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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1138443
審判番号 不服2003-14913  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-09-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-01 
確定日 2006-06-16 
事件の表示 平成10年特許願第371751号「建造物形状地図表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月17日出願公開、特開平11-249557〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成8年10月30日に出願された特願平8-288013号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成15年6月26日付けで平成14年8月26日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年8月1日付けで本件審判請求がされるとともに、同月29日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年8月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的
本件補正は、「建造物に属する情報」について、補正前請求項1記載の「高さ情報を含む建造物に属する情報」を「種別、詳細情報、高さ情報を含む建造物に属する情報」と限定し、表示態様決定テーブルを参照するに当たり「前記種別、詳細情報、高さ情報に対して優先順位を設定し、前記優先順位にしたがって前記表示態様決定テーブルを参照」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「種別、詳細情報、高さ情報を含む建造物に属する情報を有する建造物形状地図のデータ及び前記建造物に属する情報に対応して表示態様が設定されている表示態様決定テーブルを記憶する記憶手段と、
地図を表示する表示手段と、
前記種別、詳細情報、高さ情報に対して優先順位を設定し、前記優先順位にしたがって前記表示態様決定テーブルを参照し、当該建造物の表示態様を決定して建造物形状地図を前記表示手段に表示する表示制御手段と
を備えたことを特徴とする建造物形状地図表示装置。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平4-268593号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜キの記載が図示とともにある。
ア.「地図データベースに格納された建屋データの属性情報を表示するための建屋属性情報表示システムにおいて、上記地図データベースより読み出される建屋データについて属性情報および属性情報に対応する色をそれぞれ指定する指定手段と、この指定手段で指定された属性情報および該属性情報に対応する色情報が付加された2次元建屋図形および3次元建屋図形を生成する図形生成手段と、この図形生成手段で生成された2次元建屋図形および3次元建屋図形を上記色情報に基づいて色分けするとともにこれらを同時に表示可能にする表示手段とを具備したことを特徴とする建屋属性情報表示システム。」(【請求項1】)
イ.「本発明は,都市計画支援などの地図利用情報管理システムに用いられる地図データベースに格納された建屋の属性情報(高さ、用途、構造など)をわかりやすく表示するための建屋属性情報表示システムに関するものである。」(段落【0001】)
ウ.「各建屋データについて用途種別,構造種別,階数区別などの属性情報を指定する。ここでは、図3に示すように用途種別,構造種別,階数区別の各属性情報メニューから検索したいものを選択するようになる。」(段落【0017】)
エ.「各建屋について、属性に対応した色を指定する。ここでの色指定の方法は、図4(a)(b)(c)に示す用途種別21、構造種別22、階数区別23の各種別について、それぞれの項目毎に同図(d)に示すカラーテーブルをピックして色指定を行う。ここでは、用途種別21の場合、官公庁、供給処理施設、運輸施設、通信施設、教育施設、研究施設、文化施設、医療施設などで色分けを行い、構造種別22の場合、耐火造、簡易耐火構造、防水造、木造などで色分けを行い、階数区別23の場合、1階、2階などの階数で色分けを行うようになる。」(段落【0018】)
オ.「各建屋データには、属性情報および該属性情報に対応する色情報が付加され主記憶装置2にロードされる。」(段落【0019】)
カ.「処理プロセッサ1の動作により属性情報および該属性情報に対応する色情報が付加された2次元建屋図形が生成され、これら属性別に色分けされた2次元建屋図形は、メモリコントローラ5により画像メモリ6に描画される。」(段落【0020】)
キ.「図13に示すように、異なる属性情報の2次元建屋図形を複数個同時に表示するようにもできる。」(段落【0042】)

また、本願出願前に頒布された特開昭62-156693号公報(以下「引用例2」という。)には、次のク〜サの記載が図示とともにある。
ク.「本発明更に別の目的は、テキストの文字と関連するモノクローム属性を用いてテキストの文字および単語をカラーで高輝度表示させることにある。」(4頁左下欄末行〜右下欄3行)
ケ.「本発明の更に別の目的は、・・・各モノクローム属性毎に1つのカラーおよび1つのカラー属性を割当てるため、モノクローム属性がオペレータにより割当てられることにある。本発明の更に他の目的は、モノクロームの属性がカラー・ビデオ・ディスプレイを制御するため予め定めたカラー属性を選択する変換表を生成することにある。」(4頁右下欄4〜11行)
コ.「第3図は、モノクロームの属性を割当てるためのビデオ・スクリーン上に表示されたメニューを示している。キーボード4-6上の制御キーにより、オペレータはテキストに対して7つのカラーの1つ、状態の情報に対して7つのカラーの1つ、およびエラー情報に対しては7つのカラーの1つのカラーを選択することができる。」(7頁右上欄7〜13行)
サ.「優先順位においては、テキストは最下位の優先順位を有し、その後にアンダーライン、逆、点滅および最上位の優先順位を有する陰の属性が続く。」(7頁左下欄12〜15行)

