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審決分類 審判 訂正 判示事項別分類コード:83 訂正する D21H
管理番号 1138292
審判番号 訂正2006-39027  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-02-27 
確定日 2006-05-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3614609号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3614609号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の趣旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3614609号発明(平成9年4月16日(優先日平成8年9月10日)特許出願、平成16年11月12日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した明細書のとおり、すなわち、以下の訂正事項1〜7のとおりに訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項1
本件の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】 下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物と2官能性単量体を含有する単量体を連鎖移動剤の存在下に逆相乳化重合物をおこなった後、親水性界面活性剤を添加し易水和性としたものであり、紙料に添加する濃度まで水で希釈した状態で、大部分のイオン性基がコロイド適定に検出される性質を有することを特徴とする製紙用薬剤剤。

」を、
「【請求項1】 下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物と2官能性単量体を含有する単量体を連鎖移動剤の存在下に逆相乳化重合をおこなった後、親水性界面活性剤を添加し易水和性としたものであり、紙料に添加する濃度まで水で希釈した状態で、大部分のイオン性基がコロイド適定に検出される性質を有することを特徴とする抄紙用薬剤。

」と訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5について、
「【請求項5】 (A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)逆相エマルジョンすなわち油中水型エマルジョンを生成するに有効な量とHLBである少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、親水性界面活性剤を混合し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法。

」を、
「【請求項5】 (A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、親水性界面活性剤を混合し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法。

」と訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6について、
「【請求項6】親水性界面活性剤がHLB9〜15のノニオン性活性剤であることを特徴とする請求項3に記載の抄紙用薬剤の製造方法。」を、
「【請求項6】親水性界面活性剤がHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載の抄紙用薬剤の製造方法。」と訂正する。

(4)訂正事項4
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項7について、
「【請求項7】 (A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)逆相エマルジョンすなわち油中水型エマルジョンを生成するに有効な量とHLBである少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、次いで界面活性剤と有機溶剤を除去し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法。

」を、
「【請求項7】 (A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、次いで界面活性剤と有機溶剤を除去し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法。

」と訂正する。

(5)訂正事項5
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項8について、
「【請求項8】ノニオン性水溶性単量体が(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項5ないし請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法。」を
「【請求項8】ノニオン性水溶性単量体が(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法。」と訂正する。

(6)訂正事項6
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項9について、
「【請求項9】 水溶性アニオン性ビニル単量体が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項5ないし請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法。」を、
「【請求項9】 水溶性アニオン性ビニル単量体が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法。」と訂正する。

(7)訂正事項7
(7-1)
本件特許明細書の段落0004について、
「【課題を解決する為の手段】
本発明の請求項1の発明は、下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物と2官能性単量体を含有する単量体を連鎖移動剤の存在下に逆相乳化重合物をおこなった後、親水性界面活性剤を添加し易水和性としたものであり、紙料に添加する濃度まで水で希釈した状態で、大部分のイオン性基がコロイド適定に検出される性質を有することを特徴とする製紙用薬剤剤である。

」を、
「【課題を解決する為の手段】
本発明の請求項1の発明は、下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物と2官能性単量体を含有する単量体を連鎖移動剤の存在下に逆相乳化重合をおこなった後、親水性界面活性剤を添加し易水和性としたものであり、紙料に添加する濃度まで水で希釈した状態で、大部分のイオン性基がコロイド適定に検出される性質を有することを特徴とする抄紙用薬剤である。

」と訂正する。

(7-2)
本件特許明細書の段落0008について、
「本発明の請求項5の発明は、(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)逆相エマルジョンすなわち油中水型エマルジョンを生成するに有効な量とHLBである少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、親水性界面活性剤を混合し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法である。

」を、
「本発明の請求項5の発明は、(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、親水性界面活性剤を混合し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法である。

