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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C21D
管理番号 1138285
審判番号 無効2005-80237  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-07-29 
確定日 2006-04-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3524037号発明「クランクシャフトの高周波焼戻方法及び装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3524037号の請求項1乃至14に係る発明は、平成12年4月26日に特許出願され、平成16年2月20日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、宇田川 彰から平成17年7月29日付けで請求項1乃至14に係る発明の特許について無効審判の請求がなされたところ、本件手続の経緯は、次のとおりである。
審判請求書 平成17年 7月29日
答弁書 平成17年10月14日
訂正請求書 平成17年10月14日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成17年12月19日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成17年12月19日
口頭審理陳述要領書の補足書(被請求人) 平成17年12月19日
口頭審理 平成17年12月19日
上申書(被請求人) 平成18年 1月13日
上申書(請求人) 平成18年 1月27日

II.訂正の適否
1.訂正請求の内容
平成17年10月14日付け訂正請求の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、すなわち次の訂正事項1乃至5のとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項1:請求項1の「略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置して、」を、「略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置した状態の下で、」と訂正する。
(2)訂正事項2:請求項2の「・・・を特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波誘導加熱装置。」を、「・・・を特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波誘導加熱方法。」と訂正する。
(3)訂正事項3:特許明細書の段落【0014】の「略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置して、」を、「略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置した状態の下で、」と訂正する。
(4)訂正事項4:特許明細書の段落【0014】の「施行することを特徴とするクランクシャフトの高周波焼戻方法。」を、「施行するようにしている。」と訂正する。
(5)訂正事項5:特許明細書の段落【0043】の「研磨すべき部分は焼入されているためこの部分の硬度がく、」を、「研磨すべき部分は焼入されているためこの部分の硬度が高く、」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1は、クランクシャフトの全体と高周波誘導加熱コイルとの配置の状態を明りょうにしたものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。訂正事項2は、その末尾の「加熱装置」が「加熱方法」の誤記であることが明らかであるから、誤記の訂正に該当する。訂正事項3は、請求項1の訂正に伴って特許明細書の記載を整合させるためのものであり、また、訂正事項4は、その文章の末尾を他の文章の末尾の表現と整合させるためのものであるから、いずれも明りょうでない記載の釈明に該当するし、訂正事項5は、誤記の訂正であることが明らかである。
そして、これら訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第134条第2項ただし書の規定及び特許法第134条第5項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件発明
本件無効審判請求の対象とされた請求項1乃至14に係る発明については、上記訂正を認容することができるから、訂正後の本件請求項1乃至14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1乃至14」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】クランクシャフトの主要部を構成するジャーナル部やピン部をフィレットR焼入した後に、フィレットR焼入した焼入部分を焼戻すための方法において、
(A)前記焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置した状態の下で、前記高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの全体を一括して高周波誘導加熱して前記クランクシャフトの焼入部分を高周波誘導加熱すると共に、高周波誘導加熱され易くかつ熱容量の大きい前記クランクシャフトのカウンターウェイト部をも同時に高周波誘導加熱してその熱を前記焼入部分のR部に熱伝導させることにより、加熱されにくい前記R部をそれ以外の焼入部分と一緒に所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱する加熱工程と、
(B)前記加熱工程の後に、前記クランクシャフトにおける熱伝導により前記クランクシャフトの全体を放冷して均熱化を図る均熱化工程と、
(C)焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうために、前記クランクシャフトに冷却液を噴射して前記クランクシャフトを冷却する冷却工程と、を順次に施行することを特徴とするクランクシャフトの高周波焼戻方法。
【請求項2】前記(A)〜(C)に記載の工程の後に、
(D)前記冷却工程において前記クランクシャフトに付着した冷却液を前記クランクシャフトから除去するエアブロー工程、をさらに施行することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波誘導加熱方法。
【請求項3】前記加熱工程,均熱化工程,冷却工程及びエアブロー工程の各工程を、前記クランクシャフトを間欠的に水平移動させながら順次に連続して行なうようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクランクシャフトの高周波焼戻方法。
【請求項4】フィレットR焼入が施されたクランクシャフトのジャーナル部やピン部を焼戻すための装置において、
(a)前記焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置して、前記高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの全体を一括して高周波誘導加熱して前記クランクシャフトの焼入部分を高周波誘導加熱すると共に、高周波誘導加熱され易くかつ熱容量の大きい前記クランクシャフトのカウンターウェイト部をも同時に高周波誘導加熱してその熱を前記焼入部分のR部に熱伝導させることにより、加熱されにくい前記R部をそれ以外の焼入部分と一緒に所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱する加熱ステーションと、
(b)高周波誘導加熱された前記クランクシャフトを前記クランクシャフト自体の熱伝導によりその全体を放冷して均熱化を図る均熱化ステーションと、
(c)焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうために、前記クランクシャフトに冷却液を噴射して前記クランクシャフトを冷却する冷却ステーションと、をそれぞれ具備することを特徴とするクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項5】前記(a)〜(c)のステーションに加えて、
(d)前記冷却工程において前記クランクシャフトの表面に付着した冷却液を前記クランクシャフトの表面から除去するエアブローステーション、をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項6】前記加熱ステーション,均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションにおける各処理工程を、前記クランクシャフトを間欠的に水平移動させながら連続して行なうために、
(a)前記クランクシャフトを載置状態で支持する支持機構と、
(b)前記クランクシャフトを前記支持機構にて支持した状態の下で前記クランクシャフトを水平方向に移動させる水平移動機構と、
(c)前記水平移動機構にて移動されてくる前記クランクシャフトの全体、すなわち、
焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、完全に取り囲んで前記クランクシャフトの全体を所要の焼戻温度にまで一括して高周波誘導加熱するための、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルを有する加熱機構と、
(d)前記加熱機構にて高周波誘導加熱された前記クランクシャフトのジャーナル部やピン部の加熱処理部を、前記クランクシャフトの熱伝導により放冷して均熱化を図る均熱化機構と、
(e)前記均熱化機構から移送される前記クランクシャフトの均熱化された加熱処理部を噴射冷却液にて常温まで冷却する噴射冷却機構と、
(f)前記噴射冷却機構から移送される前記クランクシャフトにエアブローを付与するエアブロー機構と、から成る焼戻システムを備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項7】前記加熱ステーションに配設される前記クランクシャフトの支持機構は、
(a)前記クランクシャフトを前記加熱ステーション内の高周波誘導加熱コイルにて取り囲んだ状態であってかつ前記高周波誘導加熱コイルと同軸状に配置された状態で支持する際に、前記クランクシャフトの軸線方向の両端部に当接されるセラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器と、
(b)前記一対の支持器が先端部にそれぞれ取付けられ、かつ、前記高周波誘導加熱コイルの軸線の延長方向に沿って延びるように配設された一対の非磁性金属製のクランクシャフト支持用シャフトと、をそれぞれ備えることを特徴とする請求項6に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項8】前記クランクシャフトの水平移動機構は、
(a)前記均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションの配設間隔に対応する所定間隔をもって配設された支持器と、
(b)前記クランクシャフトを上下方向及び前後方向に移動することにより前記クランクシャフトを前記加熱ステーション,均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションに順次に搬送するためのクランクシャフト搬送機構と、をそれぞれ備えることを特徴とする請求項6又は7に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項9】前記加熱ステーションに配設される前記加熱機構は、導線を螺旋状に巻回した高周波誘導加熱コイルから成り、前記クランクシャフトの一端側のフランジ部に対応するコイル部分の巻線間隔を相対的に密となるように巻回したことを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項10】加熱休止時には前記高周波誘導加熱コイルを予め後退した待機位置に配置させ、前記セラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器にて前記クランクシャフトを支持して高周波誘導加熱を開始するのに先立って、前記高周波誘導加熱コイルを前記待機位置から所定の加熱位置まで前進させ、高周波誘導加熱の終了後に前記待機位置まで後退させるための加熱コイル水平移動機構を備えることを特徴とする請求項4乃至9の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項11】前記冷却ステーションに配設される前記噴射冷却機構は、
(a)前記支持器にて支持された前記クランクシャフトより所定の距離をもって配設され、前記クランクシャフトの全長及び全幅に相応する矩形をなし、クランクシャフトに対向する面に多数の冷却液噴射孔を設けた噴射冷却環と、
(b)前記噴射冷却環に接続された冷却水導入管及び給水ポンプと、
(c)冷却開始時に前記噴射冷却環を前記クランクシャフトに対して所定の距離となる位置まで降下させ、冷却終了後に所定の待機位置まで上昇させる移動機構と、をそれぞれ備えることを特徴とする請求項6乃至10の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項12】前記エアブローステーションに設けられる前記エアブロー機構は、
(a)前記支持器にて支持されたクランクシャフトに対して所定の距離をもって配設され、前記クランクシャフトの寸法及び形状に応じた複数本のエアノズルと、
(b)前記エアノズルに接続されたエア導入管と、
(c)エアブロー開始時に前記エアノズルを前記クランクシャフトに対して所定の距離となる位置まで降下させ、エアブロー終了後に所定の待機位置まで移動させる移動機構と、
(d)エアブロー時に前記エアノズルを前後及び左右に揺動させるための揺動装置と、をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項6乃至11の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項13】前記セラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器のうちの一方の支持器であって、かつ、前記クランクシャフトの一端側のフランジ部を支持する支持器に隣接して配置されると共に、磁束密度を局部的に高める磁性材料から成りかつ前記クランクシャフトのフランジ部側の部分の加熱温度を制御するように機能する誘導補助部材を、前記高周波誘導加熱コイルのフランジ部側の端部の近傍箇所に配設したことを特徴とする請求項6乃至12の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項14】前記誘導補助部材は、内部に通水路を設けた磁性材料より成る円盤形状の調整部材であることを特徴とする請求項13に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。」

IV.請求人の主張と証拠方法
1.請求人の主張
請求人は、証拠方法として下記2.の証拠を提出して、本件発明1乃至14は、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1乃至14についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであると主張している。

