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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580142 審決 特許
無効200680021 審決 特許
無効2008800249 審決 特許
無効2008800290 審決 特許
無効200580005 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない A61K
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A61K
管理番号 1138289
審判番号 無効2003-35239  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-12 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-06-09 
確定日 2005-09-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3315535号発明「化粧品基材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3315535号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成6年8月30日に出願され、平成14年6月7日にそれらの発明について特許権の設定登録がされた。
これに対して、請求人は、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明であり(理由1)、また、甲第4号証〜甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから(理由2)、本件特許の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたと主張し、証拠方法として甲第1号証〜甲第9号証を提出している。
被請求人は、平成15年9月5日に答弁書と同時に訂正請求書(後日取り下げ)を提出し訂正を求めた後、当審の職権による無効理由通知に対する意見書提出の期間内である平成16年3月5日に再度訂正請求がされた。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
ア.訂正事項ア
請求項1を下記のとおり訂正し、請求項2及び3を削除する。
「【請求項1】側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸と、それ以外のアミノ酸とで構成され、かつ、上記側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数が0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数が4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数が5〜10である加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドからなるペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の57%以上62%以下に、下記の一般式(I)


(式中、R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。aは1または3である)で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基が共有結合したシリル化ペプチドからなることを特徴とする化粧品基材。」

イ.訂正事項イ
イ-1.段落【0001】において、「ペプチドの全アミノ基の50%以上75%以下にケイ素原子をただ一つ含む官能基が共有結合したシリル化ペプチド」とあるのを「特定のシリル化ペプチド」と訂正する。

イ-2.段落【0009】において、「ペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の50%以上75%以下に、」とあるのを「側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸と、それ以外のアミノ酸とで構成され、かつ、上記側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数が0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数が4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数が5〜10である加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドからなるペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の57%以上62%以下に、」と訂正する。

イ-3.段落【0011】、【0015】において、「(式中、R1、R2、R3はメチル基または水酸基を示し、これらのR1、R2、R3はすべて同じでもよく、また、異なっていてもよい。aは1または3である。)」とあるのを「(式中、R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。aは1または3である)」と訂正する。

イ-4.段落【0012】、【0015】、【0045】(訂正後の【0039】)、【0046】(訂正後の【0040】)、【0047】(訂正後の【0041】)(2箇所)および【0048】(訂正後の【0042】)および【0083】(訂正後の【0070】)において、「ペプチド類」とあるのを「ペプチド」と訂正する。

イ-5.段落【0013】において、「ペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の50%以上75%以下(すなわち、ペプチドの末端アミノ基および側鎖のアミノ基の50%以上75%以下)に、」とあるのを「側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸と、それ以外のアミノ酸とで構成され、かつ、上記側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数が0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数が4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数が5〜10である加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドからなるペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の57%以上62%以下(すなわち、ペプチドの末端アミノ基および側鎖のアミノ基の57%以上62%以下)に、」と訂正する。

イ-6.段落【0017】において、「また異なっていてもよい。aは1または3である。)で表されるシリル化合物を反応させることによって得られ、その代表的なものは、たとえば、」とあるのを「また異なっていてもよいが、メチル基が2個以上になることはない。aは1または3である。)で表されるシリル化合物を反応させることによって得られ、仮りに、ペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基のすべてにシリル化合物が反応したと仮定して、その構造式を示すと、」と訂正する。

イ-7.段落【0019】を「(式中、R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。R4は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く残基を示し、R5はR4が結合するアミノ酸以外のアミノ酸の側鎖を示し、aは1または3で、mは0.5〜1.2、nは4.4〜8.8、m+nは5〜10である(ただし、mおよびnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない))で表される。」と訂正する。

イ-8.段落【0022】において、「50%」とあるのを「57%」に(2箇所)、「75%」とあるのを「62%」に(2箇所)、「保存安定性が悪くなるからであるが、シリル官能基とシリル化合物の特性の発揮には、ペプチド部分の鎖長も関与する。これについては、後で詳しく説明する。」とあるのを「保存安定性が悪くなるからである。」と訂正する。

イ-9.段落【0023】において、「一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R1、R2、R3をメチル基または水酸基に特定しているのは、」とあるのを「本発明のシリル化ペプチドのシリル化合物部分を構成することになる一般式(I)で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基において、R1、R2、R3のうち少なくとも2個を水酸基で、残りをメチル基に特定しているのは、」と訂正する。

イ-10.段落【0024】において、「一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、」とあるのを「一般式(I)で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基において、」に、「たとえば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R5はR4以外のアミノ酸の側鎖を示すが、」とあるのを「たとえば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R5はR4が結合するアミノ酸以外のアミノ酸の側鎖を示すが、」と訂正する。

イ-11.段落【0025】を「本発明のシリル化ペプチドにおいて、側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数は0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数は4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数は5〜10であるが、この側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数の0.5〜1.2は一般式(II)におけるmが0.5〜1.2に相当し、それ以外のアミノ酸の数の4.4〜8.8は一般式(II)におけるnが4.4〜8.8に相当し、両アミノ酸の合計数の5〜10は一般式(III)におけるm+nが5〜10に相当するが、このmが0.5〜1.2で、nが4.4〜8.8で、m+nが5〜10であることは、次の理由によるものである。」と訂正する。

イ-12.段落【0026】において、「上記のm、nやm+nは、理論的には整数であるが、・・・アミノ酸、ペプチド、アミノ酸またはペプチドのエステルに基づくものである。」とあるのを「前記の側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数、それ以外のアミノ酸の数、両アミノ酸の合計数は、理論的には整数であるが、加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。」と訂正する。

イ-13.段落【0027】、【0030】および【0055】(訂正後の【0049】)において、「上記一般式(II)で表される」とあるのを「本発明の」と訂正する。

イ-14.段落【0032】を「(ペプチド)本発明のシリル化ペプチドにおけるペプチド部分を構成するペプチドは、加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドである。」と訂正する。

イ-15.段落【0033】、【0034】、【0035】、【0036】および【0043】を削除する。

イ-16.段落【0037】(訂正後の【0033】)において、「上記タンパク質」とあるのを「小麦タンパク、ケラチン、大豆タンパクまたは酵母タンパクからなるタンパク質」に、「アミノ酸重合度を1〜50の好ましい」とあるのを「アミノ酸重合度を所望の」と訂正する。

イ-17.段落【0042】(訂正後の【0037】)を「従って、本発明のシリル化ペプチドにおいては、シリル官能基のペプチドのアミノ基への導入率を57%以上62%以下にしている。」と訂正する。

イ-18.段落【0044】(訂正後の【0038】)において、「2〜50にするのが好ましく、特に3〜30が好ましい。」とあるのを「5〜10にするのが適している。」と訂正する。

イ-19.段落【0056】(訂正後の【0050】)において、「溶液の濃度を示す%はいずれも重量%である。」とあるのを、「溶液の濃度を示す%はいずれも重量%であり、「m」を「側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の数」を表すのに用い、「n」を「それ以外のアミノ酸の数」を表すのに用い、「m+n」を「両アミノ酸の合計数」を表すのに用いる。」と訂正する。

イ-20.段落【0057】(訂正後の【0051】)、【0066】(訂正後の【0060】)、【0067】(訂正後の【0061】)、【0068】(訂正後の【0062】)、【0074】(訂正後の【0063】)(2箇所)および【0103】(訂正後の【0088】)において、「実施例1」とあるのを「参考例1」と訂正する。

イ-21.段落【0066】(訂正後の【0060】)において、「75g」とあるのを「7.5g」と訂正する。

イ-22.段落【0069】、【0070】、【0071】、【0072】、【0073】、【0079】、【0080】、【0085】、【0089】および【0107】を削除する。

イ-23.段落【0081】(訂正後の【0068】)および【0087】(訂正後の【0073】)において、「実施例1〜7および比較例1〜7」とあるのを「実施例2〜5および比較例2〜5」と訂正する。

イ-24.段落【0083】(訂正後の【0070】)および【0086】(訂正後の【0072】)において、「表1〜2」とあるのを「表1」と訂正する。

イ-25.段落【0084】(訂正後の【0071】)において、表1中に「ペプチド類」とあるのを「ペプチド」と訂正し、表1から実施例1と比較例1に関する記載を削除する。