」と訂正する。

(7-3)
本件特許明細書の段落0009について、
「本発明の請求項6の発明は親水性界面活性剤がHLB9〜15のノニオン性活性剤であることを特徴とする請求項3に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。」を
「本発明の請求項6の発明は親水性界面活性剤がHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。」と訂正する。

(7-4)
本件特許明細書の段落0010について、
「本発明の請求項7の発明は、(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)逆相エマルジョンすなわち油中水型エマルジョンを生成するに有効な量とHLBである少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、次いで界面活性剤と有機溶剤を除去し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法である。

」を、
「本発明の請求項7の発明は、(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、次いで界面活性剤と有機溶剤を除去し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法である。

」と訂正する。

(7-5)
本件特許明細書の段落0011について、
「本発明の請求項8の発明はノニオン性水溶性単量体が(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項5ないし請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。」を
「本発明の請求項8の発明はノニオン性水溶性単量体が(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。」と訂正する。

(7-6)
本件特許明細書の段落0012について、
「本発明の請求項9の発明は 水溶性アニオン性ビニル単量体が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項5ないし請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。」を
「本発明の請求項9の発明は 水溶性アニオン性ビニル単量体が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。」と訂正する。

2.当審の判断
(1)訂正事項1について
請求項1に係る訂正に関しては、「逆相乳化重合物」はそれに続く記載が「を行った後、」となっており、その記載が、本来「逆相乳化重合」と記載されるべき事項の誤記であることは当業者に明らかであると認められる。
また、製紙工程全体を使用対象とした「製紙用薬剤剤」を製紙工程の中の抄紙段階で使用される「抄紙用薬剤」とする訂正は、当初明細書の段落0004の記載に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
したがって、訂正事項1は、誤記の訂正及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書及び願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、この訂正により、請求項に係る発明の範囲が実質上変更されるものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2及び4について
請求項5及び7に係る訂正に関しては、「(H)逆相エマルジョンすなわち油中水型エマルジョンを生成するに有効な量とHLBである少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、」を「(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、」と訂正するものである。
この訂正は、訂正前の界面活性剤に関する「逆相エマルジョンすなわち油中水型エマルジョンを生成するに有効な量とHLB」の規定が、字句上、不明りょうであったものを、「油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤」とすることにより、界面活性剤を限定するとともに明確化したものと認められる。
そして、(H)成分の界面活性剤が、HLB3〜6のノニオン性界面活性剤であることは、特許査定時の明細書段落0021,0024に記載されている事項である。
したがって、訂正事項2及び4は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、この訂正により、請求項に係る発明の範囲が実質上変更されるものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
請求項6に係る訂正に関しては、「ノニオン性活性剤」を「ノニオン性界面活性剤」に、引用する請求項を「請求項3」から「請求項5」に訂正するものである。
この訂正において、「ノニオン性活性剤」が「ノニオン性界面活性剤」の誤記であることは当業者に明らかであり、また、訂正前に引用されていた請求項3には「親水性界面活性剤」の用語がないことから、引用する請求項が「請求項3」ではなく「請求項5」であることも当業者に明らかである。
そして、抄紙用薬剤の製造方法において、親水性界面活性剤としてHLB9〜15のノニオン性界面活性剤を使用することは当初明細書の段落0022に記載されている。
したがって、訂正事項3は、誤記の訂正を目的とするものであり、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、この訂正により、請求項に係る発明の範囲が実質上変更されるものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項5及び6について
請求項8及び9に係る訂正に関しては、「請求項5ないし請求項5あるいは7」を「請求項5あるいは7」と訂正するものである。
訂正前の「請求項5ないし請求項5」の部分が誤記であることは明らかであり、上記記載は「請求項5あるいは7」の誤記と認める。
そして、当初明細書の段落0011,0012に請求項8は請求項5ないし請求項7を引用し、請求項9は請求項5ないし請求項8を引用することが記載されている。
したがって、訂正事項3は、誤記の訂正を目的とするものであり、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、この訂正により、請求項に係る発明の範囲が実質上変更されるものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項1〜6による上記請求項1及び5〜9の訂正に伴い、それらの請求項に対応する特許明細書の段落0004,0008,0009,0010,0011及び0012の記載を同様に訂正するものである。
したがって、訂正事項7は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、この訂正により、請求項に係る発明の範囲が実質上変更されるものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)独立特許要件についての検討
(1)〜(5)で述べたとおり、訂正事項1は、誤記の訂正及び特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項2及び4は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とし、訂正事項3、5及び6は、誤記の訂正を目的とし、訂正事項7は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められるものである。
そして、訂正後の請求項1〜10に係る発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでないとする理由はない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1〜3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第3〜5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
製紙用薬剤、抄紙方法および製紙用薬剤の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物と2官能性単量体を含有する単量体を連鎖移動剤の存在下に逆相乳化重合をおこなった後、親水性界面活性剤を添加し易水和性としたものであり、紙料に添加する濃度まで水で希釈した状態で、大部分のイオン性基がコロイド適定に検出される性質を有することを特徴とする抄紙用薬剤。
【化7】