2.証拠とその記載事項
甲第1号証乃至甲第8号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)甲第1号証:特公平5-87565号公報
(1a)「1 ジャーナルとピンとがカウンターウエイトを介して交互に配置されているクランクシャフトの両端部のジャーナルと両端部のピンとを連続して高周波焼入れ・焼戻しする方法であつて、一連の第1、第2、第3および第4のステーションを設け、第1のステーションで両端部のジャーナルを同時にR焼入れした後、第2のステーションで両端のピンを同時にR焼入れし、次いで、第3のステーションで両端のジャーナルをフラット加熱コイルで加熱して焼戻しをしてから、第4のステーションで両端のピンをフラット加熱コイルで加熱して焼戻しを行い、且つ、前記R焼入れは、ジャーナル或いはピンの円柱部分と、円柱部分に続くR部分と、R部分に続き円柱部分に直交するフィレット部分とにわたつて連続した硬化層を形成する焼入れであり、また、前記フラット加熱コイルは、ジャーナル或いはピンの円柱部分を高周波加熱するコイルであつて、R部分とフィレット部分との焼戻しは円柱部分を加熱源とする熱伝導のみを利用するようにしたことを特徴とするクランクシャフトの高周波焼入れ・焼戻し方法。」(特許請求の範囲)
(1b)「<発明が解決しようとする課題>
従つて、クランクシャフトの両端のジャーナルと両端のピンとをR焼入れ後、クランクシャフトを焼戻し炉に移送して焼戻しを行うので、焼戻しに手間がかかつていた。
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであつて、一つの装置で、クランクシャフトの両端のジャーナルと両端のピンとの高周波焼入と高周波焼戻しを行うことができ、従つて、焼戻しに手間がかからない高周波焼入れ・焼戻し方法を提供することを目的としている。」(第2頁第3欄31行乃至41行)
(1c)「<作用>
クランクシャフトは、第1のステーションで両端のジャーナルがR焼入れされてから第2のステーションに移動され、第2のステーションで両端のピンがR焼入れされる。次いでクランクシャフトは第3のステーションに移動され、第3のステーションで両端のジャーナルが焼戻しされてから第1のステーションに移動され、第4のステーションで両端のピンが焼戻しされる。」(第2頁第4欄21行乃至29行)
(1d)「 なお、本実施例において、ピンP1,P4を同時に焼入れする場合、および、ジャーナルJ1,J5を同時に焼入れする場合には、共に、高周波電流の周波数は約30kHz、所要電力(高周波加熱装置への入力電力)は160kW、加熱時間は12secであつた。ジャーナルJ1,J5を同時に焼戻しする場合には、高周波電流の周波数は約10kHz、所要電力は32kW、加熱時間は25secであり、また、ピンP1,P4を焼戻しする場合には、高周波電流の周波数は約10kHz、所要電力は40kW、加熱時間は25secであつた。」(第5頁第10欄4行乃至14行)

(2)甲第2号証(その1):特開平11-158552号公報
(2a)しかしながら、上記のような輪郭コイル7による高周波一体焼入れなどの高周波熱処理は、軸方向に形状,サイズが多様化したギャーシャフトの一体熱処理であるため、そのギャーシャフトの形状,サイズに対応する複雑形状の輪郭コイル7を用意し、ギャーシャフト各部の温度分布を均等にするための特別の作業を必要とするという課題があった。
また、輪郭コイル7による輪郭焼入れのために、ギャーシャフト形状に合った輪郭コイルを用意しても、ギャー歯などを他の部位と均一に加熱することが難しく、焼入れ深さの不均一や、これによるギャー歯のエッジ部のオーバヒートによる溶け,焼割りを生じる場合があるという課題があった。
さらに、上記の焼入れ後の焼戻しには焼戻し炉が用いられるため、ギャーシャフトを高周波焼入れから焼戻しへ直接流すことができず、つまり、システム的にインライン化できず、従って焼入れから焼戻しへの自動化が難しくなるという課題があった。」(段落【0009】乃至【0011】)
(2b)「上記した目的を達成するために、請求項1の発明にかかるギャーシャフトの熱処理方法は、ギャーシャフトのギャー部およびギャーシャフト部と、該ギャーシャフト部に連続するシャフト部およびスプライン部とを分離して、高周波加熱による熱処理を実施するようにしたものである。」(段落【0014】)
(2c)「また、7は、ギャー部2およびギャーシャフト部3,4に対向する領域にこれらを囲むように配置された定置熱処理用としての定置焼入れ用の多巻コイルであり、ギャー部2およびギャーシャフト部3,4の軸心から略等距離の位置に対向配置されている。
さらに、ギャーシャフト部4側のシャフト部5端部を囲むように、移動熱処理用としての移動焼入れ用のコイル8が配置されているが、このコイル8は、単巻きまたは二巻き程度からなり、そのシャフト部5の端部からスプライン部6の先端部までの領域を軸方向移動しながら、そのシャフト部5とスプライン部6を熱処理するように機能する。なお、このコイル8は、多巻コイル7とは電気的に独立している。」(段落【0018】及び【0019】)
(2d)「従って、ギャーシャフト1の熱処理を行う場合には、定置焼入れ用の多巻コイル7のうち、ギャー部2に対向するものとギャーシャフト部3,4に対向するものにコイルギャップの影響が少ない周波数で、かつ、歯底から加熱される周波数にして加熱電力を調整しながら均熱化を図る。なお、寸法の違いは、周波数を可変にした位置で均一化を図る。
このように定置焼入れ用の多巻コイル7では、あらかじめ計画したレベルまたは周波数の電力を選択的に供給することで、形状やサイズの異なるギャーシャフト部1のギャー部2およびギャーシャフト部3,4を上記のように均一にまたは任意の最適の強さに焼入れなどの熱処理を行うことができることになる。」(段落【0020】及び【0021】)
(2e)「また、上記のような焼入れ処理に続いて、ギャーシャフト1を冷却した後、焼戻しを行う場合にも、従来のような焼戻し炉を用いずに、上記多巻コイル7およびコイル8を用いて、またはこれらと同様の多巻コイルを用いれば、焼入れおよび焼戻しの一貫工程を簡単に組むことができ、従ってインライン化,自動化を実現できる。
このように、ギャー部2およびギャーシャフト部3,4と、シャフト部5およびスプライン部6とを分離して独自の多巻コイル7およびコイル8により焼入れを行うことで、ギャーシャフト1各部の形状,サイズに見合った最適の温度分布にて焼入れあるいは焼戻しを実施できる。」(【0025】及び【0026】)
(2f)「そして、ギャーシャフトの全長をカバーする長さの多巻コイルの設置を回避可能にし、もって設備コストの低減を図れるという効果が得られる。」(【0035】)

(3)甲第2号証(その2):「高周波の工業への応用」東京電機大学出版局発行、昭和58年4月20日、第132頁乃至第134頁
(3a)「(2)全体加熱をする場合
図5・18に一例を示すように材料全体を加熱して鍛造する場合が多い。この場合には最も作業能率のよい移動方式、すなわちビレットを加熱コイルの中に次々と送り込み、他端から取り出す方式が一般にとられる。このときの加熱コイルの長さは次式に示すように、単位時間の処理個数と所要加熱時間とビレットの長さによって定まる。」(第133頁)
(3b)第133頁の図5・18には、材料を全体加熱して鍛造して作る部品の例として、「クランク軸」と「ブルドーザリンク」が図示されている。
(3c)「この方式では量産用としてはビレットの送り機構に種々の工夫が施される。・・・ソレノイド形加熱コイルの中に、シリンダで1個ずつ送り込み、他端から鍛造温度に加熱されて1個ずつ押出されてくる。ピストン運動は断続的であるから、加熱コイルの中に挿入されるビレットの数が少ないときは、負荷変動の影響がある。ビレットは自動的に供給される。」(第134頁)

(4)甲第3号証:特開平5-156346号公報
(4a)「【請求項1】複数のカムを軸方向に順次、備えると共に、単位軸方向長さ当りの質量を端部において軸方向中央側よりも少なくしたカムシャフトを用意し、該カムシャフトに電流を流して加熱処理を行ない、該加熱処理後、該カムシャフトを放冷処理して、該カムシャフトの各カムの温度を所定温度をもって略均等とするカムシャフトの加熱方法において、前記加熱処理と前記放冷処理との組合せが複数回に分けて行われる、ことを特徴とするカムシャフトの加熱方法。」(特許請求の範囲)
(4b)「カムシャフト加熱装置2は、図2に示すように、台5上に、前記カムシャフト1を、その両端部において受ける受け金具6がそれぞれ設けられており、その各上方には加圧電極7が昇降可能に設けられている。その両加圧電極7には、銅製のブ-スバ-8、オンス銅板9を介してトランス(70KVA)10により電圧が印加されるようになっており、これにより、カムシャフト1をセットすることによって、該カムシャフト1に対して電流を適宜流して該カムシャフト1を加熱することができるようになっている。」(段落【0007】)

(5)甲第4号証:特開平4-325630号公報
(5a)「そこで本発明は、ロールマーク等が生じることがなく、長軸材の全長に亘って曲がりを保証でき、かつコストを従来よりも低く押えることができる熱処理装置を提供することを目的とする。」(段落【0006】)
(5b)「【作用】間欠的に長軸材を移送させる移送手段が停止すると、昇降手段が長軸材を上昇させてこれを一対の把持手段が把持し、引張手段と回転機構との作用にによって張力と回転力を与えられた長軸材は誘導子により誘導加熱される。その後に冷却手段によって冷却された長軸材は把持手段に開放されて再び昇降手段によって移送手段上へ戻る。そして、移送手段により長軸材は次の工程へと移送される。」(段落【0008】)
(5c)「そして長軸材2の表面が所定の焼入れ温度になったことが温度センサや加熱時間を測定するタイマ等で検出されると、誘導子8への電力供給が断たれるとともに冷却液ノズル9から長軸材2へ向かって冷却液が放出され、長軸材2が急冷されることによって焼入処理が完了する。」(段落【0016】)
(5d)「。「焼戻ステーション」では長軸材2の加熱温度が前記のものより低い焼戻し温度であること以外は前記の「焼入ステーション」での作用と同じなので説明を省略する。」(段落【0017】)

(6)甲第5号証:実公昭63-42481号公報
(6a)「この考案は高周波誘導加熱コイル、特にモヂュールの小さいラック歯を一歯毎に逐次焼入するコイルに関する。
ラック歯を高周波誘導加熱コイルによつて一歯毎の焼入れを行なう技術、即ち、ワークであるラツク歯を下向けにして固定し加熱コイルをラックの軸線方向に沿つて移動自在且つ昇降自在として各歯の隣接歯谷間に加熱コイルを配備して各歯を取囲む状態で誘導加熱をして冷却水を該コイル間より噴出して焼入れをし、焼入れ后コイルの降下、横移動及び上昇によつて隣接歯に同じ加熱焼入れを連続することは既に知られている。」(第1欄22行乃至第2欄5行)
(6b)「歯tの加熱に際して噴出口4よりエアーブローすると隣接歯t0の歯底、歯側、歯先に付着して残つている水分(水滴)が被処理歯tに伝達するのを十二分に防止し得ること同じく隣接歯t1に付着しているゴミ、不純物も除去出来ると共にこの焼入用の冷却液とエアーブローの冷却作用により、本加熱コイル特に電気抵抗の大きいコイル部3,3及びその他を含めた基台と、加熱時の熱伝導によつて昇温した未処理歯t1及びその近傍のワーク部分の残熱を取り去つて未処理歯t1の加熱を開始時には熱的並びに電気的には全く同一の定常状態に復元できるため、加熱むらのない均質加熱が約束されること…等従来の問題点を一掃し得る実用的効果が得られる。」(第4欄21行乃至34行)
(6c)「以上よりこの考案コイルはモヂュールが小さいラック歯を一歯毎に加熱焼入する場合、特に焼入硬化層が歯底に至らず歯側、歯先に至る場合に意義がある。」(第5欄11行乃至第6欄1行)