イ-26.段落【0086】(訂正後の【0072】)において、「実施例1〜7」とあるのを「実施例2〜5」に、「比較例1、4および7」とあるのを「比較例4」に、「比較例2、3、5および6」とあるのを「比較例2、3および5」に、「比較例3および6」とあるのを「比較例3」と訂正する。

イ-27.段落【0087】(訂正後の【0073】)および【0090】(訂正後の【0075】)において、「表3〜4」とあるのを「表2」と訂正する。

イ-28.段落【0088】(訂正後の【0074】)において、「表3」とあるのを「表2」と訂正し、表から実施例1と比較例1に関する記載を削除する。

イ-29.段落【0090】(訂正後の【0075】)において、「酵母タンパクと実施例7のシリル化グリシル-L-アラニンは、」とあるのを「酵母タンパクは、」に、「生じ、実施例6のシリル化L-リシンはpH4以下で濁りが生じたが、」とあるのを「生じたが、」と訂正する。

イ-30.段落【0091】(訂正後の【0076】)を、「また、実施例3のシリル化加水分解ケラチンおよび実施例5のシリル化加水分解酵母タンパクでも、pH4以上では濁りや沈殿物がみられなかった。加水分解ケラチンや加水分解酵母タンパクは、側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸を多く含むため、ペプチド部分に結合しているシリル官能基が多く、疎水性の性質が現れやすいため、低いpHで濁りを生じたものと考えられる。」と訂正する。

イ-31.段落【0092】(訂正後の【0077】)において、「低い比較例1のシリル化加水分解コラーゲン、比較例4のシリル化加水分解大豆タンパクおよび比較例7のシリル化加水分解グリシル-L-アラニンは、」とあるのを「低い比較例4のシリル化加水分解大豆タンパクは、」と訂正し、「と比較例6のシリル化加水分解L-リシン」を削除する。

イ-32.段落【0095】(訂正後の【0080】)において、「試験液には、実施例1および比較例1で得られたシリル化加水分解コラーゲンの5%水溶液と実施例3」を「試験液には、実施例3」と訂正する。

イ-33.段落【0097】(訂正後の【0082】)において、「未処理毛と、加水分解コラーゲン(m+nの平均値=20)の5%水溶液と加水分解ケラチン」とあるのを「未処理毛と、加水分解ケラチン」に、「表5」とあるのを「表3」と訂正する。

イ-34.段落【0098】(訂正後の【0083】)において、「表5」とあるのを「表3」に、表中の「比較例3のシリル化加水分解コラーゲン」とあるのを「比較例3のシリル化加水分解ケラチン」と訂正し、表から実施例1と比較例1に関する記載を削除する。

イ-35.段落【0099】(訂正後の【0084】)を「表3に示すように、実施例3のシリル化加水分解ケラチンで処理した毛髪は未処理毛に対して約16%引張り強度が増加していた。また、実施例3のシリル化加水分解ケラチンで処理した毛髪は、シリル化していない同じ分子量の加水分解ケラチンで処理した毛髪と比べても、強度の増加が認められ、シリル化ペプチドが毛髪によく吸着し、損傷毛の強度回復に寄与しているのが明らかであった。」と訂正する。

イ-36.段落【0100】(訂正後の【0085】)を「これに対して、比較例3のシリル化加水分解ケラチンで処理した毛髪は、シリル化していない加水分解ケラチンで処理した毛髪より強度がやや低めの結果となった。これは、比較例3のシリル化加水分解ケラチンでは、シリル官能基の導入率が高すぎてペプチド本来の毛髪への吸着力が減少したためであると考えられる。」と訂正する。

イ-37.段落【0101】(訂正後の【0086】)において、「一般式(II)で表される」とあるのを「用いる」と訂正する。

イ-38.段落【0102】(訂正後の【0087】)、【0110】(訂正後の【0094】)、【0115】(訂正後の【0099】)および【0133】(訂正後の【0108】)において、「応用例1」とあるのを「参考応用例1」と訂正する。

イ-39.段落【0102】(訂正後の【0087】)および【0103】(訂正後の【0088】)において、「表6」とあるのを「表4」と訂正する。

イ-40.段落【0102】(訂正後の【0087】)、【0103】(訂正後の【0088】)、【0104】(訂正後の【0089】)および【0106】(訂正後の【0091】)において、「実施品1」とあるのを「参考品1」と訂正する。

イ-41.段落【0104】(訂正後の【0089】)および【0106】(訂正後の【0091】)において、「表7」とあるのを「表5」と訂正する。

イ-42.段落【0108】(訂正後の【0092】)および【0109】(訂正後の【0093】)において、「表8」とあるのを「表6」と訂正する。

イ-43.段落【0110】(訂正後の【0094】)、【0111】(訂正後の【0095】)および【0112】(訂正後の【0096】)において、「表9」とあるのを「表7」と訂正する。

イ-44.段落【0113】(訂正後の【0097】)および【0114】(訂正後の【0098】)において、「表10」とあるのを「表8」と訂正する。

イ-45.段落【0115】(訂正後の【0099】)、【0116】(訂正後の【0100】)および【0117】(訂正後の【0101】)において、「表11」とあるのを「表9」と訂正する。

イ-46.段落【0121】〜【0129】を削除する。

イ-47.段落【0130】(訂正後の【0105】)において、「応用例7」とあるのを「応用例5」と訂正する。

イ-48.段落【0130】(訂正後の【0105】)および【0131】(訂正後の【0106】)において、「表14」とあるのを「表10」と訂正する。

イ-49.段落【0130】(訂正後の【0105】)および【0133】(訂正後の【0108】)において、「実施品8および比較品10〜11」とあるのを「実施品5および比較品7〜8」と訂正する。

イ-50.段落【0131】(訂正後の【0106】)、【0135】(訂正後の【0110】)および【0136】(訂正後の【0111】)において、「実施品8」とあるのを「実施品5」に、「比較品10」とあるのを「比較品7」に、「比較品11」とあるのを「比較品8」と訂正する。

イ-51.段落【0134】(訂正後の【0109】)、【0135】(訂正後の【0110】)および【0136】(訂正後の【0111】)において、「表15」とあるのを「表11」と訂正する。

イ-52.段落【0137】(訂正後の【0112】)において、「実施品8」とあるのを「実施品5」に、「比較品11」とあるのを「比較品8」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項アは、請求項1に係る発明の構成に欠くことのできない事項である「ペプチド」を「側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸と、それ以外のアミノ酸とで構成され、かつ、上記側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数が0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数が4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数が5〜10である加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドからなるペプチド」に限定し、ペプチドのシリル化率「50%以上75%以下」を「57%以上62%以下」に限定し、さらに、シリル基上の置換基(R1、R2、およびR3)を「R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。」と限定し、請求項2および3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項イ-1〜イ-52は、発明の詳細な説明の記載を上記訂正事項アと整合させるためのもの又は明らかな誤記を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、平成16年3月5日付けの訂正は、特許法第134条第2項ただし書及び同条第5項の規定によって準用する特許法第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記2.のとおり訂正が認められるので、本件特許の請求項1に係る発明は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記2.の訂正事項ア参照。以下、これを「本件特許発明」ということがある。)

4.甲各号証記載の概要
(1)甲第1号証(特許第3315535号登録原簿の写し)
本件特許の特許登録原簿中の記録事項について認証されている。

(2)甲第2号証(特許第3315535号公報)
本件特許公報である。

(3)甲第3号証(請求人の登記簿の履歴事項全部証明書の写し)
請求人の登記簿中の記録事項について証明されている。

(4)甲第4号証(特開平5-148119号公報)
化粧料原料組成物に係る発明について開示されており、プロテインアミノ基にシリコンを共有的に結合させたプロテイン-シリコン共重合体は、皮膚や毛髪のコンディショニング作用において、従来のプロテインとシリコンとを単に混合しただけの混合物では得ることのできなかったプロテインとシリコンの両方の特性を示すことが記載されている。

(5)甲第5号証(欧州特許公開第540357号明細書)
化粧品分野で使用される新規プロテイン-シリコーン共重合体に係る発明について開示されており、当該共重合体は、シリコーン部分がプロテインのアミノ基に共有結合しており、シリコーン部分の少なくとも一部が異なるプロテイン鎖間に交叉結合を形成したものであることが記載されている。