(但し、式中、AはOまたはNH;BはC2H4、C3H6、C3H5OH;R1はHまたはCH3;R2、R3は炭素数1〜4のアルキル基;R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基あるいはベンジル基;X-はアニオン性対イオンを表す。)
【請求項2】
製紙用歩留り向上剤であることを特徴とする請求項1に記載の抄紙用薬剤。
【請求項3】
製紙用濾水性向上剤であることを特徴とする請求項1に記載の抄紙用薬剤。
【請求項4】
製紙の抄紙工程において、ファンポンプ入口近傍,セントリスクリーン入口近傍および/またはセントリスクリーン出口近傍に請求項1に記載の抄紙用薬剤の水による希釈液を添加混合し紙料を凝集させることを特徴とする抄紙方法。
【請求項5】
(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、親水性界面活性剤を混合し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法。
【化8】

(但し、式中、AはOまたはNH;BはC2H4、C3H6、C3H5OH;R1はHまたはCH3;R2、R3は炭素数1〜4のアルキル基;R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基あるいはベンジル基;X-はアニオン性対イオンを表す。)
【請求項6】
親水性界面活性剤がHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載の抄紙用薬剤の製造方法。
【請求項7】
(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、次いで界面活性剤と有機溶剤を除去し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法。
【化9】

