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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1138329
審判番号 不服2000-15097  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-21 
確定日 2006-06-15 
事件の表示 平成10年特許願第355746号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月27日出願公開、特開2000-176108〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成10年12月15日に出願され、平成12年8月15日付で拒絶の査定がなされ、これに対して拒絶査定不服の審判が請求されたものであって、平成16年11月2日付の当審の拒絶理由通知に対して、平成17年1月7日に手続補正書が提出されたものである。


第二.本願発明
本願発明は、平成17年1月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認めるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という)は以下のとおりである。
「遊技盤(4)の遊技領域(12)内に、第1図柄始動手段(14)を含む複数個の入賞手段(14)(15)(17)〜(19)と、第2図柄始動手段(16)が遊技球を検出することを条件に1又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する図柄変動表示手段(22)とを備え、前記入賞手段(14)(15)(17)〜(19)への遊技球の入賞に対して景品球を払い出す払い出し手段(34)を備え、前記図柄変動表示手段(22)の停止図柄が当たり図柄となったときに前記第1図柄始動手段を開放するようにした弾球遊技機において、
前記図柄変動表示手段(22)の停止図柄が当たり図柄の内の特定図柄となったときに前記第1図柄始動手段(14)への入賞に対する景品球数を通常の個数よりも多くし、前記図柄変動手段(22)の停止図柄が前記当たり図柄の内の前記特定図柄以外となったときに前記第1図柄始動手段(14)への入賞に対する景品球数を通常の個数へと少なくする景品球数変化手段(36)を備えたことを特徴とする弾球遊技機」


第三.特許法第36条4,5項の検討
当審で通知した拒絶理由、すなわち、図柄変動表示手段の停止図柄が特別図柄になって、景品球数を6個から15個にした場合にこの景品球数15個はいつまで継続されるのか、以下「(A)」の補正によるも依然として不明瞭である。
すなわち、
(i).当該補正「(A)」の根拠である、段落【0023】には「即ち、景品球数変化手段は、・・・停止図柄が当り図柄の内の特定の数字図柄・・・であるか否か判定する機能と、これらの特定の数字図柄のときに景品球数を例えば15個と多くし、特定図柄以外のときに6個と少なくする旨の指令を払い出し制御手段に出す機能とを備えている。」と記載されている様に「景品球数変化手段」が具備する2機能に関する説明文であり、払い出し球数の継続期間と如何に関係するのか不明瞭であるから、当該補正「(A)」と同様に払い出し球数の継続期間と如何に関係するのか不明瞭である。
(ii).仮に、当該補正「(A)」を「払い出し球数の継続期間」を示すものとすると、第1図柄始動手段は、閉状態にする条件が特定されていないから、開放状態が継続したまま第1図柄始動手段段への入賞により15個が継続排出され、図柄変動表示手段の停止図柄が当りになるまで当該継続排出が行われることとなるが、当該趣旨の記載根拠が示されておらず不明瞭である。
以上の様に、前記記載においても当該15個が何時まで継続するか不明瞭である。

(A).「前記図柄変動表示手段(22)の停止図柄が当たり図柄の内の特定図柄となったときに前記第1図柄始動手段(14)への入賞に対する景品球数を通常の個数よりも多くし、前記図柄変動手段(22)の停止図柄が前記当たり図柄の内の前記特定図柄以外となったときに前記第1図柄始動手段(14)への入賞に対する景品球数を通常の個数へと少なくする景品球数変化手段(36)を備えた」