(6)甲第6号証(特開平3-223207号公報)
ペプチド変性シリコン誘導体からなる化粧品基材に係る発明について開示されており、一般式(I)(式は省略)で示されるペプチド変性シリコン誘導体が、シリコーンオイルの有する優れた特性とポリペプチドの有する優れた特性を発揮し、毛髪に艶、潤いを付与し、毛髪のくし通りを改善すること等が記載されいる。

(7)甲第7号証(Cosmetics & Toiletries, Vol.108, March 1993, pp.97-104)
加水分解小麦プロテイン-ポリシロキサン共重合体について開示されており、当該共重合体は、加水分解小麦プロテインと比較的短鎖のシリコノール(ケイ素原子の数が2〜4)がプロテインのアミノ基を介して共有結合したものであり、毛髪のコンディショニング作用が優れていることが記載されている。

(8)甲第8号証(SPC, April 1992, pp.33-34)
プロテイン-シリコーン共重合体について開示されており、当該共重合体がヘアケア用に有用であることが記載されている。

(9)甲第9号証(泉屋信夫他「ペプチド合成の基礎と実験」、丸善株式会社、平成3年6月15日発行、第6〜7頁)
各種アミノ酸の分子量及び残基量が記載されている。

5.当審の判断
(1)理由1(特許法第29条第1項第3号)について
ア.甲第4号証について
請求人は、甲第4号証に記載されているプロテイン-シリコン共重合体からなる化粧料原料組成物は、本件特許発明の化粧品基材と同一であると主張するので、この点について検討する。
甲第4号証には、当該プロテイン-シリコン共重合体について、「この共重合物は、長いポリマー分子を得るためにプロテインのアミノ基に有機機能性シラン/シリコンを共有的に結合させて得られる。さらにシラノール基が縮重合し、結果として、交叉結合が生じる共重合体もこの発明においては含まれる。」(段落【0011】)と記載されており、あたかもシラノール基が縮重合していない(交叉結合が生じていない)共重合体のみからなる組成物が包含されるように記載されている。
しかし、プロテインとの反応に使用する有機機能シリコンについて「プロテイン鎖の末端基及び/又は、プロテイン側鎖のアミノ基と反応する機能性基を有していなければならない。このような反応基グループとしては、アシルハロゲン化物、スルホハライド、非水系及びエポキサイド機能を含むものが例示される。’シリコン’とはシロキサン結合(Si-O-Si)を含む化合物又は一般式1(化1)にて示す縮合反応によりシロキサン結合する能力のあるシラン基をもつもの、或いは、一般式2(化2)で示すように加水分解して各々のシラノール基を生成し、前記した縮合によりシロキサン結合を作製するアルコキシシランなどを示す。」(段落【0016】)と記載されていること、また、有機機能性シリコンとプロテインの反応について「有用な有機機能性シリコン/シランは、反応させるためプロテインと共通の溶媒に溶解しなければならない。また反応と交叉結合を適切に行うために、プロテインと有機機能性シリコン/シランの反応条件は注意深く設定される」(段落【0018】)と記載されていることからみて、プロテイン-シリコン共重合体として、交叉結合を有するものを含有する組成物が意図されていることは明らかであり、このことは「この発明に係るプロテイン-シリコン共重合物の化学構造は複雑であり、明確な1つの構造に限定されるものではない。しかしながら、プロテイン-シリコン共重合物のシリコン成分はシリコンが交叉結合又はプロテインの終末基のみに結合するので、一般式7(化7)及び一般式8(化8)に示す簡単な構造で示される。」(段落【0020】)と記載されているように、プロテイン鎖間に交叉結合を有する一般式7で表される構造のものが含有される組成物であること、および、実施例1〜3に具体的に記載されている共重合体は、いずれも、上記一般式7及び一般式8に対応する一般式で示される構造物の両方を含有しており、交叉結合したものを必ず含有しているものであることによっても裏付けられる。さらに、甲第4号証の対応欧州特許出願に係る甲第5号証において(甲第4号証において記載されている上記実施例1〜3は、全て甲第4号証においても実施例として記載されている。)、プロテイン-シリコーン共重合体は、少なくとも一部が、異なるプロテイン鎖間に交叉結合を形成していると記載されていることからも上記解釈の妥当性が裏付けられる。
したがって、甲第4号証に記載されているプロテイン-シリコン共重合体からなる化粧料原料組成物は交叉結合を有するものを必ず含有したものであると解せられる。
他方、本件特許発明は、交叉結合を有さないシリル化ペプチドからなる化粧品基材であるから、本件特許発明が、甲第4号証に記載されているプロテイン-シリコン共重合体からなる化粧料原料組成物に該当するということはできない。

イ.甲第5号証について
請求人は、甲第5号証に記載されている化粧品分野で使用されるプロテイン-シリコーン共重合体は、本件特許発明の化粧品基材において使用されているシリル化ペプチドと同一であると主張するので、この点について検討する。
甲第5号証には、当該プロテイン-シリコーン共重合体について、上記アに記載したとおり、「共重合体は、シリコーン部分がプロテインのアミノ基に共有結合し、シリコーン部分の少なくとも一部が、異なるプロテイン鎖間に交叉結合を形成していることを特徴とする。」(第1頁丸57)と記載されており、また、「この発明に係るプロテイン-シリコーン共重合体の化学構造は複雑であり、一つの一般的構造式で表すことはできない。プロテイン-シリコーン共重合体のシリコーン部分は、シリコーン部分が交叉結合を形成しているか、または、一方の端でプロテインに結合しているかにより、以下の単純な構造V及びVIで表される。」(第4頁第41〜44行)と記載されているように、プロテイン鎖間に交叉結合を有する構造Vのものが含有されるものであるとされていることからみて、甲第5号証に記載されている化粧品分野で使用されるプロテイン-シリコーン共重合体は交叉結合したものを必ず含有しているものといえる。
他方、本件特許発明は、交叉結合を有さないシリル化ペプチドからなる化粧品基材であるから、本件特許発明が、甲第5号証に記載されている化粧品分野で使用されるプロテイン-シリコーン共重合体に該当するということはできない。

請求人は、平成16年1月16日付上申書において、「被請求人が製造したシリル化ペプチドは、シリル官能基の両側にプロテイン鎖が結合する交叉結合を形成している」と主張している。
しかるに、本件特許発明が、ペプチド間に交叉結合を有するものをその技術的範囲に包含しないものであることは上記のとおり明らかであるから、シリル官能基の両側にプロテイン鎖が結合する交叉結合を有するものも本件特許発明に包含されるということを前提とした請求人の主張は採用できない。 なお、仮に、請求人が、本件特許発明は、ペプチド間に交叉結合を有するものはその技術的範囲に包含しないものであることを前提として、本件特許明細書において製造されているシリル化ペプチドは、ペプチド間に交叉結合を有するものを必ず含んでおり、ペプチド間に交叉結合を有さないシリル化ペプチドのみからなる化粧品基材は製造されていないという点を主張するとしても(この点は審判請求書において無効理由として主張されていない。)、甲第4号証の段落【0018】(上記参照。)においても示唆されているように、プロテインとシリル化剤の反応、その後の交叉反応は反応条件によりそれぞれ制御可能なものであるから、シリル官能基の両側にプロテイン鎖が結合する交叉結合を形成したものを含まない共重合体を製造することは技術的に不可能であるとまではいうことができないので、この点に関する請求人の主張は採用できない。

(2)理由2(特許法第29条第2項)について
請求人は、本件特許発明が、甲第4号証に基づいて、または、甲第5号証に基づいて、または、甲第6号証〜甲第8号証に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであると主張するので、この点について検討する。
ア.甲第4号証、甲第5号証について
甲第4号証に、プロテイン鎖間に交叉結合を有さないプロテイン-シリコン共重合体のみからなる組成物が化粧品原料組成物として有用であることについて記載されていないことは、上記(1)アに記載したとおりである。
他方、本件特許発明は特定のペプチドを選択し、ペプチド間に交叉結合を有さないシリル化ペプチドのシリル化率を特定することにより、本件特許明細書の表1及び表2(訂正前の表3)に記載されているように(特に、実施例3と比較例3、実施例5と比較例5の対比を参照。)、シリル化率が本件特許発明の上限より高いものと比較し、保存安定性、pH安定性の点で優れ、本件特許明細書の表9(訂正前の表11)に記載されているように、シリル化率が本件特許発明の下限より低いものと比較し、処理後の毛髪の外観・触感の点で優れた効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明が、甲第4号証に記載の発明に基づいて容易に発明することができたものということができない。