4.引用例記載の発明の認定
記載ア〜キを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「地図データベースに格納された建屋データの属性情報を表示するための建屋属性情報表示システムにおいて、
前記建屋データの属性情報には、用途種別、構造種別及び階数区別が含まれ、
各建屋データについて用途種別、構造種別及び階数区別の属性情報を指定する手段、指定された属性の各項目毎に、別途記憶されたカラーテーブルをピックして色指定を行う指定手段、この指定手段で指定された属性情報及び該属性情報に対応する色情報が付加された2次元建屋図形を生成する図形生成手段と、この図形生成手段で生成されたを上記色情報に基づいて色分け表示する表示手段とを具備した建屋属性情報表示システム。」(以下「引用発明1」という。)

また、記載ク〜サを含む引用例2の全記載及び図示によれば、引用例2には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「テキストの文字と関連するモノクローム属性を用いてテキストの文字及び単語をカラーで表示させる装置であって、
モノクローム属性には複数の属性があり、複数の属性には優先順位が設定されており、
モノクローム属性に対してカラー属性を選択するための変換表が生成されており、
前記優先順位及び前記変換表に従って、文字又は単語のモノクローム属性に対応するカラー属性を選択して文字及び単語を表示させる装置。」(以下「引用発明2」という。)

5.補正発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「建屋」、「用途種別」及び「階数区別」は、補正発明の「建造物」、「種別」及び「高さ情報」にそれぞれ相当する。補正発明の「詳細情報」について【請求項1】には特段限定されていないから、別途限定されている「種別」及び「高さ情報」を除いた「建造物に属する情報」であることが把握できるだけである。他方、引用発明1の「構造種別」は、「用途種別」及び「階数区別」を除いた「建屋データの属性情報」であるから、補正発明の「詳細情報」と異ならない。
引用発明1において「カラーテーブルをピックして色指定を行う」ことと、補正発明において「建造物の表示態様を決定」することに相違はなく、引用発明1は「前記種別、詳細情報、高さ情報に対して当該建造物の表示態様を決定して建造物形状地図を前記表示手段に表示する表示制御手段」を備えるものと認める。
引用発明1は「地図データベース」を有しており、「建屋属性情報表示システム」と称されてはいるが、「地図を表示する表示手段」を有する「建造物形状地図表示装置」であるといえる。
したがって、補正発明と引用発明1とは、
「種別、詳細情報、高さ情報を含む建造物に属する情報を有する建造物形状地図のデータを記憶する記憶手段と、
地図を表示する表示手段と、
前記種別、詳細情報、高さ情報に対して当該建造物の表示態様を決定して建造物形状地図を前記表示手段に表示する表示制御手段と
を備えた建造物形状地図表示装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉補正発明の「記憶手段」が「建造物に属する情報に対応して表示態様が設定されている表示態様決定テーブル」を記憶し、「前記種別、詳細情報、高さ情報に対して優先順位を設定し、前記優先順位にしたがって前記表示態様決定テーブルを参照」することにより当該建造物の表示態様を決定するのに対し、引用発明1が「属性情報を指定する手段」及び「指定された属性の各項目毎に、別途記憶されたカラーテーブルをピックして色指定を行う指定手段」を有する点。

6.相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断その1
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
まず、「建造物に属する情報に対応して表示態様が設定されている表示態様決定テーブル」及び「表示態様決定テーブルを参照」することについて検討する。引用発明1では、属性に対応した色を指定する(記載エ)のであるが、各項目と色の対応関係が固定されていなければ、色分け表示の際に、どの色がどの項目を意味するのか分かりにくいから、固定関係にすることは設計事項である。そして、各項目と色の対応関係が固定である場合には、その対応関係をテーブル(本願発明の「表示態様決定テーブル」に当たる。)として記憶しておくことも設計事項である(引用例2の「変換表」や後記周知例1の「メモリブロック」も上記の意味での「テーブル」の例である。)。表示態様決定テーブルを記憶した場合には、表示態様決定に当たり同テーブルを参照することは当然である。

