• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05F
管理番号 1138442
審判番号 不服2003-14416  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-25 
確定日 2006-06-16 
事件の表示 平成 7年特許願第 31057号「基体支持部材、これを有する基体搬送装置、及びこれらを用いた基体支持方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月 3日出願公開、特開平8-227798号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年2月20日の出願であって、平成15年6月20日付け(発送日:平成15年6月25日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成15年7月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本件発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「電子素子若しくは電気回路、又は、記録膜が配設される基体が、前記基体以外の物体と接触しないように保持する基体支持部材において、前記基体が有する導電部分の一部に接した又は近接した一端と、電気的にアースに設置された他端とを有し、かつ、前記一端と前記他端が電荷の中和作用の速度を調整する機能を有しかつ抵抗値の調整可能な抵抗体を介して接続された導電性材料からなる基体支持部材であって、前記一端が、前記基体の端部の裏面に接しかつ前記基体の端部の側面または表面に接する又は近接する形状を有することを特徴とする基体支持部材。」と補正された(下線は補正箇所)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「基体支持部材」の構成について、「前記一端が、前記基体の端部の裏面に接しかつ前記基体の端部の側面または表面に接する又は近接する形状を有する」という限定を付加したものであるから、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-243364号公報(以下、「引用例」という。)には、図1と共に、以下の記載がされている。
(a)「【0010】・・・従来の技術においては、ウェハの金属汚染対策とウェハの帯電によるトラブルの防止とが両立できず、特に大口径化・微細化が要求される近年においては、ウェハの帯電防止が重要な課題となっている。
【0011】そこで、本発明の目的は、帯電したウェハの除電を可能とし、ウェハの搬送トラブル、ウェハへの塵埃付着およびウェハ上の素子破壊を防止することができる半導体ウェハの除電方法およびそれを用いた半導体集積回路製造装置を提供することにある。」(第2ページ段落0010〜0011)

(b)「【0014】すなわち、本発明の半導体ウェハの除電方法は、半導体ウェハを所定値の抵抗または所定の抵抗値を有した材料を介して接地するものである。」(第2ページ段落0014)

(c)「【0021】本実施例のレジスト塗布装置は、たとえばレジスト塗布前のベーク処理を行うベークユニットなどから構成され、このベークユニットは、上下動して半導体ウェハ1を所定の温度で加熱するヒータステージ2と、このヒータステージ2を貫通して半導体ウェハ1を3点支持するウェハ支持ピン3と、ウェハ支持ピン3を垂直に保持する支持ピン台4などから構成されている。
【0022】そして、ウェハ支持ピン3が所定値、たとえば104 〜108 Ωの抵抗5を介して接地され、たとえば半導体ウェハ1が前の処理工程において多量の電荷が蓄積されて帯電した場合に、帯電している半導体ウェハ1からウェハ支持ピン3および抵抗5を介して除電されるようになっている。」(第2〜3ページ、段落0021〜0022)

(d)「【0030】たとえば、本実施例のレジスト塗布装置については、104 〜108 Ωの抵抗5を介して接地する場合について説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、104 〜108 Ωの抵抗5に代えて、カーボンが含有されたプラスチックなどの樹脂材料による104 〜108 Ω程度の静電気拡散性材料など、所定の抵抗値を有する材料を介して接地する場合などについても広く適用可能である。
【0031】また、109 〜1014Ωの抵抗、または109 〜1014Ω程度のいわゆる静電気防止材料を用いる場合には、前記に比べて帯電防止効果は小さいものの、半導体ウェハへの帯電量を少なくすることは可能である。」(第3ページ、段落0030〜0031)

上記引用例に記載された事項(a)ないし(d)を総合すると、引用例には以下の発明が記載されていると認められる。
「半導体ウェハ1を3点支持するウェハ支持ピン3と、
ウェハ支持ピン3を垂直に保持する支持ピン台4とを備え、
ウェハ支持ピン3が所定値、たとえば104 〜108 Ωの抵抗5を介して接地され、
半導体ウェハ1が多量の電荷が蓄積されて帯電した場合に、帯電している半導体ウェハ1からウェハ支持ピン3および抵抗5を介して除電される、
半導体集積回路製造装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「半導体ウェハ1」は、上記記載事項(a)から、その上に素子を備えているものを含むことは明らかであるから、その技術的意義からみて、本件補正発明の「電子素子若しくは電気回路、又は、記録膜が配設される基体」に相当し、前者の「ウェハ支持ピン3」は、半導体ウェハ1(基体)を支持する部材であるから、後者の「基体支持部材」に相当するといえる。
そして、上記ウェハ支持ピン3は、上記記載事項(c)に記載されるとおり、半導体ウェハ1を支持するとともに、帯電している半導体ウェハ1から除電するという機能を有するのであるから、「基体が、前記基体以外の物体と接触しないように保持する」ものであることは明白である。
更に、両者とも、基体支持部材は電気的にアースに設置されている点、基体支持部材の一端で基体を支持している点、及び、その基体を支持している基体支持部材の一端からアース地点との間に電気抵抗を備える点で共通している。

そうすると、両者は、
「電子素子若しくは電気回路、又は、記録膜が配設される基体が、前記基体以外の物体と接触しないように保持する基体支持部材において、前記基体支持部材が、電気的にアースに設置され、前記基体の一部に接した又は近接した基体支持部材の一端とアース地点との間に電気抵抗が介されている、基体支持部材。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「基体支持部材の一端」の基体に対する配置に関し、本件補正発明は、「基体が有する導電部分の一部に接した又は近接した」ものであるのに対し、引用発明では単に基体を3点支持すると記載されているのみであって、基体が有する導電部分の一部に接した又は近接しているか否か不明である点。