第四.特法第29条第2項の検討
[1].当審で通知した拒絶理由に引用した刊行物、(A)特開平6-71020号公報(以下「刊行物A」という)、(E)特開平 7-155437号公報(以下「刊行物E」という)には、各々以下の事項が記載されている。
(A).刊行物A(特開平6-71020号公報)
(A-1).「【0007】また、前記組合わせ表示装置の各停止図柄が「大当り」表示のうち特定の組み合わせ図柄の場合にのみ、前記普通図柄表示装置の当り確率を、組合わせ表示装置の「大当り」表示の直前状態であるリーチ状態の発生が所定回数消化されるまで高確率に維持する制御内容を備える制御指令手段を具備したことを特徴とするものである。」
(A-2).「【0015】さらには前記センターケース4の上部には三つのLEDランプ11a,11c,11bからなる普通図柄表示装置10が配設されている。その両側のLEDランプ11a,11bは、ハズレ表示の緑色を示し、中央のLEDランプ11cは、当り表示の赤色を示す。この普通図柄表示装置10は、7セグメント指示器で構成し、例えば、奇数がでたり、又は特定の数字がでた場合にこれを当りとするようにしても良い。
【0016】その他、前記センターケース4の上部にも入賞口12が設けられる。
【0017】センターケース4の両側には、光電スイッチ、リミットスイッチ等により構成される球検知装置(図示せず)を備える普通図柄始動ゲート13,13が設けられている。この普通図柄始動ゲート13,13に、遊技球が通過して該球検知装置による球検知信号が発生すると、普通図柄表示装置10が駆動開始し、LEDランプ11a,11c,11bが順次点灯し、いずれかに停止して、当り又はハズレ表示をすることとなる。
【0018】さらに組合わせ表示装置6の直下位置には始動ゲート14が設けられ、該始動ゲート14のさらに直下部には入賞口開閉装置15を配設し、その内部を始動ゲート17とし、前記始動ゲート14と連通している。この入賞口開閉装置15はその開閉翼片対16,16の起立状態で、始動ゲート17を遮蔽する閉鎖位置と、開閉翼片対16,16が逆八形傾動して始動ゲート17へ遊技球を案内する開放位置とに電気的駆動手段を介して変換制御されるものである。この入賞口開閉装置15は、普通図柄表示装置10が当り表示されると開放駆動する。」
(A-3).「【0021】次にかかる構成の作動につき説明する。遊技盤3に遊技球が打ち出されて、普通図柄始動ゲート13,13を通過すると、普通図柄表示駆動回路を介して前記普通図柄表示装置10が駆動開始して、・・・、赤色のLEDランプ11cの位置で停止して点灯すると、これを当りとする。そしてこの当りの場合には、前記入賞口開閉装置15が開放状態となって開閉翼片対16,16が約5.8秒間開放する。尚、この当り作動は往復開閉作動としても良い。尚、普通図柄始動ゲート13,13の通過は最初の4個まで記憶されて順次実行される。」
(A-4).「【0023】前記始動ゲート14,17を遊技球が通過すると、景品球の供給と共に組合わせ表示装置6が駆動する。尚、連続的に通過した場合には、待機記録ランプ列9が順次点灯し最高四回まで保留される。」
(A-5).「【0026】また、「2,2,X」、「4,4,X」、「6,6,X」(Xは変数)などの組合わせにより、特別入賞口23を短時間、また少回数開放する小当りとするようにしてもよい。さらには上述の構成では、図柄表示部7a,7b,7cは同一数字となった場合を「大当り」としているが、例えば連続数字を大当りとするようにしても良い。」
(A-6).「【0027】次に本発明の要部について説明する。組合わせ表示装置6が大当りとなり、その特別入賞口23の開放作動が完了した後に、普通図柄表示装置10は、そのLEDランプ11cで停止する当り確率が10倍となり、入賞口開閉装置15は頻繁に開放することとなる。・・・尚、この高確率状態は、次のリーチ状態まで継続しても良い(一回で終了)し、さらには所定複数回のリーチ状態が発生するまで、継続するようにしてもよい。」
(A-7).「【0029】この普通図柄表示装置の高確率の発生は、前記図柄表示部7a,7b,7cの図柄が「3,3,3」,「7,7,7」のように特定の図柄の場合にのみ生じさせるようにしても良い。この場合に、高確率状態は「3,3,3」の当り表示の場合には、次のリーチ状態が2回発生するまで維持されるようにし、「7,7,7」の当り表示の場合には、次のリーチ状態が5回発生するまで維持されるようにする等、その表示内容により、利得の内容に変化を生じさせることもできる。」
(A-8).してみると、刊行物Aには以下に記載する発明(以下「引用発明」という)が記載されていることとなる。
「入賞口12を備えた遊技盤3に遊技球が打ち出されて、当該遊技球が始動ゲート(14)を通過した場合、景品球の供給と共に組合わせ表示装置6が駆動し、「2、2、2」、「4、4、4」等の図柄で揃って停止して大当りの場合は、特別入賞口23を所定条件で開放し、普通図柄表示装置10の当たり確率の向上を次回リーチ迄、又は1回限りとし、一方表示装置6が「2、2、X」、「4、4、X」等の図柄で停止して小当たりの場合は、特別入賞口23を所定条件で開放するパチンコ機、及び、当該遊技球が普通図柄始動ゲート13,13を通過した場合、普通図柄表示装置10が駆動して当りの場合には、前記入賞口開閉装置15が開放状態となって開閉翼片対16,16を開放し、その内部の始動ゲート17を遊技球が通過して大当り、小当たりになると、特別入賞口23が前記と同様の開放動作等を行うパチンコ機」
(E).刊行物E(特開平 7-155437号公報)
(E-1).「【0004】本発明は、このような従来技術が有する問題点に着目してなされたもので、予め設定された賞玉数を所定条件下で一定時間だけ変動させることにより、興趣に富み、遊技客の玉持ち状態を良くしたりして、遊技の面白さを増大させることができるパチンコ機を提供することを目的としている。」
(E-2).「【0022】可変表示部21の目視可能な表示状態が変化している間は、各種入賞口16,17…にパチンコ玉が入った際に遊技客に払い出される賞玉数は、制御手段の働きにより予め設定された数以外の特定賞玉数に変動する。本実施例では各種入賞口16,17…にパチンコ玉が入ったときの賞玉数が予め設定されている7個から所定時間内においてのみ特別に15個に増えるようになる。」

