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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1138571
審判番号 不服2002-9612  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-29 
確定日 2006-06-22 
事件の表示 平成11年特許願第191384号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月23日出願公開、特開2001- 17677〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年7月6日の出願であって、平成13年10月2日付で拒絶理由通知がなされ、同年12月6日付で手続補正がなされ、平成14年4月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月14日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年6月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年6月14日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「第1図柄始動口(22)と、該第1図柄始動口(22)への遊技球の入賞又は通過を検出する第1検出手段(23)と、開閉可能な開閉部材(29)を有する第2図柄始動口(24)と、該第2図柄始動口(24)への遊技球の入賞又は通過を検出する第2検出手段(25)と、遊技者に不利な第1状態と有利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段(16)と、第1検出手段(23)と第2検出手段(25)との何れが遊技球を検出したときにも1個又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する特別図柄表示手段(14)と、該特別図柄表示手段(14)の変動後の停止図柄が特定図柄又は特定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記可変入賞手段(16)を第1状態から第2状態に変換させて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(42)とを備え、前記第1図柄始動口(22)、第1検出手段(23)、第2図柄始動口(24)及び第2検出手段(25)を1つの入賞装置(15)に一体に備え、前記第2検出手段(25)が遊技球を検出する検出遊技球数を計数可能な計数手段(43)を備え、該計数手段(43)が所定数計数するまで、前記利益状態発生手段(42)による利益状態の終了を検出する利益状態終了検出手段(47)からの検出信号に基づいて前記第2図柄始動口(24)の前記開閉部材(29)の開放時間を大にするように構成したことを特徴とする弾球遊技機。」

と補正された。
上記補正は、平成13年12月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1図柄始動口(22)、第1検出手段(23)、第2図柄始動口(24)及び第2検出手段(25)」を「前記第1図柄始動口(22)、第1検出手段(23)、第2図柄始動口(24)及び第2検出手段(25)を1つの入賞装置(15)に一体に備え」と限定し、同じく「計数手段(43)」を「該計数手段(43)が所定数計数するまで、前記利益状態発生手段(42)による利益状態の終了を検出する利益状態終了検出手段(47)からの検出信号に基づいて前記第2図柄始動口(24)の前記開閉部材(29)の開放時間を大にするように構成した」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-194790号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
「複数の識別情報を可変表示する可変表示装置と、
・・・遊技者にとって有利な特別遊技の制御を行う特別遊技制御手段と、
・・・前記可変表示装置における特定の識別情報の発生確率を変更する識別情報発生率変更制御手段と、を備えた遊技機において、
前記可変表示装置の始動権利を与える・・・複数の始動入賞口と、
