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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1138342
審判番号 不服2002-20509  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-23 
確定日 2006-06-15 
事件の表示 平成9年特許願第245008号「制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年3月30日出願公開、特開平11-86933号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理由
第1 手続の経緯
平成 9年 9月10日 特許出願
平成14年 9月19日 拒絶査定(発送:平成14年 9月24日)
平成14年10月23日 審判請求
平成14年11月21日 手続補正
平成17年12月26日 拒絶理由通知
(発送:平成18年 1月 4日)
平成18年 3月 6日 手続補正

第2 本願発明についての判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年3月6日付けの手続補正書により補正された明細書の,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「電気回路が構成された基板と,前記基板を収納するケースと,該ケースに一体化されたコネクタとを有する制御装置において,前記コネクタは,前記ケースの外側部分にピンを有し,前記コネクタの前記ケースの内側部分は,階段状に構成されており,前記ピンと電気的に接続されている電極板が前記階段状の部分に階層状に複数個設けられており,一つの前記基板と複数の前記電極板との間を結線する複数本のワイヤが,前記コネクタの長手方向に対して直角方向に交互に複数段の階層状に配置されると共に,夫々の前記ワイヤは,前記基板の平面方向から見て平行となるように交互に上下の位置関係に配列され,また,前記基板の平面方向から見て前記コネクタの長手方向に対して直角方向となるように前記基板と前記電極板を結線したことを特徴とする制御装置。」

2.引用例及びその記載事項
(1)当審の拒絶理由通知で引用された実願昭63-121923号(実開平2-42371号)のマイクロフィルム(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
ア.「第5図は従来のワイヤボンデイング法による電気配線基板の接続構造を説明するための断面図である。防水形の合成樹脂製コネクタ50はアルミニウムなどの金属ケース51に取り付けられており,コネクタピン52の一端は外部の電気回路との接続のため,コネクタから突出しており,他端はワイヤボンデイングのためのボンデイングパツド53を形成している。熱伝達係数のよいセラミツクあるいは金属製の電気配線基板54は金属製のケース51に載置され電気配線基板54上で発生する熱はケース51を介して外部に放熱される。ボンデイングパツド53と電気配線基板54の電気配線55との間の接続はアルミニウムなどの可撓性を有するワイヤ56の両端を圧着させることにより電気的接続が得られる。」(第3ページ第4-18行)
イ.「以上のように車載用電子制御装置の電気配線基板と外部の電気回路との接続は,接続部における信頼性を確保するために第5図のワイヤボンデイング法・・・(中略)・・・による接続が一般的に行われている。」(第4ページ第11-15行)
ウ.「そこで,開発段階においては汎用的なインサートタイプの防水コネクタを使用し,第7図に示す簡単な接続構造が採用される。すなわち,防水形のコネクタ70はアルミニウムなどの金属製のケース71に取り付けられており,コネクタピン72は外部の電気回路との接続を形成するためにコネクタ70から突出している。コネクタピン72の他端はワイヤハーネス73とハンダ接続が行われる。ケース71上に載置されたセラミツクあるいは金属製の電気配線基板74の電気配線75上にはワイヤハーネス73との電気的接続を形成するために,ネールヘツドピンとよばれる端子76が電気配線基板74とろう付けにより固定され,電気配線75と電気的に接続されてい
る。ワイヤハーネス73の心線と端子76とはハンダ77により電気的接続が形成される。このように第7図に示す接続構造では,コネクタピン72と電気配線75との電気的接続がワイヤハーネス73を介してハンダ付けすることにより構成されるので比較的簡単にコネクタと電気配線基板との接続が行える。」(第5ぺージ第8行-第6ページ第8行)
エ.第3図には,複数個のボンデイングパツド11a〜11dを平板状と
し,各ボンデイングパツド11a〜11dはそれぞれコネクタピン9a〜9dに接続された点が図示されている。
オ.第5図には,コネクタのケース51の外側部分にコネクタピン52を有する点,コネクタ50のケース51の内側部分にコネクタピン52と接続されたボンデイングパツド53を載置した点,及び,このボンデイングパツド53と電気配線基板54をワイヤ56を介して接続した点が記載されてい
る。
カ.第7図には,コネクタ70のケースの外側部分にコネクタピン72を有する点,及び,複数本のワイヤハーネス73が1つの前記電気配線基板74と複数の前記コネクタピンのケース内側の端部との間を結線した点がそれぞれ図示されている。

