及び新請求項5とする。
「【請求項3】9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物、及び実用上光カチオン重合に使用可能な顔料からなる光硬化性組成物をガリウム入りメタルハライドランプで光硬化する硬化方法。
【請求項4】顔料が酸化チタンである請求項3に記載の硬化方法。
【請求項5】多環芳香族化合物が、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジベンジルアントラセンおよびそれらの誘導体から選ばれる一種以上である請求項3または4記載の硬化方法。」
訂正事項e
請求項5の項番を請求項6に繰り下げ、新請求項6(訂正前の請求項5)の
「カルバゾール誘導体であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。」を
「増感剤としてのカルバゾール誘導体であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。」と訂正する。
訂正事項f
請求項6の項番を請求項7に繰り下げ、新請求項7(訂正前の請求項6)の
「請求項5記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。」を
「請求項6記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。」と訂正する。
訂正事項g
請求項7の項番を請求項8に繰り下げ、新請求項8(訂正前の請求項7)の
「1-ナフトール誘導体、2-ナフトール誘導体、1-アルコキシナフタレン誘導体、または2-アルコキシナフタレン誘導体である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。」を
「増感剤としての1-ナフトール誘導体、2-ナフトール誘導体、1-アルコキシナフタレン誘導体、または2-アルコキシナフタレン誘導体である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。」と訂正する。
訂正事項h
請求項8の項番を請求項9に繰り下げ、新請求項9(訂正前の請求項8)の
「請求項7記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。」を
「請求項8記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項aは請求項1の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)訂正事項bは、訂正事項aによる請求項1の削除に伴い、項番を整理するとともに、請求項2の記載を引用形式から独立形式に改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(3)訂正事項cは、訂正事項aによる請求項1の削除に伴い、項番を整理するとともに、引用請求項の項番を整理後のものに改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(4)訂正事項dは、次の2つの訂正を実質的に含むものである。
(d-1)請求項4を、引用請求項に対応する3つの請求項(新請求項3〜5)に分割する。
(d-2)新請求項3(請求項1を引用した部分)の「ガリウム含有ランプ」を「ガリウム入りメタルハライドランプ」に訂正する。
これらについてみると、
(d-1)は、訂正事項aによる請求項1の削除に伴い、削除前の請求項1を引用していた請求項4においてその内容を維持するために、請求項1を引用していた部分を独立形式に改めて新請求項3とし、請求項2を引用していた部分を新請求項3を引用する形式に改めて新請求項4とし、更に、請求項3を引用していた部分を新請求項3または4を引用する形式に改めて新請求項5としたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(d-2)は、訂正前の明細書の「本発明の触媒組成物を使用した硬化性組成物は、光により容易に硬化することができる。光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、クセノンランプ、カーボンアーク灯等が用いられる。・・・特に、厚膜硬化や酸化チタンのような顔料含有の光硬化性組成物に使用する際は、ガリウム入りメタルハライドランプが好適に用いられる。」(段落【0027】)との記載に基づいて「ガリウム含有ランプ」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(5)訂正事項eは、次の3つの訂正を実質的に含むものである。
(e-1)請求項5の項番を請求項6に繰り下げる。
(e-2)カルバゾール誘導体に「増感剤としての」という限定を付する。
(e-3)光カチオン重合触媒として作用する「ジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、」を削除する。
これらについてみると、
(e-1)は、訂正事項a及びdによる請求項の削除及び分割に対応して項番を整理するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(e-2)は、訂正前の本件明細書の「本発明に使用できる増感剤を例示すると、カルバゾール、N-エチルカルバゾール、N-ビニルカルバゾール、N-フェニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体」(段落【0017】)なる記載に基づき、カルバゾール誘導体を増感剤としてのものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(e-3)は、光カチオン重合触媒として作用する化合物として列挙されたものの中から「ジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、」を削除して選択肢を狭めるものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。
(6)訂正事項fは、訂正事項a及びdによる請求項の削除及び分割に対応して項番を整理し、引用請求項の項番を整理後のものに改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(7)訂正事項gは、次の2つの訂正を実質的に含むものである。
(g-1)請求項7の項番を請求項8に繰り下げる。
(g-2)「1-ナフトール誘導体、2-ナフトール誘導体、1-アルコキシナフタレン誘導体、または2-アルコキシナフタレン誘導体である多環芳香族化合物」に「増感剤としての」という限定を付する。
これらについてみると、
(g-1)は、訂正事項a及びdによる請求項の削除及び分割に対応して項番を整理するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(g-2)は、訂正前の本件明細書の「本発明に使用できる増感剤を例示すると、・・・1-ナフトール、2-ナフトール、1-メトキシナフタレン、1-ステアリルオキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、2-ドデシルオキシナフタレン、4-メトキシ-1-ナフトール、グリシジル-1-ナフチルエーテル、2-(2-ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジメトキシナフタレン、1,1’-チオビス(2-ナフトール)、1,1’-ビ-2-ナフトール、1,5-ナフチルジグリシジルエーテル、2,7-ジ(2-ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4-メトキシ-1-ナフトール、ESN-175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、・・・」(段落【0017】)との記載に基づき、「1-ナフトール誘導体、2-ナフトール誘導体、1-アルコキシナフタレン誘導体、または2-アルコキシナフタレン誘導体である多環芳香族化合物」を増感剤としてのものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(8)訂正事項hは、訂正事項a及びdによる請求項の削除及び分割に対応して項番を整理し、引用請求項の項番を整理後のものに改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(9)そして、これらの訂正事項aないしhは、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記訂正の結果、訂正後の本件請求項1〜9に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明9」という。)は、訂正された本件明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により構成される次のとおりのものである。
「【請求項1】9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物、及び酸化チタンからなる光硬化性組成物。
【請求項2】多環芳香族化合物が、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジベンジルアントラセンおよびそれらの誘導体から選ばれる一種以上である請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項3】9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物、及び実用上光カチオン重合に使用可能な顔料からなる光硬化性組成物をガリウム入りメタルハライドランプで光硬化する硬化方法。
【請求項4】顔料が酸化チタンである請求項3に記載の硬化方法。
【請求項5】多環芳香族化合物が、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジベンジルアントラセンおよびそれらの誘導体から選ばれる一種以上である請求項3または4記載の硬化方法。
【請求項6】増感剤としてのカルバゾール誘導体であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。
【請求項7】請求項6記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。
【請求項8】増感剤としての1-ナフトール誘導体、2-ナフトール誘導体、1-アルコキシナフタレン誘導体、または2-アルコキシナフタレン誘導体である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。
【請求項9】請求項8記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。