前記識別情報発生率変更制御手段により生じた発生確率変更状態において・・・複数の入賞口に対する遊技球の入賞率を変化させる入賞率変更制御手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」(特許請求の範囲、請求項1)、
「前記入賞率変更制御手段は、・・・複数の始動入賞口に対する遊技球の流下方向を変更する・・・。」(特許請求の範囲、請求項2)、
「・・・複数の始動入賞口のうち少なくとも一つは、遊技領域内に設けられた特定位置における遊技球を検出する特定球検出手段からの特定球検出信号により、複数の識別情報を可変表示する補助可変表示装置の停止時の識別情報に基づき作動する補助変動入賞装置である・・・。」(特許請求の範囲、請求項3)、
「前記入賞率変更制御手段は、前記補助変動入賞装置により構成された始動入賞口に対する入賞率を高める制御を行う場合には前記補助変動入賞装置の始動条件である特定球検出手段での遊技球の検出率も高める・・・。」(特許請求の範囲、請求項4)、
「前記入賞率変更制御手段は、前記補助変動入賞装置の作動確率を変更する・・・。」(特許請求の範囲、請求項5)、
「【従来の技術】
一般に、・・・遊技球を用いた遊技機としては、例えばパチンコ機が・・・挙げられる。従来の遊技機、例えば第1種に属する遊技機では、特定入賞口(例えば、始動口)に遊技球が入賞することにより、可変表示装置(いわゆる特別図柄表示装置)に複数の識別情報を可変表示させ、その識別情報の停止態様に基づき、その停止識別情報が特別識別情報(いわゆる大当り図柄)である場合には特別遊技を行っている。
また、特別遊技を行う特別識別情報のうち、予め定められた特殊識別情報(いわゆるラッキーナンバー)に基づき所定期間(例えば、次の大当りの発生までの期間)特別識別情報(大当り図柄)の発生確率を変更(例えば、発生確率が高くなるように変更)する遊技機(いわゆるCR機)や、特定入賞口に電気的作動装置を備え、特殊識別情報に基づき電気的作動装置の作動率を向上(始動口に用いた電動チューリップの作動条件としての可変表示装置(いわゆる普通図柄表示装置)に特定識別情報(当り図柄)が発生する確率を向上)させる遊技機等が開発されている。
さらに、入賞に基づき排出される賞球数が異なる特定入賞口を遊技盤上に設け、遊技店の釘調整により使い分ける遊技機に関する出願もなされている(特開平5-92070号公報,特願平4-201817号参照)。」(段落【0002】)、
「【作用】
・・・本発明によれば、単位時間当りの遊技者への賞球排出数(いわゆるベース)を一定にしても、始動入賞口への入賞に対する賞球排出数を少なくすることにより、始動入賞口へより多く入賞させることができ、可変表示装置をより多く作動させることができ、結果として、大当りの発生する確率も向上することになる。」(段落【0005】)、
「【実施例】
・・・。パチンコ遊技機の遊技盤1は、図1に示すように、その表面に・・・遊技部3が形成され、遊技部3内・・・、特別図柄表示装置4の下方には垂直方向に一列に第1始動入賞口5および第2始動入賞口6が、また、・・・変動入賞装置(大入賞口)7を配設されて構成されている。」(段落【0006】)、
「そして、・・・、第1始動入賞口を始動させるための補助可変表示装置である普通図柄表示装置65が設けられており、第1始動入賞口5は電動チューリップ式の入賞口となっており、補助変動入賞装置に相当している。第1、第2始動入賞口5,6の左右には、上記の普通図柄表示装置65を始動させるための特定球検出手段である普図始動ゲート8L,8Rが配設されている。そして、特別図柄表示装置4は、図に示すように、3基の可変表示器4a,4b,4cを備えている。」(段落【0007】)、
「また、・・・、誘導装置9L,9R・・・が設けられている。・・・。」(段落【0008】)、
「また、・・・、遊技盤1の裏側には、各入賞口への入賞を検出する入賞検出器や、各部の動作を制御するための電気的制御装置、球排出装置等が設けられている。・・・。」(段落【0009】)、
「・・・、図4は主に遊技制御に関する電気的制御装置の部分を、また、図5は主に球排出制御に関する電気的制御装置の部分をそれぞれ示している。」(段落【0010】)、
「流下してきたパチンコ球が普図ゲート8L又は8Rを通過すると、普図ゲート通過検出器67が検出し、特定球検出信号を・・・CPU10に送る。CPU10は特別図柄表示装置4等のいわゆる役物の遊技制御を司る電気的制御装置である。」(段落【0011】)、
「・・・、CPU10は、・・・、当り制御信号を・・・第1始動入賞口5の普通電役ソレノイド64に送る。」(段落【0014】)、
「当り制御信号が発せられると、普通電役ソレノイド64が励磁され、打球を受け入れない若しくは打球を受け入れ難い状態から打球を受け入れ易い状態に変換される。」(段落【0015】)、