(但し、式中、AはOまたはNH;BはC2H4、C3H6、C3H5OH;R1はHまたはCH3;R2、R3は炭素数1〜4のアルキル基;R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基あるいはベンジル基;X-はアニオン性対イオンを表す。)
【請求項8】
ノニオン性水溶性単量体が(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法。
【請求項9】
水溶性アニオン性ビニル単量体が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法。
【請求項10】
2官能性単量体がN,Nメチレンビスアクリルアミドあるいは2ヒドロキシプロピリデン1,3ビス〔(Nアクリロイルアミノプロピル)N,Nジメチルアンモニウムクロリド〕であることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抄紙用薬剤とその製造方法、及び製紙工程における抄紙方法に関するものであり、さらに詳しくは製紙の抄紙工程において、紙料に特定のカチオン性または両性のアクリルアミド系高分子凝集剤からなる抄紙用薬剤及び前記抄紙用薬剤を添加混合して抄紙し、歩留を向上させる紙または板紙の抄紙方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の高分子凝集剤の欠点を改良する為に、交叉結合されたカチオン性・アニオン性・ノニオン性の有機高分子組成物(ヨーロッパ特許第0,202,780号明細書、特開昭61-293510号公報、特開昭64-85199号公報、特開平2-219887号公報、特開平4-226102号公報など)が、種々の固液分離に有効であると提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は製紙工程における抄紙方法の改良に関するものであり、歩留および/または濾水性を向上させる紙または板紙の抄紙方法を提供するものである。本発明の目的の一つは填料等の歩留り向上法を用いる事により紙層の厚さ方向の組成分布の平均化を図る事により高品質の紙を生産する事、原料の流失を防止し原価の節減を図る事、また紙料濃度を低下させる事が可能と成る事により成紙のバラツキをコントロールする事により一定品質の紙を量産する事が容易となる利点あるいはプラスチックワイヤーの寿命延長が可能と成る有効な抄紙方法を提供する事に有る。本発明の目的の他の一つは濾水性向上であり、濾水性向上の目的は一般的に抄紙速度の向上であるが、紙力増強を目的として用いられる事も多い。即ちパルプの叩解度を向上させると紙力増強を望む事ができるが抄紙速度が低下する欠点が有る。濾水性向上法を用いる事により濾過速度ならびに湿紙匹の乾燥速度を高叩解度のパルプに対しても通常の叩解度のパルプと同様の水準に維持する事が可能と成り、実質的に紙の生産速度を落とす事無く高叩解度のパルプを用いた紙料を抄造する事により高性能の紙を抄紙する事が可能と成る抄紙方法として重要視されている。かかる目的を達成する有効な抄紙方法を提供する事が、本願において発明が解決しようとする課題である。
【0004】
【課題を解決する為の手段】
本発明の請求項1の発明は、下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物と2官能性単量体を含有する単量体を連鎖移動剤の存在下に逆相乳化重合をおこなった後、親水性界面活性剤を添加し易水和性としたものであり、紙料に添加する濃度まで水で希釈した状態で、大部分のイオン性基がコロイド適定に検出される性質を有することを特徴とする抄紙用薬剤である。
【化10】

(但し、式中、AはOまたはNH;BはC2H4、C3H6、C3H5OH;R1はHまたはCH3;R2、R3は炭素数1〜4のアルキル基;R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基あるいはベンジル基;X-はアニオン性対イオンを表す。)
【0005】
本発明の請求項2の発明は製紙用歩留り向上剤であることを特徴とする請求項1に記載の抄紙用薬剤である。
【0006】
本発明の請求項3の発明は、製紙用濾水性向上剤であることを特徴とする請求項1に記載の抄紙用薬剤である。
【0007】
本発明の請求項4の発明は製紙の抄紙工程において、ファンポンプ入口近傍,セントリスクリーン入口近傍および/またはセントリスクリーン出口近傍に請求項1に記載の抄紙用薬剤の水による希釈液を添加混合し紙料を凝集させることを特徴とする抄紙方法である。
【0008】
本発明の請求項5の発明は(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、親水性界面活性剤を混合し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法である。
【化11】

(但し、式中、AはOまたはNH;BはC2H4、C3H6、C3H5OH;R1はHまたはCH3;R2、R3は炭素数1〜4のアルキル基;R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基あるいはベンジル基;X-はアニオン性対イオンを表す。)
【0009】
本発明の請求項6の発明は親水性界面活性剤がHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。
【0010】
本発明の請求項7の発明は(A)全単量体中5〜99.9999モル%の下記式(1)で表される水溶性カチオン性ビニル単量体またはその混合物、(B)全単量体中0.0001〜0.01モル%の2官能性単量体、(C)全単量体中0〜30モル%の水溶性アニオン性ビニル単量体またはその混合物、(D)ノニオン性水溶性単量体0〜94.9999モル%、(E)連鎖移動剤、(F)水、(G)少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物および(H)油中水型エマルジョンを生成させるためHLB3〜6のノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種類の界面活性剤を用意し、上記(A)〜(H)成分を適時混合強攪拌し、油相中に微細単量体相液滴を形成させた後に重合操作を行い、次いで界面活性剤と有機溶剤を除去し、水により希釈して使用することを特徴とする抄紙用薬剤の製造方法である。
【化12】