4.特許異議申立についての判断
4-1.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、甲第1ないし5号証及び参考資料1を提出して、以下の理由により、訂正前の本件請求項1〜8に係る発明についての特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(1)訂正前の請求項1〜3及び5〜8に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)仮にそうでないとしても、訂正前の請求項1〜3及び5〜8に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1〜5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4-2.合議体の判断
4-2-1.取消理由
当審において通知した取消理由は次のとおりであり、下記の刊行物が引用された。
(1)訂正前の請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)訂正前の請求項1〜3及び5〜8に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1〜5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<刊行物>
刊行物1:特開平8-20728号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭59-184220号公報(同甲第2号証)
刊行物3:特開昭50-158680号公報(同甲第3号証)
刊行物4:特開平5-104543号公報(同甲第4号証)
刊行物5:国際公開第96/13851号パンフレット(同甲第5号証)

4-2-2.刊行物1〜5の記載事項
刊行物1
(1-1)「必須の構成成分として、(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質を100重量部、(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物を0.001〜5重量部、(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.01〜15重量部含有することを特徴とする光学的立体造形樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)

(1-2)「本発明の光学的立体造形用樹脂組成物の構成要件となる、(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質とは、エネルギー線照射により活性化したエネルギー線感受性カチオン重合開始剤により高分子化または、架橋反応を起こす化合物をいう。例示すれば、エポキシ化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル化合物などであり、これらの1種または2種以上の配合物を使用することができる。中でもエポキシ化合物が適している。該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが適している。」(段落【0009】)

(1-3)「本発明で用いることができる(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質のエポキシ化合物以外の具体例としては、トリメチレンオキサイド、3,3-ジメチルオキセタン、3,3-ジクロロメチルオキセタン等のオキセタン化合物;・・・エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4-ジヒドロピラン-2-メチル(3,4-ジヒドロピラン-2-カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のビニル化合物;・・・等が挙げられる。」(段落【0013】)

(1-4)「本発明で使用する(2)のエネルギー線を吸収する芳香族有機化合物とは、照射されたエネルギー線を一部吸収する芳香族有機化合物であり、好ましくは4から8員環が2個から5個縮合した骨格を持った芳香環を有する有機化合物である。かかる化合物の代表的なものは表1の(1)〜(25)に示される骨格を持ち、骨格中に1つ以上の芳香族性を持った環を有する有機化合物である。」(段落【0015】)

(1-5)「(2)のエネルギー線を吸収する芳香族有機化合物のさらに具体的な例としては、・・・、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、・・・、カルバゾール、・・・、β-ナフトール、・・・等が挙げられる。」(段落【0017】)

(1-6)「本発明で使用する(3)のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、一般式
[R1 a R2 b R3 c R4 d Z]m+[MXn+m ]m- (A)
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。上記一般式(A)中、陽イオンはオニウムであり、ZはS,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,ハロゲン(例えばI,Br,Cl)又はN=Nである。R1 ,R2 ,R3 ,R4 は、炭素数が1〜60で、炭素以外の原子をいくつ含んでもよい有機の基で、同一でも異なってもよい。また、R1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。a,b,c,dはそれぞれ0〜3なる整数であってa+b+c+dはは、Zの価数に等しい。Mはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、B,P,AS,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn,Co,等である。Xはハロゲンであり、mは陽イオンの正味の電荷であり、nはMの価数を示す。上記一般式(A)中の陰イオン[MXn+m ]m- の具合例としてはテトラフルオロボレート(BF4)- 、ヘキサフルオロホスフエート(PF6 )- 、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6 )- 、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6 )- 、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6 )- 等が挙げられる。」(段落【0019】)

(1-7)「本発明では、この様なオニウム塩のなかでも特に芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。中でも、特開昭50-151997号、特開昭50-158680号公報に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50-151997号、・・・公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、・・・ 等が好ましい。」(段落【0021】)

(1-8)「・・・本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて熱感応性カチオン重合開始剤、顔料、染料等の着色剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種樹脂添加物を添加することもできるが必須ではない。」(段落【0023】)

(1-9)「本発明の樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等があり、紫外線がもっとも好ましい。紫外線の光源としては、紫外線レーザ、水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、アルカリ金属ランプ等があるが、集光性が良好なことからレーザ光線が特に好ましい。」(段落【0024】)

(1-10)「実施例1
(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート80部、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル20部、(2)エネルギー線を吸収する芳香族化合物として、9,10-ジエトキシアントラセン0.01部、(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として、ビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドヘキサフルオロアンチモネート0.2部を用い、これらを40℃の温度条件で十分混合して光学的造形用樹脂を得た。」(段落【0032】)

刊行物2
(2-1)「(1)水、少なくとも1種の、分散されたカチオン状に硬化性の化合物および化学線を照射したとき該硬化性化合物をカチオン重合させることができる感光性オニウム塩を含んでいることを特徴とする水性分散体の形態の組成物。
(2)前記の硬化性化合物が、・・・4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2-シクロヘキセンジオキサイド、および3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-シクロヘキサンカルボキシレートから選ばれる一種またはそれ以上の低粘度エポキシ稀釈剤と、一種またはそれ以上の、比較的高分子量のエポキシ樹脂との混合物である特許請求の範囲第1項に記載の組成物。
(3)前記の光開始剤が、式・・・で示されるヨードニウム塩である特許請求の範囲第1または第2項に記載の組成物。
-省略-
(5)前記の光開始剤が、式・・・で示されるスルホニウム塩である特許請求の範囲第1または第2項に記載の組成物。
-省略-
(7)前記の感光性オニウム塩のスペクトル感度を増加させる増感剤も含まれる特許請求の範囲第1〜6項の任意の1項の組成物。
(8)前記の増感剤が、9,10-ジエトキシアントラセンまたはアルキル化9,10-ジエトキシアントラセンである特許請求の範囲第7項に記載の組成物。
-省略-
(12)一種またはそれ以上の、不活性ポリマー充填剤、不活性無機充填剤・・・も含まれる特許請求の範囲1〜11項の任意の1項に記載の組成物。
-省略-
(14)前記の不活性充填剤が、・・・または二酸化チタンである特許請求の範囲12項または第13項に記載の組成物。
-以下、省略-」(特許請求の範囲)