「・・・、流下してきたパチンコ遊技球が第1始動入賞口5に入賞すると、この入賞球を第1始動口入賞検出器15が検出し、第1始動入賞検出信号を・・・CPU10に送る。そして、第1始動入賞口5に入賞した打球は入賞球として処理され、この場合、第1始動入賞口5には7個の賞球が割り当てられているので、CPU10から球排出を司るもうひとつのCPU40に7個の賞球排出をすべき旨の7個賞球データ信号が転送され、これによりCPU40から・・・第1玉排出ソレノイド59に7個の賞球を排出すべき旨の第1賞球排出制御信号が送られ、第1玉排出ソレノイド59が作動して・・・球供給皿に7個の球が賞球として排出される。(図5)」(段落【0016】)、
「・・・、同様に、流下してきたパチンコ打球が第2始動入賞口6に入賞すると、この入賞球を第2始動口入賞検出器16が検出し、入賞検出信号である第2始動検出信号を・・・CPU10に送る。そして、第2始動入賞口6に入賞した打球も入賞球として処理され、この場合、第2始動入賞口6には10個の賞球が割り当てられているので、CPU10からCPU40に10個の賞球排出をすべき旨の10個賞球データ信号が転送され、これによりCPU40から・・・第2玉排出ソレノイド60に10個の賞球を排出すべき旨の第2賞球排出制御信号が送られ、第2玉排出ソレノイド60が作動して・・・球供給皿に10個の球が賞球として排出される。」(段落【0017】)、
「CPU10は、第1始動口入賞検出器15または第2始動口入賞検出器16から始動検出信号を受け取るといずれの始動口入賞検出器からの始動検出信号であるかを判別する。」(段落【0018】)、
「・・・、CPU10は、上記の始動検出信号をRAM12等に記憶し、この記憶に基づき、・・・特別図柄始動入賞記憶LED29に表示制御信号を送り、この特別図柄始動入賞記憶LED29を発光させて遊技者に特別図柄表示装置の始動権利があることを可視表示する。この特別図柄始動記憶の最大記憶数は4に設定されている。」(段落【0019】)、
「また、CPU10は、第1始動口入賞検出器15または第2始動口入賞検出器16から始動検出信号を受けるとこれをRAM12等に記憶する。そして、CPU10は、この記憶に基づいて・・・始動制御信号を特別図柄表示装置4に送り、3つの可変表示器4a〜4cに数字を可変表示させる図柄変動遊技を行わせる。」(段落【0020】)、
「・・・、CPU10は、上記の図柄変動遊技の開始後、ROM11等に設定されている停止図柄決定用の乱数テーブルから3つの可変表示器4a〜4cに対応した停止識別情報である乱数(例えば、「Na ,Nb ,Nc 」)を取り出す。CPU10は、識別情報判定手段として、ROM11等から取り出された停止図柄決定用乱数を所定の特定識別情報である「大当り」の乱数(例えば、「3,3,3」等のゾロ目)と比較し、それと一致している場合には、CPU10は、特別遊技制御手段として、当り制御信号を・・・変動入賞装置7に送る。」(段落【0021】)、
「当り制御信号が発せられると、変動入賞装置7内の大入賞口ソレノイド28が励磁され、打球を受け入れない若しくは打球を受け入れ難い第1状態から打球を受け入れ易い第2状態に変換される。これにより、1サイクル目の「特別遊技」が開始される。」(段落【0022】)、
「・・・最終の第16サイクルにおいて・・・条件が成立した時点で、CPU10は、特別遊技を終了させる。特別遊技が終了すると、このパチンコ遊技機全体は通常の遊技状態に戻る。」(段落【0028】)、
「・・・、CPU10は、ROM11等から取り出された停止図柄決定用乱数が所定の「大当り」の乱数のうち特殊識別情報であるラッキーナンバー(例えば、「7,7,7」)である場合には、ラッキーナンバー当り制御信号を・・・変動入賞装置7に送り、特別遊技を行わせるほか、これ以後の所定期間中、CPU10は、識別情報発生率変更制御手段として、特別図柄表示装置4における大当りの発生確率を高めるように制御する。また、CPU10により特別図柄表示装置4における大当りの発生確率が高められている状態が発生確率変更状態である。」(段落【0029】)、
「上記の発生確率変更状態においては、図3に示すように、CPU10から誘導装置9L,9Rに制御信号が発せられ、通常状態(特別図柄表示装置4における大当りの発生確率が高められてはいない状態)では図2のように出っ張っていた作動片70が引っ込むように制御される。」(段落【0030】)、