してみれば,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると云える。
「電気配線基板と,前記基板を載置したケースと,前記ケースに取り付けられたコネクタとを有する制御装置において,前記コネクタは,前記ケースの外側部分にコネクタピンを有し,前記コネクタの前記ケースの内側部分に
は,前記コネクタピンと電気的に接続されているワイヤボンデイングパツドが複数個設けられており,一つの前記電気配線基板と複数のワイヤボンデイングパツドとの間を結線する複数本のワイヤが配置される制御装置。」

(2)当審の拒絶理由通知で引用された特開平6-97218号公報(以
下,「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
ア.「【従来の技術】半導体装置が超小型化し,高集積化するにしたがい,半導体チップにおける回路配線の端子の数が増加し,チップ周縁に設けられる端子パッドは多列になるとともに,チップが接続されるパッケージの外部取出し用リードやピンの数も増加し,チップに近い側のリードであるインナーリードを多列多段に形成するパッケージ構造も知られている。チップの多列パッドとインナーリードとはワイヤボンディング(熱圧着)により接続されるが,従来はワイヤの張り方はワイヤ長をなるべく短くしてワイヤのチップへの接触を防ぐことに重点がおかれた。パッドやインナーリードが密に配置されることにより,となり合うワイヤの間隔が接近して特にコーナ部でワイヤが接近して交差することがあり,このためチップずれ,モールドによるワイヤ曲がり等によってワイヤどうしがショートする事故が生じた。」(段落【0002】)
イ.「図3は本発明の方法によるワイヤボンディング接続の形態を示す一実施例の一部平面図であり,図3はその正面断面図である。この実施例では,半導体チップ1上の2列・千鳥状に配列されたパッド2のうちの外側列のパッドと,2段に形成されたインナーリード3のうちの内側段(低い段)の対向リードとがワイヤボンディング接続され,内側列のパッドと外側段(高い段)の対向リードとがワイヤボンディング接続される。図4に示すように,となり合うワイヤどうしは上段と下段になって互いに干渉し合うことのない位置にあり,交差して接触するおそれがない。」(段落【0006】)
ウ.「図7は半導体チップにおけるパッドは3列千鳥状配列をもち,一方,パッケージは3段のインナーリードを有する半導体装置に本発明を適用した場合の実施例の一部平面図であり,図8はその正面断面図である。この実施例ではチップにおける最外側列のパッドと最も低い段のインナーリードとがワイヤボンディング接続され,同様に中列のパッドと中段のインナーリー
ド,最内側列のパッドと最も高い段のインナーリードとが互いに接続されることにより,となり合うワイヤの高さがそれぞれ異なって互いに交差接触することからまぬがれる。」(段落【0008】)
エ.【図3】ないし【図8】には,半導体装置において,PGA型パッケージ4が階段状に構成されており,半導体チップ1の配線端子(パッド)2と接続されているインナーリード3が前記階段状の部分に階層状に複数個設けられており,一つの前記半導体チップ1と複数の前記インナーリード3との間を結線するボンディングワイヤ5が前記半導体装置の断面図(【図4】,【図8】)において上下方向に交互に複数段の階層状に配置されると共に,夫々の前記ボンディングワイヤ5は前記断面図において略平行となるように交互に上下の位置関係に配列され,また,前記断面図において左右方向となるように前記半導体チップ1と前記インナーリード3を結線した半導体装置が図示されている。

してみれば,引用例2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると云える。
「半導体チップの回路配線の配線端子(パッド)2とパッケージ4のインナーリード3をボンディングワイヤ5で接続する構造において,パッケージ4の半導体チップ1に対向する部分を階段状に構成し,インナーリード3を前記階段状の部分に階層状に複数個設け,前記配線端子(パッド)2を千鳥状に配列し,前記配線端子(パッド)2のうちの外側列の配線端子(パッド)とインナーリード3のうちの内側段(低い段)の対向リードをボンディングワイヤで接続し,内側列の配線端子(パッド)と外側段(高い段)の対向リードをボンディングワイヤで接続し,これら複数本のボンディングワイヤが外側段(高い段)の対向リードの並ぶ方向と直角の方向に交互に複数段の階層状に配列されるとともに,それぞれのボンディングワイヤは,互いに略平行となりかつ交互に上下の位置関係に配列され,また,外側段(高い段)の対向リードの並ぶ方向と直角の方向に前記内側列の配線端子(パッド)と外側段(高い段)の対向リード,前記外側列の配線端子(パッド)と内側段(低い段)の対向リードをそれぞれ結線した半導体装置。」