(7)甲第6号証:特公昭64-3924号公報
(7a)「 本発明はテーパー部材の表面均一焼戻し方法および焼戻し用加熱コイルに関する。
テーパー部材の所定長さにわたる周面を焼戻しするため、誘導加熱手段を用いて表層部を均一に加熱する場合には、所定長さある被加熱部の一方端側と他方端側とでは表層の後背質量に差があつて、熱伝導による熱の拡散が異るので、大径部は小径部より電磁エネルギーの付与を大にする必要があると考えられている。上記考えにもとづいた従来焼戻し方法および加熱コイルを第1図aおよびbに示す。例えばセンター支持されて回転するテーパー部材Wの被加熱部hを、当該被加熱部hの長さに適合する長さに多巻回した加熱コイルC′によつて誘導加熱するもので、この加熱コイルC′の巻回ピッチを大径部側で密に小径部側で粗とし、第1図aの如く同一内径で多巻回したものを用いるかさらに上記に加えて、第1図bの如く大径部側から小径部側へかけて内径を縮少しつつ多巻回したものを用いるようにしている。ところで上記加熱コイルC′の製作調整において、被加熱部hを全長にわたつて均一加熱する適正な不等ピッチや巻径は計算から求めることはできない。そのため、予め想定したピッチや内径で多巻回した加熱コイルC′を製作し、当該加熱コイルC′を用いてテーパー部材Wを加熱し、加熱温度を測温するとともに、第1図cの如く表層の焼戻し硬さを測定して所定等硬度曲線を求めた結果にもとづいて、ピッチや内径を修正する作業を数回にわたつて繰り返しつつ、不均一加熱から均一加熱が得られるように調整している。」(第2欄9行乃至第3欄10行)
(7b「 本発明はテーパー部材の表面焼戻しを行う場合の従来方法に存する上述の如き欠点を解消する目的でなされたものであつて、多大の労力と時間のかゝる加熱コイルのピッチや巻径の調整を一切行う必要もなく、また使用中の保守に配慮する必要もなく、極めて容易にテーパー部材の表面を均一加熱して焼戻しをなしうる方法および焼戻し用加熱コイルを提供するものである。」(第3欄21行乃至28行)
(7c)「 本発明はテーパー部材の所定長さにわたる被加熱部を、多巻回して電源に接続する一次コイル内に配置され、被加熱部と間隙をへだてて対向する単巻回の二次コイルによつて、一次コイルの発生する不均一な一次誘導磁束を均等化した二次誘導磁束に変換して誘導加熱するようにした技術思想であつて、上記均等化された二次誘導磁束は間隙の小なる後背大質量部である大径部から、間隙の大なる後背小質量部である小径部まで、被加熱部の全長にわたつてほぼ均一な誘導発熱の効果を生ずるが如き電磁エネルギー付与作用があるので、被加熱部はほぼ均一な加熱温度で焼戻しされることとなる。
本発明方法を実施する加熱コイルは、一次コイルとして特別の配慮を必要とするような不等ピツチの多巻回コイルではなく、ほぼ等ピツチ程度に巻回すれば足り、また二次コイルとして熱的変化の繰り返しによつても全く変形のおそれのない単巻回コイルを用いるので製作が極めて簡易である。」(第7欄3行乃至22行)

(8)甲第7号証:特開平8-165517号公報
(8a)「本発明は、円柱状のワークを表面焼入するためにその外周面を加熱する高周波加熱装置に関し、更に詳しくはワークの全長等に応じてその軸長方向の加熱範囲を調節することができる高周波加熱装置に関する。」(段落【0001】)
(8b)「このような加熱範囲調節型の高周波加熱装置においては、可動コイル20の移動位置がワークWの加熱範囲を決定する。そのため、可動コイル20の移動位置を正確に決める必要がある。しかし、従来装置においては、作業者が手作業で可動コイル20を動かし位置決めしていたため、その作業に時間がかかり、作業能率が低かった。また、可動コイル20の移動位置にばらつきが生じ、その精度も低かった。
本発明はかかる事情に鑑みて創案されたものであり、可動コイルの移動および移動位置の調節を簡単な操作で能率よく高精度に行うことができ、しかも構造が簡単な高周波加熱装置を提供することを目的とする。」(段落【0006】及び【0007】)

(9)甲第8号証:特公昭63-43443号公報
(9a)「5 被処理部材の被焼入れ部に対向配置可能な加熱コイルを備えている誘導加熱装置において、上記被焼入れ部に対向配置可能な気体噴射用冷却環と、当該気体噴射用冷却環を軸線方向でそれぞれ所定の同一間隔をへだててはさむ位置から被焼入れ部周辺の被処理部材に対向配置可能な液体噴射用冷却環とを備えていることを特徴とする合金鋼部材の局部焼入れ装置。」(特許請求の範囲)
(9b)「本発明者は上述の解析をもとに以下の発明をした。
本発明の要旨は、合金鋼部材の局部焼入れをする場合において、所定局部を所定焼入れ温度に加熱せしめたのち、当該昇温した局部を気体噴射によつて強制冷却するとともに、当該局部近傍周辺を液体噴射によつて強制冷却し、局部近傍周辺の伏熱の熱伝導による局部への移行を阻止するようにしたことを骨子とするものである。」(第2頁第4欄39行乃至第3頁第5欄3行)

V.被請求人の反論と証拠方法
1.被請求人の反論
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、本件発明1乃至14についての特許には、請求人が主張するような無効理由は存在しないと主張している。

2.証拠方法
被請求人は、乙号証を提出していないが、平成17年12月19日付け口頭審理陳述要領書に添付してデータ[1]及び[2]を提出している。

VI.当審の判断
1.本件発明1について
甲第1号証の上記(1a)の記載によれば、甲第1号証には、クランクシャフトの両端部のジャーナルと両端部のピンとをR焼入れした後に、R焼入れした焼入部分を焼戻すための「高周波焼入れ・焼戻し方法」が記載されていると云える。そして、この「高周波焼入れ・焼戻し方法」では、上記(1a)の「次いで、第3のステーションで両端のジャーナルをフラット加熱コイルで加熱して焼戻しをしてから、第4のステーションで両端のピンをフラット加熱コイルで加熱して焼戻しを行い、」という記載によれば、ジャーナル部とピン部とは、それぞれ第3のステーションと第4のステーションで別個にフラット加熱して焼戻しが行われ、また、上記(1a)の「また、前記フラット加熱コイルは、ジャーナル或いはピンの円柱部分を高周波加熱するコイルであつて、R部分とフィレット部分との焼戻しは円柱部分を加熱源とする熱伝導のみを利用するようにしたこと」という記載によれば、ジャーナル部とピン部のそれぞれの焼戻しでは、その円柱部分だけが高周波加熱されているだけであって、R部分とフィレット部分は高周波加熱されずに円柱部分の熱伝導によって加熱されるだけであるから、これら記載を本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「クランクシャフトの主要部を構成する両端部のジャーナル部と両端部のピン部をフィレットR焼入した後に、フィレットR焼入した焼入部分を焼戻すための方法において、前記焼入部分を有する前記クランクシャフトの両端部のジャーナル部と両端部のピン部のそれぞれの円柱部分を、高周波誘導加熱コイルを配置した状態の下で、高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの両端部のジャーナル部と両端部のピン部のそれぞれの円柱部分をそれぞれ別個に高周波誘導加熱すると共に、その熱を前記焼入部分のR部分とフィレット部分に熱伝導させることにより前記クランクシャフトの両端部のジャーナル部と両端部のピン部をそれぞれ焼戻しするクランクシャフトの高周波焼入れ・焼戻し方法。」という発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、上位概念的には「クランクシャフトの主要部を構成するジャーナル部やピン部をフィレットR焼入した後に、フィレットR焼入した焼入部分を焼戻すための方法において、前記クランクシャフトの焼入部分を、高周波誘導加熱コイルを配置した状態の下で、高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの焼入部分を高周波誘導加熱するクランクシャフトの高周波焼戻し方法。」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:
(イ)本件発明1は、「焼入部分のみならず非焼入部分も含めたクランクシャフトの全体を、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置した状態の下で、クランクシャフトの全体を一括して高周波誘導加熱する」のに対し、甲1発明は、「クランクシャフトの両端部のジャーナル部と両端部のピン部のそれぞれの円柱部分を、高周波誘導加熱コイルを配置した状態の下で、それぞれ別個に高周波誘導加熱する」点
(ロ)本件発明1は、「高周波誘導加熱され易くかつ熱容量の大きいクランクシャフトのカウンターウェイト部をも同時に高周波誘導加熱してその熱を焼入部分のR部に熱伝導させることにより、加熱されにくいR部をそれ以外の焼入部分と一緒に所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱する」のに対し、甲1発明は、クランクシャフトのカウンターウェイト部の高周波誘導加熱は行わない点
(ハ)本件発明1は、(A)の加熱工程の後に、前記クランクシャフトにおける熱伝導により前記クランクシャフトの全体を放冷して均熱化を図る均熱化工程を有するのに対し、甲1発明は、この均熱化工程を有していない点
(ニ)本件発明1は、焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうために、前記クランクシャフトに冷却液を噴射して前記クランクシャフトを冷却する冷却工程を有するのに対し、甲1発明は、この工程を行うか明らかでない点