(2-2)「本発明の組成物は、水、少なくとも一種の分散された、カチオン状に硬化性の化合物および化学線を照射したとき該硬化性化合物をカチオン重合させることができる光開始剤(photoinitiators)としての、一種またはそれ以上の感光性オニウム塩を含む分散体である。前記の組成物が、また、一種またはそれ以上の、分散安定剤としての界面活性剤および水溶性コロイドおよび使用する輻射線に対する光開始剤のスペクトル感度を増加させるのに通常必要とされるスペクトル増感剤(Spectral sensitizers)も含有するのが好ましい。前記の組成物は、また、不活性なポリマー充填剤または無機充填剤、反応性希釈剤、可塑剤、殺生剤(biocides)、脱泡剤、顔料、または発明者等の同時係属出願第8217461号に記載のような化学線照射によって色が変化しうる染料も含有する。」(第4頁左上欄5行〜同頁右上欄1行)

(2-3)「好ましいオニウム塩光開始剤は、ヨードニウムおよびスルホニウム塩である。ヨードニウム塩は、式・・・で示すことができる。
スルホニウム塩は、式・・・で示すことができる。
-中略-
前記の式の好ましい光開始剤は、4,4’-ジメチルジフエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフエニルスルホニウムヘキサフルオロホスフエートおよび4-チオフエノキシフエニル-S-ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフエートである。」(第4頁右上欄2行〜同頁左下欄19行)

(2-4)「増感剤(Sensitizer)は、光開始剤のスペクトル感度を増加させるのに添加するのが好ましい。好ましい増感剤は、9,10-ジエトキシアントラセンおよび2-アルキル-9,10-ジエトキシアントラセンであり、・・・」(第4頁左下欄20行〜同頁右下欄4行)

(2-5)「本発明の組成物に含むことができるカチオン状に光重合性の物質には、環状ホルマールおよびアセタール、ビニルエーテル、環状エーテル、ラクトーン、ポリシロキサン、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂およびエポキサイドが含まれる。」(第4頁右下欄7〜12行)

(2-6)「ジグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2-シクロヘキセンオキサイドおよび3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-シクロヘキサンカルボキシレートのような反応性希釈剤を、かようなエポキシ樹脂の粘度改良剤として使用することができる。この反応性希釈剤は、エポキシ樹脂を水性媒体中に分散性にするために必要な場合に使用される。しかし、反応性稀釈剤の過剰な使用は、比較的軟かいフィルムになり、硬化時間が増加するので避けるべきである。」(第5頁左上欄20〜同頁右上欄11行)

(2-7)「実施例1
ポリビニルアルコールの13%水性溶液:・・・ 85(重量部)
ブタンジオールジグリシジルエーテル;・・・ 25(重量部)
エポキシ樹脂;アラルダイト61003 20(重量部)
水 15(重量部)
ジフエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート 4(重量部)
反応性希釈剤;CY 1794 3.6(重量部)
アセトン 3(重量部)
CI顔料バイオレット23の15%水性分散液 1(重量部)
ポリマー充填剤;・・・ 0.8(重量部)
ジアセトンセトンアルコール 0.6(重量部)
増感剤;FC 5106 0.5(重量部)
界面活性剤:・・・ 0.3(重量部)
-省略-
(3)アラルダイト6100は、チバ-ガイギー社から得られるビスフエノールA/エピクロロヒドリン エポキシ樹脂である。
(4)CY 179は、チバ-ガイギー社から得られる3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-シクロヘキサンカルボキシレートである。
-省略-
(6)FC 510は、3M社から得られる9,10-ジエトキシアントラセンである。
-省略-
前記の組成物を90線/cmポリエステルのフイラメントのメツシユの両側に塗被し、乾燥させて、写真の透明ポジテイブを通して1mの距離で200秒、800Wの水銀ハライド燈を照射した。」(第6頁右上欄3行〜同頁右下欄2行)

刊行物3
(3-1)「(1)開始剤が式・・・
の芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤であることを特徴とする、カチオン重合性である有機物質と光開始剤とから成る光重合性組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)

(3-2)「本発明は、紫外線スペクトル領域及び可視スペクトル領域例えば約300乃至700ミリミクロンの波長にわたって敏感であり、かつ、この波長領域内の輻射に対して比較的短時間露出することにより、あるいは電子線照射への露出により光硬化される、カチオン重合性物質及び光開始剤から成る新規の光重合性組成物を提供するものである。本発明はまた新規の錯塩光開始剤を提供する。
本発明によれば、化学線輻射あるいは電子線に対する露出によって容易に光硬化される光重合性組成物が提供されるが、この組成物はカチオン重合性である有機物質と光開始剤としてのある種の光鋭感性芳香族ヨードニユーム錯塩、並びに、任意的に、該光開始剤に対する鋭感剤、を含むものである。」(第3頁左上欄4〜18行)

(3-3)「芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤の適当な例は次のものを含む:ジフエニルヨードニウム テトラフルオロボレート・・・ジ(ナフチル)ヨードニウム テトラフルオロボレート・・・ジフエニルヨードニウム ヘキサクロロアンチモネート・・・2,2’-ジフエニルヨードニウム テトラフルオロボレート、・・・本発明の組成物中に使用するのに適した芳香族ヨードニウム錯塩の中で、好ましい塩はジフエニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフエートのようなジアリールヨードニウム ヘキサフルオロホスフエートである。」(第4頁右上欄4行〜同頁右下欄20行)

(3-4)「本発明に於て使用できる他の有用なエポキシ含有物質は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキサン カルボキシレート、及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、によつて代表されるエポキシシクロヘキサンカルボキシレートのような一つまたは一つ以上のシクロヘキサンオキサイド基を含む物質である。」(第5頁右下欄18行〜第6頁左上欄8行)

(3-5)「本発明に従つてカチオン重合できる他の有機物質はオキセタン、アルキルビニルエーテル、ラクトン、その他のような周知の種類のカチオン重合性物質を含む。」(第7頁左上欄7〜10行)

(3-6)「必要ならば、この光重合性組成物の中に、・・・顔料、などを含めてもよい。」(第7頁左下欄4〜10行)

(3-7)「例示的鋭感剤は次の範疇に於て見出される:芳香族アミン、アミノケトン、及び着色芳香族多環炭化水素。」(第8頁左上欄18〜20行)