また、本件特許発明と甲第5号証の対比においても上記と同様のことがいえる。

イ.甲第6号証〜甲第8号証について
甲第6号証には、ペプチド変性シリコン誘導体からなる化粧品基剤について記載されているが、その特許請求の範囲第1項に記載の一般式(I)で表されるペプチド変性シリコン誘導体には、形式的にはケイ素原子をただ一つ含む官能基が共有結合したものも含まれるが具体的に記載されているのはケイ素原子を2以上含むものであることに加え、ケイ素原子上の置換基は、炭素数1〜3の低級アルキル基またはフェニル基であり、本件特許発明の一般式(I)で表されるケイ素原子をただ一つ含み、ケイ素原子上の置換基が少なくとも2個が水酸基で、残りがメチル基である官能基が共有結合したシリル化ペプチドについては記載されていないことに加え、シリル化率の好ましい範囲についての記載はなく、具体的に製造されているものは80%以上のものである。
また、甲第7号証には、加水分解小麦プロテイン-ポリシロキサン共重合体(HWPPC)について記載されているが、当該HWPPCには、プロテイン鎖間に交叉結合を有するものが形成されることが前提とされており(第99頁左欄下から11行〜右欄第1行)、また、甲第8号証には、甲第7号証に記載のHWPPCと同様のプロテイン-シリコーン共重合体について記載されているが、いずれにも本件特許発明の一般式(I)で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基が共有結合し、ペプチド間に交叉結合を有さないシリル化ペプチドのみからなる化粧品基材については記載も示唆もされてない。
他方、本件特許発明は、一般式(I)で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基のペプチドへの導入率(シリル化率)、ペプチドを構成するアミノ酸の数等を特定することにより、上記(2)アに記載した特有の効果を奏するものであるから、本件特許発明が、甲第6号証〜甲第8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものということができない。

なお、当審の職権による無効理由通知で指摘した特許請求の範囲中の不整合は再度の訂正請求により解消した。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
化粧品基材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸と、それ以外のアミノ酸とで構成され、かつ、上記側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数が0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数が4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数が5〜10である加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドからなるペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の57%以上62%以下に、下記の一般式(I)
【化1】

〔式中、R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。aは1または3である〕で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基が共有結合したシリル化ペプチドからなることを特徴とする化粧品基材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シリル化ペプチドからなる化粧品基材に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、特定のシリル化ペプチドからなり、水溶性で、毛髪化粧品、皮膚化粧品に配合したときに、毛髪に艶や潤いを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、かつ毛髪の枝分かれを防止し、皮膚に艶や潤いを付与し、皮膚をなめらかにし、しかもpH安定性や保存安定性に優れ、保存中に濁りや沈殿を生じない化粧品基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、シリコーンオイル(有機シリコーン化合物)とポリペプチドを毛髪化粧品に配合して、シリコーンオイルの有する優れた伸展性、毛髪への艶・光沢の付与作用、毛髪への撥水性付与による保護作用などと、ポリペプチドの有する毛髪への収着作用、皮膚刺激の緩和作用、造膜による保護作用や保湿作用などを発揮させることが試みられてきた。
【0003】
たとえば、特公昭63-5005号公報では、疎水性のシリコーンオイルとモノN-長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステル塩を配合した毛髪化粧品が提案され、特開昭63-310812号公報には、メチルポリシロキサンやメチルフェニルポリシロキサンと加水分解コラーゲンを配合したヘアートリートメントが提案されている。
【0004】
しかしながら、シリコーンオイルは、本来、疎水性(親油性)物質であり、ポリペプチドは、本来、親水性物質であるため、これらは相溶しにくく、これらを併用して配合した場合には、乳化安定性に欠け、分離しやすいために、化粧品としての商品価値が損なわれやすく、また、先にシリコーンオイルと接触した部分にはポリペプチドが付着しにくく、その逆に、先にポリペプチドと接触した部分にはシリコーンオイルが付着できず、両者の特性を充分に発揮させることができないという問題があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決するため、疎水性のシリコーンオイルと親水性のポリペプチドとを反応させて、シリコーンオイルの特性とポリペプチドの特性を併用する化合物を合成し、それを化粧品基材として用いることにより、シリコーンオイルとポリペプチドを併用配合する場合の欠点を解消し、シリコーンオイルの有する特性とポリペプチドの有する特性を発揮させようとする試みがなされている(特開平3-223207号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平3-223207号公報に開示のペプチド変性シリコーン誘導体は、水に難溶または不溶のシリコーン部分の影響で、水中でのpH安定性や保存安定性が悪く、毛髪化粧品や皮膚化粧品が主として水溶性であることもあって、保存中に濁りを生じたり、沈殿を生じるという問題があった。
【0007】
また、上記ペプチド変性シリコーン誘導体の製造は、水に難溶または不溶のシリコーンオイルと水溶性ポリペプチドとの反応を水中で行うため、反応性が悪く、収率が低く、収率向上には、アルコールなどの水溶性有機溶媒を加えておかねばならないという問題もあった。
【0008】
したがって、本発明は、シリコーン化合物の優れた特性とポリペプチドの優れた特性を併有し、しかも水中でのpH安定性や保存安定性に優れ、保存中に濁りや沈殿を生じない化粧品基材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸と、それ以外のアミノ酸とで構成され、かつ、上記側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数が0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数が4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数が5〜10である加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドからなるペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の57%以上62%以下に、下記の一般式(I)
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。aは1または3である〕で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基を共有結合させたシリル化ペプチドが、水溶性で、水中でのpH安定性や保存安定性が優れ、しかもシリコーン化合物の優れた特性とポリペプチドの優れた特性を併有し、これを毛髪化粧品や皮膚化粧品に配合するときは、毛髪に艶や潤いを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、かつ毛髪の枝分かれを防止し、皮膚に艶や潤いを付与し、かつ皮膚をなめらかにし、なかでも、シャンプーなどの洗浄剤に配合したときには、泡を軟らかい感触にし、使用後の毛髪や皮膚をなめらかにし、しかも保存中に濁りや沈殿を生じないことを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0012】
以下、本発明を、シリル化ペプチドの構造および特性、シリル化ペプチドの毛髪および皮膚への作用、シリル化ペプチドを合成するにあたって使用するペプチドおよびシリル化合物、シリル化ペプチドの合成、シリル化ペプチドからなる化粧品基材の用途、などの観点から、詳細に説明する。
【0013】
〔シリル化ペプチドの構造および特性〕
本発明のシリル化ペプチドは、側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸と、それ以外のアミノ酸とで構成され、かつ、上記側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数が0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数が4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数が5〜10である加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドからなるペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基の57%以上62%以下(すなわち、ペプチドの末端アミノ基および側鎖のアミノ基の57%以上62%以下)に、下記の一般式(I)
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。aは1または3である〕で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基を共有結合させたものであり、ペプチドと、たとえば、次の一般式(III)
【0016】
【化4】

【0017】
〔式中、R6、R7、R8はメチル基、メトキシ基、エトキシ基、水酸基またはハロゲン原子を示し、これらのR6、R7、R8はすべて同一でもよく、また異なっていてもよいが、メチル基が2個以上になることはない。aは1または3である〕で表されるシリル化合物を反応させることによって得られ、仮りに、ペプチドのアミノ酸側鎖のアミノ基を含む全アミノ基のすべてにシリル化合物が反応したと仮定して、その構造式を示すと、下記の一般式(II)
【0018】
【化5】