次に、これら相違点のうち、特に相違点(イ)乃至(ハ)について検討するに、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)の技術的な意味は、本件特許明細書の段落【0029】等にも記載されているように、要するところ、クランクシャフトの焼入部分である「ジャーナル部やピン部」のみならず非焼入部分である「カウンターウェイト部」を含むクランクシャフトの全体を高周波誘導加熱することによって、その非焼入部分の過熱状態となる「カウンターウェイト部」からの熱伝導作用により焼入部分のフィレットR部を効率よくその周辺部分と一緒に均一加熱する点にあると認められるところ、審判請求人が提出したその余の甲第2号証(その1)乃至甲第8号証には、クランクシャフトのフィレットR焼入部分の焼戻し処理において、その非焼入部分の「カウンターウェイト部」をも高周波誘導加熱すること及びその非焼入部分の過熱状態となる「カウンターウェイト部」からの熱伝導作用と放冷を利用して焼入部分のフィレットR部を均一加熱することについて何ら示唆されていない。
すなわち、甲第2号証(その1)の上記(2a)には、ギャーシャフトの熱処理の従来技術に関し、ギャーシャフト全体を輪郭コイル7により高周波一体焼入れする高周波熱処理について記載されているが、この熱処理における焼戻しは、「上記の焼入れ後の焼戻しには焼戻し炉が用いられるため、」と記載されているように、本件特許明細書に従来技術として紹介されているような「炉」を利用するものであるから、この証拠の従来技術は、本件発明1のような高周波誘導加熱による焼戻方法を示唆するものではない。また、この従来技術の高周波一体焼入れ方法では、上記(2a)に「ギャー歯などを他の部位と均一に加熱することが難しく、焼入れ深さの不均一や、これによるギャー歯のエッジ部のオーバヒートによる溶け,焼割りを生じる場合があるという課題があった。」と記載されているように、ギャーシャフトに発生する「過熱部(オーバヒート)」がむしろ解決すべき技術的課題とされているから、本件発明1のような「過熱」状態となるカウンターウェイト部からの熱伝導作用を利用して焼入部分のフィレットR部を均一加熱する技術思想を示唆するものではない。さらに、甲第2号証(その1)には、この従来技術の課題を解決した高周波熱処理方法も記載されているが、この高周波熱処理方法は、上記(2b)の「ギャーシャフトのギャー部およびギャーシャフト部と、該ギャーシャフト部に連続するシャフト部およびスプライン部とを分離して、高周波加熱による熱処理を実施するようにしたものである。」という記載等からも明らかなように、ギャー部分及びギャーシャフト部分とこれに連続するシャフト部分及びスプライン部分とをそれぞれ分離して高周波誘導加熱・焼入れ又は焼戻し処理するものであるから、ギャーシャフトの全体を誘導加熱するものではない。また、このギャーシャフトの高周波誘導加熱の場合には、ギャー部分及びギャーシャフト部分を誘導加熱するためのコイル7として「多巻コイル」を、シャフト部分及びスプライン部分を誘導加熱するためのコイル8として「単巻きまたは二巻き程度」のコイルをそれぞれ配置し、これら2種類のコイルに予め計算したレベル及び周波数の電力を供給して均熱化を図るものであり、また、コイル7によるギャー部分及びギャーシャフト部分の高周波誘導加熱の場合でも、上記(2d)の記載によれば、ギャー部分とギャーシャフト部分のそれぞれの加熱に見合うように予め計画したレベル又は周波数の電力を選択的に供給・調整して均熱化を図るものであるから、何れにしても本件発明1のような非焼入部分であるカウンターウェイト部という「過熱部」からの熱伝導作用を利用して焼入部分の均熱化を図る技術思想を示唆するものではないと云うべきである。
してみると、甲第2号証(その1)は、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)について何ら示唆するものではないと云える。
甲第2号証(その2)は、クランク軸等の部品を鍛造して作る場合にその素材のビレットを高周波誘導加熱コイルの中に送り込んで鍛造加工の前に素材全体を高温に加熱する鍛造加熱方式に関するものであるから、本件発明1のようなフィレットR焼入部分とカウンターウェイト部等の非焼入部分とを有する複雑形状のクランクシャフトの高周波誘導加熱について何ら示唆するものではない。また、この証拠に記載の「ビレット」は、一般にその形状が断面正方形又は丸形の一様な形状であり、この一様な形状のビレットを誘導加熱した場合にビレットに「過熱部」が発生することもないから、本件発明1のような「過熱」状態となるカウンターウェイト部からの熱伝導作用を利用して焼入部分の均熱化を図るという技術思想を示唆するものではないし、甲1発明のクランクシャフトの全体を誘導加熱する動機付けとなるものでもないと云うべきである。
してみると、甲第2号証(その2)も、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)について何ら示唆するものではないと云えるから、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)は、甲第2号証(その1)及び甲第2号証(その2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることはできない。
次に、甲第3号証は、カムシャフト自体に電流を流して通電加熱する加熱方法に関するものであるから、本件発明1の「高周波誘導加熱方法」とその加熱手段が全く別異のものであり、また甲第4号証は、誘導加熱後に冷却ノズルから長軸材へ冷却液を放出して焼入又は焼戻し処理を行う熱処理装置に関するものであるから、これら証拠も、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)について何ら示唆するものではない。
甲第5号証は、モジュールが小さいラック歯を「一歯毎に」逐次誘導加熱・焼入する高周波誘導加熱コイルに関するものであり、焼入部分と非焼入部分を有する被処理材の全体を誘導加熱する技術思想を示唆するものではないから、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)について何ら示唆するものではない。
甲第6号証の上記(7a)には、テーパー部材の表面均一焼戻しのための従来技術に関し、テーパー部材Wの被加熱部hをその長さに適合する長さに多巻回した加熱コイルによつて誘導加熱する焼戻し方法が記載されているが、この焼戻し方法は、上記(7a)の「第1図cの如く表層の焼戻し硬さを測定して所定等硬度曲線を求めた結果にもとづいて、ピッチや内径を修正する作業を数回にわたつて繰り返しつつ、不均一加熱から均一加熱が得られるように調整している。」という記載によれば、加熱コイルのピッチや内径を修正して均一加熱を行うものであり、本件発明1のような「過熱」状態となるカウンターウェイト部からの熱伝導作用を利用して均一加熱を行うものではない。また、甲第6号証の上記(7b)及び(7c)には、この従来技術の課題を解決した高周波焼戻し方法も記載されているが、この高周波焼戻し方法は、一次コイルと二次コイルから構成された高周波誘導加熱コイルによって均一加熱を行うものであるから、甲第6号証も、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)について何ら示唆するものではない。
甲第7号証は、高周波加熱装置の可動コイルの移動および移動位置の調節を簡単な操作で高精度に行うための駆動機構に関するものであり、甲第8号証は、局部焼入れに使用される液体噴射用冷却環等を備えた局部焼入れ方法及び装置に関するものであるから、これら証拠も、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)について何ら示唆するものではない。
以上によれば、審判請求人が提出した甲第2号証(その1)乃至甲第8号証には、本件発明1に係る上記相違点(イ)乃至(ハ)について何ら示唆されていないと云えるから、上記相違点(イ)乃至(ハ)は、これら証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることはできない。
したがって、本件発明1は、上記相違点(ニ)について検討するまでもなく、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本件発明2及び3について
これら発明は、少なくとも請求項1に記載の特定事項を引用してなるものであるから、本件発明1と同様、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.本件発明4について
本件発明4は、「クランクシャフトの高周波焼戻装置」に係り、その特定事項のうちの(a)の「加熱ステーション」及び(b)の「均熱化ステーション」が本件発明1の特定事項のうちの(A)の「加熱工程」及び(B)の「均熱化工程」にそれぞれ装置的に対応するものであるところ、甲第1号証から装置の発明を認定して本件発明4と対比した場合でも、両者の相違点は、少なくとも上記「1.本件発明1について」の項で摘示した上記相違点(イ)乃至(ハ)と実質的に同様のものであると認められる。
そうすると、本件発明4も、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.本件発明5乃至14について
これら発明は、少なくとも請求項4に記載の特定事項を引用してなるものであるから、本件発明4と同様、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

VII.請求人の主張に対して
(1)請求人は、口頭審理後に提出された上申書の「クランクシャフト全体の均等加熱」の項において、「電気炉を用いた周知従来例(特開昭62-194017号公報・・・)についても同様の効果を奏する。そうすると、本件特許発明は、電気炉を用いた周知従来例において加熱方式を高周波誘導加熱に変更したのがその内容ということになるが、加熱方式を種々の事情に応じて適宜変更することは当業者の常套手段である。また、ワーク全体を誘導加熱することは甲第2号証(その2)にも開示されており、この場合もワーク全体が均等に加熱される。」と主張している。
請求人の上記主張は、電気炉による焼戻方法と高周波誘導加熱による焼戻方法とは、同様の効果を奏するという前提に立ったものであるが、電気炉による焼戻方法は、本件特許明細書の段落【0008】に「比較的長い加熱時間を要するため加熱の間に、高周波焼入によって得られた圧縮残留応力が低減されてしまい、ひいては疲労強度が大幅に低下してしまう不具合がある。」と記載されているように、高周波誘導加熱による焼戻方法と同様の効果を奏するものではないから、請求人の上記主張は、その前提において失当である。
また、請求人は、加熱方式を種々の事情に応じて適宜変更することは当業者の常套手段であるとも主張しているが、上記「VI.当審の判断」の項で検討したとおり、請求人が提出した証拠の中には常套手段であると決め付けるに足る何らの証拠も見当たらない。請求人は、甲第2号証(その2)をその証拠として引用するが、この証拠についても、上記「VI.当審の判断」の項で言及したとおりである。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
(2)請求人は、上申書において、「この点、ワークの焼入部分を熱容量の大きな部分と加熱され難い部分と共に高周波誘導加熱してワークの焼入部分を均一に且つ安定して焼戻しするという技術は、甲第2号証(その1)に明らかに開示されている。そうすると、本件特許発明は、甲第2号証(その1)においてワークの種類をギャーシャフトからクランクシャフトに単に変更しただけの内容ということになる。」とも主張している。
しかしながら、甲第2号証(その1)に記載の高周波誘導加熱は、上記「VI.当審の判断」の項で検討したとおり、その加熱部分に対向したコイルに予め計算した周波数の電力を供給・調整して均熱化を図るものであり、加熱され易い部分の「過熱部」からの熱伝導を利用して均熱化を図る技術思想を示唆するものではないから、本件発明1とその均熱化を図る手段が相違していると云える。
したがって、甲第2号証(その1)のワークの種類を変更しても本件発明1に至るものではないから、請求人の上記主張も、採用することができない。