(3-8)「個々の実施例に於て、コーティングは実施例1-6と同じく、第II表に示される各種のエポキシ物質と各種の量の各種の芳香族ヨードニウム錯塩を含む光重合組成物からつくられ、このコーティングは次に5インチ(12.7cm)でゼネラルエレクトリツクのサンランプへ露出されるかあるいは7インチ(17.8cm)でゼネラルエレクトリツクの「H3T7」(R)へ露出された。」(第9頁左上欄1〜8行)

(3-9)


」(第10頁)

刊行物4
(4-1)「【請求項1】特定の波長域の可視光を照射することによって硬化する光硬化樹脂用であって、前記波長域付近に輝線を有する金属元素を添加、封入したメタルハライドランプからの可視光を照射することによる光硬化樹脂の硬化方法。
-省略-
【請求項3】前記金属がインジウムであることを特徴とする請求項1記載の光硬化樹脂用の硬化方法。」(特許請求の範囲)

(4-2)「以下、本発明を実施例を用いて説明する。図1に本発明に使用する波長が400〜500nmの短波長の可視光域に感能域を有する光硬化樹脂用硬化装置に使用するために、ベースとなる水銀に対して金属元素としてインジウムをメインに添加、封入した短波長可視光メタルハライドランプのスペクトル特性を示す。」(段落【0009】)

刊行物5
(5-1)「1.放電管と、少なくとも2つの電極とを備え、放電管は水銀、少なくとも1つの希ガス、少なくとも1つのハロゲン、アルミニウム(Al)及びインジウム(In)ならびに金属ハロゲン化物を形成するための他の金属から成るイオン化可能な封入物を含む光学用メタルハライドランプにおいて、封入物は他の金属としてガリウム(Ga)を含むことを特徴とする光学用メタルハライドランプ。」(クレーム1)

4-2-3.対比・判断
(1)本件発明1について
刊行物1には、その特許請求の範囲の請求項1に、「必須の構成成分として、(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質を100重量部、(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物を0.001〜5重量部、(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.01〜15重量部含有することを特徴とする光学的立体造形樹脂組成物」(摘示記載(1-1))が記載されており、この(1)〜(3)成分について「(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質とは、エネルギー線照射により活性化したエネルギー線感受性カチオン重合開始剤により高分子化または、架橋反応を起こす化合物をいう。例示すれば、エポキシ化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル化合物などであり、これらの1種または2種以上の配合物を使用することができる。中でもエポキシ化合物が適している。該エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが適している」(摘示記載(1-2))、「(2)のエネルギー線を吸収する芳香族有機化合物とは、照射されたエネルギー線を一部吸収する芳香族有機化合物であり、好ましくは4から8員環が2個から5個縮合した骨格を持った芳香環を有する有機化合物である」(摘示記載(1-4))及び「(3)のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である」(摘示記載(1-6))と記載されている。更に、刊行物1には、「(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート80部、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル20部、(2)エネルギー線を吸収する芳香族化合物として、9,10-ジエトキシアントラセン0.01部、(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として、ビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドヘキサフルオロアンチモネート0.2部を用い、これらを40℃の温度条件で十分混合して光学的造形用樹脂を得た」(摘示記載(1-10))との実施例が示されている。
本件発明1とこの刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「光学的立体造形樹脂組成物」が「光硬化性」を有することは自明であるから、両者はともに「光硬化性組成物」である点で一致しており、組成物を構成する各成分についてみると、刊行物1に記載された発明における「(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質」は、エネルギー線照射により活性化したエネルギー線感受性カチオン重合開始剤により高分子化等を起こす化合物であり、エポキシ化合物、ビニル化合物などであり、該エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物等が適している、とされており、実施例では「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート」が用いられているところから、本件発明1における「脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物」に相当するものである。
また、「(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」は、照射されたエネルギー線を一部吸収する芳香族有機化合物であり、好ましくは4から8員環が2個から5個縮合した骨格を持った芳香環を有する有機化合物、とされ、実施例では「9,10-ジエトキシアントラセン」が用いられているところから、本件発明1における「9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物」に相当するものである。そして、本件訂正明細書の、「本発明に使用される増感剤は、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ化合物であり、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも一つ以上を有する多環芳香族化合物またはカルバゾール誘導体である」(段落【0015】)、「多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい」(段落【0016】)及び「本発明に使用できる増感剤を例示すると、・・・、9,10-ジメトキシアントラセン、・・・9,10-ジエトキシアントラセン、・・・等のアントラセン誘導体、・・・などを挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい」(段落【0017】)との記載からみて、刊行物1の実施例において「(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」として用いられている9,10-ジエトキシアントラセンは、本件発明1における「330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物」にも該当するものということができる。
更に、刊行物1に記載された発明における「(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤」は、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である、とされ、実施例では「ビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドヘキサフルオロアンチモネート」、即ちトリフェニルスルホニウム塩化合物が用いられているところから、本件発明1における「光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種」に相当するものである。
そうすると、本件発明1と刊行物1に記載された発明とは、本件発明1に即してみれば、
「9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物」
である点で一致しているが、本件発明1においては、組成物が「酸化チタン」を含むとされているのに対して、刊行物1にはこのような成分について記載されていない点で、これらの発明の間には相違が認められる。

そこでこの相違点について検討する。
刊行物1には「本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて熱感応性カチオン重合開始剤、顔料、染料等の着色剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種樹脂添加物を添加することもできる」(摘示記載(1-8))と記載されており、光学的立体造形樹脂組成物中の任意成分として顔料が挙げられている。そして、樹脂に配合する顔料としては、酸化チタンは代表的なものの一つであり、刊行物2にも、硬化性化合物、感光性オニウム塩及び9,10-ジエトキシアントラセン等の増感剤を含む組成物において、不活性充填剤として二酸化チタンを配合すること(摘示記載(2-1))が開示されているところからみて、刊行物1に記載された発明において本件発明1のように、特に配合量を限定することなく酸化チタンを配合する程度のことは、当業者が容易になし得たものというほかはない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において「多環芳香族化合物が、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジベンジルアントラセンおよびそれらの誘導体から選ばれる一種以上である」との限定を付したものであるが、上記のように、刊行物1には、該多環芳香族化合物に対応する成分である「(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」として9,10-ジメトキシアントラセン及び9,10-ジエトキシアントラセンを用いること(摘示記載(1-5))が記載されているのであるから、本件発明2における限定事項についても刊行物1に明示されている。
したがって、本件発明2は、上記(1)と同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3の構成を分節すると次のようになる。
「(A)9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、
(B)光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、
(C)脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物、及び
(D)実用上光カチオン重合に使用可能な顔料からなる
(E)光硬化性組成物を
(F)ガリウム入りメタルハライドランプで光硬化する硬化方法」