「この作動片70の動作により、図2の通常状態では・・・第2始動入賞口6に入賞しやすく、普図始動ゲート8L,8Rは通過しにくいのに対し、図3の発生確率変更状態では・・・第1始動入賞口5に入賞しやすく、かつ普図始動ゲート8L,8Rも通過し易いようになる。」(段落【0031】)、
「このように制御すると、通常状態では賞球数の多い始動入賞口を使用し、発生確率が向上している状態では賞球数の少ない始動入賞口を使用することができ、単位時間当りの賞球排出数(いわゆるベース)が同一であっても、特別図柄表示装置4の作動回数を多くすることが可能となり、遊技店の営業を成立させつつ遊技者に有利な状態を付与できる。上記において、CPU10、あるいはCPU10と遊動装置9L,9Rは、入賞率変更制御手段を構成している。」(段落【0032】)、
「・・・、第1始動入賞口に打球が入賞したか否かを第1始動検出信号の有無により判別し(ステップS6)、次いで第2始動入賞口に打球が入賞したか否かを第2始動検出信号の有無により判別し(ステップS101)、さらに現在特別遊技処理中か否かについて判別し(ステップS102)、特別図柄変動遊技の始動記憶があるかないかを判別し(ステップS103)、現在普図遊技処理中か否かについて判別し(ステップS104)、普図始動記憶があるかないかを判別し(ステップS105)、確率変動中か否かについて判別し(ステップS106)、確率変動中ではなければ遊動装置9L,9RをOFF(作動片が出っ張った状態を維持)し(ステップS107)、次いでCPU10は・・・CPU40からの制御信号およびデータ信号を受信する(ステップS19)。次に、これらの受信信号の中でCPU40が排出すべき賞球数のデータを要求しているか否かについて判別し(ステップS20)、排出賞球数のデータ要求が無い場合には、各種のセンサ、スイッチからの入力のチェック等により外部からの不正行為の監視を行い(ステップS29)、最後に、遊技状態、特別図柄始動記憶、不正状態、エラー状態等の表示をランプやLEDに可視表示させるほか遊技状態に応じた効果音や合成音声を音響出力する出力処理を行い(ステップS30)、HALT(ステップS31)を経て再びRESET(ステップS1)に戻る。」(段落【0036】)、
「・・・。普図遊技処理(図11)では、まず特定遊技(普通図柄表示装置で当り図柄となった場合)かどうかを判定し(ステップS131)、上記の確率変動期間中か否かを判定し(ステップS132)、ステップS132の結果が「NO(以下「N」とする)」の場合は通常普図処理として、普図変動開始後5秒後に普図を停止する(ステップS133)。」(段落【0038】)、
「・・・ステップS131の結果が「Y」の場合は、特定遊技処理として、第1始動入賞口である電動チューリップ5を所定期間又は所定カウントの間、開放する(ステップS134)。また、上記ステップS132の結果が「Y」の場合は、即止め普図処理として、CPU10は、2回目以降の普図ゲート通過の場合は普図の変動から停止までの時間を短縮化し、単位時間内の普図変動回数を増加させ、結果的に第1始動入賞口である電動チューリップ5の開放する確率を高めるように制御する(ステップS135)。」(段落【0039】)、
「・・・、上記の判別ステップS6において、その結果が「Y」の場合は、CPU10は、RAM12内に格納されている7個の賞球を排出すべき旨の7個賞球記憶を1だけインクリメントさせて更新させ(ステップS7)、次いで、RAM12内の現在の始動記憶数が4未満か否かを判別する(ステップS8)。その結果、「Y」の場合は、RAM12内の始動記憶を1だけインクリメントさせて更新させ(ステップS9)、「N」の場合即ちRAM12内の始動記憶数が4である場合には記憶が満杯であるので、そのままステップS101に移行する。」(段落【0040】)、
「・・・、上記の判別ステップS101において、その結果が「YES(以下「Y」とする)」の場合は、CPU10は、RAM12内に格納されている10個の賞球を排出すべき旨の10個賞球記憶を1だけインクリメントさせて更新させ(ステップS111)、次いで、RAM12内の現在の始動記憶数が4未満か否かを判別する(ステップS112)。その結果、「Y」の場合は、RAM12内の始動記憶を1だけインクリメントさせて更新させ(ステップS113)、「NO(以下「N」とする)」の場合即ちRAM12内の始動記憶数が4である場合には記憶が満杯であるので、そのままステップS102に移行する。」(段落【0041】)、
「ステップS103において、RAM12内に特別図柄変動遊技の始動記憶があるか否かを判別し、「Y」の場合には、ステップS114に移行してRAM12内の始動記憶を1だけデクリメントして更新した後、「特図遊技処理開始」のフラグをたて(ステップS115)次の受信ステップS19に移行する。次に、ステップS102において、現在の状態が特図遊技処理中である場合には、ステップS116に移行して特図遊技処理を行う。」(段落【0042】)、