引用例2に3.で摘記した記載があるほか、本願出願前に頒布された特開平5-172944号公報(以下「周知例1」という。)には、「6は航法機器で得られる航法情報と魚群探知機で得られる水中情報とに基づいて作成された数値とグラフィックの各航行情報表示用データを記憶する航行情報表示用メモリである。この航行情報表示用メモリ6は、カラーCRTの表示画面に対応する画素数(k×l)をもつメモリプレーン61〜64を本例では4枚分設けて構成されており、たとえば、第1のメモリプレーン61には、下地表示用データが、第2のメモリプレーン62には、枠表示用データが、第3のメモリプレーン63には文字表示用データが、第4のメモリプレーン64には、グラフィック表示用データがそれぞれ書き込まれるようになっている。」(段落【0018】)、「8は航行情報表示用メモリ6から読み出された航行情報表示用データに対して固有のカラーコードを割り当てる色変換回路であって、この回路8は、前記の航行情報表示用メモリ6の各メモリプレーン61〜64に対応した数のメモリブロック81〜84を有し、各々のメモリブロック81〜84には、図4(a)〜(d)に示すように、入力データに応じた固有のカラーコードが割り当てられており、データ入力が無い場合には、カラーコードの出力はなく、データ入力が有る場合にのみ、これに応じて上記のR,G,Bのカラーコードが読み出されるようになっている。」(段落【0019】)及び「10は色変換回路8の各メモリブロック81〜84と、カラーコード変換回路4とからそれぞれ並行してカラーコードが読み出された場合には、予め設定された優先順位に沿ってカラーコードを択一的に選択出力するプライオリティ回路であって、本例では、第1のメモリブロック81から第4のメモリブロック84に向かう程、優先順位が低くなり、カラーコード変換回路4の出力が最も優先順位が低くなるように設定されている。」(段落【0020】)との各記載があり、下地表示用データ、枠表示用データ、文字表示用データ及びグラフィック表示用データに対して、それぞれカラーコードを読み出すとともに、複数のカラーコードが読み出される場合に、優先順位によって定まる1つのカラーコードだけが出力されることが記載されている。
同じく特開平7-175865号公報(以下「周知例2」という。)には、「サイズの小さい表示帯170については、上記全ての表示情報を表示することができないので、そのサイズで表示できる数の情報が選択される。この選択は、品目データの受注番号と内容コード情報171、構成部品情報172、判サイズと印刷面173、印刷枚数174、表面色数と裏面色数175及び得意先の名称176の優先順位に従って選択される。」(段落【0032】)との記載があり、受注番号、内容コード情報、構成部品情報、判サイズと印刷面、印刷枚数、表面色数と裏面色数及び得意先の名称という表示情報のすべてを表示できない場合に、表示情報に優先順位を設定し、優先順位の高い情報だけを表示することが記載されている。
引用例2並びに周知例1及び周知例2の記載を総合すれば、複数の属性に従って何らかの表示をするに当たり、異なる属性間の表示が競合するためすべての属性に関する表示(引用例2及び周知例1では色の表示)ができない場合に、属性間に優先順位を設定しておき、優先順位の高い属性の情報だけを表示することは、本願出願当時周知と認めることができる。