本件発明3と刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記(1)で述べたように、刊行物1の(1)、(2)及び(3)成分はそれぞれ本件発明1の(C)、(A)及び(B)成分と一致し、刊行物1に記載された発明は、発明の効果を損なわない限度で顔料を使用し得るもの(摘示記載(1-8))であるから、本件発明3の「(D)実用上光カチオン重合に使用可能な顔料」を含む点でも一致しており、更に、刊行物1に記載された発明の組成物は、上記(1)で指摘したとおり「光硬化性組成物」であるから、本件発明1の(E)の要件も備えているといえる。また、刊行物1には、このような組成物を活性エネルギー線を用いて硬化させること(摘示記載(1-9))も記載されている。
そうすると、刊行物1には、「(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる(E)光硬化性組成物を、(F)光硬化する硬化方法」の発明が記載されているものということができるが、本件発明3においては光硬化を「ガリウム入りメタルハライドランプ」で行うのに対して、刊行物1にはこの点について記載されていない点で、これらの発明の間には相違が認められる。
そこで、この点について検討すると、刊行物1と同様に、硬化性化合物、感光性オニウム塩及び芳香族多環炭化水素等の増感剤(鋭感剤)を含む組成物を光硬化する硬化方法が記載された刊行物2(摘示記載(2-1)等)及び刊行物3(摘示記載(3-1)、(3-7)等)においても、光硬化を「ガリウム入りメタルハライドランプ」で行うことについては触れるところがない。
また、刊行物4には、その特許請求の範囲の請求項1に「特定の波長域の可視光を照射することによって硬化する光硬化樹脂用であって、前記波長域付近に輝線を有する金属元素を添加、封入したメタルハライドランプからの可視光を照射することによる光硬化樹脂の硬化方法」(摘示記載(4-1))が記載されており、波長が400〜500nmの短波長の可視光線に官能域を有する光硬化樹脂用の硬化装置にインジウムを添加したメタルハライドランプを用いること(摘示記載(4-2))が記載されているが、ガリウム入りメタルハライドランプについては何も記載されていない。更に、刊行物5にはクレーム1に「放電管と、少なくとも2つの電極とを備え、放電管は水銀、少なくとも1つの希ガス、少なくとも1つのハロゲン、アルミニウム(Al)及びインジウム(In)ならびに金属ハロゲン化物を形成するための他の金属から成るイオン化可能な封入物を含む光学用メタルハライドランプにおいて、封入物は他の金属としてガリウム(Ga)を含むことを特徴とする光学用メタルハライドランプ」(摘示記載(5-1))が記載されているが、このガリウム入りメタルハライドランプを光硬化性樹脂組成物の光硬化に用いることは記載も示唆もされていないし、このランプがどのような波長の光を主として出すのかということについても開示されていない。
そして、刊行物4と5の記載を併せみても、刊行物4のインジウム入りメタルハライドランプに代えて刊行物5のガリウム入りメタルハライドランプを用いるべき必然性は見出せず、まして、そのようにしたものを刊行物1に記載された上記方法に適用することを当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
したがって、本件発明3は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本件発明4及び5について
本件発明4及び5は、本件発明3において更に技術的限定を付したものであるが、上記(3)のように、本件発明3が刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明4及び5も本件発明3と同様の理由により、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明6について
刊行物1には、その特許請求の範囲の請求項1に「必須の構成成分として、(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質を100重量部、(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物を0.001〜5重量部、(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.01〜15重量部含有することを特徴とする光学的立体造形樹脂組成物」(摘示記載(1-1))が記載されており、「(2)のエネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」として、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、カルバゾール、β-ナフトール等が例示(摘示記載(1-5))されており、「(3)のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤」については、「エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、一般式
[R1 a R2 b R3 c R4 d Z]m+[MXn+m ]m- (A)
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。上記一般式(A)中、陽イオンはオニウムであり、ZはS,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,ハロゲン(例えばI,Br,Cl)又はN=Nである。R1 ,R2 ,R3 ,R4 は、炭素数が1〜60で、炭素以外の原子をいくつ含んでもよい有機の基で、同一でも異なってもよい。また、R1 ,R2 ,R3 ,R4 のうち少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。a,b,c,dはそれぞれ0〜3なる整数であってa+b+c+dはは、Zの価数に等しい。Mはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、B,P,AS,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn,Co,等である。Xはハロゲンであり、mは陽イオンの正味の電荷であり、nはMの価数を示す。上記一般式(A)中の陰イオン[MXn+m ]m- の具合例としてはテトラフルオロボレート(BF4)- 、ヘキサフルオロホスフエート(PF6 )- 、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6 )- 、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6 )- 、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6 )- 等が挙げられる」(摘示記載(1-6))及び「本発明では、この様なオニウム塩のなかでも特に芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。中でも、特開昭50-151997号、特開昭50-158680号公報に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50-151997号、・・・公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、・・・ 等が好ましい」(摘示記載(1-7))と記載されている。
そして、本件発明6と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「光学的立体造形樹脂組成物」が「光硬化性」を有することは自明であるから、両者はともに「光硬化性組成物」である点で一致しており、刊行物1に記載された発明における「(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質」は、本件発明6における「カチオン重合性化合物」に相当するものである。また、刊行物1に記載された発明における「(2)のエネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」はカルバゾールを含むものであり、本件訂正明細書において「330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ化合物」として「カルバゾール誘導体」が例示(段落【0015】)されているところからみて、刊行物1に記載されたカルバゾールは、「330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物」に該当するものといえる。更に、刊行物1に記載された発明における「(3)のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤」については、その代表的なものとして示された上記一般式(A)において、例えば、ZとしてI、R1 及びR2としてフェニル基を選択し、a=1、b=1、c=0及びd=0として[MXn+m ]m-の陰イオンを適宜選択した場合には、ジフェニルヨードニウム塩化合物となり、また、好ましいオニウム塩が掲載されているとされる特開昭50-158680号公報(刊行物3)には「芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤の適当な例は次のものを含む:ジフエニルヨードニウム テトラフルオロボレート・・・ジ(ナフチル)ヨードニウム テトラフルオロボレート・・・ジフエニルヨードニウム ヘキサクロロアンチモネート・・・2,2’-ジフエニルヨードニウム テトラフルオロボレート」(摘示記載(3-3))と記載されているところからみて、本件発明6における「光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種」を含み得るものである。
そうすると、本件発明6と刊行物1に記載された発明とは、ともに、「カルバゾール誘導体であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物」と「光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種」の組合わせを含み得る「カチオン重合性化合物含有光硬化性組成物」である点で一致するが、
(あ)本件発明6においてはカルバゾールが「増感剤として」用いられているのに対して、刊行物1にはこの点が記載されていない点、及び、
(い)本件発明6においては「増感剤としてのカルバゾール誘導体」と「ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種」との組合せを必須としているが、刊行物1には、選択肢同士の組合わせの一つとして開示されているものの、これらを組合わせた具体例は記載されていない点
でこれらの発明の間には相違が認められる。
これらの点について検討すると、刊行物1には、「(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」として例示されたカルバゾールについては、その増感剤としての機能についての説明も、これを用いた実施例の記載もなく、また、「(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤」としてジフェニルヨードニウム塩化合物を使用した実施例の記載はなく、もとより、カルバゾール(あるいはその誘導体)とジフェニルヨードニウム塩化合物を組合わせた実施例の記載はない。また、刊行物2及び3のいずれにも、カルバゾール類がジフェニルヨードニウム塩化合物の増感剤として使用し得ることは教示されていない。
一方、本件訂正明細書には、アリールオニウム塩化合物としてジフェニルヨードニウム塩化合物である4,4’-ジ-ter-ブチル-ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスホートを、増感剤としてカルバゾール誘導体であるN-エチルカルバゾールを組合わせて使用した実施例が示されており、脂環型エポキシ化合物が良好に光硬化したことが示されている(【表1】)。
したがって、本件発明6は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(6)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6において更に技術的限定を付したものであるが、上記(5)のように、本件発明6が刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明7も本件発明6と同様の理由により、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明8について
刊行物1には、その特許請求の範囲の請求項1に「必須の構成成分として、(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質を100重量部、(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物を0.001〜5重量部、(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を0.01〜15重量部含有することを特徴とする光学的立体造形樹脂組成物」(摘示記載(1-1))が記載されており、「(2)のエネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」として、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、カルバゾール、β-ナフトール等が例示(摘示記載(1-5))されており、「(3)のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤」については、「エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、一般式