「特図遊技処理(図10)では、まず特別遊技(特別図柄表示装置で大当り図柄となった場合)中かどうかを判定し(ステップS121)、上記の確率変動期間中か否かを判定し(ステップS122)、ステップS122の結果が「N」の場合は通常特図処理として、特図変動開始後所定期間後に特図を停止する(ステップS123)。」(段落【0043】)、
「・・・、上記ステップS121の結果が「Y」の場合は、ステップS124において特別遊技終了か否かを判定する。この判定は、継続入賞口への入賞による特別遊技をも含め、すべての特別遊技が終了したか否かを判定する。この結果、特別遊技がまだ終了していない場合はステップS125に移行し上述した特別遊技処理(所定条件、所定期間の大入賞口の開放)を実行する。」(段落【0044】)、
「次回以降のサイクルのステップS124において、特別遊技終了と判定された場合は、ステップS129においてその大当り図柄がラッキーナンバーなどの特殊図柄であるか否かを判定する。この結果が「N」の場合は、特別図柄の発生率を通常の確率に設定し(ステップS126)、ステップS129の結果が「Y」の場合は、特別図柄の発生率を通常よりも高い確率に設定(ステップS127)する。これが発生確率変動状態である。」(段落【0045】)、
「・・・、上記ステップS122の結果が「Y」の場合は、即止め特図処理として、CPU10は、2回目以降の始動入賞口入賞の場合は特図の変動から停止までの時間を短縮化し、単位時間内の特図変動回数を増加させ、結果的に大当りとなる確率を高めるように制御する(ステップS128)。」(段落【0046】)、
「受信ステップS19においては、CPU10は・・・CPU40からの制御信号およびデータ信号を受信する。そして、次の判別ステップS20において、CPU40側から排出すべき賞球数のデータ要求が有るか無いかについて判別を行う。排出賞球数データの要求が有る場合には、CPU10は、RAM12内に7個賞球記憶が有るか否かをチェックし(ステップS21)、7個賞球記憶が有る場合には、7個賞球記憶を1だけデクリメントさせて更新した(ステップS22)後、この7個賞球記憶をデータ信号化して(ステップS23)、ステップS28に移行し、7個賞球データ信号としてCPU40にデータ送信して(ステップS28)次のステップS29に移行する。」(段落【0047】)、
「・・・、上記の判別ステップS21において、RAM12内に7個賞球記憶が無い場合には、次の判別ステップS24に移行し、RAM12内に10個賞球記憶が有るか否かをチェックし(ステップS24)、10個賞球記憶が有る場合には、10個賞球記憶を1だけデクリメントさせて更新した(ステップS25)後、この10個賞球記憶をデータ信号化して(ステップS26)、ステップS28に移行し、10個賞球データ信号としてCPU40にデータ送信して(ステップS28)次のステップS29に移行する。上記の判別ステップS24において、10個賞球記憶がない場合即ち7個賞球記憶も10個賞球記憶もない場合には、ステップS27に移行し、一般の入賞口に入賞した場合に相当する15個の賞球を排出すべき旨の15個賞球データ信号をセットしこれをCPU40にデータ送信して(ステップS28)次のステップS29に移行する。」(段落【0048】)、
「・・・判別ステップS50において、その判別結果が「Y」の場合即ち各入賞口からの入賞球がすべて合流する玉寄せ部の最下流側に設けられたセーフセンサ49において入賞球が検出され、セーフセンサ49から、・・・CPU40に入賞球検出信号が送出された場合には、CPU40は、この入賞球について排出すべき賞球数のデータをCPU10に要求する(ステップS51)。この要求があった場合には、前述したCPU10におけるステップS20において判別され、その時点でCPU10がRAM12内に格納しているデータに基づき、7個賞球データ、10個賞球データ、15個賞球データの優先順にいずれかの賞球数データがCPU10からCPU40に送信される。」(段落【0054】)、
「・・・、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。上記実施例は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。」(段落【0059】)、