[2]本願発明と引用発明との対比
(1).発明特定事項の対応関係
(ア). 引用発明における、(i)「始動ゲート(17)」、(ii)「普通図柄始動ゲート(13)」、(iii)「普通図柄表示装置(10)」、(iv)「大当り、小当たり」、(v)「開閉翼片対(16)を開放」、(vi)「大当り」は、各々本願発明1における(I)「第1始動手段(14)」、(II)「第2図柄始動手段(16)」、(III)「図柄変動表示手段(22)」、(IV)「当たり」、(V)「第1図柄始動手段を開放にする」こと、(VI)「当たり図柄の内の特定図柄」に対応する。
(イ).引用発明における、「普通図柄表示装置10の当り確率が向上」することと、本願発明1における「第1図柄始動手段(14)への入賞に対する景品球数を通常の個数よりも多く」することとは、停止図柄が当たりの内の特別図柄の場合に遊技者に有利になる遊技メリットを所定期間付与する点、において共通する。
(2).一致点
遊技盤の遊技領域内に、第1図柄始動手段を含む複数個の入賞手段と、第2図柄始動手段が遊技球を検出することを条件に複数個の図柄が所定時間変動して停止する図柄変動表示手段とを備え、前記入賞手段への遊技球の入賞に対して景品球を払い出す払い出し手段を備え、前記図柄変動表示手段の停止図柄が当たり図柄となったときに前記第1図柄始動手段を開放するようにした弾球遊技機において、
停止図柄が当たりの内の特別図柄の場合に遊技者に有利になる遊技メリットを所定期間付与する弾球遊技機

[3]相違点
遊技メリットに関して、(a)複数存在する図柄変動手段の内、当該遊技メリット付与が採用されている図柄変動手段として、本願発明は、図柄始動手段を開放しない一方の図柄変動手段、すなわち、図柄変動表示手段(22)であるのに対し、引用発明は、図柄始動手段が開放される他方の図柄変動手段である点、(b)付与される遊技メリットが、本願発明1では、第1図柄始動手段への入賞景品個数が、停止図柄が当りの場合の内特定図柄の場合は通常の個数よりも多くし、当りの場合は通常の個数へと少なくしているのに対し、引用発明では特定図柄の場合は第2図柄変動表示手段の当たり確率向上し、大当り以外の場合には確率向上しない点、(c)遊技メリットを付与する所定期間に関して、本願発明は、「図柄変動手段(22)の停止図柄が前記当たり図柄の内の前記特定図柄以外となったときに前記第1図柄始動手段(14)への入賞に対する景品球数を通常の個数へと少なくする」期間であるのに対し、引用発明は、「次回リーチ迄、又は1回限り」である点

[3]相違点の検討
(1).相違点(a)について、
引用発明は、2存在する図柄変動表示手段の内の一方を遊技メリット付与図柄変動表示手段としたものが示されており、しかも、両者の図柄変動表示手段としての機能に相違は認められないから、当該他方の図柄変動表示手段を、遊技メリット付与図柄変動表示手段として選択することは当業者ならば容易に想到できることである。
(2).相違点(b)について、
遊技条件が成就したときに付与する遊技メリットとして、入賞により払出す賞球数を所定期間増加させることは前記刊行物Eに示される様に周知の事項であるから、引用発明において付与する遊技メリットとして、入賞によって払出す賞球数を所定期間増加させる遊技メリットを採用すること、及び如何なる入賞孔を対象とするか、すなわち、始動入賞孔を対象とすること等は、当業者が適宜為し得る設計的事項である。
(3).相違点(c)について、
引用発明にも「次回リーチ迄、又は1回限り」と、遊技の適宜時期迄とすることが示されているから、遊技メリットの付与期間を本願発明のようにすることは当業者が適宜為し得る設計的事項である。
(4).まとめ
してみると、停止図柄に基づいて付与する遊技メリットとして、始動入賞手段が含まれる入賞孔への入賞にて払出される賞球数を所定期間増加させるとの周知の遊技メリットを採用することは単なる設計的事項であり、当該遊技メリットを付与する図柄変動表示手段として、2存在する図柄変動表示手段の一方を選択したものが引用発明に示されているから、他方の図柄変動表示手段を遊技メリット付与する図柄変動表示手段として選択することは、当業者が前記刊行物に基づいた容易になし得る事である。
しかも、上記相違点を総合的に判断しても格別の作用効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明1は、前記刊行物Aに記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第五.むすび
以上の様に、本願発明1は、特許法第36条第4,5項の規定に反し、さらに、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-24 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-26 
出願番号 特願平10-355746
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 渡部 葉子
塩崎 進
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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