[R1 a R2 b R3 c R4 d Z]m+[MXn+m ]m- (A)
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。」(摘示記載(1-6))及び「本発明では、この様なオニウム塩のなかでも特に芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。中でも、特開昭50-151997号、特開昭50-158680号公報に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50-151997号、・・・公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、・・・ 等が好ましい」(摘示記載(1-7))と記載されている。
そして、本件発明8と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「光学的立体造形樹脂組成物」が「光硬化性」を有することは自明であるから、両者はともに「光硬化性組成物」である点で一致しており、刊行物1に記載された発明における「(1)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質」は、本件発明8における「カチオン重合性化合物」に相当するものである。また、刊行物1に記載された発明における「(2)のエネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」はβ-ナフトール、即ち2-ナフトールを含むものであり、本件訂正明細書において「330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ化合物」として「2-ナフトール」が例示(段落【0015】〜【0017】)されているところからみて、刊行物1に記載されたβ-ナフトール、即ち2-ナフトールは、「330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物」に該当するものといえる。更に、上記(5)と同様、刊行物1に記載された発明における「(3)のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤」は本件発明8における「光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種」を含み得るものである。
そうすると、本件発明8と刊行物1に記載された発明とは、ともに、「1-ナフトール誘導体、2-ナフトール誘導体、1-アルコキシナフタレン誘導体、または2-アルコキシナフタレン誘導体である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物」と「光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種」の組合わせを含み得る「カチオン重合性化合物含有光硬化性組成物」である点で一致するが、
(あ)本件発明8においては2-ナフトールが「増感剤として」用いられているのに対して、刊行物1にはこの点が記載されていない点、及び、
(い)本件発明8においては「増感剤としての2-ナフトール」と「ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種」との組合せを必須としているが、刊行物1には選択肢同士の組合わせの一つとして開示されているものの、これらを組合わせた具体例は記載されていない点
でこれらの発明の間には相違が認められる。
これらの点について検討すると、刊行物1には、「(2)エネルギー線を吸収する芳香族有機化合物」として例示された2-ナフトールについては、その増感剤としての機能についての説明も、これを用いた実施例の記載もなく、また、「(3)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤」としてジフェニルヨードニウム塩化合物を使用した実施例の記載はなく、もとより、カルバゾール(あるいはその誘導体)とジフェニルヨードニウム塩化合物を組合わせた実施例の記載はない。また、刊行物2及び3のいずれにも、ナフトール類がジフェニルヨードニウム塩化合物の増感剤として使用し得ることは教示されていない。
一方、本件訂正明細書には、アリールオニウム塩化合物としてジフェニルヨードニウム塩化合物である4,4’-ジ-ter-ブチル-ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスホートを、増感剤としてナフトール誘導体である1-ナフトールを組合わせて使用した実施例が示されており、脂環型エポキシ化合物が良好に光硬化したことが示されている(【表1】)。
したがって、本件発明8は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(8)本件発明9について
本件発明9は、本件発明8において更に技術的限定を付したものであるが、上記(7)のように、本件発明8が刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明9も本件発明8と同様の理由により、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.むすび
以上のとおり、本件発明1及び2は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、特許異議の申立ての理由によっては本件発明3〜9についての特許を取り消すことができず、他に本件発明3〜9についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光触媒組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物、及び酸化チタンからなる光硬化性組成物。
【請求項2】多環芳香族化合物が、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジベンジルアントラセンおよびそれらの誘導体から選ばれる一種以上である請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項3】9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体のアルコキシ基が炭素数1〜8のアルコキシ基である化合物、または、9,10-ジアラルキルオキシアントラセン誘導体のアラルキルオキシ基が炭素数7〜8のアラルキルオキシである化合物である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物であるカチオン重合性化合物、及び実用上光カチオン重合に使用可能な顔料からなる光硬化性組成物をガリウム入りメタルハライドランプで光硬化する硬化方法。
【請求項4】顔料が酸化チタンである請求項3に記載の硬化方法。
【請求項5】多環芳香族化合物が、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジベンジルアントラセンおよびそれらの誘導体から選ばれる一種以上である請求項3または4記載の硬化方法。
【請求項6】増感剤としてのカルバゾール誘導体であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。
【請求項7】請求項6記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。
【請求項8】増感剤としての1-ナフトール誘導体、2-ナフトール誘導体、1-アルコキシナフタレン誘導体、または2-アルコキシナフタレン誘導体である多環芳香族化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種、及びカチオン重合性化合物からなる光硬化性組成物。
【請求項9】請求項8記載のカチオン重合性化合物が、脂環型エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物である光硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、増感された光カチオン重合触媒組成物に関し、更に詳しくは、光硬化型カチオン重合性化合物のための光カチオン重合触媒組成物に関する。本発明の光触媒組成物は、カチオン重合性化合物と混合し、光、電子線、X線等の活性エネルギー線照射により、硬化することが可能であり、特に長波長感光に優れた特性を有するため、光硬化型の塗料、接着剤、インキおよびフォトレジスト、光造形用の感光性樹脂等へ好適に用いられる。
【0002】
【従来技術】本発明に使用できるアリールオニウム塩化合物の例として、特開昭50-151997号、特開昭50-158680号、特開昭50-151996号が知られており、光、電子線、X線等の放射線によりエポキシ化合物等のカチオン重合性化合物を硬化させる触媒として使用できることが記載されている。これらのアリールオニウム塩化合物は、紫外線硬化に有効とされる360nmよりも長波長にほとんど吸収をもっていないため、長波長のレーザー光を使用する光造形や顔料等の添加剤を使用する光硬化性組成物では、硬化性が著しく低下することが知られている。特に、アリールオニウム塩化合物のUV吸収と吸収が重なる酸化チタン等のホワイト顔料を多量に含有する光硬化性組成物では、問題が多い。この解決方法として増感剤の検討が行われ、フェノチアジン、アントラセン、ペリレン等の化合物が有効であると報告されている。しかし、これらの増感剤では、顔料等の添加剤を使用する光硬化性組成物の光硬化性は不十分である。
【0003】また、ジフェニルヨードニウム塩に代表されるアリールヨードニウム塩化合物では、その対アニオンがSbF6およびB(C6F5)アニオン以外の例えばPF6のようなアニオンではクリア系の塗料に使用しても光硬化性が著しく悪いことが知られている。
【0004】
【発明が解決すべき課題】本発明は、これらの事情からみてなされたもので、対アニオンが例えばPF6のようなアニオンを有するジフェニルヨードニウム塩に代表されるアリールヨードニウム塩化合物でも良好に硬化することが可能な光カチオン重合触媒組成物を提供すると共に、顔料等の添加剤を含む組成物であっても短時間で硬化することが可能で、かつ優れた硬化物物性を有する光カチオン硬化性組成物を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記目的を達成するため絵鋭意検討したところ、特定の増感剤を使用することで、上記課題を克服する光触媒組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、置換基として水酸基または置換されていてもよいアラルキルオキシ基、アルコキシ基を少なくとも一つ以上有する多環芳香族化合物及びカルバゾール誘導体からなる群から選ばれる化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物を含有してなることを特徴とする光触媒組成物であり、より詳しくは、置換基として水酸基または置換されていてもよいアラルキルオキシ基、アルコキシ基を少なくとも一つ以上有する多環芳香族化合物及びカルバゾール誘導体からなる群から選ばれる化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ少なくとも一種の化合物と、光カチオン重合触媒として作用するジフェニルアルキルスルホニム塩化合物、ジナフチルアルキルスルホニム塩化合物、トリフェニルスルホニム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物、フェニルナフチルヨードニウム塩化合物、ジナフチルヨードニウム塩化合物から選ばれたアリールオニウム塩化合物の少なくとも一種とを含有してなることを特徴とする光触媒組成物である。
【0007】本発明の、置換基として水酸基または置換されていてもよいアラルキルオキシ基、アルコキシ基を少なくとも一つ以上有する多環芳香族化合物及びカルバゾール誘導体からなる群から選ばれる化合物であり、かつ、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ化合物は、主として光カチオン重合触媒の増感剤として作用する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に使用できるアリールオニウム塩化合物としては、特開昭50-151997号、特開昭50-158680号、特開昭50-151996号等に記載されているものなどを例示することができ、特に、ジフェニルアルキルスルホニム塩、ジナフチルアルキルスルホニム塩、トリフェニルスルホニム塩、ジフェニルヨードニウム塩、フェニルナフチルヨードニウム塩、ジナフチルヨードニウム塩化合物またはそれらの誘導体が好ましい。
【0009】対アニオンは非求核性のアニオンならばその種類に限定されることはない。スルホニウム塩化合物としては以下の物を例示することができる。式中Xはアニオン残基を表し、B(C6F5),SbF6,AsF6,PF6,BF4などを例示することができる。
【0010】
【化1】