【0019】
〔式中、R1、R2、R3のうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りはメチル基を示す。R4は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く残基を示し、R5はR4が結合するアミノ酸以外のアミノ酸の側鎖を示し、aは1または3で、mは0.5〜1.2、nは4.4〜8.8、m+nは5〜10である(ただし、mおよびnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕で表される。
【0020】
このシリル化ペプチドは、親水性のペプチド類と疎水性のシリル化合物とを反応させたものであるが、反応を水中で行うため、ケイ素原子に結合するアルコキシ基、ハロゲン原子などは、水と置換されて、全部または一部が水酸基になるため、反応後は水溶性になる。さらに、シリル官能基部分の分子構造が、親水性のポリペプチド部分に比べて小さいため、反応物の水に対する溶解性が向上する。その結果、水中での保存安定性が向上する。
【0021】
一般式(III)で表されるシリル化合物は、ケイ素原子を一個しか含まないため、一般に化粧品に配合される高分子シリコーン(重合度100〜1000)に比べると、そのもの自体の造膜性は劣るが、ペプチドの末端アミノ基やアミノ酸側鎖のアミノ基と反応するので、一つのペプチド鎖に数個のシリル基が結合することになり、シリル化合物の有する優れた伸展性、摩擦低減性、艶や光沢の付与作用、撥水性の付与作用など、高分子シリコーンと同じような作用を発揮できる。同時に、ペプチドの有する毛髪への収着作用、それに伴う毛髪のボリュームアップ、ハリ(張り)の付与、造膜による保護作用、保湿作用などを発揮させることができる。
【0022】
本発明のシリル化ペプチドにおいて、ペプチドのアミノ基に結合するケイ素原子をただ一つ含む官能基(簡略のため、シリル官能基という)を、上記アミノ基の57%以上62%以下にしているのは、57%より少ない場合はシリル化合物に基づく特性が充分に発揮されず、また62%より多くなると疎水性が増して親水性が減少し、保存安定性が悪くなるからである。
【0023】
本発明のシリル化ペプチドのシリル化合物部分を構成することになる一般式(I)で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基において、R1、R2、R3のうち少なくとも2個を水酸基で、残りをメチル基に特定しているのは、シリル化ペプチドが水溶性を保ち得るようにするためであり、またaを1または3に特定しているのは水溶性と安定性を確保するためである。
【0024】
一般式(I)で表されるケイ素原子をただ一つ含む官能基において、R4は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、たとえば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R5はR4が結合するアミノ酸以外のアミノ酸の側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、たとえば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニンなどが挙げられる。
【0025】
本発明のシリル化ペプチドにおいて、側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数は0.5〜1.2であり、それ以外のアミノ酸の数は4.4〜8.8であり、両アミノ酸の合計数は5〜10であるが、この側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数の0.5〜1.2は一般式(II)におけるmが0.5〜1.2に相当し、それ以外のアミノ酸の数の4.4〜8.8は一般式(II)におけるnが4.4〜8.8に相当し、両アミノ酸の合計数の5〜10は一般式(III)におけるm+nが5〜10に相当するが、このmが0.5〜1.2で、nが4.4〜8.8で、m+nが5〜10であることは、次の理由によるものである。
【0026】
すなわち、mが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル化合物が増え、ペプチド本来の毛髪や皮膚への収着作用が減少するためであり、nが上記範囲より大きくなると、ペプチド部分に対するシリル化合物部分の割合が少なくなって、シリル化合物の有する効果を充分に発揮できなくなり、m+nが上記範囲より大きくなると、ペプチドとしての収着性が低分子量のペプチドに比べて減少する上に、保存中に凝集しやすくなり、化粧品としての保存安定性が低下するためである。前記の側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸の数、それ以外のアミノ酸の数、両アミノ酸の合計数は、理論的には整数であるが、加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0027】
〔シリル化ペプチドの毛髪および皮膚への作用〕
本発明のシリル化ペプチドは、毛髪化粧品に配合すると、毛髪に艶や潤いを付与し、毛髪をなめらかにし、かつ毛髪の櫛通り性などを改善し、枝毛、切毛の発生を防止する。たとえば、従来のようにシリコーンオイルで毛髪にハリを付与する場合には、高分子量のものが必要であるが、高分子量シリコーンは一旦付着すると取れにくく、そのため、パーマ、ブリーチ、染毛などの化学的処理が行ないにくくなる上に、ペプチドやカチオン化ポリマーなどの毛髪への収着作用を減少させる。
【0028】
しかし、シリル化ペプチドは、ペプチド部分に低分子シリル基が結合したものであって、毛髪には通常のペプチドの収着機構で収着するので、ペプチドを含まない洗浄剤で洗浄することにより、可逆的にシリル化ペプチドを毛髪上から脱着することができ、上記のような弊害を生じない。
【0029】
さらに、高分子シリコーンは、疎水性のため、損傷の少ない毛髪、すなわち疎水性の性質が強い毛髪には収着するが、損傷により親水性基が表面に露出して親水性の性質が強くなった毛髪には収着しにくいといわれているが、その点、ペプチド類は損傷毛に収着しやすく、シリル化ペプチドはペプチド部分を介して損傷毛にシリル基を収着させることができ、損傷毛の強度や感触を回復させることができる。
【0030】
また、本発明のシリル化ペプチドは、皮膚化粧品に配合すると、皮膚に収着し、皮膚に艶と潤いを付与し、皮膚をなめらかにする。
【0031】
しかも、このシリル化ペプチドは、一物質中にペプチド部分と、非水溶性的性質のシリル化合物部分を有するので、従来のシリコーンオイルとポリペプチドを混合したものとは異なり、シリル化合物部分の毛髪や皮膚への収着性が向上し、かつ乳化安定性が良好で、化粧品用の乳化剤、乳化安定剤、浸透剤としても使用することができる。
【0032】
〔ペプチド〕
本発明のシリル化ペプチドにおけるペプチド部分を構成するペプチドは、加水分解小麦タンパクペプチド、加水分解ケラチンペプチド、加水分解大豆タンパクペプチドまたは加水分解酵母タンパクペプチドである。
【0033】
シリル化にあたって使用される加水分解ペプチドは、小麦タンパク、ケラチン、大豆タンパクまたは酵母タンパクからなるタンパク質を酸、アルカリまたは酵素によって加水分解することによって得られるが、その際、使用する酸、アルカリや酵素の量、反応温度や反応時間を適宜選択することにより、得られる加水分解タンパクのアミノ酸重合度を所望のものにすることができる。
【0034】
タンパク質の酸加水分解に際しては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸などの無機酸や、酢酸、蟻酸などの有機酸が用いられる。タンパク質のアルカリ加水分解に際しては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの無機アルカリが用いられる。
【0035】
そして、タンパク質の酵素分解に際しては、ペプシン、プロクターゼA、プロクターゼBなどの酸性タンパク質分解酵素、パパイン、ブロメライン、サーモライシン、トリプシン、プロナーゼ、キモトリプシンなどの中性ないしアルカリ性タンパク質分解酵素が使用される。また、スブチリシン、スタフィロコッカスプロテアーゼなどの菌産性の中性ないしアルカリ性タンパク質分解酵素も使用できる。
【0036】
このシリル化ペプチドでは、シリル化合物の特性を発揮させるために、側鎖にアミノ基を有するアミノ酸含量とペプチド部分の分子量が重要な点となる。すなわち、シリル化合物の特性を強く引き出すためには、分子量が小さく、側鎖にアミノ基を有するアミノ酸含量の多いペプチドを用いればよく、また逆にペプチド部分の特性を強調し、それにシリル化合物の性質を付加させたい場合には、側鎖にアミノ基を有するアミノ酸含量が少なく、かつ高分子量のペプチドを用いればよい。ただし、側鎖にアミノ基を有するアミノ酸含量が多い低分子量のペプチドでは、結合するシリル官能基が極度に多くなると、親水性が減少し、保存安定性が悪くなる上に、ペプチド本来の毛髪への収着作用が減少する。逆にペプチド部分へのシリル官能基の導入が低すぎる場合には、シリル化合物の特性が充分に発揮されない。
【0037】
従って、本発明のシリル化ペプチドにおいては、シリル官能基のペプチドのアミノ基への導入率を57%以上62%以下にしている。
【0038】
このシリル化ペプチドを毛髪化粧品や皮膚化粧品に配合する場合には、ペプチドの毛髪や皮膚への収着性、造膜作用および浸透性などを考慮すると、ペプチドのアミノ酸重合度を5〜10にするのが適している。
【0039】
〔シリル化合物〕
上記ペプチドをシリル化するためのシリル化剤としては、たとえば、上記一般式(III)で表されるシリル化合物が好適に使用されるが、この一般式(III)で表されるシリル化合物としては、シランカップリング剤と呼ばれている市販のものを使用することができる。たとえば、東芝シリコーン(株)製TSL8355、TSL8350(いずれも、商品名)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH6040(商品名)、信越化学工業(株)製KMB403、KMB402(いずれも商品名)、日本ユニカー(株)製A-187(商品名)、などがこれに該当する。
【0040】
上記一般式(III)において、R6、R7、R8をメチル基、メトキシ基、エトキシ基、水酸基またはハロゲン原子に特定しているのは、ペプチドとの反応において、それらがメチル基または水酸基になって、シリル化ペプチドが水溶性を持ち得るようにするためである。
【0041】
〔シリル化ペプチドの合成〕
ペプチドと一般式(III)で表されるシリル化合物との反応は、まず、シリル化合物を30〜50℃の水中で5〜20分間攪拌することにより、ケイ素原子に結合するアルコキシ基やハロゲン原子を水酸基に変換し、この水酸基化したシリル化合物をペプチドに滴下し、両者を接触させることによって行われる。
【0042】
上記反応に際して、ペプチドは30〜50重量%程度の水溶液にするのが好ましく、水酸基化したシリル化合物の滴下は30分〜5時間で終了するのが好ましい。
【0043】
反応は塩基性側で進行するので、ペプチド溶液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ溶液を添加して、pHを8〜11、特に9〜10にしておく必要がある。反応は常温でも進行するが、温度が高くなるほど反応速度が速くなる。しかし、pHが高い状態で温度が高くなるとシリル化合物の加水分解が促進されるため、高くても70℃以下にすることが好ましく、特に40〜60℃で行うのが好ましい。
【0044】
反応の進行と終了は、ファン・スレーク(Van Slyke)法により、反応中のペプチド類のアミノ態窒素量を測定することによって確認することができる。
【0045】
反応終了後、反応液は中和後、適宜濃縮して、イオン交換樹脂、透析膜、電気透析、ゲル濾過、限外濾過などによって精製し、液体のまま、あるいは粉末化して毛髪化粧品や皮膚化粧品に配合される。
【0046】
〔シリル化ペプチドからなる化粧品基材の用途〕
シリル化ペプチドからなる化粧品基材が配合される化粧品としては、たとえば、シャンプー、ヘアリンス、枝毛コート、パーマネントウェーブ用第1剤および第2剤、ヘアクリーム、ヘアコンディショナー、セットローション、ヘアカラー、ヘアトリートメントリンス、液体整髪料、ヘアパック、養毛・育毛剤などの毛髪化粧品、化粧水、アフターシェーブローション、シェービングフォーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、エモリエントクリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、洗顔クリームなどの各種クリーム、脱毛剤、フェイスパック、乳液、洗顔料、ボディーシャンプー、各種石鹸、メイキャップ用品、日焼け止め用品など各種化粧品に利用が可能である。
【0047】
そして、上記シリル化ペプチドからなる化粧品基材の配合量としては、化粧品中0.1〜30重量%、特に1〜20重量程度にするのが好ましい。すなわち、シリル化ペプチドの化粧品中への配合量が上記範囲より少ない場合は、毛髪に艶や潤いを付与したり、毛髪を保護したり、櫛通り性を改善する効果が充分に発現せず、また、シリル化ペプチドの化粧品中への配合量が上記範囲より多くなっても、それに伴う効果の増加がみられず、むしろ毛髪や皮膚に過剰のシリル化ペプチドが収着してベトツキを生じるおそれがある。