「・・・、本実施例における確率変動とは、特別図柄表示装置における大当り図柄の発生確率を高める例について説明したが、これには限定されず、普通図柄表示装置における当り図柄の発生確率を高めてもよく、特別図柄表示装置及び普通図柄表示装置の両方の確率を高めるように変動させてもよい。」(段落【0062】)、
「・・・、本実施例では、確率変動期間が、特別遊技の終了から次の特別遊技の終了までとなっているが、これには限定されず、・・・、所定回数(例えば50回)の可変表示装置の変動を行うまでの期間、等としても良い。」(段落【0063】)、
「・・・、上記実施例では、入賞率変更制御手段として、誘導装置や普電である第1始動入賞口の作動確率(普通図柄表示装置で当り図柄が出る確率)を制御していたが、これに限定されることはなく、複数の異なる賞球数を設定した始動入賞口に対する入賞率を変化させるものであれば、どのような制御であってもかまわない。」(段落【0064】)、
「【発明の効果】
・・・、上記構成を有する本発明によれば、単位時間当りの遊技者への賞球排出数(いわゆるベース)を一定にしても、始動入賞口への入賞に対する賞球排出数を少なくすることにより、始動入賞口へより多く入賞させることができ、可変表示装置をより多く作動させることができ、結果として、大当りの発生する確率も向上することになる。」(段落【0065】)、
との記載が認められる。また、上記摘記事項および図4・6・7等より、CPU10が、第1始動口入賞検出器15または第2始動口入賞検出器16から始動検出信号を受け取るといずれの始動口入賞検出器からの始動検出信号であるかを判別し、この始動検出信号をRAM12等に記憶し、この記憶に基づいて始動制御信号を特別図柄表示装置4に送り、3つの可変表示器4a〜4cに数字を可変表示させる図柄変動遊技を行わせることや、確率変動期間が、所定回数(例えば50回)の可変表示装置の変動を行うまでの期間等としても良いことは、50回を計算するために「第1始動口入賞検出器15および第2始動口入賞検出器16がパチンコ遊技球を検出する検出パチンコ遊技球数を計算する計算手段を備える」ことができるものと認められ、また、上記摘記事項および図8・10・11等より、CPU10は、特別遊技中かどうかを判定して、確率変動期間中の場合は、特別遊技終了か否かを判定する。特別遊技終了と判定された場合は、ラッキーナンバーなどの特殊図柄である場合は、特別図柄の発生率を通常よりも高い確率に設定することや、また、CPU10は、普図遊技処理で、確率変動期間中の場合は、即止め普図処理として、2回目以降の普図ゲート通過の場合は普図の変動から停止までの時間を短縮化し、単位時間内の普図変動回数を増加させ、結果的に第1始動入賞口である電動チューリップ5の開放する確率を高めるように制御することから、特別遊技終了と判定し特別図柄の発生率を通常よりも高い確率に設定するためには、特別遊技制御手段による特別遊技終了を検出し、この検出に基づく検出信号を発する「特別遊技終了検知手段」を設けているものと認められ、これらのことから「特別遊技制御手段による特別遊技の終了を検出する特別遊技終了検知手段からの検出信号に基づいて第1始動入賞口5の電動チューリップの開放する確率を高めるように」していると認められる。これらの記載によれば、引用例1には、

「第2始動入賞口6と、該第第2始動入賞口6へのパチンコ遊技球の入賞を検出する第2始動口入賞検出器16と、開放可能な電動チューリップを有する第1始動入賞口5と、該第1始動入賞口5へのパチンコ遊技球の入賞を検出する第1始動口入賞検出器15と、打球を受け入れない若しくは打球を受け入れ難い第1状態と打球を受け入れ易い第2状態に変換する変動入賞装置7と、第2始動口入賞検出器16と第1始動口入賞検出器15との何れがパチンコ遊技球を検出したときにも3つの数字が可変表示して所定期間後に停止する特別図柄表示装置4と、該特別図柄表示装置4の可変表示後の停止数字が「7,7,7」である場合には、前記変動入賞装置7を第1状態から第2状態に変換させて遊技者にとって有利な特別遊技を開始させる特別遊技制御手段とを備え、前記第2始動入賞口6、第2始動口入賞検出器16、第1始動入賞口5及び第1始動口入賞検出器15を遊技盤1の表面または裏側に備え、前記第1始動口入賞検出器15および第2始動口入賞検出器16がパチンコ遊技球を検出する検出パチンコ遊技球数を計算する計算手段を備え、該計算手段が特別遊技の終了から50回の可変表示装置の変動を行うまでの期間、前記特別遊技制御手段による特別遊技の終了を検出する特別遊技終了検知手段からの検出信号に基づいて前記第1始動入賞口5の前記電動チューリップの開放する確率を高めるように構成したパチンコ機。