引用例1において、「用途種別」の項目として例示されているのは「官公庁、供給処理施設、運輸施設、通信施設、教育施設、研究施設、文化施設、医療施設」であるが、現実の建屋はこのどれにも該当しないものが多いばかりか、例示されたものすべてを色分け表示するかどうかは人為的取り決めにすぎず、その一部だけを色分け表示の対象とすることは設計事項に属する。「構造種別」や「階数区別」についても同様であり、一部の階数だけを色分け表示の対象とすることは設計事項に属する。1つの属性のすべての項目に対して色分けを行う場合には、2以上の属性情報を1つの建屋図形で表示することは著しく困難であるから、記載キ及び【図13】のように複数の建屋図形が必要となる。
しかし、複数の建屋図形を同時に表示する場合には1つの図形が小さくなるし、属性を切り替えて表示する(ある瞬間には1つの建屋図形を表示する)のであれば、同時に複数の属性を表示できない。1つの属性について特定の項目だけを色分け表示することを前提として、上記周知技術同様に、複数属性について表示色が競合した場合に、属性間に設定した優先順位に従って表示色を決定すれば、すべての項目についての色表示はできないかもしれないが、図形を小さくすることなく複数の属性を同時に色表示できるのであるから、引用発明1を出発点として、上記周知技術を採用して、相違点1に係る補正発明の構成に至ることは当業者にとって想到容易というべきであり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7.補正発明と引用発明2との一致点及び相違点の認定
引用発明2の「文字及び単語」と補正発明の「建造物形状」とは、カラー表示させる対象である点で一致する。引用発明2の「カラー属性」は「表示態様」の一形態である。したがって、引用発明2の「モノクローム属性」と補正発明の「種別、詳細情報、高さ情報を含む建造物に属する情報」とは、表示形態を決定するための属性である点で一致し、引用発明2の「変換表」と補正発明の「表示態様決定テーブル」とは、「表示対象に対する属性に対応して表示態様が設定されている表示態様決定テーブル」である点で一致する。当然、引用発明2は「表示態様決定テーブル」は、表示対象たる「文字及び単語」のデータ、表示対象の属性情報に加えて、変換表(表示態様決定テーブル)を記憶する記憶手段を備えている。
引用発明2において「前記優先順位及び前記変換表に従って、文字又は単語のモノクローム属性に対応するカラー属性を選択」することと、補正発明において「前記種別、詳細情報、高さ情報に対して優先順位を設定し、前記優先順位にしたがって前記表示態様決定テーブルを参照し、当該建造物の表示態様を決定」することとは、「属性に対して優先順位を設定し、前記優先順位にしたがって前記表示態様決定テーブルを参照し、表示対象の表示態様を決定」する点で一致し、引用発明2がそのための「表示制御手段」を備えることは明らかである。
したがって、補正発明と引用発明2とは、
「複数の属性を有する表示対象のデータ及び前記表示対象の属性情報に対応して表示態様が設定されている表示態様決定テーブルを記憶する記憶手段と、
前記複数の属性に対して優先順位を設定し、前記優先順位にしたがって前記表示態様決定テーブルを参照し、当該表示対象の表示態様を決定して表示対象を表示手段に表示する表示制御手段とを備えた表示装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点2〉表示対象につき、補正発明が「建造物形状地図」としているのに対し、引用発明2が「テキストの文字及び単語」としている点。補正発明の「表示手段」が「地図を表示する」こと、及び補正発明が「建造物形状地図表示装置」であるのに対し、引用発明2が「文字及び単語を表示させる装置」であることは、この相違点2に単に付随する事項であるので、別途独立した相違点には当たらない。
〈相違点3〉「複数の属性」につき、補正発明が「種別、詳細情報、高さ情報を含む建造物に属する情報」としているのに対し、引用発明2では表示対象が異なるため、全く異なる属性である点。

8.相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断その2
表示対象を建造物形状地図とすること、及び建造物に属する情報に対応する表示態様を決定すること、並びに建造物に属する属性情報を「種別、詳細情報、高さ情報を含む建造物に属する情報」とすることは引用例1に記載されている。
すなわち、相違点2,3に係る補正発明の構成は、すべて引用例1に記載されており、要は引用発明2の表示対象及び属性を引用例1記載のものに変更することの容易性だけが判断の対象となる。そして、引用発明2における属性に応じたカラー表示手段(より具体的には、対象物に対して複数の属性情報が割り当てられた場合に、属性情報を色で表現する際の色選択手段)は、表示対象や属性が異なっても当てはまる手段であることが明らかであるから、引用発明2の表示対象及び属性を引用発明1のものに変更して、相違点2,3に係る補正発明の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。
そして、これら相違点に係る補正発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明2及び引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
平成14年8月26日付けの手続補正は原審において、本件補正は当審において、それぞれ却下されたから、本願の請求項1に係る発明は平成13年12月25日で補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「高さ情報を含む建造物に属する情報を有する建造物形状地図のデータ及び前記建造物に属する情報に対応して表示態様が設定されている表示態様決定テーブルを記憶する記憶手段と、地図を表示する表示手段と、前記表示態様決定テーブルを参照し、前記高さ情報を含む当該建造物に属する情報に応じて当該建造物の表示態様を決定して建造物形状地図を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とする建造物形状地図表示装置。」

2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉高さ情報を含む建造物に属する情報を有する建造物形状地図のデータを記憶する記憶手段と、地図を表示する表示手段と、前記高さ情報を含む当該建造物に属する情報に応じて当該建造物の表示態様を決定して建造物形状地図を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えた建造物形状地図表示装置。
〈相違点1’〉本願発明の「記憶手段」が「建造物に属する情報に対応して表示態様が設定されている表示態様決定テーブル」を記憶し、「前記表示態様決定テーブルを参照」することにより、当該建造物の表示態様を決定するのに対し、引用発明1が「属性情報を指定する手段」及び「指定された属性の各項目毎に、別途記憶されたカラーテーブルをピックして色指定を行う指定手段」を有する点。

3.相違点1’についての判断及び本願発明の進歩性の判断
相違点1’に係る本願発明の構成を採用することが設計事項であることは「第2[理由]6」の冒頭で述べたとおりであり、かかる構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-12 
結審通知日 2006-04-19 
審決日 2006-05-02 
出願番号 特願平10-371751
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09B)
P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹榎本 吉孝  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 長島 和子
國田 正久
発明の名称 建造物形状地図表示装置  
代理人 菅井 英雄  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 韮澤 弘  
代理人 青木 健二  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 内田 亘彦  
代理人 米澤 明  

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