【0048】
また、上記化粧品に、シリル化ペプチドからなる化粧品基材と併用して配合できる成分としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸エタノールアミンなどのアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン(2EO)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン(なお、EOはエチレンオキサイドで、EOの前の数値はエチレンオキサイドの付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(3EO)アルキル(炭素数11〜15のいずれかまたは2種以上の混合物)エーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン(3EO)トリデシルエーテル酢酸などのポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ヤシ油脂肪酸-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウムなどのN-アシルアミノ酸塩、コラーゲン、ケラチン、フィブロイン、カゼイン、大豆、小麦、トウモロコシなどの動植物由来のタンパク加水分解物や酵母、キノコ類などの微生物由来のタンパク加水分解物を炭素数8〜20の脂肪酸でアシル化したアシル化加水分解タンパクまたはその塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12〜15)エーテルリン酸(8〜10EO)ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸イセチオン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、2-アルキル(炭素数12〜15)-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル-DL-ピロリドンカルボン酸塩、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、N-アルキル(炭素数12〜18)ジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12〜14)エーテル(7EO)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、アルキルポリグリコシドなどのノニオン性界面活性剤、カチオン化セルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、イソステアリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミドなどの増粘剤、動植物抽出物、ポリサッカライドまたはその誘導体、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンなどの湿潤剤、エタノール、メタノール、プロピルアルコールなどの低級アルコール類、L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-アルギニン、L-システインなどのアミノ酸などを挙げることができるが、これら以外にも本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0049】
また、本発明のシリル化ペプチドは、鎖状または環状のメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変成シリコーンオイルなどのシリコーンオイルを併用した場合に、それらシリコーンオイルの乳化安定性を向上させるとともに、シリコーンオイルの作用を増加させることができる。
【0050】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれら実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、溶液の濃度を示す%はいずれも重量%であり、「m」を「側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の数」を表すのに用い、「n」を「それ以外のアミノ酸の数」を表すのに用い、「m+n」を「両アミノ酸の合計数」を表すのに用いる。
【0051】
参考例1
加水分解コラーゲン(コラーゲンの加水分解物で、mの平均値=2、nの平均値=18、m+nの平均値=20)の30%水溶液50g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として10.6ミリモル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを9.5にし、55℃に加温した。
【0052】
一方、シリル化剤として、一般式(III)において、R6=CH3、R7=OCH3、R8=OCH3で、a=3のシリル化合物2.3g(加水分解コラーゲンのアミノ態窒素量に対し1.0当量)を水に15%水溶液となるように溶解し、希塩酸でpHを3.5に調整して、50℃で15分間攪拌を続け、メトキシ基(-OCH3)を加水分解して水酸基に変換させた。
【0053】
上記の加水分解コラーゲン溶液を55℃で攪拌しながら、その中に、水酸基に変換したシリル化合物水溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、55℃でさらに5時間攪拌を続け、反応を完結させた。
【0054】
反応終了後、アミノ態窒素を測定することにより、シリル官能基の加水分解コラーゲンのアミノ態窒素への導入率を求めたところ、シリル官能基の導入率は67%であった。
【0055】
反応液を希塩酸で中和した後、電気透析装置で脱塩し、pHを6.5に調整した後、濃縮して濃度調整を行うことにより、反応生成物(シリル化加水分解コラーゲン)濃度が20%の水溶液を63g得た。
【0056】
実施例2
加水分解小麦タンパク(小麦タンパクの加水分解物で、mの平均値=1.2、nの平均値=8.8、m+nの平均値=10)の30%水溶液50g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として15ミリモル)を20%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH9.5にし、55℃に加温した。
【0057】
一方、シリル化剤として、一般式(III)において、R6=Cl、R7=CH3、R8=Clで、a=3のシリル化合物3.1g(加水分解小麦ペプチドのアミノ態窒素量に対し0.9当量)を水に15%水溶液となるように溶解し、15分間攪拌を続けてケイ素原子に直接結合しているCl原子を水酸基に変換させた。
【0058】
上記加水分解小麦タンパク水溶液を55℃で攪拌しながら、その中に水酸基に変換したシリル化合物水溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃でさらに5時間攪拌を続けて反応を完結させた。
【0059】
反応液を希塩酸で中和後、電気透析で脱塩し、濃縮して濃度調整を行うことにより、反応生成物(シリル化加水分解小麦タンパク)濃度が20%の水溶液55gを得た。シリル官能基の導入率は62%であった。
【0060】
実施例3
加水分解コラーゲンに代えて加水分解ケラチン(羊毛の加水分解物で、mの平均値=0.6、nの平均値=4.4、m+nの平均値=5)の30%水溶液50g(アミノ態窒素の測定により得られた化学量論的モル数として42ミリモル)を用い、シリル化剤として、一般式(III)において、R6=CH3、R7=OC2H5、R8=OC2H5で、a=3のシリル化合物を7.5g(加水分解ケラチンのアミノ態窒素量に対し0.8当量)用いたほかは、参考例1と同様にして、反応生成物(シリル化加水分解ケラチン)濃度が20%の水溶液58gを得た。シリル官能基の導入率は59%であり、また一般式(III)で表されるシリル化合物においてケイ素原子に直接結合していたエトキシ基(OC2H5)は上記反応の間に水酸基に変換されていた。
【0061】
実施例4
加水分解コラーゲンに代えて加水分解大豆タンパク(大豆タンパクの加水分解物で、mの平均値=0.5、nの平均値=5.5、m+nの平均値=6)の30%水溶液50g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として18.4ミリモル)を用い、シリル化剤として、一般式(III)において、R6=OCH3、R7=OCH3、R8=OCH3で、a=1のシリル化合物を3.4g(加水分解大豆タンパクのアミノ態窒素量に対して0.9当量)用いたほかは、参考例1と同様にして、反応生成物(シリル化加水分解大豆タンパク)濃度が20%の水溶液53gを得た。シリル官能基の導入率は60%であり、また一般式(III)で表されるシリル化合物においてケイ素原子に直接結合していたメトキシ基は上記反応の間に水酸基に変換されていた。
【0062】
実施例5
加水分解コラーゲンに代えて加水分解酵母タンパク(酵母タンパクの加水分解物で、mの平均値=1.2、nの平均値=6.8、m+nの平均値=8)の30%水溶液50g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として30ミリモル)を用い、シリル化剤として、一般式(III)において、R6=CH3、R7=OC2H5、R8=OC2H5で、a=3のシリル化合物を5.3g(加水分解酵母タンパクのアミノ態窒素量に対して0.8当量)用いたほかは、参考例1と同様にして、反応生成物(シリル化加水分解酵母タンパク)濃度が20%の水溶液48gを得た。シリル官能基の導入率は57%であり、また一般式(III)で表されるシリル化合物においてケイ素原子に直接結合していたエトキシ基は上記反応の間に水酸基に変換されていた。
【0063】
比較例1
参考例1と同じ加水分解コラーゲンと同じシリル化合物を用い、シリル化合物の量を1.6g(加水分解コラーゲンのアミノ態窒素量に対し0.7当量)に変更した以外は、参考例1と同様の操作をしてシリル化加水分解コラーゲンの20%水溶液を45g得た。シリル官能基の導入率は48%であった。
【0064】
比較例2
実施例2と同じ加水分解小麦タンパクと同じシリル化合物を用い、シリル化合物の量を4.5g(加水分解小麦タンパクのアミノ態窒素量に対し1.3当量)に変更した以外は、実施例2と同様の操作をしてシリル化加水分解小麦タンパクの20%水溶液を74g得た。シリル官能基の導入率は77%であった。
【0065】
比較例3
実施例3と同じ加水分解ケラチンと同じシリル化合物を用い、シリル化合物の量を11.3g(加水分解ケラチンのアミノ態窒素量に対し、1.2当量)に変更した以外は、実施例3と同様の操作をしてシリル化加水分解ケラチンの20%水溶液を80g得た。シリル官能基の導入率は78%であった。
【0066】
比較例4
実施例4と同じ加水分解大豆タンパクと同じシリル化合物を用い、シリル化合物の量を2.3g(加水分解大豆タンパクのアミノ態窒素量に対し0.6当量)に変更した以外は、実施例4と同様の操作をしたシリル化加水分解大豆タンパクの20%水溶液を43g得た。シリル官能基の導入率は47%であった。
【0067】
比較例5
実施例5と同じ加水分解酵母タンパクと同じシリル化合物を用い、シリル化合物の量を8.6g(加水分解酵母タンパクのアミノ態窒素量に対し1.3当量)に変更した以外は、実施例5と同様の操作をしてシリル化加水分解酵母タンパクの20%水溶液81g得た。シリル官能基の導入率は78%であった。
【0068】
〔シリル化ペプチドの保存安定性〕
上記実施例2〜5および比較例2〜5で得られたシリル化ペプチドの水溶液を90日間室温(ただし、10〜25℃)で保存した時の沈殿物の発生の有無を目視により調べた。評価基準は下記の通りである。
【0069】
評価基準
+++:沈殿物が非常に多い
++:沈殿物が多い
+:沈殿物または濁りがわずかに認められる
-:沈殿物や濁りがまったく認められない
【0070】
その結果を表1に示す。なお、表1には、各実施例および比較例のシリル化ペプチドの合成にあたって使用したペプチドの種類を併記する。
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示すように、実施例2〜5で調製したシリル化ペプチドは、いずれも、室温保存で濁りや沈殿物を生じることがなかった。これに対し、比較例では、シリル官能基の導入率の低い比較例4は濁りや沈殿物を生じなかったが、シリル官能基の導入率の高い比較例2、3および5では濁りを生じ、特にアミノ酸重合度の低いペプチドに多量のシリル官能基が導入された比較例3の濁りが激しかった。
【0073】
〔シリル化ペプチドのpH安定性〕
実施例2〜5および比較例2〜5で調製したシリル化ペプチドのpH安定性を調べた。すなわち、シリル化ペプチドの10%水溶液を6N塩酸または20%水酸化ナトリウムでpH3、4、5、7、9、10に調整し、室温で24時間放置後の沈殿物や濁りの有無を目視により確認した。その結果を表2に示す。なお、評価基準は保存安定性の場合と同様である。
【0074】
【表2】