(但し、式中、AはOまたはNH;BはC2H4、C3H6、C3H5OH;R1はHまたはCH3;R2、R3は炭素数1〜4のアルキル基;R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基あるいはベンジル基;X-はアニオン性対イオンを表す。)
【0011】
本発明の請求項8の発明はノニオン性水溶性単量体が(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。
【0012】
本発明の請求項9の発明は水溶性アニオン性ビニル単量体が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。
【0013】
本発明の請求項10の発明は2官能性単量体がN,Nメチレンビスアクリルアミドあるいは2ヒドロキシプロピリデン1,3ビス〔(Nアクリロイルアミノプロピル)N,Nジメチルアンモニウムクロリド〕であることを特徴とする請求項5あるいは7に記載の抄紙用薬剤の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は製紙における抄紙時に紙料に添加して用いる抄紙用薬剤に関するものであり、填料および微細パルプのワイヤー上での歩留りを向上させる歩留り向上剤に関するものである。これら目的に単独使用してもよいがベントナイト、コロイダルシリカ、アニオンポリマーと併用しても良い。請求項1に記載された性質を持つ抄紙用薬剤は請求項5から請求項10に記載の製造方法によって得られる。
【0015】
本発明に用いられる前記式(1)で表される(A)成分の水溶性カチオン性ビニル単量体の具体例としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの三級塩および四級アンモニウム塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの三級塩および四級アンモニウム塩、ジアルキルアミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの三級塩および四級アンモニウム塩、ジアルキルアミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの三級塩および四級アンモニウム塩あるいはこれらの混合物から選ばれる一種を挙げる事ができる。これらの中でもアクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩あるいはこれらの混合物から選ばれる一種が好ましく用いられる。
【0016】
本発明に用いられる(B)成分の2官能性単量体の具体例としてはN,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミドなどのビニル系メチロール化合物、アクロレインなどのビニル系アルデヒド化合物あるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらの中でもN,N’-メチレンビスアクリルアミドが好ましく使用できる。
【0017】
本発明に用いられる(C)成分の水溶性アニオン性ビニル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、アリールスルホン酸およびその塩あるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらの中でもアクリル酸が最も好ましく使用できる。
【0018】
本発明に用いられる(D)成分の水溶性ノニオン性ビニル単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルあるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらの中でもアクリルアミドが最も好ましく使用できる。
【0019】
本発明に用いられる(E)成分の連鎖移動剤の具体例としては、アルコール、メルカプタン、ホスファイト、サルファイトあるいはこれらの混合物が挙げられる。本発明に用いられる(E)成分の連鎖移動剤の種類と量は重合体が適度の分子量と網状構造を持ち、請求項1に記載された物性を有する様に選ばれる。本発明の重合体は、粒子状態が観察されながら、大部分のイオン性基がコロイド適定に検出され、乾燥時に連続膜を与える。連鎖移動剤を使用しないと重合体が水不溶性となり、凝集剤としての効果は半減する。水不溶性となれば請求項1に記載した乾燥条件では連続膜を与えない。
【0020】
本発明に用いられる(G)成分である少なくとも1種類の炭化水素から成る油状物の具体例としては、灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
本発明に用いられる(H)成分である界面活性剤はHLB3〜6のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としてはソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテートなどを挙げる事ができる。
【0022】
本発明において油中水型エマルジョン重合により得られた重合物と混合される親水性界面活性剤としてはカチオン性界面活性剤あるいはHLB9〜15のノニオン性界面活性剤が用いられ、好ましくはHLB10〜14のノニオン性界面活性剤が用いられる。好ましいノニオン性界面活性剤の代表例としては例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを挙げる事ができる。親水性界面活性剤を混合しないと、凝集剤溶解用に設置されている通常の攪拌装置では大量のママコを発生する。
【0023】
本発明に用いられる(B)成分の2官能性単量体の量、例えばN,N’-メチレンビスアクリルアミドの重合性単量体全量に対する割合は0.0001〜0.01モル%、好ましくは0.0002〜0.003モル%の範囲で共重合する事が望ましい。0.0001モル%未満では十分な網目構造が得られず優れた凝集性能が得られない。また0.01モル%を超えた量では水不溶性の重合体と成り、紙料に添加混合しても凝集しない。
【0024】
本発明に係る高分子は本質的に公知の重合法により共重合する事ができる。例えば重合性ビニル単量体と連鎖移動剤を含む水溶液と、HLBが3〜6であるノニオン性界面活性剤を含む有機分散媒とを混合し乳化させた後、ラジカル重合開始剤の存在下、温度30〜80°Cで重合させ油中水型カチオン性重合体エマルジョンを製造する方法が特開昭61-236250号公報に記載されているが、この方法を適用して単量体組成を代える事により本発明の油中水型エマルジョンを合成する事ができる。この油中水型エマルジョンに親水性界面活性剤を添加して水に混合し、水中油型エマルジョンに転相し、凝集剤として使用する。あるいはアセトン洗浄等によりポリマー以外の雑物を除去し、親水性とした後に水に希釈してもよい。希釈後の紙料への添加条件は、通常の水溶性高分子凝集剤と異なる点は無い。
【0025】
【実施例】
次に実施例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0026】
(合成例-1)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン120.0Kgおよびソルビタンモノオレート7.5Kgを仕込んだ。脱塩水165Kgおよびアクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)28.9997モル%(表1中に約29と表す)、アクリル酸(AAC)1モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)3×10-4モル%、アクリルアミド(AAM)70モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を添加し、ホモジナイザーにて攪拌乳化した。得られたエマルジョンにイソプロピルアルコール200gを加え窒素置換の後、ジメチルアゾビスイソブチレート40gを加え、温度50°Cに制御しながら重合反応を完結させ、その後ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル7.5Kgを添加混合して試験に供する試料(試料-1)(本発明の凝集剤)とした。
【0027】
(合成例-2)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)28.998モル%(表1中に約28と表す)、アクリル酸(AAC)1モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)70モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-2)(本発明の凝集剤)を作った。