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「第2始動入賞口6」、「パチンコ遊技球の入賞」、「第2始動口入賞検出器16」、「開放可能な電動チューリップ」、「第1始動入賞口5」、「第1始動口入賞検出器15」、「打球を受け入れない若しくは打球を受け入れ難い第1状態と打球を受け入れ易い第2状態に変換する」、「変動入賞装置7」、「3つの数字が可変表示して所定期間後に停止する」、「特別図柄表示装置4」、「可変表示後の停止数字が「7,7,7」である場合には」、「遊技者にとって有利な特別遊技を開始させる」、「特別遊技制御手段」、「検出パチンコ遊技球数を計算する計算手段」、「計算手段が特別遊技の終了から50回の可変表示装置の変動を行うまでの期間」、「特別遊技終了検知手段」および「パチンコ機」は、本願補正発明の「第1図柄始動口(22)」、「遊技球の入賞又は通過」、「第1検出手段(23)」、「開閉可能な開閉部材(29)」、「第2図柄始動口(24)」、「第2検出手段(25)」、「遊技者に不利な第1状態と有利な第2状態とに変換可能な」、「可変入賞手段(16)」、「1個又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する」、「特別図柄表示手段(14)」、「変動後の停止図柄が特定図柄又は特定図柄の組み合わせとなることを条件に」、「遊技者に有利な利益状態を発生させる」、「利益状態発生手段(42)」、「検出遊技球数を計数可能な計数手段(43)」、「計数手段(43)が所定数計数するまで」、「利益状態終了検出手段(47)」および「弾球遊技機」に相当すると認められる。また、引用例1発明の「遊技盤1の表面または裏側に」と、本願発明の「1つの入賞装置(15)に一体に」は、「特定場所に特定状態で」で共通し、また、引用例1発明の「第1始動口入賞検出器15および第2始動口入賞検出器16」と、本願発明の「第2検出手段(25)」は、「特定の検出器」で共通し、また、引用例1発明の「開放する確率を高めるように」と、本願発明の「開放時間を大にするように」は、「開閉条件を変更するように」で共通する。
したがって、両者は、

「第1図柄始動口と、該第1図柄始動口への遊技球の入賞又は通過を検出する第1検出手段と、開閉可能な開閉部材を有する第2図柄始動口と、該第2図柄始動口への遊技球の入賞を検出する第2検出手段と、遊技者に不利な第1状態と有利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段と、第1検出手段と第2検出手段との何れが遊技球を検出したときにも1個又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する特別図柄表示手段と、該特別図柄表示手段の変動後の停止図柄が特定図柄又は特定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記可変入賞手段を第1状態から第2状態に変換させて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備え、前記第1図柄始動口、第1検出手段、第2図柄始動口及び第2検出手段を特定場所に特定状態で備え、特定の検出器が遊技球を検出する検出遊技球数を計数可能な計数手段を備え、該計数手段が所定数計数するまで、前記利益状態発生手段による利益状態の終了を検出する利益状態終了検出手段からの検出信号に基づいて前記第2図柄始動口の前記開閉部材の開閉条件を変更するように構成した弾球遊技機。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1、第1図柄始動口、第1検出手段、第2図柄始動口及び第2検出手段を特定場所に特定状態で備えることにおいて、本願補正発明では、「1つの入賞装置(15)に一体に備え」ているのに対して、引用例1発明では「遊技盤1の表面または裏側に備え」ているだけで、1つの入賞装置に一体に備えていない点、

相違点2、計数手段を計数させる検出信号を送る特定の検出器が、本願補正発明では、「第2検出手段(25)」の1つの検出器であるのに対して、引用例1発明では「第1始動口入賞検出器15および第2始動口入賞検出器16」の2つの検出器である点、

相違点3、第2図柄始動口の開閉部材の開閉条件において、本願補正発明では、「開放時間を大にするように」しているのに対して、引用例1発明では「開放する確率を高めるように」しており、開閉部材の開閉条件がそれぞれ違う点、

(4)判断
上記相違点について検討する。