(相違点2)
基体支持部材と電気抵抗の関連構成について、本件補正発明は「一端と、電気的にアースに設置された他端とを有し、かつ、前記一端と前記他端が電荷の中和作用の速度を調整する機能を有しかつ抵抗値の調整可能な抵抗体を介して接続された導電性材料からなる基体支持部材」であるのに対し、引用発明では「ウェハ支持ピン3が所定値、たとえば104 〜108 Ωの抵抗5を介して接地され」ている点。

(相違点3)
「基体支持部材の一端」の形状に関し、本件補正発明は、「前記基体の端部の裏面に接しかつ前記基体の端部の側面または表面に接する又は近接する形状を有する」のに対し、引用発明ではそのような形状になっていない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明のウェハ(基体)が、素子、即ち導電部分を有するものであることは上記記載事項(a)から明白であるところ、導電部分を有する基体を支持するための、基体支持部材の一端を、基体が有する導電部分の一部に接した又は近接して配置することは、例えば特開平2-125607号公報等に記載の如く周知の技術手段(以下、「周知の技術手段1」という。)である。そして、引用発明の、帯電したウェハの除電を可能とし、ウェハの搬送トラブル、ウェハへの塵埃付着およびウェハ上の素子破壊を防止することができる(同記載事項(a))という目的作用に照らせば、基体支持部材の一端を、基体が有する導電部分の一部に接した又は近接した配置とすることは、当業者が適宜選択し得た事項にすぎない。

(相違点2について)
引用発明において、「ウェハ支持ピン3が所定値、たとえば104 〜108 Ωの抵抗5を介して接地され」た点の技術的意義について検討すると、引用例の記載事項(a)の、「ウェハ上の素子破壊を防止する」という発明が解決しようとする課題や、同記載事項(d)における抵抗5に代えて採用する「静電気拡散性材料」や「静電気防止材料」が、一般的には、導体に比較して静電気の消散速度を低下させる材料を意味する点、更には、特開平5-211227号公報等にも記載されるように、半導体集積回路等の電子部品を支持するための支持部材自体に電気的抵抗を付加し、静電気の短時間での放電、即ち急速な放電を抑制しつつ除電することは周知の技術手段(以下、「周知の技術手段2」という。)であることを総合すれば、引用発明の抵抗5も、静電気の消散速度を低減させる、即ち電荷の中和作用の速度を調整して、ウェハ上の素子破壊を防止するものであることは明白である。
そして、この中和作用の速度を調整するのは、結局、ウェハから接地箇所までの抵抗によるものであるから、この抵抗は、ウェハ支持ピン3(基体支持部材)のウェハ側の端部と接地箇所との間にあればよいのであって、上記周知の技術手段2も踏まえれば、基体支持部材の一端と、アースに設置された他端を導電性材料にて構成することや、抵抗を配置する場所として、上記基体支持部材の一端と、上記アースに設置された他端との間を選択することは、格別創作能力を要することとは認められない。

そうすると、引用発明の、「ウェハ支持ピン3が所定値、たとえば104 〜108 Ωの抵抗5を介して接地され」ている構成を、「一端と、電気的にアースに設置された他端とを有し、かつ、前記一端と前記他端が抵抗体を介して接続された導電性材料からなる基体支持部材」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

なお、本件補正発明の「抵抗値の調整可能な抵抗体」とは、本願の明細書及び図面を参酌すると、抵抗が可変抵抗器のような抵抗体であることを意味するのではなく、単に抵抗体を抵抗値の異なるものに変更できるということを意味しているものと認められるところ、上記記載事項(c)及び(d)には、抵抗の抵抗値を所定の範囲とすればよいことが記載されている。したがって、抵抗体を「抵抗値の調整可能な抵抗体」とした点は、当業者による設計的事項にすぎない。
以上のことから、本件補正発明の上記相違点2に係る構成は、引用発明及び上記周知の技術手段2から、当業者が容易になし得たものである。

(相違点3について)
「基体支持部材の一端」の形状は、基体の形状や基体上の電気回路の配置・構成等に合わせて、基体を適確に保持しつつ除電できるように、適宜調整すべきものであって、「前記基体の端部の裏面に接しかつ前記基体の端部の側面または表面に接する又は近接する形状を有する」形状自体も周知(例えば特開昭63-133644号公報等参照)のものである。したがって、本件補正発明の上記相違点3に係る構成は、当業者による設計的事項にすぎない。

上記相違点1ないし3の点を総合して判断しても、本件補正発明が当業者が予測できない格別の効果を奏するものとは認められない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術手段1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年8月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「電子素子若しくは電気回路、又は、記録膜が配設される基体が、前記
基体以外の物体と接触しないように保持する基体支持部材において、前記基体が有する導電部分の一部に接した又は近接した一端と、電気的にアースに設置された他端とを有し、かつ、前記一端と前記他端が電荷の中和作用の速度を調整する機能を有しかつ抵抗値の調整可能な抵抗体を介して接続された導電性材料からなることを特徴とする基体支持部材。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明は、上記2.で検討した本件補正発明の発明を特定するために必要な事項である「基体支持部材」について、「前記一端が、前記基体の端部の裏面に接しかつ前記基体の端部の側面または表面に接する又は近接する形状を有する」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明、及び周知の技術手段1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術手段1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-06 
結審通知日 2006-04-12 
審決日 2006-04-26 
出願番号 特願平7-31057
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05F)
P 1 8・ 121- Z (H05F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 稲村 正義
柳 五三
発明の名称 基体支持部材、これを有する基体搬送装置、及びこれらを用いた基体支持方法  
代理人 福森 久夫  
代理人 福森 久夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