VIII.むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1乃至14についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
クランクシャフトの高周波焼戻方法及び装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】クランクシャフトの主要部を構成するジャーナル部やピン部をフィレットR焼入した後に、フィレットR焼入した焼入部分を焼戻すための方法において、
(A)前記焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置した状態の下で、前記高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの全体を一括して高周波誘導加熱して前記クランクシャフトの焼入部分を高周波誘導加熱すると共に、高周波誘導加熱され易くかつ熱容量の大きい前記クランクシャフトのカウンターウェイト部をも同時に高周波誘導加熱してその熱を前記焼入部分のR部に熱伝導させることにより、加熱されにくい前記R部をそれ以外の焼入部分と一緒に所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱する加熱工程と、
(B)前記加熱工程の後に、前記クランクシャフトにおける熱伝導により前記クランクシャフトの全体を放冷して均熱化を図る均熱化工程と、
(C)焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうために、前記クランクシャフトに冷却液を噴射して前記クランクシャフトを冷却する冷却工程と、
を順次に施行することを特徴とするクランクシャフトの高周波焼戻方法。
【請求項2】前記(A)〜(C)に記載の工程の後に、
(D)前記冷却工程において前記クランクシャフトに付着した冷却液を前記クランクシャフトから除去するエアブロー工程、をさらに施行することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの高周波誘導加熱方法。
【請求項3】前記加熱工程,均熱化工程,冷却工程及びエアブロー工程の各工程を、前記クランクシャフトを間欠的に水平移動させながら順次に連続して行なうようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクランクシャフトの高周波焼戻方法。
【請求項4】フィレットR焼入が施されたクランクシャフトのジャーナル部やピン部を焼戻すための装置において、
(a)前記焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置して、前記高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの全体を一括して高周波誘導加熱して前記クランクシャフトの焼入部分を高周波誘導加熱すると共に、高周波誘導加熱され易くかつ熱容量の大きい前記クランクシャフトのカウンターウェイト部をも同時に高周波誘導加熱してその熱を前記焼入部分のR部に熱伝導させることにより、加熱されにくい前記R部をそれ以外の焼入部分と一緒に所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱する加熱ステーションと、
(b)高周波誘導加熱された前記クランクシャフトを前記クランクシャフト自体の熱伝導によりその全体を放冷して均熱化を図る均熱化ステーションと、
(c)焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうために、前記クランクシャフトに冷却液を噴射して前記クランクシャフトを冷却する冷却ステーションと、
をそれぞれ具備することを特徴とするクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項5】前記(a)〜(c)のステーションに加えて、
(d)前記冷却工程において前記クランクシャフトの表面に付着した冷却液を前記クランクシャフトの表面から除去するエアブローステーション、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項6】前記加熱ステーション,均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションにおける各処理工程を、前記クランクシャフトを間欠的に水平移動させながら連続して行なうために、
(a)前記クランクシャフトを載置状態で支持する支持機構と、
(b)前記クランクシャフトを前記支持機構にて支持した状態の下で前記クランクシャフトを水平方向に移動させる水平移動機構と、
(c)前記水平移動機構にて移動されてくる前記クランクシャフトの全体、すなわち、焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、完全に取り囲んで前記クランクシャフトの全体を所要の焼戻温度にまで一括して高周波誘導加熱するための、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルを有する加熱機構と、
(d)前記加熱機構にて高周波誘導加熱された前記クランクシャフトのジャーナル部やピン部の加熱処理部を、前記クランクシャフトの熱伝導により放冷して均熱化を図る均熱化機構と、
(e)前記均熱化機構から移送される前記クランクシャフトの均熱化された加熱処理部を噴射冷却液にて常温まで冷却する噴射冷却機構と、
(f)前記噴射冷却機構から移送される前記クランクシャフトにエアブローを付与するエアブロー機構と、
から成る焼戻システムを備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項7】前記加熱ステーションに配設される前記クランクシャフトの支持機構は、
(a)前記クランクシャフトを前記加熱ステーション内の高周波誘導加熱コイルにて取り囲んだ状態であってかつ前記高周波誘導加熱コイルと同軸状に配置された状態で支持する際に、前記クランクシャフトの軸線方向の両端部に当接されるセラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器と、
(b)前記一対の支持器が先端部にそれぞれ取付けられ、かつ、前記高周波誘導加熱コイルの軸線の延長方向に沿って延びるように配設された一対の非磁性金属製のクランクシャフト支持用シャフトと、
をそれぞれ備えることを特徴とする請求項6に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項8】前記クランクシャフトの水平移動機構は、
(a)前記均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションの配設間隔に対応する所定間隔をもって配設された支持器と、
(b)前記クランクシャフトを上下方向及び前後方向に移動することにより前記クランクシャフトを前記加熱ステーション,均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションに順次に搬送するためのクランクシャフト搬送機構と、をそれぞれ備えることを特徴とする請求項6又は7に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項9】前記加熱ステーションに配設される前記加熱機構は、導線を螺旋状に巻回した高周波誘導加熱コイルから成り、前記クランクシャフトの一端側のフランジ部に対応するコイル部分の巻線間隔を相対的に密となるように巻回したことを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項10】加熱休止時には前記高周波誘導加熱コイルを予め後退した待機位置に配置させ、前記セラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器にて前記クランクシャフトを支持して高周波誘導加熱を開始するのに先立って、前記高周波誘導加熱コイルを前記待機位置から所定の加熱位置まで前進させ、高周波誘導加熱の終了後に前記待機位置まで後退させるための加熱コイル水平移動機構を備えることを特徴とする請求項4乃至9の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項11】前記冷却ステーションに配設される前記噴射冷却機構は、
(a)前記支持器にて支持された前記クランクシャフトより所定の距離をもって配設され、前記クランクシャフトの全長及び全幅に相応する矩形をなし、クランクシャフトに対向する面に多数の冷却液噴射孔を設けた噴射冷却環と、
(b)前記噴射冷却環に接続された冷却水導入管及び給水ポンプと、
(c)冷却開始時に前記噴射冷却環を前記クランクシャフトに対して所定の距離となる位置まで降下させ、冷却終了後に所定の待機位置まで上昇させる移動機構と、
をそれぞれ備えることを特徴とする請求項6乃至10の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項12】前記エアブローステーションに設けられる前記エアブロー機構は、
(a)前記支持器にて支持されたクランクシャフトに対して所定の距離をもって配設され、前記クランクシャフトの寸法及び形状に応じた複数本のエアノズルと、
(b)前記エアノズルに接続されたエア導入管と、
(c)エアブロー開始時に前記エアノズルを前記クランクシャフトに対して所定の距離となる位置まで降下させ、エアブロー終了後に所定の待機位置まで移動させる移動機構と、
(d)エアブロー時に前記エアノズルを前後及び左右に揺動させるための揺動装置と、
をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項6乃至11の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項13】前記セラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器のうちの一方の支持器であって、かつ、前記クランクシャフトの一端側のフランジ部を支持する支持器に隣接して配置されると共に、磁束密度を局部的に高める磁性材料から成りかつ前記クランクシャフトのフランジ部側の部分の加熱温度を制御するように機能する誘導補助部材を、前記高周波誘導加熱コイルのフランジ部側の端部の近傍箇所に配設したことを特徴とする請求項6乃至12の何れか1項に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【請求項14】前記誘導補助部材は、内部に通水路を設けた磁性材料より成る円盤形状の調整部材であることを特徴とする請求項13に記載のクランクシャフトの高周波焼戻装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトの高周波焼入されたジャーナル部やピン部等を一括して高周波焼戻する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、クランクシャフトの一例である4気筒中型クランクシャフト1の構造を示している。この4気筒中型クランクシャフト1は、同一の軸線(クランクシャフト1の回転軸線)Xに沿って配置された5つのジャーナル部1J〜5Jと、これらのジャーナル部1J〜5Jにそれぞれ一体に設けられた8つのカウンターウェイトCW1〜CW8と、互いに隣接して対向配置されたカウンターウェイトCW1とCW2、CW3とCW4、CW5とCW6、CW7とCW8との間にそれぞれ架設され、かつ、前記ジャーナル部1J〜5Jの軸線から偏倚した位置にそれぞれ配設された4つのピン部1P〜4Pと、一端側のジャーナル部1Jに同軸状に一体成形された軸部S1,S2と、他端側のジャーナル部5Jに同軸状に一体成形されたフランジ部Fとから構成されている。
【0003】
上述のピン部1P〜4Pのうち、回転軸線X方向において互いに隣り合うピン部1Pと2Pとは位相が互いに180°ずれた位置に配置されると共に、回転軸線X方向において互いに隣り合うピン部3Pと4Pとは位相が互いに180°ずれた位置に配置され、左右両端のピン部1Pと4Pとは位相が互いに同じ位置に配置されると共に、回転軸線X方向において互いに隣り合うピン部2Pと3Pとは位相が互いに同じ位置に配置されている。また、図4に示すように、クランクシャフト1の両端のフランジ部F及び軸部S1,S2の軸線はジャーナル部1J〜5Jの回転軸線Xの延長線上に一致されており、従ってクランクシャフト1は直線状の回転軸線Xを中心に回転駆動されるように構成されている。なお、図4において、Yは互いに同相位置に配置されたピン部1P及び4Pの直線状の軸線、Zは互いに同相位置に配置されたピン部2P,3Pの直線状の軸線である。