【0028】
(合成例-3)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)49.9997モル%(表1中に約50と表す)、アクリル酸(AAC)10モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)3×10-4モル%、アクリルアミド(AAM)40モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-3)(本発明の凝集剤)を作った。
【0029】
(合成例-4)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)49.998モル%(表1中に約50と表す)、アクリル酸(AAC)10モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)40モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-4)(本発明の凝集剤)を作った。
【0030】
(合成例-5)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)89.9997モル%(表1中に約90と表す)、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)3×10-4モル%、アクリルアミド(AAM)10モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-5)(本発明の凝集剤)を作った。
【0031】
(合成例-6)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)89.998モル%(表1中に約90と表す)、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)10モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-6)(本発明の凝集剤)を作った。
【0032】
(合成例-7)合成例-2で得られた逆相乳化重合物をアセトンによりポリマー洗浄を行い、油分,界面活性剤および水を除去したのち、乾燥してアセトンを除去することにより試験に供する易水和性の粉末から成る試料(試料-7)(本発明の凝集剤)を得た。
【0033】
(合成例-8)合成例-4で得られた逆相乳化重合物をアセトンによりポリマー洗浄を行い、油分,界面活性剤および水を除去したのち、乾燥してアセトンを除去することにより試験に供する易水和性の粉末から成る試料(試料-8)(本発明の凝集剤)を得た。
【0034】
(合成例-9)合成例-6で得られた逆相乳化重合物をアセトンによりポリマー洗浄を行い、油分,界面活性剤および水を除去したのち、乾燥してアセトンを除去することにより試験に供する易水和性の粉末から成る試料(試料-9)(本発明の凝集剤)を得た。
【0035】
(比較合成例-1)架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド(MBAA)を添加することなくアクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)29モル%、アクリル酸(AAC)1モル%、アクリルアミド(AAM)70モル%のみの組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-10)を作った。
【0036】
(比較合成例-2)架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド(MBAA)を添加することなくアクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)50モル%、アクリル酸(AAC)10モル%、アクリルアミド(AAM)40モル%のみの組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-11)を作った。
【0037】
(比較合成例-3)架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド(MBAA)を添加することなくアクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)90モル%、アクリルアミド(AAM)10モル%のみの組成のモノマー200Kgの混合物を用いた以外は合成例-1と同様にして試験に供する試料(試料-12)を作った。
【0038】
(比較合成例-4)連鎖移動剤としてのイソプロピルアルールを添加することなく重合を行った以外は合成例-2と同様に、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)28.998モル%(表1中に約29と表す)、アクリル酸(AAC)1モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)70モル%の組成のモノマー200Kgの混合物をもちいて試験に供する試料(試料-13)を作った。
【0039】
(比較合成例-5)連鎖移動剤としてのイソプロピルアルールを添加することなく重合を行った以外は合成例-4と同様に、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)49.998モル%(表1中に約50と表す)、アクリル酸(AAC)10モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)40モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いて試験に供する試料(試料-14)を作った。
【0040】
(比較合成例-6)連鎖移動剤としてのイソプロピルアルールを添加することなく重合を行った以外は合成例-6と同様に、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)89.998モル%(表1中に約90と表す)、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)10モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いて試験に供する試料(試料-15)を作った。
【0041】
(比較合成例-7)連鎖移動剤の共存下、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)28.998モル%(表1中に約29と表す)、アクリル酸(AAC)1モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)70モル%の組成のモノマー200Kgの混合物をもちいて合成例2におけると同様の逆相乳化重合物を合成し、転相剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを重合物に後添加することなく、試験に供する試料(試料-16)を作った。
【0042】
(比較合成例-8)連鎖移動剤の共存下、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)49.998モル%(表1中に約50と表す)、アクリル酸(AAC)10モル%、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)40モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いて合成例4におけると同様の逆相乳化重合物を合成し、転相剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを重合物に後添加することなく、試験に供する試料(試料-17)を作った。
【0043】
(比較合成例-9)連鎖移動剤の共存下、アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(AMC)89.998モル%(表1中に約90と表す)、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)2×10-3モル%、アクリルアミド(AAM)40モル%の組成のモノマー200Kgの混合物を用いて合成例6におけると同様の逆相乳化重合物を合成し、転相剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを重合物に後添加することなく、試験に供する試料(試料-18)を作った。以上まとめて表1に記載する。
【0044】
【表1】