相違点1について、一般的に、可変入賞球装置が集約して設けられる取付基板に、通過玉検出器を内蔵する通過入賞口や、始動開口が一体的に設けられることが周知(例えば、特開平5-15635号公報(段落【0012】、【0013】等)、特開平4-200488号公報参照)であり、前記引用例1発明の構成に代えて、前記周知のものを適用して本願補正発明のように、第1図柄始動口、第1検出手段、第2図柄始動口及び第2検出手段を1つの入賞装置(15)に一体にすることは、当業者が設計に際し、適宜なし得る程度のことである。

相違点2について、引用例1には、CPU10が、第1始動口入賞検出器15または第2始動口入賞検出器16からの始動検出信号をRAM12等に記憶し、その記憶に基づいて始動制御信号を特別図柄表示装置4に送り、3つの可変表示器4a〜4cに数字を可変表示させる図柄変動遊技を行わせていることが記載されており、段落【0063】に記載されている特別図柄表示装置4の変動を所定回数(例えば50回)計算するためには、第1始動検出信号及び第2始動検出信号または始動制御信号等が利用されるものと認められる。してみると、第1始動入賞口に打球が入賞したか否かを第1始動検出信号の有無により判別したり、第2始動入賞口に打球が入賞したか否かを第2始動検出信号の有無により判別したりする過程で、CPU10が変動回数を計算するための始動検出信号の発生元を、前記引用例1発明の第1始動口入賞検出器15および第2始動口入賞検出器16とすることと、本願補正発明の第2検出手段(25)とすることとは、排出賞球数の異なる2系統の信号を利用するか排出賞球数の異なるどちらか一方の1系統の信号を利用するかの違いであり、1つの信号発生手段または2つの信号発生手段の選択採用に格別の発明力を要したとはいえず、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項である。

相違点3について、弾球遊技機分野において、始動電動役物の開放時間を延長することが従来周知(例えば、特開平8-38702号公報(段落【0014】、【0015】等)、特開平6-39092号公報(段落【0092】、【0093】等)参照)であり、開閉部材の開閉条件において、前記引用例1発明の作動片70を動作させて第1始動入賞口5に入賞しやすくして、電動チューリップを「開放する確率を高めるように」構成することに代え、前記周知のものを適用して本願補正発明のように可変入賞手段(16)の「開放時間を大にするように」構成することは、開閉条件の設定にあたり格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年6月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年12月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「第1図柄始動口(22)と、該第1図柄始動口(22)への遊技球の入賞又は通過を検出する第1検出手段(23)と、開閉可能な開閉部材(29)を有する第2図柄始動口(24)と、該第2図柄始動口(24)への遊技球の入賞又は通過を検出する第2検出手段(25)と、遊技者に不利な第1状態と有利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段(16)と、第1検出手段(23)と第2検出手段(25)との何れが遊技球を検出したときにも1個又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する特別図柄表示手段(14)と、該特別図柄表示手段(14)の変動後の停止図柄が特定図柄又は特定図柄の組み合わせとなることを条件に、前記可変入賞手段(16)を第1状態から第2状態に変換させて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(42)とを備え、前記第2検出手段(25)が遊技球を検出する検出遊技球数を計数可能な計数手段(43)を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-10 
結審通知日 2006-04-18 
審決日 2006-05-11 
出願番号 特願平11-191384
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 林 晴男
篠崎 正
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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