【0004】
このようなクランクシャフト1にあっては、通常、ジャーナル部1J〜5Jの円筒状外周面に焼入処理を施すと共に、これとは別の工程でピン部1P〜4Pにも焼入処理を施こすようにしている。なお、ピン部1P〜4Pの焼入処理の仕方としては大別して2通り、すなわち、フラット焼入とフィレットR焼入との2通りの仕方がある。ここで、ピン部1P〜4Pについての2通りの焼入処理の仕方について簡単に述べると、次の如くである。
【0005】
まず、ピン部1P〜4Pは、各々、円筒状外周面αを有する円柱部Aと、この円柱部Aに続くR部(角部若しくは隅部)Bと、このR部Bに続いて形成されかつクランクシャフト1の軸線Xに対して直角に延びるように形成されたフィレット部Cとから構成されている(図5参照)。かくして、ピン部1P〜4Pの円柱部Aの円筒状外周面αのみを焼入処理する焼入の仕方をフラット焼入と称し、前記円筒状外周面α,R部Bの湾状面β及びフィレット部Cの側面γをそれぞれ含む連続した面部分(図5において多数の点で示した部分)の全てを焼入処理する焼入の仕方をフィレットR焼入と称している。
【0006】
図5は、フィレットR焼入を行った場合の焼入硬化層パターンの一例を示すものであって(図5ではピン部1P及びジャーナル部1J,5Jの焼入硬化層パターンのみ図示)、この場合には、ジャーナル部5J,5Jの円筒状外周部δ及びピン部1P〜4Pの円筒状外周部αだけでなく、この円筒状外周部αからコーナーのR部Bの湾曲面βを介してこれに連続する直角方向のフィレット部Cの側面γにまで連続する領域に焼入硬化層6が形成される。一方、左右両端のジャーナル部1J,5Jについては、図5に示す如く、円柱部Dの円筒状外周部δ、及び、ジャーナル部1J,5Jにそれぞれ隣接するフィレット部Cの側面εにフィレットR焼入を施して焼入硬化層パターン7を形成するのが一般的である(但し、その他のジャーナル部2J〜4Jについては焼入処理を施さない)。なお、図5に示す如く互いに異なる焼入硬化層パターン6,7を高周波焼入により形成するに当たっては、それぞれ専用の別個の高周波誘導加熱コイルを用いて所要の焼入温度に加熱して急冷することにより所望の焼入硬化層パターン6,7を形成するようにしている。
【0007】
このようにして焼入処理が施されたクランクシャフト1は、通常、靱性の向上や内部歪の除去などの目的で焼戻処理が施される。ところで、従来においては、クランクシャフト1の焼戻を行なうに当たっては、加熱手段として電気炉が一般的に用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、焼入処理後のクランクシャフト1を電気炉により所要温度に加熱して冷却するような従来の焼戻方法では、均一で安定した焼戻品質が得られるものの、比較的長い加熱時間を要するため加熱の間に、高周波焼入によって得られた圧縮残留応力が低減されてしまい、ひいては疲労強度が大幅に低下してしまう不具合がある。しかも、電気炉による加熱は間接加熱であり、発熱体からの輻射熱ないしは雰囲気からの熱伝導により被焼戻体であるクランクシャフトを加熱するようにしているため、昇温させるのに時間がかかり、焼戻の処理効率が悪いという問題点がある。因みに、焼戻処理すべきクランクシャフトの大きさや質量にもよるが、一般的には、0.5〜1.5時間程度の加熱時間が必要であり、さらに、均熱、温度保持に1〜1.5時間を要し、総合した焼戻時間は1.5〜3時間にも及ぶため、このことが高周波焼戻装置をクランクシャフトの焼入加工ラインに組み込むに当たっての大きな障害となっているのが実状である。
【0009】
そこで、上述のような電気炉を用いた焼戻方法に代わるものとして、高周波誘導加熱コイルにて加熱を行なうようにした高周波焼戻方法が提案されている。この高周波焼戻方法の場合には、半開放鞍型の高周波誘導加熱コイルを、焼戻対象であるクランクシャフト1のジャーナル部1J,5Jやピン部1P〜4Pの被加熱部上に載置状態でセットし、クランクシャフト1を軸線Xを中心に回転させながら個々に誘導加熱して焼戻処理を行なうようにしている。さらに具体的に述べると、まず図5に示す如くクランクシャフト1のジャーナル部1J,5J或いはピン部1P〜4Pの上方位置に半開放鞍型の追従式の高周波誘導加熱コイル(いわゆるフラット加熱コイル)を載置し、クランクシャフト1を軸線Xを中心に回転させながら、ジャーナル部1J,5Jを同時に高周波誘導加熱し、続いてピン1P〜4Pを同時に高周波誘導加熱し、その後に冷却処理を施すことにより焼戻を行なうようにしている。
【0010】
ところが、上述の如き従来の高周波焼戻方法では、フィレットR焼入されたジャーナル部1J,5J及びピン部1P〜4Pの円柱部Aの円筒状周面αのみをフラット加熱コイルにより加熱するようにしているので、円柱部Aに続くR部Bとフィレット部Cは、円柱部Aからの熱伝導のみにより加熱が行われることとなる。そのため、円柱部Aの加熱温度とR部B及びフィレット部Cの加熱温度との間に比較的大きな温度差が生じ、これらの各部において比較的大きな温度のばらつきが生じるおそれがある。このような温度差並びに温度のばらつきが顕著に発生すると、焼戻品質が悪くなり、規格外れの製品(不良品)を生じ易くなるという不具合がある。
【0011】
さらに、従来の高周波焼戻方法を施行するためには、ジャーナル部加熱用の高周波誘導加熱コイル、並びに、ピン部加熱用の高周波誘導加熱コイルの2種類の加熱コイルを用意する必要があり、設備価格が高価となるという問題点がある。また、ジャーナル部1J,5J及びピン部1P〜4Pの焼戻処理を別個の高周波誘導加熱コイルを用いてそれぞれ別々の焼戻処理工程(2工程)で行なう必要があるため、2工程の焼戻処理を行なうのに手間を要し、処理能率が悪いという問題点もある。
【0012】
要するに、従来における電気炉による焼戻方法では、焼戻処理に要する時間が長く、設備を焼戻処理加工ラインに組み込むに当たっての大きな障害となり、また従来における高周波誘導加熱による焼戻方法では、焼戻品質と設備価格に難点があるのが実状である。
【0013】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、高周波誘導加熱コイルにてクランクシャフトのジャーナル部やピン部などの焼入部分の全てを一括して(1工程で)焼戻処理することにより、高周波焼入による利点の1つである圧縮残留応力の保持を確保しつつ、均一で安定した優れた焼戻品質を得ることができ、かつ、設備費が安価で済むようにしたクランクシャフトの高周波焼戻方法及びその高周波焼戻装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明では、クランクシャフトの主要部を構成するジャーナル部やピン部をフィレットR焼入した後に、フィレットR焼入した焼入部分を焼戻すための方法において、
(A)前記焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置した状態の下で、前記高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの全体を一括して高周波誘導加熱して前記クランクシャフトの焼入部分を高周波誘導加熱すると共に、高周波誘導加熱され易くかつ熱容量の大きい前記クランクシャフトのカウンターウェイト部をも同時に高周波誘導加熱してその熱を前記焼入部分のR部に熱伝導させることにより、加熱されにくい前記R部をそれ以外の焼入部分と一緒に所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱する加熱工程と、
(B)前記加熱工程の後に、前記クランクシャフトにおける熱伝導により前記クランクシャフトの全体を放冷して均熱化を図る均熱化工程と、
(C)焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうために、前記クランクシャフトに冷却液を噴射して前記クランクシャフトを冷却する冷却工程と、
を順次に施行するようにしている。
また、本発明では、前記(A)〜(C)に記載の工程の後に、
(D)前記冷却工程において前記クランクシャフトに付着した冷却液を前記クランクシャフトから除去するエアブロー工程、
をさらに施行するようにしている。
また、本発明では、前記加熱工程,均熱化工程,冷却工程及びエアブロー工程の各工程を、前記クランクシャフトを間欠的に水平移動させながら順次に連続して行なうようにしている。
また、本発明では、フィレットR焼入が施されたクランクシャフトのジャーナル部やピン部を焼戻すための装置において、
(a)前記焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルにて完全に取り囲まれた位置に配置して、前記高周波誘導加熱コイルに通電するのに応じて、前記クランクシャフトの全体を一括して高周波誘導加熱して前記クランクシャフトの焼入部分を高周波誘導加熱すると共に、高周波誘導加熱され易くかつ熱容量の大きい前記クランクシャフトのカウンターウェイト部をも同時に高周波誘導加熱してその熱を前記焼入部分のR部に熱伝導させることにより、加熱されにくい前記R部をそれ以外の焼入部分と一緒に所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱する加熱ステーションと、
(b)高周波誘導加熱された前記クランクシャフトを前記クランクシャフト自体の熱伝導によりその全体を放冷して均熱化を図る均熱化ステーションと、
(c)焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうために、前記クランクシャフトに冷却液を噴射して前記クランクシャフトを冷却する冷却ステーションと、をそれぞれ具備するようにしている。
また、本発明では、前記(a)〜(c)のステーションに加えて、
(d)前記冷却工程において前記クランクシャフトの表面に付着した冷却液を前記クランクシャフトの表面から除去するエアブローステーション、
をさらに備えるようにしている。
また、本発明では、前記加熱ステーション,均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションにおける各処理工程を、前記クランクシャフトを間欠的に水平移動させながら連続して行なうために、
(a)前記クランクシャフトを載置状態で支持する支持機構と、
(b)前記クランクシャフトを前記支持機構にて支持した状態の下で前記クランクシャフトを水平方向に移動させる水平移動機構と、
(c)前記水平移動機構にて移動されてくる前記クランクシャフトの全体、すなわち、焼入部分のみならず非焼入部分も含めた前記クランクシャフトの全体を、完全に取り囲んで前記クランクシャフトの全体を所要の焼戻温度にまで一括して高周波誘導加熱するための、導線を螺旋状に巻回して成る略円形状ソレノイドタイプの高周波誘導加熱コイルを有する加熱機構と、
(d)前記加熱機構にて高周波誘導加熱された前記クランクシャフトのジャーナル部やピン部の加熱処理部を、前記クランクシャフトの熱伝導により放冷して均熱化を図る均熱化機構と、
(e)前記均熱化機構から移送される前記クランクシャフトの均熱化された加熱処理部を噴射冷却液にて常温まで冷却する噴射冷却機構と、
(f)前記噴射冷却機構から移送される前記クランクシャフトにエアブローを付与するエアブロー機構と、
から成る焼戻システムを備えるようにしている。
また、本発明では、前記加熱ステーションに配設される前記クランクシャフトの支持機構は、
(a)前記クランクシャフトを前記加熱ステーション内の高周波誘導加熱コイルにて取り囲んだ状態であってかつ前記高周波誘導加熱コイルと同軸状に配置された状態で支持する際に、前記クランクシャフトの軸線方向の両端部に当接されるセラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器と、
(b)前記一対の支持器が先端部にそれぞれ取付けられ、かつ、前記高周波誘導加熱コイルの軸線の延長方向に沿って延びるように配設された一対の非磁性金属製のクランクシャフト支持用シャフトと、
をそれぞれ備えるようにしている。