【0045】
(観察結果-1)試料-1〜試料-9を水道水にて実機スクリュウ式攪拌装置(300rpm)により攪拌下ポリマー濃度0.2重量%になるように希釈し、1時間経過し増粘した液を採取し、顕微鏡にて観察したところ、全て一面に粒径30μm以下(約3μm)の粒子が観察され、該希釈液をガラス板に塗布して105°Cにて加熱乾燥したところ連続状の乾燥膜を形成した。また、この希釈液をコロイド適定によりイオン当量値を測定したところ、全て理論値の85%以上のイオン当量値であった。
【0046】
(観察結果-2)観察結果-1と同様にエマルジョン状態の試料-10〜試料-12を水道水にて実機攪拌装置により攪拌下ポリマー濃度0.2重量%になるように希釈し1時間経過し増粘した液を採取し、顕微鏡にて観察したところ、全て均一溶液であり粒子は観察されなかった。該希釈液をガラス板に塗布して105°Cにて加熱乾燥したところ連続状の乾燥膜を形成した。また、この希釈液をコロイド適定によりイオン当量値を測定したところ、全て理論値の100%のイオン当量値であった。
【0047】
(観察結果-3)観察結果-1と同様にエマルジョン状態の試料-13〜試料-15を水道水にて実機攪拌装置により攪拌下ポリマー濃度0.2重量%になるように希釈し1時間経過し増粘した液を採取し、顕微鏡にて観察したところ、すべて一面に粒径30μm以下(約3μm)の粒子が観察され、該希釈液をガラス板に塗布して105°Cにて加熱乾燥したところ粒状の不連続乾燥膜を形成した。また、この希釈液をコロイド適定によりイオン当量値を測定したところ、全て理論値の60%以下のイオン当量値であった。以上観察結果-1〜3にて調製した水希釈液を効果試験の実施例にて使用した。
【0048】
(観察結果-4)観察結果-1と同様にエマルジョン状態の試料-16〜試料-18を水道水にて実機攪拌装置により攪拌下ポリマー濃度0.2重量%になるように希釈した結果、エマルジョンは水中に分散せず、ゲル状の塊が浮遊し、均一なポリマー希釈液は得られなかった。これに対しビーカースケールでマグネティックスターラーにより強攪拌をした場合はエマルジョンは水中に分散し、ゲル状の塊が浮遊することなく、均一なポリマー希釈液が得られた。溶解性不良の為に試料-13〜試料-15の効果試験は実施しなかった。
【0049】
(実施例ー1)ブリット式ダイナミックジャーテスターにより填料歩留り及び総歩留りを測定した結果を表2に記載する。試験に供した紙料はタルク900ppm、カオリン500ppm、パルプ4000ppm、PH6.0、CSF300mlの中質紙である。手順は、紙料500mlをブリット式ダイナミックジャーテスターに投入し、1500rpmで攪拌を開始しポリマー0.2重量%水希釈液を添加し30秒後、白水採取用のコックを開き、150meshのワイヤーを通過した白水を流出させる。初期10秒間の白水を捨て、その後30秒間の白水を採取し測定に供し、総歩留りおよび600°Cにて灰化し填料歩留りを求めた。薬品添加量は対紙量固形分あたりの添加量である。
【0050】
【表2】