【0011】本発明の光触媒組成物と組み合わせると著しく増感効果があるのは特にジアリールヨードニウム塩化合物である。
【0012】ジアリールヨードニウム塩化合物としては、ジフェニルヨードニウム塩、フェニルナフチルヨードニウム塩、ジナフチルヨードニウム塩化合物があげられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ベンゾイル基等のカルボニル基、フェニル基、ニトロ基等の置換基で置換されていてもよいフェニル基やナフチル基を有するものであり、非求核性の対アニオンとしては、B(C6F5),SbF6,AsF6,PF6,BF4などを例示することがでる。
【0013】ジアリルヨードニウム塩化合物としては以下の物を例示することができる。式中Xはアニオン残基を表し、B(C6F5),SbF6,AsF6,PF6,BF4などを例示することができる。
【0014】
【化2】

【0015】本発明に使用される増感剤は、330nmよりも長波長にUVスペクトル吸収をもつ化合物であり、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも一つ以上を有する多環芳香族化合物またはカルバゾール誘導体である。
【0016】多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。
【0017】本発明に使用できる増感剤を例示すると、カルバゾール、N-エチルカルバゾール、N-ビニルカルバゾール、N-フェニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、1-ナフトール、2-ナフトール、1-メトキシナフタレン、1-ステアリルオキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、2-ドデシルオキシナフタレン、4-メトキシ-1-ナフトール、グリシジル-1-ナフチルエーテル、2-(2-ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジメトキシナフタレン、1,1’-チオビス(2-ナフトール)、1,1’-ビ-2-ナフトール、1,5-ナフチルジグリシジルエーテル、2,7-ジ(2-ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4-メトキシ-1-ナフトール、ESN-175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジメトキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9-メトキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジエトキシアントラセン、9-エトキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、9-イソプロポキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジベンジルオキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジベンジルオキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジベンジルオキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジベンジルオキシアントラセン、9-ベンジルオキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、9-(α-メチルベンジルオキシ)-10-メチルアントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ジ(2-カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4-ジメトキシクリセン、1,4-ジエトキシクリセン、1,4-ジプロポキシクリセン、1,4-ジベンジルオキシクリセン、1,4-ジ-α-メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9-ヒドロキシフェナントレン、9,10-ジメトキシフェナントレン、9,10-ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体などを挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0018】本発明に使用されるカチオン重合性化合物は、一般に知られているカチオン重合性基を有するモノマー、オリゴマーやポリマーであれば何ら制限されることなく使用可能であり、例えば、下記のようなものが例示される。
【0019】(a)ビニル化合物として、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン等のスチレン化合物、メチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-フェノキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2-アセトキシエチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル化合物、アリルビニルエーテル、2-メタクリロイルオキシエチルビニルエーテル、2-アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、フェニルビニルエーテル、p-メトキシフェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル化合物、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物が挙げられる。
【0020】(b)エポキシ化合物として、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-ドデシレンオキサイド、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-ビニルシクロヘキセンオキサイド等の単官能のモノマー、1,1,3-テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-(3,4-エポキシシクロヘキシル)カルボキシレート、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、o-,m-,p-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0021】(c)ビシクロオルソエステル化合物として、1-フェニル-4-エチル-2,6,7-トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1-エチル-4-ヒドロキシメチル-2,6,7-トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物が挙げられる。
【0022】(d)スピロオルソカーボネート化合物として、1,5,7,11-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、3,9-ジベンジル-1,5,7,11-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,4,6-トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン、2-メチル-1,4,6-トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン、1,4,6-トリオキサスピロ〔4,5〕デカン等の化合物が挙げられる。
【0023】(e)オキセタン化合物として、3,3-ジメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、2-ヒドロキシメチルオキセタン、3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、レゾルシノールビス(3-メチル-3-オキセタニルエチル)エーテル、m-キシリレンビス(3-エチル-3-オキセタニルエチルエーテル)等の化合物が挙げられる。
【0024】これらは、単独もしくは2種以上を併用して用いても差し支えない。
【0025】本発明において、アリールオニウム塩化合物と増感剤との配合割合は、任意に設定できるが、重量比でアリールオニウム塩化合物1に対して、増感剤0.1〜10、好ましくは0.3〜5である。このアリールオニウム塩化合物に対する増感剤の割合が少ないと、増感効果が低下し、過剰であると硬化物の特性が低下する。但し、増感剤がESN-175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)や2-(2-ナフトキシ)エチルビニルエーテルのようにエポキシ基やビニルエーテル基等の反応性基を有するものは、この限りではない。
【0026】本発明において、アリールオニウム塩化合物と増感剤との配合の組合せとしては、アリールオニウム塩化合物がスルホニム塩化合物の場合は、増感剤として9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましい。一方、アリールオニウム塩化合物がヨードニウム塩化合物の場合は、クリア系の配合物にはカルバゾール誘導体、ナフトール誘導体、アルコキシナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましく、顔料系の配合物には、9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましい。
【0027】本発明の触媒組成物を使用した硬化性組成物は、光により容易に硬化することができる。光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、クセノンランプ、カーボンアーク灯等が用いられる。また、半導体レーザー、アルゴンレーザー、He-Cdレーザー等のレーザー光を用いることができる。特に、厚膜硬化や酸化チタンのような顔料含有の光硬化性組成物に使用する際は、ガリウム入りメタルハライドランプが好適に用いられる。
【0028】本発明の触媒組成物を使用した硬化性組成物は、α線、β線、γ線、中性子線、X線、加速電子線のような電離性放射線によっても容易に硬化することができる。
【0029】
【実施例】以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は以下のもののみに限定されるものではない。
【0030】実施例1(光硬化性テストI(クリア系))UVR-6110(UCC社製脂環型エポキシ)100部に、純分としてアリールオニウム塩化合物1部と増感剤1部を混合し、配合物を調製した。この配合物を、ブリキ板に厚さ5μmになるように塗布し、下記の条件で光硬化させた。この時、硬化膜にタックがなかったものは○印、タックがあったものには×印で表-1に示した。UV照射機器:ベルトコンベア式UV照射機器(アイグラフィックス社製)ランプ:集光型80W高圧水銀灯1灯照射距離:10cm(焦点距離)
【0031】
【表1】