また、本発明では、前記クランクシャフトの水平移動機構は、
(a)前記均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションの配設間隔に対応する所定間隔をもって配設された支持器と、
(b)前記クランクシャフトを上下方向及び前後方向に移動することにより前記クランクシャフトを前記加熱ステーション,均熱化ステーション,冷却ステーション及びエアブローステーションに順次に搬送するためのクランクシャフト搬送機構と、
をそれぞれ備えるようにしている。
また、本発明では、前記加熱ステーションに配設される前記加熱機構は、導線を螺旋状に巻回した高周波誘導加熱コイルから成り、前記クランクシャフトの一端側のフランジ部に対応するコイル部分の巻線間隔を相対的に密となるように巻回している。
また、本発明では、加熱休止時には前記高周波誘導加熱コイルを予め後退した待機位置に配置させ、前記セラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器にて前記クランクシャフトを支持して高周波誘導加熱を開始するのに先立って、前記高周波誘導加熱コイルを前記待機位置から所定の加熱位置まで前進させ、高周波誘導加熱の終了後に前記待機位置まで後退させるための加熱コイル水平移動機構を備えるようにしている。
また、本発明では、前記冷却ステーションに配設される前記噴射冷却機構は、
(a)前記支持器にて支持された前記クランクシャフトより所定の距離をもって配設され、前記クランクシャフトの全長及び全幅に相応する矩形をなし、クランクシャフトに対向する面に多数の冷却液噴射孔を設けた噴射冷却環と、
(b)前記噴射冷却環に接続された冷却水導入管及び給水ポンプと、
(c)冷却開始時に前記噴射冷却環を前記クランクシャフトに対して所定の距離となる位置まで降下させ、冷却終了後に所定の待機位置まで上昇させる移動機構と、
をそれぞれ備えるようにしている。
また、本発明では、前記エアブローステーションに設けられる前記エアブロー機構は、
(a)前記支持器にて支持されたクランクシャフトに対して所定の距離をもって配設され、前記クランクシャフトの寸法及び形状に応じた複数本のエアノズルと、
(b)前記エアノズルに接続されたエア導入管と、
(c)エアブロー開始時に前記エアノズルを前記クランクシャフトに対して所定の距離となる位置まで降下させ、エアブロー終了後に所定の待機位置まで移動させる移動機構と、
(d)エアブロー時に前記エアノズルを前後及び左右に揺動させるための揺動装置と、
をそれぞれ備えるようにしている。
また、本発明では、前記セラミックス系耐熱材料から成る一対の支持器のうちの一方の支持器であって、かつ、前記クランクシャフトの一端側のフランジ部を支持する支持器に隣接して配置されると共に、磁束密度を局部的に高める磁性材料から成りかつ前記クランクシャフトのフランジ部側の部分の加熱温度を制御するように機能する誘導補助部材を、前記高周波誘導加熱コイルのフランジ部側の端部の近傍箇所に配設している。
また、本発明では、前記誘導補助部材は、内部に通水路を設けた磁性材料より成る円盤形状の調整部材であるようにしている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。なお、図1〜図4において、図5と同様の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの高周波焼戻方法を施行する高周波焼戻装置10を示すものであって、本装置10は、高周波焼入装置11によって図5に示す如くフィレットR焼入されたクランクシャフト1のジャーナル1J,5J及びピン1P〜4Pを1つの高周波誘導加熱コイル12を用いて焼戻処理を行うためのものである。
【0017】
図1に示す熱処理機構13は、クランクシャフト1のジャーナル部1J,5J及びピン1P〜4PをフィレットR焼入する高周波焼入装置11と、この高周波焼入装置11においてフィレットR焼入されたジャーナル部1J,5J及びピン部1P〜4Pを一括して焼戻処理を行なう焼戻装置10とから構成されている。そして、クランクシャフト1が高周波焼入装置11の左端の投入口から投入されると、それ以後は搬送装置14によって焼入装置11及び焼戻装置10内の各ステーションを順次に経由して間欠的に水平移動されながら右端の出口OUTに自動的に排出されるようになっている。ただし、焼入装置11内の搬送装置14は図示を省略してある。
【0018】
上述の焼戻装置10は、被焼戻体(ワーク)であるクランクシャフト1の全体を高周波誘導加熱コイル12により所要の焼戻温度にまで高周波誘導加熱(昇温加熱)する加熱ステーション21と、高周波誘導加熱されたクランクシャフト1をクランクシャフト1自体の熱伝導によりその全体(焼入部及び被焼入部)を放冷して均熱化を図る均熱化ステーション22,23と、焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうためにクランクシャフト1に冷却液を噴射してクランクシャフト1を冷却する冷却ステーション24と、冷却工程において付着した冷却液をクランクシャフト1から除去するエアブローステーション25とをそれぞれ具備しており、クランクシャフト1は上述の搬送装置14により水平方向に沿って各ステーション21〜25を順次に経由して間欠的に自動搬送されるように構成されている。
【0019】
加熱ステーション21には、クランクシャフト1の昇温加熱を行なうための高周波誘導加熱コイル12を内部に収容した炉体30等の設備が備えられている。この炉体30は、図1及び図2に示すように、電源整合部33の下部に取り付けられている。なお、本実施形態で用いられる図3の高周波誘導加熱コイル12は、クランクシャフト1のフランジ部Fに対応するコイル部分の巻線間隔を相対的に密となるように導線を螺旋状に巻回した単層多巻線から成る略円形状ソレノイドタイプのコイルであって、高周波誘導加熱コイル12の両端子34a,34bは、高周波電流(電源)を供給する電源整合部33の下部に配設された端子(図示せず)に接続されている。また、加熱ステーション21にクランクシャフト1が搬送されると、電源整合部33がシリンダ35によって付勢されてガイドレール36上に沿って移動され、これに伴って炉体30が図2において破線で示された待機位置Mから実線で示された加熱位置Nに水平移動されるように構成されている。なお、加熱終了後は、再び待機位置Mに戻されるようになっている。
【0020】
また、均熱化ステーション22,23には、クランクシャフト支持器63,64のみがそれぞれ備えられており、冷却ステーション24には、加熱したクランクシャフト1の全体を水等の冷却液にて冷却するための噴射冷却環41等の設備が備えられている(図1参照)。
【0021】
また、エアブローステーション25には、冷却後においてクランクシャフト1に付着している冷却液の粒(水滴等)を除去するエアノズル42等の設備が備えられている(図1参照)。
【0022】
クランクシャフト1を搬送・支持する機構(搬送装置14)は、図1に示すように、高周波焼戻装置10の左端のクランクシャフト投入側の位置から右端の排出側まで延びるように敷設された一連の移動ビーム50と、この移動ビーム50と高周波焼入装置11との間に固定配置された固定ビーム60とを有している。これらの両ビーム50,60は、共に、クランクシャフト搬送方向に沿って互いに平行に敷設された各一対のビーム部材からそれぞれ構成されており、移動ビーム50が内側に、固定ビーム60が外側に、それぞれ配置されている。また、両ビーム50,60には共に一対のビーム部材の互いに対向する位置に一対の支持器がクランクシャフト搬送方向に沿って各ステーション21〜25の隣接間隔に対応した間隔をおいて取り付けられている。すなわち、クランクシャフト1を搬送する移動ビーム50上には、クランクシャフト投入側から排出側までの間にV字ブロックから成る6対の支持器51〜56が固定配置され、クランクシャフト1を載置・支持する固定ビーム60上には、同じくクランクシャフト投入側から排出側までの間にV字ブロックから成る7対の支持器61〜67が固定配置されている。
【0023】
移動ビーム50上の支持器51〜56及び固定ビーム60上の支持器61〜67(但し、62を除く)は、金属製のものである。また、加熱ステーション21に配置される支持器62は、セラミックス系耐熱材料から成るものである。移動ビーム50の支持器51〜56は、全て、クランクシャフト1のジャーナル部2J及び4Jを支持し、加熱ステーション21内に配置された固定ビーム60の支持器62がクランクシャフト1のフランジ部F及び軸部S1を支持し、その他の固定ビーム60の支持器61,63〜67はクランクシャフト1のジャーナル部1J及び5Jを支持するようになっている。
【0024】
さらに、図2に示すように、加熱ステーション21内に固定配置される一対のセラミックス製の支持器62は、互いに同一の軸線上に沿って対向配置されるように固定ビーム60に水平状に取付けられた非磁性金属製の一対のクランクシャフト支持用シャフト68,69の先端に固定されており、一方のシャフト68の先端には、内部に通水路を設けた磁性材料より成る円盤形状の誘導補助部材(誘導調整部材)38がフランジ部Fの側のクランクシャフト部分の加熱を補助するために配設されている。なお、この誘導補助部材38の通水路には、図外の冷却設備から冷却液が供給されるようになっている。そして、他方のシャフト69には、待機位置Mにある高周波誘導加熱コイル12が同軸状にその周囲を取り囲んだ状態で配置されるようになっている。かくして、これら一対のクランクシャフト支持用シャフト68,69は、高周波誘導加熱コイル12の軸線の延長方向に沿って延びるように同軸状に配設されている。
【0025】
また、上述の移動ビーム50は、搬送装置14により、作動前の低い位置から上昇・前進・下降・後退の4行程を1サイクルとする循環経路に沿って移動されるように構成されている。しかして、固定ビーム60の支持器61〜67上に載置されているクランクシャフト1が移動ビーム50の上昇移動に伴って支持器51〜56で受け取られて前進移動され、その後の移動ビーム50の下降移動に伴って固定ビーム60の支持器61〜67上に戻すことにより、クランクシャフト搬送方向の下流側に沿って1ステップずつ搬送されるようになっている。そして、1ステップの搬送後に移動ビーム50が後退移動されて当初の待機位置に復帰されるようになっている。移動ビーム50の上昇及び下降,前進及び後退の動作は、何れも、図外のシリンダにより駆動される搬送装置14の昇降機構の作動アーム71、前後移動装置の作動アーム72の先端が描く円弧上の動きを、上下方向と前後方向の直線運動に変換することにより行なわれる(図1参照)。なお、図1に示す移動ビーム50は、移動ビーム50の支持器51〜56の先端が固定ビーム60の支持器61〜67の先端とほぼ同じ高さにある状態を示している。
【0026】
クランクシャフト1の位相は、クランクシャフト1の投入時から排出時まで、クランクシャフト1の軸線Xに対し、ピン部1P,4Pの軸線Yが最上位置(上死点位置)に配置されると共に、ピン部2P及び3Pの軸線Zが最下位置(下死点)に配置されるように設定されている。
【0027】
次に、上述の高周波焼戻装置10を使用してクランクシャフト1の焼戻処理を行なう方法について述べると、以下の通りである。まず、前工程において高周波焼入装置11により所定の焼入処理を施されたクランクシャフト1が高周波焼戻装置10の左側に矢印で示す投入口に投入され、クランクシャフト1のジャーナル部1J,5Jが固定ビーム60の支持器61上に載置されて支持されると、その直後に移動ビーム50が上昇移動される。これに伴い、固定ビーム60の支持器61にて支持されたクランクシャフト1のジャーナル部2J,4Jが移動ビーム50上の支持器51にて受け取られてクランクシャフト1が前記支持器51にて支持され、この状態の下で移動ビーム50が固定ビーム60の支持器61,62間の1スパン長さに相当する距離だけ前進されてから下降される。この際に、加熱ステーション21内に固定配置されかつ固定ビーム60に取付けられたシャフト68,69(図2参照)の先端のセラミックス製の支持器62上にクランクシャフト1のフランジ部F及び軸部S1が載置されて前記支持器62に受け渡される。
【0028】
そして、移動ビーム50はさらに下降移動された後に、後退移動されて1サイクルの移動動作を終了し、次のサイクルに備えて待機位置に配置される。一方、固定ビーム60の支持器61上には、前工程の高周波焼入装置11から引き続いて投入される次のクランクシャフト1が載置される。