(3)当審の拒絶理由通知で引用された特開平4-354356号公報(以下,「引用例3」という。)には,次の事項が記載されている。
ア.「一方,枠体10には一方の側でコネクタケース14が形成されてお
り,そのコネクタケース14の内部にはリードピン60(第1のリードピ
ン),リードピン61(第2のリードピン)が突出している。リードピン60は図7に示す櫛型に多数のリードが形成された金属板を図8に示すように折り曲げ加工されて,枠体10の内部にインサート成形により埋め込まれている。そして,図1に示すように,リードピン60の一方の端部に形成されたピン60aはコネクタケース14の内部空間に突出し,他方の端部に形成されたボンディング部60bは第2の段付部22の水平面22h上に露出状態で設置されている。このボンディング部60bは第1の回路基板50における配線パターンのボンディング部81とワイヤボンディングにより電気的に接続される。」(段落【0014】)
イ.「又,リードピン61もリードピン60と同様に,図9に示す金属板が図10に示す形状に折り曲げ加工されて,枠体10の内部にインサート成形されて埋設されている。そして,リードピン61の一方の端部に形成されたピン61aはコネクタケース14の内部空間に突出し,他方の端部に形成されたボンディング部61bは第4の段付部24の水平面24h上に露出状態で設置されている。そして,第2の回路基板52上の配線パターンのボンディング部82とそのリードピン61のボンディング部61bとがワイヤボンディングにより電気的に接続されている。尚,リードピン60,61において,各リードを共通に保持するフレーム部60c,61cは,それぞれ,樹脂成形後にカッターで切断され,各リードは電気的に絶縁される。」(段落【0015】)
ウ.【図5】には,枠体10とコネクタケース14が一体化されている点が図示されている。

3.対比
本願発明と引用発明1を対比するに,その機能及び作用から見て,後者の「電気配線基板」は前者の「電気回路が構成された基板」に相当し,以下同様に,後者の「基板を載置したケース」は「基板を収納するケース」に,後者の「コネクタピン」は前者の「ピン」にそれぞれ相当する。
また,引用発明1の「ワイヤボンデイングパツド」は,上記記載事項「第2 2.(1)エ.」によれば平板状の形状であり,また電気的に接続されるものであることから,本願発明の「電極板」に相当する。
さらに,引用発明の「前記コネクタの前記ケースの内側部分には,前記コネクタピンと電気的に接続されているワイヤボンデイングパツドが複数個設けられており」と本願発明の「前記コネクタの前記ケースの内側部分は,階段状に構成されており,前記ピンと電気的に接続されている電極板が前記階段状の部分に階層状に複数個設けられており」とは,前記コネクタの前記ケースの内側部分には,前記ピンと電気的に接続されている電極板が複数個設けられている限りにおいて一致する。

してみれば,本願発明と引用発明1とは,
「電気回路が構成された基板と,前記基板を収納するケースと,コネクタとを有する制御装置において,前記コネクタは,前記ケースの外側部分にピンを有し,前記コネクタの前記ケースの内側部分には,前記ピンと電気的に接続されている電極板が複数個設けられており,一つの前記基板と複数の前記電極板との間を結線する複数本のワイヤが配置された制御装置」である点で一致し,次の点で相違する。

(1)相違点1
コネクタについて,本願発明においては「該ケースに一体化され」るのに対し,引用発明においてはそのような構成ではない点。

(2)相違点2
本願発明においては,コネクタのケースの内側部分が「階段状に構成」され,電極板が「前記階段状の部分に階層状に複数個設け」られ,「一つの前記基板と複数の前記電極板との間を結線する複数本のワイヤが,前記コネクタの長手方向に対して直角方向に交互に複数段の階層状に配置されると共
に,夫々の前記ワイヤは,前記基板の平面方向から見て平行となるように交互に上下の位置関係に配列され,また,前記基板の平面方向から見て前記コネクタの長手方向に対して直角方向となるように前記基板と前記電極板を結線した」のに対して,引用発明1においてはそのような構成ではない点。