【0051】
(実施例-2)長網オントップ式抄紙機により、紙料PH8.1〜8.3の条件で紙中灰分20%、坪量84.0g/m2の上質紙を抄紙した。填料組成は軽質炭酸カルシュウム80%タルク20%である。種箱にカチオン澱粉(コーンスターチ原料カチオン化率3モル%)を対パルプ5000ppm添加し、セントリスクリーン入口直前に各試料をポリマー濃度0.15%水希釈液として添加し、フローボックスと白水ピットのSSと灰分から総歩留りと填料歩留りを求めた。結果を表3に示す。薬品添加量は対紙量固形分あたりの添加量である。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
(実施例-3)ジュートライナーの抄紙試験を行うにあたり、PH5.8〜6.0の紙料を長網オントップフォーマーにて、無薬注時を100とした時の生産性の比較指数としての各試料添加条件での抄紙速度を表4に示す。使用ポリマーは表-4記載の各試料をポリマー濃度0.15%水希釈液にてセントリスクリーン直前に添加した、結果を表4に示す。薬品添加量は対紙量固形分あたりの添加量である。
【0055】
【発明の効果】
本発明の抄紙方法により、製紙工程においてセルロース繊維および填料の歩留りを向上させることができ、抄紙速度の向上作用も認められる。これに対し、架橋剤または連鎖移動剤を添加しない場合は抄紙用薬剤の性能が劣り、易水和性にしない場合は溶解性不良で使用に耐えない。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-04-13 
結審通知日 2006-04-18 
審決日 2006-05-02 
出願番号 特願平9-113638
審決分類 P 1 41・ 83- Y (D21H)
最終処分 成立  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 野村 康秀
鴨野 研一
登録日 2004-11-12 
登録番号 特許第3614609号(P3614609)
発明の名称 製紙用薬剤、抄紙方法および製紙用薬剤の製造方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 田中 克郎  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大賀 眞司  
代理人 大賀 眞司  

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