【0029】
上述のようにしてクランクシャフト1が加熱ステーション21に搬送されて前記支持器62上に載置されると、高周波誘導加熱コイル12を収容した炉体30が図2に破線で示す待機位置Mから、実線で示す加熱位置Nまで水平移動される。この際、炉体30に保持されている高周波誘導加熱コイル12の軸線が水平状のシャフト69の軸線にほぼ沿って移動され、前記支持器62にて支持されているクランクシャフト1が高周波誘導加熱コイル12の開口部32を相対的に通過して高周波誘導加熱コイル12にて完全に取り囲まれた位置すなわち加熱位置Nに配置される(図2参照)。そして、これに同期して、高周波誘導加熱コイル12に図外の高周波電源から電源整合部33を介して所要の高周波電流が供給され、これによりクランクシャフト1は焼入部のみならず非焼入部分(特に、カウンターウェイト部CW1〜CW8)も含めた全体が一括して高周波誘導加熱(昇温加熱)される。この場合、クランクシャフト1のカウンターウェイト部CW1〜CW8は、熱容量が最も大きい部分であり、かつ、その外径側先端角部は、ジャーナル部1J〜5J及びピン1P〜4Pよりも外径側に突出した位置にあって高周波誘導加熱の特性上、最も加熱され易いので、上述のカウンターウェイト部の外径側先端角部がいわゆる「過熱」状態すなわちその周辺部分よりも極度に高い温度の加熱状態になる。そのため、「過熱」状態の外径側先端角部の熱がクランクシャフトのピン部或いはジャーナル部のR部に即座に伝導されることとなり、その結果、従来では焼戻加熱し難いと認識されていたR部を高周波誘導加熱コイルの誘導加熱作用による加熱に加えて、「過熱」状態となるカウンターウェイト部の外径側端角部からの熱伝導作用にて、R部を効率よくその周辺部分と一緒に均一加熱することができる。
【0030】
なお、本実施形態で用いられる高周波誘導加熱コイル12は、既述の如くクランクシャフト1のフランジ部Fの側の巻線間隔を相対的に密にしているので、クランクシャフト1のうちで相対的に熱容量の大きな部分であるフランジ部Fの側の部分がその他の部分よりも大きな加熱エネルギにて誘導加熱される。また、水平状のシャフト68の先端に取付けられた誘導補助部材38の存在により、フランジ部Fの側のクランクシャフト部分の誘導加熱が補助(調整)される。その結果、クランクシャフト1はその全体が均一に昇温加熱されることとなる。そして、所定の時間加熱の後に、炉体30が高周波誘導加熱コイル12と一緒に待機位置Mに戻され、クランクシャフト1が搬送装置14により次工程の均熱化ステーション22,23に搬送される。
【0031】
均熱化ステーション22及び23においては、クランクシャフト1は固定ビーム60の支持器63及び64上に載置されて支持されている間に所定の焼戻温度に放冷され、均熱化される。そして、所定の時間にわたり均熱化された後に、クランクシャフト1は搬送装置14により冷却ステーション24に搬送される。
【0032】
冷却ステーション24においては、固定ビーム60の一対の支持器65上にクランクシャフト1が載置されると、複数の噴射冷却環41がシリンダ43にて上方から下方に向けて下降移動されてクランクシャフト1の全長及び全幅に対応配置され、これらの噴射冷却環41に設けられた多数の冷却液噴射孔(図示せず)からクランクシャフト1に向けて冷却液(例えば、冷却水)が噴射される。これにより、クランクシャフト1は冷却されて焼戻される。そして、冷却終了後に、噴射冷却環41は当初の待機位置に戻されると共に、クランクシャフト1は搬送装置14によりエアブローステーション25に搬送される。
【0033】
エアブローステーション25においては、固定ビーム60の支持器66上にクランクシャフト1が載置されると、クランクシャフト1の寸法、形状に応じた複数本のエアノズル42が、前記噴射冷却環41と一体の駆動機構によりクランクシャフト1に対して所定の距離まで降下移動され、図外のエアコンプレッサからエア導入管を経由してエアノズル42から圧縮エアがクランクシャフト1に向けて噴出される。なお、この際、図外の揺動機構によりエアノズル42は前後左右に揺動される。これにより、前工程の冷却ステーション24においてクランクシャフト1の表面に付着して残存している冷却液(例えば、水滴)がクランクシャフト1の表面から吹き払われて除去される。そして、エアブロー終了後に、エアノズル42は当初の待機位置に戻されると共に、クランクシャフト1は搬送装置14により排出側の固定ビーム60の支持器67上に搬送される。
【0034】
以上の如き一連の操作により焼戻処理の全工程を終了し、以降は、次の後続工程に引き継がれる。連続稼動下においては、移動ビーム50の動作が1サイクルする毎に新しいクランクシャフト1が連続的に投入され、加工されたクランクシャフト1が例えば42秒のサイクルタイムで、連続的に排出される。
【0035】
ここで、高周波焼戻装置10の作動条件の一具体例について述べると、以下の通りである。
具体例
(1)クランクシャフトの材質
鋼種:S48CL
(2)高周波誘導加熱コイル
周波数:約2kHz
電力:40kW
(3)高周波誘導加熱
時間:28秒
(4)均熱化
時間:約90秒
均熱化温度:約200℃
(5)冷却
冷却液温度:35℃以下
ワーク温度:40℃以下
【0036】
高周波焼戻装置10を用いて上述の如き条件の下でクランクシャフト1の焼戻処理を行なったところ、焼入硬度がHv800である場合に、焼戻処理後の硬度は、硬度仕様がHv513〜830であるのに対して焼戻硬度はHv650〜700であった。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、本発明は、図5に示す如き形状のクランクシャフト1に限らず、各種形状のクランクシャフトの焼戻処理に適用可能である。
【0038】
以上の如く本発明に係るクランクシャフトの高周波焼戻方法及び装置によれば、焼入処理が施されたクランクシャフトのジャーナル部やピン部の焼戻処理を、クランクシャフトの全体を取り囲む高周波誘導加熱コイルを使用してその全体を一括して(1工程で)均一温度に高周波誘導加熱を行なうことにより達成するようにしているので、高周波焼入によって得られる圧縮残留応力を保持しつつ、均一で安定した優れた焼戻品質を、構成が簡素で安価な設備にて得ることができる。
【0039】
すなわち、従来のように加熱炉を用いてクランクシャフトの加熱を行なう場合と、本発明のように高周波誘導加熱コイルを用いてクランクシャフトの加熱を行なう場合とを比較すると、クランクシャフトの加熱到達温度は共に約200℃と同じであるが、電気炉による加熱時間は例えば1.5〜3.0(加熱0.5時間、均熱1〜1.5時間)に対して高周波誘導加熱コイルによる加熱時間は例えば約2分(加熱28秒、均熱90秒)であり、これら両者の間には大きな時間差がある。このように、電気炉による加熱時間は可成り長いので、加熱期間中に疲労強度に関係する残留応力が大幅に低下されてしまうこととなるが、高周波誘導加熱コイルを用いるようにした本発明の方法及び装置によれば、加熱時間が極めて短くて済むので、残留応力の低下を極めて少なく抑えることができて充分な残留応力を保持することが可能である。
【0040】
さらに、高周波誘導加熱コイルを用いた従来の焼戻方法では、焼入処理されたクランクシャフト部分のみを局部加熱するようにしているので、クランクシャフトに局部的な歪みを生じてクランクシャフトの全体としての曲りを生じ易いのに対し、本発明では焼入処理されたクランクシャフトの全体を1つの高周波誘導加熱コイルで取り囲まれた位置に配置して高周波誘導による全体加熱(焼入部のみならず非焼入部をも含めた一括加熱)を行うようにしているので、クランクシャフトの全体を少ない温度差にて均一に加熱することができて歪みや曲りの発生を抑制することができる。従って、本発明によれば、高周波誘導加熱による短時間の加熱処理により圧縮残留応力の低下を少なく抑えることができるという高周波誘導加熱の効果と、電気炉を用いた場合と同様にクランクシャフトの均一加熱を行なうことができて歪みや曲りを少なく抑えることができるという電気炉加熱と同様の効果とをそれぞれ得ることができる。
【0041】
また、従来において高周波誘導加熱コイルにてクランクシャフトの全体加熱を行なっていないのは、クランクシャフトの形状が複雑でしかも各部における熱容量がそれぞれ異なるために均一加熱することが極めて難しいという事情があるからである。そこで、このような不具合を克服するために、本発明では、高周波誘導加熱コイルのうちクランクシャフトの一端側のフランジ部に対応するコイル部分の巻線間隔を相対的に密に設定したり、或いは、クランクシャフトのフランジ部側の部分の加熱温度を制御するように機能する誘導補助部材(磁束密度を局部的に高める磁性材料)を配設するようにしているため、1つの高周波誘導加熱コイルにてクランクシャフトの全体を均一に加熱することが可能である。
【0042】
従って、本発明によれば、高周波誘導加熱コイルにてクランクシャフトのジャーナル部やピン部の焼入部分の全てを一括して焼戻処理することにより、高周波焼入による利点の1つである圧縮残留応力の保持を確保しつつ、均一で安定した優れた焼戻品質を得ることができ、かつ、設備費が安価で済むようにした実用的なクランクシャフトの高周波焼戻方法及びその高周波焼戻装置を提供することができる。
【0043】
さらに、本発明においては、焼戻工程の後に続く研磨加工を常温で行なうためにクランクシャフトに冷却液を噴射してクランクシャフトを常温にまで冷却するようにしているので、次のような利点がある。すなわち、焼戻工程の後には研磨工程があるが、研磨すべき部分は焼入されているためこの部分の硬度が高く、研磨による局部加熱が激しく発生し、場合によっては研磨割れ(クラック)が生じるおそれがあるが、本発明のように焼戻温度の約200℃から常温(例えば、40℃以下)に冷却しているので、研磨作業を容易にしかも研磨割れ等を生じることなく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの高周波焼戻方法を施行する高周波焼戻装置の構成を示す側面図である。
【図2】
上述の高周波焼戻装置における加熱ステーションの側面図である。
【図3】
加熱ステーションに配置される高周波誘導加熱コイルを示すものであって、図3(A)は高周波誘導加熱コイルの正面図、図3(B)は高周波誘導加熱コイルの側面図である。
【図4】
被焼戻体であるクランクシャフトの側面図である。
【図5】
クランクシャフトに形成された焼入硬化層パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
1 クランクシャフト
1P〜4P ピン部
1J〜5J ジャーナル部
10 高周波焼戻装置
11 高周波焼入装置
12 高周波誘導加熱コイル
13 熱処理機構
14 搬送装置
21 加熱ステーション
22,23 均熱化ステーション
24 冷却ステーション
25 エアブローステーション
30 炉体
38 誘導補助部材
41 冷却水噴射冷却環
42 エアノズル
50 移動ビーム
51〜56 支持器
60 固定ビーム
61〜67 支持器
68,69 クランクシャフト支持用シャフト
CW1〜CW8 カウンターウエイト
F フランジ部
M 待機位置
N 加熱位置
S1,S2 軸部
X クランクシャフトの回転軸線
Y ピン部1P,4Pの軸線
Z ピン部2P,3Pの軸線
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-02-10 
結審通知日 2006-02-15 
審決日 2006-03-06 
出願番号 特願2000-125052(P2000-125052)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (C21D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 吉水 純子
平塚 義三
登録日 2004-02-20 
登録番号 特許第3524037号(P3524037)
発明の名称 クランクシャフトの高周波焼戻方法及び装置  
代理人 松島 鉄男  
代理人 松島 鉄男  
代理人 大西 正夫  
代理人 大西 孝治  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  
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