【0075】
表2に示すように、実施例3のシリル化加水分解ケラチンと実施例5のシリル化加水分解酵母タンパクは、pH3で濁りが生じたが、他のシリル化ペプチドは試験したpH範囲内では濁りや沈殿物がまったく認められなかった。
【0076】
また、実施例3のシリル化加水分解ケラチンおよび実施例5のシリル化加水分解酵母タンパクでも、pH4以上では濁りや沈殿物が見られなかった。加水分解ケラチンや加水分解酵母タンパクは、側鎖の末端にアミノ基を有するアミノ酸を多く含むため、ペプチド部分に結合しているシリル官能基が多く、疎水性の性質が現れやすいため、低いpHで濁りを生じたものと考えられる。
【0077】
これに対して、比較例では、シリル官能基の導入率の低い比較例4のシリル化加水分解大豆タンパクは、試験したpH範囲内では濁りや沈殿物は認められなかったが、比較例3のシリル化加水分解ケラチンはpH5付近より濁りが生じはじめ、pH3では完全にゲル化した。また、比較例5のシリル化加水分解酵母タンパクでもpH4以下で濁りが生じ、低分子量のペプチドに高い導入率でシリル官能基が導入されると、低いpHでの安定性が悪いということが明らかであった。
【0078】
〔シリル化ペプチドによる毛髪の引張り強度増強確認試験〕
シリル化ペプチドによる毛髪の引張り強度増強の確認は、Journal of SCCJ,vol.21,No.2の「毛髪の損傷度評価法(I)」に記載の方法に従って行った。
【0079】
試験には、試料として用いる毛髪の強度のバラツキを低く抑えるため、毛髪の強度がほぼ一定となるように一度脱色処理を施した毛髪を用いた。すなわち、長さ10cmで重さ1gの毛束を10%過酸化水素水と10%アンモニア水の1:1混合液10gに30分間浸漬して脱色し、イオン交換水でゆすいだ後、乾燥して試験に供した。
【0080】
試験液には、実施例3および比較例3で得られたシリル化加水分解ケラチンの5%水溶液を用いて、上記の脱色処理を施した毛束を40℃で5分間浸漬した。浸漬後、イオン交換水で充分にゆすぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。この操作を3回繰り返した後、この毛束より30本の毛髪を抜き取り、それらを引張り強度試験に供した。
【0081】
引張り強度試験では、各毛髪の中央部(端から5cm)の長径および短径をマイクロメータで測定して断面積を計算した後、この部分の引張り強度を引張り強度試験機〔不動工業(株)製、レオメータ〕で測定し、断面積当りの引張り強度を算出した。
【0082】
比較の対象には、脱色処理のみを施した未処理毛と、加水分解ケラチン(m+nの平均値=5)の5%水溶液で同様に処理を施した毛髪の引張り強度を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
表3に示すように、実施例3のシリル化加水分解ケラチンで処理した毛髪は未処理毛に対して約16%引張り強度が増加していた。また、実施例3のシリル化加水分解ケラチンで処理した毛髪は、シリル化していない同じ分子量の加水分解ケラチンで処理した毛髪と比べても、強度の増加が認められ、シリル化ペプチドが毛髪によく収着し、損傷毛の強度回復に寄与しているのが明らかであった。
【0085】
これに対して、比較例3のシリル化加水分解ケラチンで処理した毛髪は、シリル化していない加水分解ケラチンで処理した毛髪より強度がやや低めの結果となった。これは、比較例3のシリル化加水分解ケラチンでは、シリル官能基の導入率が高すぎてペプチド本来の毛髪への収着力が減少したためであると考えられる。
【0086】
〔応用例〕
つぎに、本発明のシリル化ペプチドからなる化粧品基材を各種化粧品に配合した応用例について説明する。なお、応用例においては、用いるシリル化ペプチドを実施例番号で示し、その番号の後にシリル化ペプチドの種類も括弧書きで併記する。また、配合量は重量部によるものであり、特に括弧内に濃度を示したもの以外は、純分としての配合量を示す。
【0087】
参考応用例1
表4に示す組成の3種類のトリートメントベース(参考品1および比較品1〜2)を調製し、該トリートメントベースとLPGガスを重量比8:2の割合で加圧容器内に充填して、トリートメントムース剤を調製した。
【0088】
【表4】