【0032】実施例2(光硬化性テストII(顔料系))UVR-6110(UCC社製脂環型エポキシ)100部と酸化チタン(石原産業社製CR-58)100部に、純分としてアリールオニウム塩化合物3部と増感剤1部を混合し、配合物を調製した。この配合物を、ブリキ板に厚さ5μmになるように塗布し、下記の条件で光硬化させた。この時、配合物の内部まで硬化したものは○印、硬化しなかったものには×印で表-2に示した。UV照射機器:ベルトコンベア式UV照射機器(アイグラフィックス社製)ランプ:集光型160Wガリウム入りメタハラタンプ1灯照射距離:10cm(焦点距離)ベルトコンベア速度:30m/分
【0033】
【表2】

【0034】
【発明の効果】本発明の光触媒組成物は、カチオン重合性化合物と混合し、光、電子線、X線等の活性エネルギー線照射により、硬化が可能である。更に、トリフェニルスルホニウム塩化合物やジフェニルヨードニウム塩化合物には吸収領域がないかまたは極めて吸収が小さい330nmよりも長波長の光でも硬化することができるため、クリア系組成物では硬化速度が著しく加速されたり、顔料等の添加剤を含有する組成物においても効果的に光硬化することができる。従って、光硬化型の塗料、接着剤、インキおよびフォトレジスト、光造形用の感光性樹脂等へ好適に用いることができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-08-19 
出願番号 特願平9-272183
審決分類 P 1 651・ 113- ZD (C08F)
P 1 651・ 121- ZD (C08F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 藤原 浩子
佐野 整博
登録日 2003-06-06 
登録番号 特許第3437069号(P3437069)
権利者 日本曹達株式会社
発明の名称 光触媒組成物  
代理人 小田島 平吉  
代理人 松橋 泰典  
代理人 江角 洋治  
代理人 松橋 泰典  
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