4.判断
(1)相違点1について
上記「第2 2(3)」にもあるように,コネクタを備えた制御装置において,装置の枠体とコネクタ部分とを一体化することは,従来周知の事項であるので,引用発明1のコネクタを前記ケースに一体化されるよう構成することは,当業者が容易になし得るものである。
よって,引用発明1及び従来周知の事項に基づき,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
相違点2に係る本願発明の発明特定事項である,コネクタのケースの内側部分が「階段状に構成」され,電極板が「前記階段状の部分に階層状に複数個設け」られ,「一つの前記基板と複数の前記電極板との間を結線する複数本のワイヤが,前記コネクタの長手方向に対して直角方向に交互に複数段の階層状に配置されると共に,夫々の前記ワイヤは,前記基板の平面方向から見て平行となるように交互に上下の位置関係に配列され,また,前記基板の平面方向から見て前記コネクタの長手方向に対して直角方向となるように前記基板と前記電極板を結線した」は,段落【0004】,段落【0009】及び段落【0011】の記載事項,図1及び図2に図示された事項を参酌すれば,コネクタのケースの内側部分が「階段状に構成」され,電極板が「前記階段状の部分に階層状に複数個設け」られ,「基板に設けられたランド7a,7bを千鳥状に配列し,前記ランド7a,7bのうちの内側列のランド7aと外側段(高い段)の電極板6aをワイヤ5aで接続し,外側列のランド7bと内側段(低い段)の電極板6bをワイヤ5bで接続し,これら複数本のワイヤ5a,5bが外側段(高い段)の電極板6aの並ぶ方向と直角の方向に交互に複数段の階層状に配置されるとともに,それぞれのワイヤ5
a,5bは,互いに平行となりかつ交互に上下の位置関係に配列され,ま
た,外側段(高い段)の電極板6aの並ぶ方向と直角の方向に前記ランド7aと前記電極板6a,前記ランド7bと前記電極板6bをそれぞれ結線し
た」ことを下位概念の技術的思想として包含する。

ところで,電気・電子回路のワイヤ接続構造(ボンディング)において,ワイヤ同士の接近による干渉や接触によるショートを回避することは当然考慮すべき技術的課題である。
してみれば,引用発明1に,回路配線の隣合うワイヤ同士が干渉せず,交叉して接触するおそれがないようにすることを技術的課題とする(「第2 2.(2)ア.」及び「第2 2.(2)イ.」を参照。)引用発明2のワイヤ接続構造を適用することは当業者であれば容易に考えつくことであり,引用発明1において,コネクタのケースの内側部分を階段状に構成し,ワイヤボンデイングパツドを前記階段状の部分に階層状に複数個設け,電気配線基板の端子を千鳥状に配列し,前記配線端子のうちの外側列の端子と低い段のワイヤボンデイングパツドをワイヤで接続し,内側列の端子と高い段のワイヤボンデイングパツドをワイヤで接続し,これら複数本のワイヤが高い段のワイヤボンデイングパツドの並ぶ方向と直角の方向に交互に複数段の階層状に配列されるとともに,それぞれのワイヤは,互いに略平行となりかつ交互に上下の位置関係に配列され,また,高い段のワイヤボンデイングパツドの並ぶ方向と直角の方向に前記内側列の端子と高い段のワイヤボンデイングパツド,前記外側列の端子と低い段のワイヤボンデイングパツドをそれぞれ結線するよう構成することは,当業者が容易に想到し得るものである。
なお,「略平行」を「平行」とする程度のことは設計事項に過ぎない。

よって,引用発明1及び引用発明2に基づいて,上記相違点2に係る本願発明の下位概念の技術的思想が当業者が容易に想到し得るものであり,そうである以上,上記相違点2に係る本願発明の構成も当業者が容易に想到し得るものである。

また,上記相違点1及び2によって,本願発明が奏する作用,効果も,引用発明1,2及び従来周知の事項から予測される範囲のものであって,格別なものとは認められない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1,2及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-07 
結審通知日 2006-04-11 
審決日 2006-04-26 
出願番号 特願平9-245008
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 芦原 康裕
柳 五三
発明の名称 制御装置  
代理人 作田 康夫  
代理人 作田 康夫  

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