【0089】
上記参考品1および比較品1〜2のトリートメントムース剤をそれぞれ長さ10cmで重さ1gの毛束に使用し、5人の女性パネラーに毛髪の艶、潤い、櫛通り性について5段階評価させた。評価基準は下記の通りであり、その結果を表5に平均値で示す。
【0090】
評価基準
5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:悪い
1:非常に悪い
【0091】
【表5】

【0092】
応用例2
表6に示す組成の3種類のシャンプー(実施品2および比較品3〜4)を調製した。
【0093】
【表6】

【0094】
上記実施品2および比較品3〜4のシャンプーを用いて、それぞれ長さ10cmで重さ1gの毛束を洗浄した。洗浄には各シャンプー0.5gずつを使用し、温水を用いて洗浄後、温水ですすいだ後、ヘアドライヤーで乾燥した。この操作を5回繰り返した後、5人の女性パネラーに、洗髪後の毛髪の艶、潤い、なめらかさ、櫛通り性および洗髪時の泡の感触(軟らかさおよびなめらかさ)について参考応用例1と同様の評価基準で評価させた。その結果を表7に示すが、評価値は平均値である。
【0095】
【表7】

【0096】
表7に示すように、実施例2のシリル化加水分解小麦タンパクを配合した実施品2のシャンプーは、シリコーンオイル(オクタメチルトリシロキサン)を配合した比較品3のシャンプーやシリル化加水分解小麦タンパクやシリコーンオイルを配合していない比較品4のシャンプーに比べて、いずれの項目でも評価値が高く、シリル化加水分解小麦タンパクを配合した効果が明らかであった。
【0097】
応用例3
表8に示す組成の3種類のパーマネントウェーブ用第1剤(実施品3および比較品5〜6)を調製した。
【0098】
【表8】

【0099】
パーマネントウェーブ処理にあたっては、試験用毛束として重さ1gで長さ15cmの毛束を用い、第2剤には6%臭素酸ナトリウム水溶液を用いて、実施品3および比較品5〜6のパーマネントウェーブ用第1剤により、それぞれ1回、3回、6回のパーマネントウェーブ処理を行い、処理後の毛髪の外観および触感について、5名の女性パネラーに参考応用例1と同様の評価基準で評価させた。その結果を表9に示すが、評価値は平均値である。
【0100】
【表9】

【0101】
表9に示すように、実施例4のシリル化加水分解大豆タンパクを配合した実施品3のパーマネントウェーブ用第1剤による場合は、シリル化加水分解大豆タンパクを配合していない比較品5のパーマネントウェーブ用第1剤による場合や実施例4のシリル化加水分解大豆タンパクに代えて比較例4のシリル化加水分解大豆タンパクを配合した比較品6のパーマネントウエーブ用第1剤による場合に比べて、処理後の毛髪の外観、触感とも評価値が高く、実施例4のシリル化加水分解大豆タンパクを配合した効果が明らかであった。
【0102】
応用例4
実施例3で得たシリル化加水分解ケラチンを配合して下記組成のトリートメントリンス(実施品4)を調製した。
【0103】
実施例3(シリル化加水分解ケラチン)、(20%) 17.5
セタノール 4.0
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(29%) 2.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(73%) 1.0
ステアリン酸エチレングリコール(成和化成社製 アヤコール EGS-D)
3.0
ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド(成和化成社製 アヤコール アミンアミド50E)
3.0
イソステアリン酸ジグリセリン(成和化成社製 アヤコール DGMIS)
1.5
プロピレングリコール 3.0
パラオキシ安息香酸エステル・フェノキシエタノール混合物(成和化成社製 セイセプトG)
0.5
香料 適 量
滅菌イオン交換水 計100とする
リンゴ酸 pH6.0に調整
【0104】
上記実施例3のシリル化加水分解ケラチンを配合した実施品4のトリートメントリンスを毛髪に使用したところ、実施例3のシリル化加水分解ケラチンを配合していないトリートメントリンス〔つまり、実施例3のシリル化加水分解ケラチンを含まず、そのぶん滅菌イオン交換水を増量したほかは、実施品4と同組成のトリートメントリンス〕に比べて、毛髪に潤いを与え、櫛通り性、ブラッシング性が良く、毛髪のコンディショニングが容易であった。
【0105】
応用例5
表10に示す組成の3種類の染毛剤(実施品5および比較品7〜8)を調製した。
【0106】
【表10】

【0107】
第二剤には下記の組成の溶液を用いた。
〔第二剤組成〕
ステアリン酸 1.0部
モノステアリン酸グリセリン 1.5部
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20EO) 1.0部
過酸化水素水(35%) 15.5部
滅菌イオン交換水 計100部とする
【0108】
実施品5および比較品7〜8の染毛剤(第一剤)と上記第二剤を用いて、それぞれ重さ1gで長さ15cmの毛束を染毛した。染毛処理は、第一剤と第二剤を同量ずつ混合し、その混合物を毛束に塗付した後、30分間放置し、その後、温水ですすぎ、ついで、2%ポリオキシエチレンノニフェニルエーテル水溶液で洗浄することによって行った。染毛処理後、ヘアドライヤーで毛束を乾燥した後、毛髪の均染性、艶、潤いおよび櫛通り性を10人のパネラー(女性6人、男性4人)に、参考応用例1と同じ評価基準で評価させた。
【0109】
また、上記染毛後の毛束から、それぞれ毛髪を30本ずつ抜き取り、それらの毛髪の中央部(端から7.5cm)の長径および短径をマイクロメータで測定して断面積を計算した後、その部分の引張り強度を引張り試験機〔不動工業(株)製、レオメータ〕で測定し、断面積当りの引張り強度を算出した。その結果を表11に示す。
【0110】
【表11】

【0111】
表11に示すように、実施例5のシリル化加水分解酵母タンパクを配合した実施品5の染毛剤は、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)を配合した比較品7の染毛剤やシリル化加水分解酵母タンパクやシリコーンオイルを配合していない比較品8の染毛剤に比べて、染毛後の毛髪の均染性、艶、潤い、櫛通り性のいずれに関しても評価値が大きかった。
【0112】
また、引張り強度に関しては、実施例5のシリル化加水分解酵母タンパクを配合した実施品5の染毛剤を使用した場合、比較品8の染毛剤〔すなわち、シリル化加水分解酵母タンパクも、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)も配合していない染毛剤〕に比べて強度が約4%増強していて、実施例5のシリル化加水分解酵母タンパクが、染毛時の化学的処理による毛髪の損傷から毛髪を保護していることが明らかであった。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリル化ペプチドからなる化粧品基材は、毛髪化粧品に配合すると、毛髪に艶と潤いを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、シャンプーなどの洗浄剤に配合すると、泡を軟らかく、かつなめらかにして、皮膚に対する感触を向上させ、また、皮膚化粧品に配合すると、皮膚に艶と潤いを付与し、皮膚をなめらかにする。
【0114】
また、本発明のシリル化ペプチドからなる化粧品基材は、水溶性で、水中でのpH安定性や保存安定性が優れていて、水溶液系の毛髪化粧品や皮膚化粧品に配合したときに、保存中に濁りや沈殿を生じない。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-03-30 
結審通知日 2004-03-31 
審決日 2004-05-18 
出願番号 特願平6-230348
審決分類 P 1 112・ 113- YA (A61K)
P 1 112・ 121- YA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 松浦 新司
小柳 正之
登録日 2002-06-07 
登録番号 特許第3315535号(P3315535)
発明の名称 化粧品基材  
代理人 清原 義博  
代理人 三輪 鐵雄  
代理人 三輪 鐵雄  
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